Trademark Appeal Case
契約関係者の不正出願
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2015−900240(T2015−900240/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標について
本件登録第5756553号商標(以下「本件商標」という。)は、「Veritas Academy」の文字を標準文字により表してなり、平成26年12月4日に登録出願され、第16類「印刷物」を指定商品として、同27年3月9日に登録査定、同年4月10日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、登録異議の申立ての理由を要旨以下のように主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第23号証を提出した。
(1)申立人商標について
申立人は、本件商標の登録出願日より前に、片仮名表記の「ベリタス・アカデミー」、英語表記の「Veritas Academy」、ロゴの「VERITAS ACADEMY」商標を、自己の提供するオンライン学習システムについて使用していた事実がある。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
商標権者は、申立人の提供する上記オンライン学習システムの教材を使用することに関し、申立人と契約を締結した者であり、本件の商標登録出願は、当該契約の直後になされたものである。
商標権者は、契約の当事者として、「Veritas Academy」が申立人のオンライン学習システム及び同教材の名称として使用されていることを、当然知っていながら、出願に及んだものであり、本件の商標登録出願が、剽窃的に不正の意図をもってなされたものであることは明らかである。
このような本件商標を登録することは、社会の一般的道徳観念に反し、また、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ず、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当するというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきである。
3 取消理由の通知
当審において、商標権者に対し、「本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものと認められる。」旨の取消理由を平成28年7月7日付けで通知した。
4 商標権者の意見
前記3の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。
5 当審の判断
(1)申立人が使用する商標について
ア 申立人は、2006年(平成18年)6月に法人「株式会社ユナイテッド・インテリジェンス」を設立し(甲2)、以来、オンライン学習システムの「ベリタス・アカデミー(Veritas Academy)」の運営等を業とする者である(甲2及び甲4)。
また、それ以前から、大学受験向けの個人塾の名称として「ベリタス・アカデミー」の名称を使用していた(甲15)。
イ 申立人は、当該事業について、片仮名表記 の「ベリタス・アカデミー」(以下「使用標章1」という。)及びその英語表記としての「Veritas Academy」(以下「使用標章2」という。)を使用し(甲4、甲6、甲22)、また、別掲1のとおりの構成からなる標章(以下「使用標章3」という。)を使用している(甲4ないし甲11)。
さらに、申立人は、別掲2のとおりの構成からなり、平成22年12月22日に登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供」を指定役務として、同23年6月10日に設定登録された登録第5417953号商標(以下「引用商標」という。)を所有し(甲3)、使用している(甲4、甲8)。
ウ 申立人の「ベリタス・アカデミー(Veritas Academy)」は、塾や自宅、スマートフォン・タブレットPC等のスマートデバイスでも視聴可能なオンライン学習システムであり、その特長は、ITを駆使した効率化の実現によって、内容の濃い授業を効率良く自分のペースで好きなだけ学べ、短期間で学習効果を上げることを可能にするという点にあり、全国の多数の予備校や塾等で導入されている人気の学習システムとなっている(甲4)。
エ 企業PRのポータルサイト「ドリームニュース」の2010年1月12日付け記事には、「ネット予備校『ベリタスアカデミー』が提供する高校生向け、TOEICの基礎向け英文法動画講義・動画演習がシャープ製カラー電子辞書“Brain”で視聴可能に」の見出しの下、「ネット予備校、『ベリタスアカデミー』を運営する株式会社ユナイテッド・インテリジェンスは、2010年1月12日、シャープ株式会社が2010年1月22日に発売するカラー電子辞書“Brain”のダウンロード用コンテンツとして、高校生向け、TOEICの基礎向け英文法講義『英文法の神・入門編』の提供を開始いたしました。」とあり、「ベリタスアカデミーとは」の項には、「ベリタス・アカデミーは2006年に大手予備校講師が独立して立ち上げたネット予備校で、電子ホワイトボードを用いた効率の良いわかりやすい授業コンテンツ作成のパイオニアです。・・・2010年1月現在で全国の学習塾200教室への導入実績を誇ります。」と記載されている(甲12)。
オ アイティメディア株式会社によるIT関連ニュースサイト「IT media Mobil」の2011年7月20日付け記事には、「教育改革、塾で着々:ITで築く『学習の高速道路』−“定額見放題”のネット授業、iPhone/iPadでより便利に」の見出しの下、「ベリタス・アカデミーとは」の項には、「ベリタス・アカデミーは、大学受験生向け映像教材の開発と配信を手掛けるネット予備校。電子ホワイトボードを使ったライブ感あふれる授業が特徴で、現在、5教科1200コマ超の授業をネットで配信している(2011年7月時点)。・・・2011年6月時点で、300超の予備校や塾が同社の教材を採用。」と記載されている(甲14)。
カ 2014年3月24日付け北国・富山新聞には、「公営塾、ネットで授業 能登高 4月開塾、概要固まる 能都町、有志と学校合意」の見出しの下、「公営塾開設のため、能登高は近く通信教育業のユナイテッド・インテリジェンス(京都市)と契約し、全国の進学塾で使われているインターネット配信の映像授業『ベリタス・アカデミー』を導入する。」といった記事が紹介されている(甲16)。
キ 株式会社私塾界が発行する雑誌「月刊私塾界」の2010年1月号、2013年10月号、同年11月号及び同年12月号において使用標章1、3及び引用商標を使用した広告を掲載した(甲18ないし甲21)。
(2)商標権者と申立人の関係について
