結論テキスト
その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2016−890081(T2016−890081/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第5763509号商標(以下「本件商標」という。)は、「QLED」の欧文字を書してなり、平成26年12月5日登録出願、第9類「携帯電話機,スマートフォン,携帯電話機用コンピュータソフトウェア,ラップトップ型コンピュータ,コンピュータ,コンピュータソフトウェア,電子計算機用アプリケーションソフトウェア,ダウンロード可能な電子出版物,タブレット型コンピュータ,遠隔制御装置,ウェアラブルコンピュータ,眼鏡のように人の顔に装着できるスマートフォン,手持ちサイズのデジタルエレクトロニクスメディアプレーヤーに装着可能なように形作られたリストバンド,健康状態・体脂肪・体格指数・肥満度指数に関する情報を受信・処理・伝送・表示する無線データ通信用コンピュータソフトウェア,ヘルスケア及び健康に関するテキスト・データ・画像・映像・音声ファイルを記録・整理・送信・操作・確認・受信できる個人向け携帯用通信機器,テレビジョン受信機用コンピュータソフトウェア,テレビジョン受信機,コンピュータ用モニター,音響又は映像の記録用・送信用又は再生用の機械器具,DVDプレーヤー,タッチパネル,発光ダイオード(LED)を用いたフラットパネルディスプレイ,LEDバックライト搭載型のテレビジョン受信機用ディスプレイ,ホームシアター用音声・映像受信機,コンピュータモニター,電子応用機械器具の表示画面保護フィルム,電気通信機械器具の表示画面保護フィルム,リストバンド型携帯式デジタルメディアプレーヤー,リストバンド付き手持ちサイズのデジタルメディアプレーヤー収納ケース,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,電子出版物」を指定商品として、同27年4月20日に登録査定、同年5月15日に設定登録されているものである。
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第129号証(枝番を含む。)を提出した。
本件商標は、商標法第3条第1項第1号、同項第2号、同項第3号、同項第6号、同法第4条第1項第16号及び同項第7号に反して登録されたものであり、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効とされるべきである。
(1)前提事実
ア 「量子ドットディスプレイ」(Quantum Dot Display)について
本件商標の登録出願日以前の2014年6月27日に受付けられた、NHK放送技術研究所新機能デバイス研究部の都築俊満氏の「知っておきたいキーワード/量子ドットディスプレイ」(甲3)によると、「量子ドット」は、ディスプレイ、LED、レーザ、太陽電池などの材料として注目を集めていること、「量子ドット」を利用した「量子ドットディスプレイ」の研究開発が進んでいること、2013年には日本の家電メーカーから初めて「量子ドットディスプレイ」を搭載した広色域液晶テレビが市販されたこと等がわかる。
また、電気通信大学先進理工学専攻の志賀智一准教授によって2014年7月に発表された「Display Week 2014 Symposium報告」(甲4)によれば、当該シンポジウムで開催されたセッションで、「量子ドット」は、Sonyの液晶ディスプレイやAmazon Kindle Fireで採用されたことから注目度が高まっており、多くの聴講者でにぎわった旨が報告されている。
特に、Session7「Electroluminescent Quantum Dots」では、「量子ドット発光ダイオード(QLED)」を主に取り扱ったことが報告されており、その中でも「7.4:High-Efficiency Inverted Quantum-dot Light Emitting Diodes for Display」においては、OLED(Organic Light Emitting Diode=有機発光ダイオード)と比較したQLEDに関する特性について報告されている。
さらに、翌年に開催された同シンポジウムに関する「SID2015報告」(甲5)においても、Quantum Dot(量子ドット、QD)をバックライトに採用する液晶ディスプレイがますます増え、注目を集めていることから各セッションは多くの聴講者でにぎわった旨、「OLED(有機発光ダイオード)」に関するセッションに加えて、「量子ドット発光ダイオード(QLED)」に関するセッションが行われた旨が報告されている。
イ「QLED」の語の使用について
上記の報告書の中に現れる「QLED」という語は、「Quantum dot Light Emitting Diodes」(量子ドット発光ダイオード)を示すものとして、遅くとも2010年頃から国内外のエレクトロニクス関連業界において使用され、かつ、本件商標の登録査定時点、さらには、登録出願時点においても、既に広く浸透していたものである。
これを示す一例を挙げると以下のとおりである。
(ア)各種記事等(甲6〜甲34)
a 株式会社ステラコーポレーションのウェブサイト(甲6)において、「量子ドット型無機ELディスプレイ(QLED)」と紹介
b QLED−info.comのウェブサイト(甲7)において、「First full-color QLED-display from Samsung by on July 28、2010」と紹介
c NEW ATLASのウェブサイト(2010年12月3日:甲8)において、「・・・QD Vision and LG Display have just announced a joint development agreement focusing on electroluminescent quantum dot LED(QLED)nanotechnology,・・・」(参考訳文:QD VisionとLG Displayはエレクトロルミネッセンス量子ドットLED(QLED)ナノテクノロジーに焦点を当てた共同開発契約を発表したばかり・・・)と紹介
d MIT Technology Reviewのウェブサイト(2010年12月7日:甲9)において、「・・・quantum-dot light-emitting diodes(QLEDs)・・・」(参考訳文:・・・量子ドット発光ダイオード(QLED)・・・・)と紹介
e QD Visionのウェブサイト(2011年1月11日:甲10)において、「・・・employs QD Vision's quantum dot light emitting diode(QLED)technology.」(参考訳文:・・・QD Visionの量子ドット発光ダイオード(QLED)技術を採用している。)と紹介
f Business Wireのウェブサイト(2011年2月25日:甲11)において、「ナノフォトニカがQLEDフラットパネルディスプレー向けに画期的な技術を開発・・・実現可能な画期的なQLEDディスプレー技術の開発を完了し、同技術の量産利用に向けた商業化に取り掛かっています。」と紹介
g QLED−info.comのウェブサイト(2011年2月27日:甲12)において、「NanoPhotonica Develops Breakthrough Technology for QLED Flat Panel Displays」(参考訳文:ナノフォトニカがQLEDフラットパネルディスプレー向けに画期的な技術を開発)と紹介
