結論テキスト
本願商標は,登録すべきものとする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 不服2018−26(T2018−26/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本願商標は,「雪舟」の文字を標準文字で表してなり,第9類及び第10類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として,平成27年9月30日に登録出願され,その後,指定商品については,当審における同30年1月4日受付の手続補正書により,第10類「医療用機械器具」に補正されたものである。
原査定は,「本願商標は,室町時代に活躍した画僧として広く知られる『雪舟』を標準文字で表してなるものである。そして,一般に,歴史上の著名な人物にゆかりのある土地などにおいては,当該人物の氏名や略称などの標章を観光や土産物販売などの各種事業に使用して地域振興を図っているところ,当該『雪舟』についてみても,同氏の記念館が設立されている事実や,各種イベントが開催されている事実など,同氏がその出身地やゆかりの地の地方公共団体などの公益的な機関によって観光の振興や地域おこしの事業などに利用されているとともに,同地の住民などによって親しまれ,敬愛されている事実が認められる。そうすると,歴史上の人物として著名性を有し,地元住民を始め多くの人々に親しまれている『雪舟』を直ちに想起させる本願商標を,同氏とは何ら関係を有する者とは認められない出願人が,自己の営利を目的とするために商標として登録することは,公正な取引秩序を害するおそれがあり,また,地域の振興を妨げることにもなりかねず,公共の利益に反するものと認められる。したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
本願商標は,「雪舟」の文字からなるところ,該文字は,歴史上の人物名である「雪舟」を容易に認識させるものである。
商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,(1)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,(3)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきであると判示されている(知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10349号判決)。
ところで,周知・著名な歴史上の人物名は,その人物の名声により強い顧客吸引力を有する。その人物の郷土やゆかりの地においては,住民に郷土の偉人として敬愛の情をもって親しまれ,例えば,地方公共団体や商工会議所等の公益的な機関が,その業績を称え記念館を運営していたり,地元のシンボルとして地域興しや観光振興のために人物名を商標として使用したりするような実情が多くみられるところであり,当該人物が商品又は役務と密接な関係にある場合はもちろん,商品又は役務との関係が希薄な場合であっても,当該地域においては強い顧客吸引力を発揮すると考えられる。このため,周知・著名な歴史上の人物名を商標として使用したいとする者も,少なくないものと考えられる。一方,敬愛の情をもって親しまれているからこそ,その商標登録に対しては,国民又は地域住民全体の反発も否定できない。
そして,上記判決では,商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものとして,上記(1)ないし(5)の場合を例示として挙げており,その例示の一つとして,「(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合」が挙げられている。
そうすると,周知・著名な歴史上の人物名からなる商標は,(ア)当該歴史上の人物の周知・著名性,(イ)当該歴史上の人物名に対する国民又は地域住民の認識,(ウ)当該歴史上の人物名の利用状況,(エ)当該歴史上の人物名の利用状況と指定商品との関係,(オ)出願の経緯・目的・理由,(カ)当該歴史上の人物と請求人(出願人)との関係に係る事情を総合的に勘案して,当該商標を特定の者の商標としてその登録を認めることが,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するものと認められる場合には,商標法第4条第1項第7号に該当するというべきであるから,以下,本願商標について,上記(ア)ないし(カ)について検討する。
(1)事実認定
「雪舟」について,職権による調査(別掲)によれば,次のことを認めることができる。
ア 「雪舟」の周知・著名性
「雪舟」は,原審で通知した事実に加え,別掲1のとおり,辞書,新聞に掲載されたり,同人にまつわるテレビ番組が制作されるなど,全国的に広く一般に知られる,周知,著名な歴史上の人物名であるということができる。
イ 「雪舟」に対する国民又は地域住民の認識
「雪舟」は,上記アのとおり,全国的に広く知られているほか,別掲2のとおり,地方公共団体によって同氏の記念館が設立,運営されていることに加え,同人のゆかりの地をはじめ,広く全国各地で「雪舟」に関するイベントが開催されるなど,地域住民や観光客,美術愛好家などに親しまれている。
また,地方公共団体のウェブサイトにて,同人の生涯を描いた紙芝居が文化財として紹介されている事実や公的機関が同人のアトリエ跡とされる「雲谷庵跡」を観光スポットとして紹介している事実も確認できる。
そうすると,「雪舟」は,従来から継続して,同人がかつて住んだ山口県などのゆかりの地における地域住民はもとより,我が国の国民に広く敬愛されているといえる。
ウ 「雪舟」の名称の利用状況
「雪舟」は,上記イのとおり,地方公共団体が同氏の記念館を設立,運営したり,全国各地の美術館が,同人に関する展示会を開催するなど,地域振興や観光振興のために,「雪舟」の名称を利用していることが認められる。
また,別掲3のとおり,山口県や岡山県で販売された土産物や菓子に「雪舟」の名称を利用していることが認められる。
エ 「雪舟」の名称の利用状況と指定商品との関係
本願商標に係る指定商品は,前記第1のとおり,第10類「医療用機械器具」(以下「本願指定商品」という。)であるところ,当審において職権をもって調査するも,本願指定商品を取り扱う分野において,「雪舟」の名称が利用されている事実を見いだすことができなかった。
オ 出願の経緯・目的・理由
本願商標の出願の経緯,目的及び理由についての具体的事情は確認できないものの,本願商標の出願について,上記のような公益的事業の遂行を阻害するとか,顧客吸引力や信用が蓄積している他人の商標を剽窃する,不正な利得を得る,あるいは第三者に損害を与える目的があるなど,何らかの不正の目的があるものと認めるに足りる事実はなく,その他に出願経緯等に社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くものがあるとも認められない。
カ 「雪舟」と請求人(出願人)との関係
請求人と「雪舟」との関連性は,何ら見いだすことはできない。
(2)判断
上記(1)ア及びイのとおり,「雪舟」は,周知,著名な歴史上の人物名であって,我が国の国民に広く敬愛されている。
そして,該名称は,上記(1)ウのとおり,地方公共団体や美術館によって,地域振興や観光振興に利用されていることが認められる。
しかしながら,本願商標に係る指定商品は,上記(1)ウのとおり,地域振興や観光振興において,「雪舟」の名称が利用される土産物,菓子等の商品又はイベント等の役務と密接な関係性を有するものとはいえない上,上記(1)エのとおり,本願商標に係る指定商品を取り扱う分野においては,「雪舟」の名称が利用されている事実を見いだすことはできない。
さらに,請求人が,上記(1)カのとおり,「雪舟」とは何ら関連性がない企業であるとしても,本願の登録出願の経緯に,社会的相当性を欠くというべき事情も見いだせない。
以上の事情を総合的に勘案すれば,「雪舟」が周知,著名な歴史上の人物名であるとしても,本願商標は,その指定商品に使用した場合には,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するとはいえないというのが相当である。
したがって,本願商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきものではない。
以上のとおり,本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものではないから,これを理由として本願を拒絶した原査定は,取消しを免れない。
その他,本願について拒絶の理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
Next Action
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