本件商標の商標権者は、石川県小松市所在の「自立指導塾アデスト小松校」の代表者であり、申立人が企画・製作する「ベリタス・アカデミー(Veritas Academy)」の教材を、商標権者の塾で使用することに関し、平成26年11月24日付けで、申立人と「ベリタス・アカデミー授業配信に関する契約書」をもって契約を締結した者である(甲22)。該契約書には、「ベリタス・アカデミー」とは、申立人が企画・制作する映像教材を指し、申立人が企画立案し実施した授業の内容をデジタル化し、パソコン等の再生機器を使用することで閲覧可能にしたコンテンツや、コンテンツの内容に応じて冊子、プリント及びパソコンなどで閲覧可能な形式にしたデータなどの副教材(テキスト)を契約者に提供すること、また、それを用いて受講生にテキストとして交付すること、テキストは、原則としてネット上で配信し、契約者はプリントアウトして使用すること、契約者は、申立人の承諾なく、コンテンツの内容を録音、録画、複製してはならず、印刷物等に掲載してはならないこと、コンテンツ及びテキストの知的財産権は、すべて申立人が専有すること等が記載されている。
また、上記契約書と同日付けで、商標権者は、申立人が作成した「ベリタス・アカデミー新規契約登録申込照会票」に記入し、そこには、申込会社名として、「自立指導塾アデスト小松校」、代表者として商標権者の名称等が記載され、申立人のホームページにおいて「導入塾」であることを掲載することに同意する旨が書されており(甲23)、これにより、申立人のホームページ中の北陸のページには、導入塾の一つとして「自立指導塾アデスト小松校」が掲載されている(甲4)。
そして、本件の商標登録出願は、上記契約締結直後の平成26年12月4日になされたものである(甲1)。
(3)上記(1)の事実によれば、申立人は、本件商標の登録出願前より使用標章1ないし3及び引用商標を、自己の提供するオンライン学習システム及びその教材について使用し、実績を築いていたものであり、使用標章1ないし3及び引用商標は、申立人の業務に係る商品「学習用テキスト」及び役務「オンラインによる学習指導」を表示する商標として、本件商標の登録出願時には既に、学習塾を始めとする教育関連の分野における取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 前記(1)ないし(3)のとおり、使用標章1ないし3及び引用商標は、申立人の業務に係る商品「学習用テキスト」及び役務「オンラインによる学習指導」を表示する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、教育関連の分野における取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認められる。
イ そして、申立人の業務に係る上記商品及び役務は、学習塾経営者、予備校教師または学生を対象とするものであって、本件商標の指定商品「印刷物」には、学習塾や予備校で使用される「テキスト」、「教科書」及び「学習指導用マニュアル」等が含まれることよりすれば、密接な関連性を有するものといえる。
ウ ところで、使用標章1は、「ベリタス・アカデミー」の片仮名を書してなり、また、使用標章2は、「Veritas Academy」の欧文字を書してなり、これよりは、「ベリタスアカデミー」の称呼が生じるものであり、特定の観念は生じない。
次に、使用標章3は、別掲1のとおり、炎を模したと思しき図形とその下に「VeRITAS」(「e」の文字は多少図案化された態様である。)、さらにその下に小さく「ACADEMY」の欧文字を表してなり、全体に赤色で彩色してなるものであるところ、その文字部分からは「ベリタスアカデミー」の称呼を生じるものであり、特定の観念は生じない。
同じく、引用商標は、別掲2のとおり、炎を模したと思しき図形とその右側に「ベリタス・アカデミー」の片仮名を横一連に配し、全体に茶色で彩色してなるものであるところ、「ベリタス・アカデミー」の文字部分からは「ベリタスアカデミー」の称呼が生じるものであり、特定の観念は生じない。
他方、本件商標は、前記1のとおり、「Veritas Academy」の文字からなるものであるから、「ベリタスアカデミー」の称呼を生じ、また、特定の観念は生じないものである。加えて、本件商標は、使用標章2の文字部分「Veritas Academy」と使用標章3の文字部分「VeRITAS」及び「ACADEMY」の文字部分とは綴りを同一にするものである。
そうすると、本件商標は、使用標章1ないし3及び引用商標とは称呼を共通にし、さらに使用標章2及び使用標章3とは外観をも共通にするといえるものであり、それぞれ相紛らわしい類似の商標といわなければならない。
エ 以上を総合勘案すると、本件商標をその指定商品について使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、広く認識されている使用標章1ないし3及び引用商標を連想、想起し、該商品が申立人又は申立人と組織的若しくは経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(5)商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、前記1のとおり「Veritas Academy」の文字からなるものであり、また、使用標章1ないし3及び引用商標は、前記(4)のとおり、本件商標と類似の商標である。
そして、使用標章1ないし3及び引用商標は、商品「学習用テキスト」及び役務「オンラインによる学習指導」等について、申立人によって遅くとも2006年6月から使用されていたことが推認されるものである。
他方、商標権者は、申立人の使用標章1ないし3及び引用商標に係る商品「学習用テキスト」及び役務「オンラインによる学習指導」等と密接な関連性を有する「自立指導塾アデスト小松校」と称する学習塾の代表者である。そして、商標権者は、本件商標の登録出願の直前である平成26年11月24日に申立人の運営するオンライン学習システム「ベリタスアカデミー」を導入することについて契約を交わしていたことからすると、申立人の存在並びに申立人の使用標章の存在を知悉していたものというべきである。
してみると、商標権者は、本件商標の登録出願前から、使用標章1ないし3及び引用商標が申立人によって商品「学習用テキスト」及び役務「オンラインによる学習指導」等に使用されていたことを十分知っていながら、申立人の使用標章1ないし3及び引用商標が商標登録されていないことを奇貨として、これと類似する本件商標を申立人に承諾を得ずに登録出願をし、登録を得たものであって、剽窃したものといわざるを得ない。
以上によれば、本件商標は、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものであるから、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
(6)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に違反して登録されたものであるといわざるを得ないから、その登録は、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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