h TECH2のウェブサイト(2011年2月28日:甲13)において、「・・・the Samsung Advanced Institute of Technology team has showcased the world's first QLED TV.」(参考訳文:サムスン先端技術研究所のチームが世界初のQLED TVを展示している・・・)と紹介
i QD Visionのウェブサイト(2011年5月16日:甲14)において、「・・・announced major advances in the efficiency and performance of its quantum dot LED(QLED)technology.The company will present these technology achievements,which move low-cost,full-color QLED displays closer to reality,at SID 2011・・・」(参考訳文:量子ドットLED(QLED)技術の効率と性能の大きな進歩を発表した。同社は、SID2011・・・で低コストのフルカラーQLEDディスプレイをより現実に近いものにするこれらの技術成果を発表する予定である。)と紹介
j e.x.pressのウェブサイト(2011年5月18日:甲15)において、「QDビジョン、フルカラーQLEDディスプレイの性能改善」、「ディスプレイや固体照明向けナノテクベースの製品を開発しているQDビジョン(QD Vision,Inc)は、量子ドットLED(QLED)技術の効率とパフォーマンスで大きな進歩を達成したと発表した。」と紹介
k ブログ「quantum dots」(2012年4月29日:甲16)において、「有機材料を用いたLEDである有機LED(有機ELの一種。OLED)の技術を応用し、有機発光分子の代わりに量子ドットを用いた量子ドットLED(QLED)の開発が進んでいます。」と紹介
l netbrain-net.comのウェブサイト(発刊日2012年5月15日:甲17)において、「●フレキシブルディスプレイ/QD Vision(QLED)/Samsung Advanced Institute of Technolog(QLED)」と紹介
m J-GLOBALのウェブサイト(発行年2013年9月:甲18)において、「QLEDs for displays and solid-state lighting」と紹介
n 共同通信PRワイヤーのウェブサイト(2013年9月11日:甲19)において、「ウィンターグリーン・リサーチ社のスーザン・エスティス氏は『量子ドットと量子ドット型ディスプレイ(QLED)−2019年には市場規模が6400億円に』と題した2013年出版の調査レポート中で、『一旦ディスプレイ・メーカーがより効果的な発光を実現できる量子ドット材料の既存製品への導入に成功すれば、各社はその技術の採用を余儀なくされ、さもなくばマーケット・シェアを大きく失うことになるだろう。これら量子ドットと量子ドット型ディスプレイ(QLED)の台頭によってもたらされる変革はパラダイム・シフトの原動力となり、科学技術や産業構造において新たな産業、製品、そして雇用の創出に繋がるものとなるだろう。』と述べている。」と紹介
o 国立大学法人静岡大学のウェブサイト(甲20)において、中本正幸教授の教員個別情報の欄に、「・・・静岡大学がIDW’13にて高い発光効率のQLED(Quantum Dot Light Emitting Diode)を発表した(2013年12月27日)・・・QLED VS OLED(日本の静岡大学が高効率量子ドットハックデバイスを開発)(2013年12月27日)・・・量子ドットを使う『QLED』(Quantum Dot Light Emitting Diode)、IDW’13(国際ディスプレイ会議)で熱い視線(2013年12月15日)」と紹介
p 日経テクノロジーOnlineのウェブサイト(2013年12月25日:甲21)において、「【FPDI&IDW報告】量子ドットを使う『QLED』、IDWで熱い視線/有機ELの有機発光層に代えて、量子ドット層を印刷で形成した『QLED(quantum-dot light emitting diode)』である。『自発光で薄型化か容易である』という有機ELの特徴をそのまま受け継ぎ、さらに量子ドット層をはじめとした各層を印刷で形成できるため、製造プロセスの簡略化にもなる。」と紹介
q Business Koreaのウェブサイト(2014年1月6日:甲22)において、「・・・a high-definition TV called Quantum-dot LED TV(QLED TV)at the 2014 International CES,the world's biggest electronics show in Las Vegas in January.」(参考訳文:1月にラスベガスで開催される世界最大のエレクトロニクスショーである2014International CESで、量子ドットLEDテレビ(QLED TV)と呼ばれる高精細テレビ・・・)と紹介
r 日経エレクトロニクス(2014年1月20日:甲23)において、「NewsRanking」の「部品」部門の中で、「量子ドットを使う『QLED』/IDWで熱い視線」という記事が第10位にランクインしている。
s ブログ「OLED(有機EL)」に関するネットニュースをデイリーで掲載するブログ」(2014年4月16日:甲25)において、「・・・一部のメーカーは対抗策としてULEDテレビとQLEDテレビ(量子ドット発光ダイオード)を登場させている。」と紹介
t Good ChinaBrandのウェブサイト(2014年7月12日、同月23日及び同年12月4日:甲26、甲27及び甲30)において、「市場構造を変更 新しいQLEDフル解像度のディスプレイ技術/QLEDは「量子ドット発光ダイオード・・・」、「新しいQLEDディスプレイ技術の分析レポートを提供」及び「『究極の形を完璧に』にQLED量子ドットLCD技術の進化」と紹介
u 2014年9月11日付けのTCLによるプレスリリース(甲28)において、「Compared to LED display technology,TCL's quantum dot display screen QLED has the best color display performance, brighter images,richer colors range and lower energy consumption.」(参考訳文:LEDディスプレイ技術と比較して、TCLの量子ドット表示画面QLEDは、最高のカラー表示性能、より明るい画像、より豊かな色範囲およびより低いエネルギー消費を有する。)と紹介
v ブログ「海外3Dプリンター関連ニュース」(2014年11月23日:甲29)において、「プリストン大学が世界初のQLED 3Dプリンターを開発/米国発:米国プリンストン大学の研究グループがこのほど、世界で初めて量子ドットLED(QLED)を出力する3Dプリンターを開発したと発表した。QLEDは有機発光ダイオード(OLED)に比べて低消費電力で、高輝度かつ偏りのない色再現を可能にする。同大学助教Michael McAlpine氏率いる開発チームによれば、新開発したQLED 3Dプリンターは、たとえばコンタクトレンズ上にディスプレイ装置を組み込むことが可能になるという。」と紹介
w Electronic Journalのウェブサイト(【発行日】2014年12月15日及び2015年3月13日:甲32及び甲33)において、「有機EL(OLED)に替わるQLED(Quantum-dot Light Emitting Diode)の発表も相次いでいます。OLEDの有機発光層に替えて、量子ドット層を印刷で形成したもので、“自発光で薄型化が容易である”というOLEDの特徴をそのまま受け継いでいるのに加え、量子ドット層を印刷法で形成できるため、製造プロセスを簡略化できます。」及び「OLEDに替わるQLED(Quantum-dot Light Emitting Diode)も、QD層を印刷で形成するといった製造プロセスの簡略化が可能な自然光素子として期待が高まっています。」と紹介
(イ)論文(甲35〜甲66)において、例えば、
a 2010年5月26日に発表された論文「Multicolored Light-Emitting Diodes Based on All-Quantum-Dot Multilayer Films Using Layer-by-Layer Assembly Method」(甲35)には、「QD-based light-emitting diodes(QLEDs).」(参考訳文:量子ドット(QD)ベースの発光ダイオード(QLED)・・・)と紹介
b 2011年3月29日に発表された論文「Single photon emission and detection at the nanoscale utilizing semiconductor nanowires」(甲36)には、「in Sec.2 we first present our quantum light-emitting diode(QLED)・・・」(参考訳文:図2に示ように量子発光ダイオード(QLED)を最初に提示する。)と紹介
c 2011年8月20日に受理された論文「Advancement in materials for energy-saving lighting devices」(甲37)には、「Abbreviations/QLED Quantum-dot light emitting diode」(参考訳文:略語/QLED 量子ドット発光ダイオード)と紹介
d 2012年4月13日に発表された論文「Nanomembrane Quantum-Light-Emitting Diodes Integrated onto Piezoelectric Actuators」(甲39)には、「Light-emitting diodes containing semiconductor quantum dots(QLEDs)are among the most promising sources of non-classical light・・・」(参考訳文:半導体量子ドット(QLED)を含む発光ダイオードは、非伝統的な光の最も有望な光源の一つです・・・)と紹介
e 2012年6月1日に発表された論文「Study of field driven electroluminescence in colloidal quantum dot solids」(甲40)には、「Colloidal quantum dot Based light emitting devices(QLEDs)have shown potential for displays and large area lighting applications.」(参考訳文:コロイド量子ドットに基づく発光デバイス(QLED)は、ディスプレイおよび大面積照明用途の可能性を示している。)と紹介
f 2014年11月6日に発表された論文「Solution-processed, high-performance light-emitting diodes based on quantum dots」(甲59)には、「To fully exploit the superior properties of quantum dots, a number of quantum-dot-based LED(QLED) structures were developed...」(参考訳文:量子ドットの優れた特性を十分に活用するために、いくつかの量子ドットペースのLED(QLED)構造が開発された...)と紹介
g 2014年11月13日に発表された論文「Light extraction analysis and enhancement in a quantum dot light emitting diode」(甲60)には、「We apply a rigorous dipole model to analyze the light outcoupling and angular performance of quantum dot light emitting diode(QLED). To illustrate the design principles.we use a red QLED as an example and compare its performance with an organic light emitting diode(OLED).」(参考訳文:我々は、量子ドット発光ダイオード(QLED)の光取り出しおよび角度性能を分析するために、厳密な双極子モデルを適用する。設計原理を説明するために、赤色のQLEDを例として使用し、その性能を有機発光ダイオード(OLED)と比較する。)と紹介
h 2015年3月6日に発表された論文「A low-cost route toward a vivid display with striking colors and high efficiency」(甲63)には、「Quantum dot light-emitting diodes(QLEDs)would be the best answer.」(参考訳文:量子ドット発光ダイオード(QLED)が最良の答えとなるだろう。)と紹介等がある。
(ウ)特許公報
「QLED」(Quantum dot Light Emitting Diode=量子ドット発光ダイオード)に関する特許出願が、本件商標の登録出願日よりも前の2010年頃より各国で多数なされている。これを例示するものとして、「『QLED』に関する特許出願リスト」を甲第67号証として、それぞれの公報の抜粋を甲第68号証ないし甲第119号証として提出する。例えば、
a 特開2015−72276(優先日:2010年3月15日:甲68)には、「量子ドット発光ダイオード(QLED)」と記載
b 特開2014−225323(優先日:2011年9月12日:甲85)には、「量子ドット含有層を用いた発光素子は、QLED(Quantum-dot light emitting diode)と呼ばれている。」と記載
c 特開2016−61873(優先日:2014年9月17日:甲108)には、「量子ドット発光素子(QLED:quantum-dot light emitting diode)のような自発光素子を表示領域DPの各画素に備えた表示装置であってもよい。」と記載等がある。
d 被請求人のアメリカ商標出願No.86472855「QLED」等
被請求人は、本件商標と同様の商品を指定して、アメリカにおいて商標「QLED」の出願を行ったが、当該商標出願は、「第2条(e)(1)拒絶−単に記述的にすぎない。添付の証拠は、QLEDが、テレビ・スマートフォン・証明等の量子ドット発光ダイオード技術に基づく製品を記述するのに使用されていることを示している。」の理由で最終拒絶を受けている(甲120)。
また、被請求人以外の者が、上記出願より前に、商標「QLED」の出願を行ったが、同様の理由で最終拒絶を受けている(甲121)。
(オ)小括
上記(ア)ないし(エ)からすると、遅くとも本件商標の登録査定日及び登録出願日の時点では、「QLED」の語が、「量子ドット発光ダイオード」を示すものとして、少なくともエレクトロニクス関連業界において普通に使用されていたといえる。
(2)商標法第3条第1項第1号該当について
上記(1)の前提事実からすれば、本件商標は、その指定商品中「量子ドット発光ダイオード」に使用された場合には、その商品の普通名称を普通に用いられる方法で表示したにすぎない。
(3)商標法第3条第1項第2号該当について
上記(1)の前提事実からすれば、本件商標は、その指定商品中「量子ドット発光ダイオード」について慣用されている商標といえる。
(4)商標法第3条第1項第3号該当について
ア 結論
上記(1)の前提事実からすれば、本件商標は、その指定商品中「量子ドット発光ダイオードを利用した指定商品」に使用するときは、量子ドット発光ダイオードを利用した商品というような意味を理解させるにとどまり、商品の品質・原材料・特性等を表示したものにすぎない。
イ 本件商標の指定商品の需要者について
本件商標の指定商品のようなエレクトロニクス関連の商品については、比較的高額な商品も多いことから、その商品の機能や特徴について調査・検討したり、店頭で店員から説明を受けたりする等した上で購入することが多いと考えられるため、一般消費者であっても比較的高度な専門知識を有している者も多い。
特に、本件商標の指定商品に含まれる「発光ダイオード(LED)を用いたフラットパネルディスプレイ、LEDバックライト搭載型のテレビジョン受信機用ディスプレイ」等は、「より明るい画像、より豊かな色範囲及びより低いエネルギー消費」(甲28)という一般消費者にとっても非常に関心の高い特徴を謳って宣伝広告をすることも多く、それを実現するための技術名称「QLED」についても自然と目や耳に入る機会が多いと考える。
ウ 「OLED」(商願2011−24256)について
「量子ドット発光ダイオード」を意味する「QLED」は、「OLED」(Organic Light Emitting Diode=有機発光ダイオード)と比較されることが多い。例えば、被請求人の関連会社であるLG Displayのウェブサイトでは、「QLED」を「OLED」と比較しつつ説明している(甲24)。
被請求人は、この「有機発光ダイオード」を意味する「OLED」を第9類で登録出願したが(甲123の1)、拒絶理由通知(甲123の2)が送達され、拒絶査定(甲123の4)を受け入れている。
(5)商標法第3条第1項第6号該当について
仮に、本件商標が商標法第3条第1項第1号ないし同項第3号に該当しない場合であっても、本件商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であることは明らかである。
(6)商標法第4条第1項第16号該当について
上記(1)の前提事実からすれば、本件商標は、その指定商品中、「量子ドット発光ダイオード」及び「量子ドット発光ダイオードを利用した商品」以外の指定商品に使用するときは、量子ドット発光ダイオードを利用した商品かのように商品の品質・原材料・特性等について誤認を生じさせるおそれがある。
(7)商標法第4条第1項第7号該当について
上記(1)の前提事実からすれば、競業者を含む取引業者に、本件商標の指定商品の品質・原材料・特性等を表示しているものと一般に認識される商標を、特定の者に独占させることは公益上相当であるとはいえない(甲122参照)。
(1)前提事実に関する被請求人の主張について
被請求人が主張するQDビジョン社の「QLED」は、請求人が提出した甲第121号証に示すとおり、既にアメリカ特許商標庁において商標出願され、その結果、「単に記述的に過ぎない」ものとして最終拒絶を受けている。したがって、たとえQDビジョン社が「QLED」を商標として使用しているとしても、それは「QLED」の識別力があることの客観的な証拠にはなり得ない。
次に、請求人としても、「量子ドット発光ダイオード」が「QDLED」として略称されている事実があること自体は否定しない。
しかしながら、請求人が提出した甲第4号証ないし甲第121号証が示すとおり、「量子ドット発光ダイオード」は「QLED」と略称されている場合の方が圧倒的に多いのである。
また、学術論文はその性質上英文で発表されることが多く、また、たとえ読者数が不明のインターネット記事であっても「QLED」が普通名称等として使用されている事実が多数存在するということには変わりがない。そして、これら論文やインターネット記事のみならず、請求人は各種特許公報も提出しており(甲68ないし甲119)、これらはまさに競業者(シャープ社、フィリップス社、コニカミノルタ社、マイクロソフト社、ジャパンディスプレイ社等多数)が「QLED」を普通名称等として認識し、使用していることの証左である。
そして、被請求人が提出した乙第3号証と同じウェブサイトの別ページである甲第34号証は、「世界の量子ドットおよび量子ドットLED(QLED)市場について調査分析し、各市場の概要、市場シェア、および予測、量子ドット・QLED技術の分析、主なQLED製品と企業のプロファイルなどをまとめ」たものであり、「量子ドットディスプレイ製品の概説」として、多数の製品が挙げられ、また、「量子ドットディスプレイ企業の概説」として、多数の企業が挙げられている。
更に、中国の会社であるTCL Corp.Co.,Ltd.が2014年12月にQLED TVを発売し(甲124、甲125)、例えば、2015年初頭には、中国でのQLEDを使用したテレビの出荷台数は100万台と予測されていた(甲126)。また、2017年1月にアメリカのラスベガスで開催されたCES2017(Consumer Electronics Show 2017)という国際展示会では、請求人が大々的にQLEDを使用したテレビを宣伝すると共に(甲127)、中国の会社グループであるHisense Groupも将来的にはQLEDへの注力を強化する旨をアナウンスしている(甲128)。
なお、被請求人が主張するように、「量子ドットを用いた商品についていえば、中には実用化されたものも存在するが、その作製プロセスが難解である等の理由によって、未だ実用段階に至らないかあるいは汎用化には至っていない開発途上のものが多」いのであれば、相当昔から、各企業は「QLED」の研究開発に取り組んでいて、「QLED」を普通名称等として認識・使用していたことになる。
以上からすると、「QLED」(量子ドット発光ダイオード)関連の製品・技術を取扱う競業者が既に多数存在していることは明らかであり、少なくともこれらの企業においては「QLED」が普通名称等として認識・使用されていたことは明らかである。
(2)その他の被請求人の主張について
被請求人は、アルファベット4文字からなる登録商標を複数挙げ(乙4〜乙8)、本件商標についても同様に造語商標と認識されるべきものである旨を主張しているが、そもそもこれら登録商標と本件商標とではその前提となる事実が異なり、かつ、被請求人からその事実に関する証拠の提出もなされていないのであるから、被請求人のかかる主張は当を得たものとは到底言い難い。
被請求人は、「コンピュータソフトウェアや電子書籍、デジタルメディアプレーヤー収納ケースといった商品」は、量子ドット発光ダイオードとは関係がない商品である旨を主張しているが、例えば、「量子ドット発光ダイオードの熱設計をシミュレーションするためのコンピュータソフトウェア」「量子ドット発光ダイオード技術を含む電子ブックディスプレイ」「量子ドット発光ダイオード素子を利用したデジタルメディアプレーヤーの収納ケース」等の商品を想定することができるのであるから、これら商品もやはり量子ドット発光ダイオードと関係があるといえる。
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証(枝番を含む。)を提出した。
1「QLED」について
量子ドットとは、三次元的な量子閉じ込め構造そのもの、若しくはそのような構造をもつ物質を指し(乙1)、請求人提出の証拠に記載されているとおり、ディスプレイ、レーザ、太陽電池などの商品にその技術を転用するために、国内外で研究開発が行われている。
このような実験が行われてきた中、商標権者においても、液晶ディスプレイのバックライトユニットに量子ドットを利用するために、QDビジョン社と共同研究開発を行っており、この事実は、請求人が提出した甲第8号証及び甲第9号証に記載されているとおりである。
このように共同研究等が行われてきている量子ドット技術を用いた発光ダイオードについて言及される際に「QLED」が用いられることがあるものの、「QLED」は、審判請求書において延々述べられているような商品の普通名称等として認識される表示ではない。現に、前述のQDビジョン社のホームページにおいても「QLED」が商標である旨が記載されている(乙2)。
なお、「QLED」は、「量子ドット発光ダイオード(Quantum Dot Light Emitting Diode)」の頭文字を並べた略称として捉えられるかもしれない。そもそも長い単語の頭文字を並べた略称は識別力の無い表示であると判断されるものではないが、「量子ドット発光ダイオード(Quantum Dot Light Emitting Diode)」を略すると「QDLED」となり、現に量子ドット発光ディスプレイの略称として「QDLED」が用いられている(乙3)。
このような略称が存在している事実を鑑みれば、敢えて商標「QLED」の使用を広く第三者に開放する必要性はないと思料する。
請求人は、遅くとも本件商標の登録査定日及び登録出願日の時点では、「QLED」の語が、「量子ドット発光ダイオード」を示すものとして、少なくともエレクトロニクス関連業界において普通に使用されていた旨を述べている。
しかしながら、請求人が本件商標が商品の普通名称等のように認識されている事実を示すために提出した証拠は、いずれも英語で記載された論文記事や、学会発表などを紹介した読者数が不明なインターネット記事などの抜粋である。ゆえに、これらの証拠は、「QLED」が関連業界において普通に使用されていた事実を立証するものではない。
なお、請求人は、甲第122号証を提出し、平成26年(行ケ)第10089号の判決文の中から、「競業者を含む取引業者に、当該商品の原材料を表示しているものと一般に認識される商標を、特定の取引業者に独占されることは公益上相当であるとはいえない」という箇所を引用しているが、この裁判では、商標「IGZO」に関する取引業者の認識を示すために、学術論文等だけでなく、朝日新聞や日本経済新聞などの全国紙における掲載記事や、複数の同業者によって商標「IGZO」が商品の原材料として使用されていた事実を示すホームページ等における使用事実などが証拠として提出されている。
当該訴訟におけるように、全国紙や業界における複数の取引業者のホームページ等において、商標が商品の普通名称や商品の材料を表す表示として使用されていれば格別、本件のように未だ学術論文や対象が限定されたインターネット記事において商標が引用されている事実のみを以って、商標が「競業者を含む取引業者に、当該商品の原材料を表示しているものと一般に認識される商標」に該当するとは到底いえないのである。
思うに、量子ドットを用いたディスプレイのような新しい技術を用いた商品については、研究者の論文等において、その分野の草分けとなる業者が用いた商標が、あたかもその技術を用いた商品の一般名称であるかのように引用されることがよくある。
そもそも量子ドットを用いた商品についていえば、中には実用化されたものも存在するが、その作製プロセスが難解である等の理由によって、未だ実用段階に至らないかあるいは汎用化には至っていない開発途上の段階のものが多く、量子ドット発光ダイオードを用いた商品についてもまた、市場に広く出回っているとは到底いえない状況である。
このような状況下において、本件商標のような新しい技術を用いた商品についての商標が、研究論文や読者数が不明なインターネット記事において引用されたという事実のみをもって、商標が関連業界において普通に使用されていたと認定されることは妥当ではないと思料する。
なお、量子ドット発光ダイオードの他にも量子ドットを用いた商品については多数研究が進められているが、それらの商品についても、本件商標と同様の構成からなるアルファベット4文字(QDEF、QDTV、QDOT)の商標が採択されており、いずれも登録が認められている(乙4〜乙6)。
これらの商標が自他商品等識別力を発揮する商標として登録が認められているにも関わらず、本件商標が無効であると判断されるとすれば、行政処分の平等原則に反する結果となり、妥当ではない。
例えば被請求人による「LUHD」(乙7)や、請求人による「SUHD」(乙8)は、超高精細(Ultra High Definition)を表す「UHD」とその他のアルファベット文字を組み合わせた構成の商標であるが、本件商標の指定商品が取り扱われる業界において、このような構成のアルファベット文字4文字からなる造語商標は、自他商品等識別標識として極めて頻繁に採択されている。
このような構成のアルファベット文字4文字の商標が、関連業界において頻繁に採択されている事実を鑑みれば、本件商標についても、商品の普通名称等としてよりはむしろ、「LED」とアルファベット文字を組み合わせた一種の造語商標であると認識されるものと考えられる。
商標審査基準によれば、商標法第3条第1項第1号に該当する商品等の普通名称とは、「取引界において、その商品又は役務の一般的な名称であると認識されるに至っているもの」をいい、同項第2号に該当する慣用商標とは、「同業者間において一般的に使用されるに至った結果、自己の商品又は役務と他人の商品又は役務とを識別することができなくなった商標」をいう。
ここで、本件商標の指定商品との関係で、商品の一般的な名称として認識されるのは「量子発光ダイオード」そのものであり、請求人が提出した証拠からは、商標「QLED」が取引界において、その商品又は役務の一般的な名称であると認識されるに至っている事実は何ら立証されていない。また、請求人が提出した証拠は、本件商標が同業者において一般的に使用されるに至った結果、自己の商品又は役務と他人の商品又は役務とを識別することができなくなった事実を立証するものではない。
ゆえに、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第1号及び同項第2号に違反してされたということはできない。
次に、商標法第3条第1項第3号に該当するような商標とは、その商品の産地、販売地、品質その他の特徴等を表示する標章のみからなる商標が該当するところ、本件商標は、これらのいずれの類型にも該当するものではない。
また、商標審査基準によれば、商品等の特徴等を間接的に表示する場合は、商品等の特徴等を表示するものではないと判断されるところ、本件商標は、商品の特徴等を間接的にも直接的にも表すものではないから、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたということはできない。
さらに、上述のとおり、量子ドットを用いた商品については未だ開発途上の分野であり、本件商標が、本件商標の指定商品が取り扱われる業界の需要者及び取引者において広く一般的な名称のように使用されていないこと、及び関連業界においてはアルファベット4文字の表示が商標として頻繁に採択されていることなどを鑑みれば、本件商標に接する需要者及び取引者は、これを自他商品等識別力を有する一種の造語商標として認識するのが自然と考えられる。
よって、本件商標は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標とは言えないため、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第6号に違反してされたということはできない。
上述のとおり、本件商標は商標法第3条第1項各号に該当するような商標と判断されるようなものではないから、本件商標の登録は、同法第4条第1項第16号に違反してされたということはできない。
商標法第4条第1項第7号に該当するような商標とは、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字、図形等が該当するところ、本件商標はいずれの類型にも該当しない。
また、上述のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項各号に該当するような商標ではないのであるから、このような商標が本件商標の指定商品について使用されたとしても、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するとはいえない。
ゆえに、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたということはできない。
したがって、本件商標は上記いずれの法条の規定にも違反して登録されたものではないから、これを無効とすべきでない。
なお、万が一請求人の主張が妥当と判断された場合であったとしても、本件商標は、量子ドット発光ダイオードとは関係のない商品、すなわちコンピュータソフトウェアや電子書籍、デジタルメディアプレーヤー収納ケースといった商品との関係では何ら無効理由に該当しない。
請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)「量子ドット」について
NHK放送技術研究所新機能デバイス研究部の都築俊満氏の「知っておきたいキーワード/量子ドットディスプレイ」(2014年6月27日受付:甲3)によると、「量子ドット」は、ディスプレイ、LED、レーザ、太陽電池などの材料として注目を集め、「量子ドット」を利用した「量子ドットディスプレイ」の研究開発が進んでいること、2013年には日本の家電メーカーから初めて、量子ドットを用いた液晶ディスプレイを搭載した広色域液晶テレビが市販されたこと等がわかる。
また、「Display Week 2014 Symposium報告」(2014年7月 電気通信大学先進理工学専攻の志賀智一准教授により発表:甲4)によれば、当該シンポジウムで開催されたセッションで、「量子ドット」は、Sonyの液晶ディスプレイやAmazon Kindle Fireで採用されたことから注目度が高まっており、多くの聴講者でにぎわった旨が報告されている。
特に、Session7「Electroluminescent Quantum Dots」では、「量子ドットを用いたLED(QLED)」を主に取り扱ったことが報告されており、その中でも「7.4:High-Efficiency Inverted Quantum-dot Light Emitting Diodes for Display」においては、OLEDと比較したQLEDに関する特性について報告されている。
(2)「QLED」の文字の使用について
ア 各種記事等(甲6〜甲34)
(ア)QLED−info.comのウェブサイト(甲7)において、「First full-color QLED-display from Samsung」(2010年7月28日)と紹介
(イ)NEW ATLASのウェブサイト(2010年12月3日:甲8)において、「・・・QD Vision and LG Display have just announced a joint development agreement focusing on electroluminescent quantum dot LED(QLED)nanotechnology,・・・」(参考訳文:QD VisionとLG Displayはエレクトロルミネッセンス量子ドットLED(QLED)ナノテクノロジーに焦点を当てた共同開発契約を発表したばかりだ・・・)と紹介
(ウ)Business Wireのウェブサイト(2011年2月25日:甲11)において、「ナノフォトニカがQLEDフラットパネルディスプレー向けに画期的な技術を開発」の見だしのもと、「実現可能な画期的なQLEDディスプレー技術の開発を完了し、同技術の量産利用に向けた商業化に取り掛かっています。」との記載がある。
(エ)e.x.pressのウェブサイト(2011年5月18日:甲15)において、「QDビジョン、フルカラーQLEDディスプレイの性能改善」の見だしのもと、「ディスプレイや固体照明向けナノテクベースの製品を開発しているQDビジョン(QD Vision,Inc)は、量子ドットLED(QLED)技術の効率とパフォーマンスで大きな進歩を達成したと発表した。QLEDは、放出型ディスプレイ技術の機能的利点をすべて持っており、さらに簡素化された製造工程、消費電力が最高効率のOLEDの半分になる可能性などの利点がある。」との記載がある。
(オ)共同通信PRワイヤーのウェブサイト(平成25年9月11日:甲19)において、「ウィンターグリーン・リサーチ社のスーザン・エスティス氏は『量子ドットと量子ドット型ディスプレイ(QLED)−2019年には市場規模が6400億円に』と題した2013年出版の調査レポート中で、『一旦ディスプレイ・メーカーがより効果的な発光を実現できる量子ドット材料の既存製品への導入に成功すれば、各社はその技術の採用を余儀なくされ、さもなくばマーケット・シェアを大きく失うことになるだろう。これら量子ドットと量子ドット型ディスプレイ(QLED)の台頭によってもたらされる変革はパラダイム・シフトの原動力となり、科学技術や産業構造において新たな産業、製品、そして雇用の創出に繋がるものとなるだろう。』と述べている。」との記載がある。
(カ)国立大学法人静岡大学教員データベースのウェブサイト(甲20)において、中本正幸教授の教員個別情報の欄に、「・・・静岡大学がIDW’13にて高い発光効率のQLED(Quantum DotLight Emitting Diode)を発表した(2013年12月27日)・・・QLED VS OLED(日本の静岡大学が高効率量子ドットハックデバイスを開発)(2013年12月27日)・・・量子ドットを使う『QLED』(Quantum Dot Light Emitting Diode)、IDW’13(国際ディスプレイ会議)で熱い視線(2013年12月15日)」との記載がある。
(キ)日経テクノロジーOnlineのウェブサイト(2013年12月25日:甲21)において、「【FPDI&IDW報告】量子ドットを使う『QLED』、IDWで熱い視線」の見だしのもと、「有機ELの有機発光層に代えて、量子ドット層を印刷で形成した『QLED(quantum-dot light emitting diode)』である。『自発光で薄型化か容易である』という有機ELの特徴をそのまま受け継ぎ、さらに量子ドット層をはじめとした各層を印刷で形成できるため、製造プロセスの簡略化にもなる。」との記載がある。
(ク)「OLED(有機EL)」に関するネットニュースをデイリーで掲載するブログ」(2014年4月16日:甲25)において、「中国カラーテレビメーカーが分化、ULEDとQLEDテレビを開発、有機ELテレビに対抗」の見だしのもと、「・・・一部のメーカーは対抗策としてULEDテレビとQLEDテレビ(量子ドット発光ダイオード)を登場させている。・・・(2014年4月14日 新華ニュース)」との記載がある。
(ケ)Good ChinaBrandのウェブサイトにおいて、「市場構造を変更 新しいQLEDフル解像度のディスプレイ技術」(2014年7月12日:甲26)の見だしのもと、「QLEDは『量子ドット発光ダイオード『・・・」、「移行と継承 新しいOLED画面をブロックQLED量子画面」(2014年7月23日:甲27)の見だしのもと、「新しいQLEDディスプレイ技術の分析レポートを提供・・・」及び「LCD究極進化 量子画面QLED技術の詳細な分析」(2014年12月4日:甲30)の見だしのもと、「『究極の形を完璧に』にQLED量子ドットLCD技術の進化・・・サムスンはQLEDを強化・拡大するために、量子ドット技術をリードします・・・クアンタムは、QLEDバックライト技術を・・・」との記載がある。
(コ)ブログ「海外3Dプリンター関連ニュース」(2014年11月23日:甲29)において、「プリストン大学が世界初のQLED 3Dプリンターを開発/米国発:米国プリンストン大学の研究グループがこのほど、世界で初めて量子ドットLED(QLED)を出力する3Dプリンターを開発したと発表した。QLEDは有機発光ダイオード(OLED)に比べて低消費電力で、高輝度かつ偏りのない色再現を可能にする。・・・新開発したQLED 3Dプリンターは、たとえばコンタクトレンズ上にディスプレイ装置を組み込むことが可能になるという。」との記載がある。
(サ)Electronic Journalのウェブサイト(【発行日】2014年12月15日及び2015年3月13日:甲32、甲33)において、「有機EL(OLED)に替わるQLED(Quantum-dot Light Emitting Diode)の発表も相次いでいます。OLEDの有機発光層に替えて、量子ドット層を印刷で形成したもので、“自発光で薄型化が容易である”というOLEDの特徴をそのまま受け継いでいるのに加え、量子ドット層を印刷法で形成できるため、製造プロセスを簡略化できます。」及び「OLEDに替わるQLED(Quantum-dot Light Emitting Diode)も、QD層を印刷で形成するといった製造プロセスの簡略化が可能な自然光素子として期待が高まっています。」との記載がある。
イ 論文(甲35〜甲66)において、例えば、
(ア)2010年5月26日に発表された論文「Multicolored Light-Emitting Diodes Based on All-Quantum-Dot Multilayer Films Using Layer-by-Layer Assembly Method」(甲35)には、「・・・quantum dot(QD)-based light-emitting diodes(QLEDs).」(参考訳文:量子ドット(QD)ベースの発光ダイオード(QLED)・・・)との記載がある。
(イ)2011年3月29日に発表された論文「Single photon emission and detection at the nanoscale utilizing semiconductor nanowires」(甲36)には、「This paper is organized as follows:in Sec.2 we first present our quantum light-emitting diode(QLED)・・・」(参考訳文:図2に示ように量子発光ダイオード(QLED)を最初に提示する。)との記載がある。
(ウ)2011年8月20日に受理された論文「Advancement in materials for energy-saving lighting devices」(甲37)には、「Abbreviations/QLED Quantum-dot light emitting diode」(参考訳文:略語/QLED 量子ドット発光ダイオード)との記載がある。
(エ)2014年11月13日に発表された論文「Light extraction analysis and enhancement in a quantum dot light emitting diode」(甲60)には、「We apply a rigorous dipole model to analyze the light outcoupling and angular performance of quantum dot light emitting diode(QLED).」 (参考訳文:我々は、量子ドット発光ダイオード(QLED)の光取り出しおよび角度性能を分析するために、厳密な双極子モデルを適用する。)との記載がある。
(オ)2015年3月6日に発表された論文「A low-cost route toward a vivid display with striking colors and high efficiency」(甲63)には、「Quantum dot light-emitting diodes(QLEDs)would be the best answer.」(参考訳文:量子ドット発光ダイオード(QLED)が最良の答えとなるだろう。)との記載がある。
ウ 特許公報(甲68〜甲119)によれば、「QLED」(Quantum dot light emitting diode)に関する特許出願が、本件商標の登録出願及び登録査定日前の2010年頃より各国で多数の特許出願がされている。例えば、
(ア)特表2013−522605(甲72)には、「公表日 平成25年6月13日」、「優先日 平成22年3月15日」、「出願人 インダストリアル テクノロジー リサーチ インスティチュート」、「【発明の名称】1分子検出システムおよび方法」とするものであって、「本検出システムは少なくとも1つの光源をさらに含んでいてもよく・・・光源は例えば・・・量子ドット発光ダイオード(QLED)・・・であってもよい。」との記載がある。
(イ)特開2014−225323(甲85)には、「公開日 平成26年12月4日」、「出願日 平成23年9月12日」、「出願人 シャープ株式会社」、「【発明の名称】発光デバイス、表示装置、及び照明装置」とするものであって、「量子ドット含有層を用いた発光素子は、QLED(Quantum-dot light emitting diode)と呼ばれている。」との記載がある。
(ウ)特開2014−77046(甲94)には、「公開日 平成26年5月1日」、「出願日 平成24年10月10日」、「出願人 コニカミノルタ株式会社」、「【発明の名称】発光層形成用インク組成物、発光素子の作成方法及びエレクトロルミネッセンスデバイス」とするものであって、「・・・量子ドットにより構成された発光素子(以下、QLEDともいう。)は、原理的には酸素により発光が消失することがなく、また、無機物であるために耐久性に優れ、各種溶媒に分散が可能である特徴を有している。したがって、QLEDは、湿式塗布方式を適用することができ、例えば、オープンな大気圧環境下での塗布及び製膜が可能とされており、OLEDよりも低コストで、かつロールtoロールのような高い生産性を備えた製造方式により作成することができる可能性を有している。」との記載がある。
(3)上記からすると、2011年には、ナノフォトニカやQDビジョン等の外国の企業において、「QLEDディスプレイ」を開発していること、2013年には、静岡大学が国際ディスプレイ会議において、高い発光効率のQLED(Quantum Dot Light Emitting Diode)を発表したことが確認できる。
また、2010年5月26日及び2011年3月29日等に発表された外国の論文(甲35、甲36)及び本件商標の登録出願前に公開されている我が国の特許公報には、量子ドット発光ダイオードの省略形表示として「QLED」が使用されており、また、外国においても本件商標の登録査定前に「QLED(Quantum dot light emitting diode)」に関する多数の特許出願がされている状況といえる。
そうとすると、本件商標の登録査定時にはすでに、量子ドット発光ダイオードに関する学術者、研究者において、「QLED」の文字は、「Quantum dot light emitting diode」の略称であり、「量子ドット発光ダイオード」を認識し得るというべきである。
そして、国内外の多くのディスプレイ、LED関連製品のメーカーにおいても、量子ドット発光ダイオードを使用した製品の実用化のための研究開発が進められ、その研究、開発の際には、我が国を含む世界的な量子ドット発光ダイオードに関する技術を参考とするために、国内はもとより、外国における論文、特許情報も調査しているものと推認できるものであるから、その際、上記「QLED」の文字が、「Quantum dot light emitting diode」の略称として使用されている事実も認識しているとみるのが自然である。
したがって、「QLED」の文字は、本件商標の登録査定時前において、研究者など一部の限定された者にとどまらず、液晶ディスプレイ、照明及び発光デバイスの分野の業界において、量子ドット発光ダイオードを表す略称として、広く認識されていたといえるものである。
(4)本件商標の指定商品中の「携帯電話機,スマートフォン,ラップトップ型コンピュータ,コンピュータ,タブレット型コンピュータ,遠隔制御装置,ウェアラブルコンピュータ,眼鏡のように人の顔に装着できるスマートフォン,手持ちサイズのデジタルエレクトロニクスメディアプレーヤーに装着可能なように形作られたリストバンド,ヘルスケア及び健康に関するテキスト・データ・画像・映像・音声ファイルを記録・整理・送信・操作・確認・受信できる個人向け携帯用通信機器,テレビジョン受信機,コンピュータ用モニター,音響又は映像の記録用・送信用又は再生用の機械器具,DVDプレーヤー,タッチパネル,発光ダイオード(LED)を用いたフラットパネルディスプレイ,LEDバックライト搭載型のテレビジョン受信機用ディスプレイ,ホームシアター用音声・映像受信機,コンピュータモニター,電子応用機械器具の表示画面保護フィルム,電気通信機械器具の表示画面保護フィルム,リストバンド型携帯式デジタルメディアプレーヤー,リストバンド付き手持ちサイズのデジタルメディアプレーヤー収納ケース,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」は、量子ドット発光ダイオードが使用される可能性の高い商品及び当該ダイオードを使用したディスプレイ・パネル等を保護する目的の商品といえる(以下、前記指定商品をまとめて「量子ドット発光ダイオード関連商品」という。)。
(5)小括
以上を総合してみれば、本件商標の登録査定時において、本件商標を構成する「QLED」は、「量子ドット発光ダイオード」を認識し、「量子ドット発光ダイオード関連商品」の一部を構成する部品、原材料を示すものとして使用され、少なくとも該商品に係る事業者(取引者・需要者)の間において認識されていたといい得るものである。
してみれば、本件商標「QLED」は、これをその指定商品中「量子ドット発光ダイオード関連商品」に使用した場合、その商品の部品、原材料、品質を表したものと認識されるというべきであるから、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであるというのが相当である。
したがって、本件商標は、その指定商品中、「量子ドット発光ダイオード関連商品」に使用するときは、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
(1)被請求人は、長い単語の頭文字を並べた略称は、識別力のない表示であると判断されるものではないが、量子ドット発光ダイオード(Quantum Dot Light Emitting Diode)を略すると、「QDLED」となり、現に、量子ドット発光ダイオードの略称として、「QDLED」が用いられているから、敢えて商標「QLED」の使用を広く第三者に解放する必要性はない旨主張している。
しかしながら、量子ドット発光ダイオードが、「QDLED」として使用されている場合があるとしても(乙3)、その例はごく僅かであり、上記1のとおり「QLED」の文字が量子ドット発光ダイオードの略称として使用されている事実が多数認められることからすれば、量子ドット発光ダイオードに係る事業者(取引者・需要者)は、「QLED」の文字を量子ドット発光ダイオードの略称と認識するのが自然であって、被請求人の主張は採用できない。
(2)被請求人は、請求人の提出に係る証拠は、いずれも英語で記載された論文記事や学会発表等を紹介した読者数が不明なインターネット記事等の抜粋であるので、これらの証拠は、「QLED」が関連業界において普通に使用されていた事実を立証するものではない旨主張する。
しかしながら、上記1(3)のとおり、量子ドット発光ダイオードに関連する論文や特許情報等は、単に学術者、研究者に留まらず、国内外の多くのディスプレイ、LED関連製品のメーカーにおいても、参考とされ、調査され得るものであるから、少なくとも量子ドット発光ダイオード関連業界における取引者、需要者においては、本件商標の登録査定時にはすでに、上記「QLED」の文字が、「Quantum dot light emitting diode」の略称として使用、認識されていたとみるのが自然である。
(3)被請求人は、アルファベット文字4文字からなる商標について、本件商標の指定商品が取り扱われる業界において、自他商品等識別標識として頻繁に採用されており、本件商標が無効と判断されるとすれば、行政処分の平等原則に反する旨主張する。
しかしながら、商標が識別力を有するか否かの判断は、査定時又は審決時において、取引の実情を勘案し、その指定商品の取引者、需要者の認識を基準として、商標ごとに個別具体的に判断すべきであるところ、請求人が挙げた登録例は、いずれも本願商標とは構成等を異にするものであるから、該登録例をもって本件の上記判断が左右されるものとはいえない。
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、結論掲記の指定商品について、商標法第3条第1項第3号に該当するものと認められるから、請求人の主張する他の無効理由について論及するまでもなく、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効とすべきものである。
しかしながら、本件商標は、その指定商品中の上記以外の「携帯電話機用コンピュータソフトウェア,コンピュータソフトウェア,電子計算機用アプリケーションソフトウェア,ダウンロード可能な電子出版物,健康状態・体脂肪・体格指数・肥満度指数に関する情報を受信・処理・伝送・表示する無線データ通信用コンピュータソフトウェア,テレビジョン受信機用コンピュータソフトウェア,電子出版物」について使用しても、商品の普通名称、慣用されている商標及び品質等を表示するものではなく、その他、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものでもなく、また、商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるものでもなく、さらに、社会公共の利益に反し、一般的道徳観念に反するともいえないものであり、それらの指定商品についての登録は、商標法第3条第1項第1号ないし同項第3号、同項第6号、同法第4条第1項第16号及び同項第7号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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