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Trademark Appeal Case

PGAの周知性と役務の混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2018−900034(T2018−900034/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5995333号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5995333商標(以下「本件商標」という。)は、「PGA」の欧文字を標準文字で表してなり、平成28年10月12日に登録出願、第41類「当せん金付証票の発売,書籍の制作,放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,書画の貸与」及び第39類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、同29年10月26日に登録査定され、同年11月10日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第3023488号商標(以下「引用商標」という。)は、「PGA」の欧文字を横書きしてなり、平成4年9月22日に登録出願、第41類「ゴルフ興行の企画・運営又は開催,ゴルフ場の提供,ゴルフ用具の貸与,プロゴルファーのための知識と技術の教授,プロゴルファーの資格の検定及び認定」を指定役務として、同7年2月28日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標はその指定役務中、第41類「書籍の制作,放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供」(以下「申立役務」という。)について、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第50号証(枝番号を含む。)を提出した。

引用商標は、公益社団法人日本プロゴルフ協会の商標として、広く一般に知られている(甲3〜甲47)から、これと類似する本件商標が申立役務に使用された場合、役務の出所について混同を生ずるおそれがある。

第4 当審の判断

1 商標法第4条第1項第15号について

商標法第4条第1項第15号における「混同を生ずるおそれ」の有無は、ア)当該商標と他人の表示との類似性の程度、イ)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、ウ)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度、エ)並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、オ)当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(最高裁判決 平成10年(行ヒ)第85号)。

以下、上記判決に沿って検討する。

(1)本件商標と引用商標との類似性の程度

本件商標及び引用商標は、上記第1及び上記第2のとおりいずれも「PGA」の文字を通常の書体で表してなるものであり、両者の構成文字が一致しその外観が近似すること及び「ピージーエー」の称呼が一致することにより、両商標の類似性の程度は高いものといえる。

(2)引用商標の周知著名性及び独創性の程度

ア 引用商標の周知著名性

(ア)申立人の主張、同人提出の甲各号証及び職権調査によれば、次の事実を認めることができる。

a 引用商標の商標権者「公益社団法人日本プロゴルフ協会」(以下「引用商標権者」という。)は、昭和32年7月に設立、昭和56年1月に社団法人化され、平成25年5月に公益社団法人に移行した男子プロゴルファー認定団体であり、同協会の定款によれば、略称を「PGA」としている(「公益社団法人日本プロゴルフ協会」ホームページ https://www.pga.or.jp)。

b 引用商標権者は、プロゴルファーの資格の認定、ゴルフ競技の主催などを行うとともに、自身のオンラインストアにおいて、ポロシャツ、トートバッグ、書籍などの販売を行っている(甲3、甲45、甲47)。

c 引用商標権者のホームページには、「日本プロゴルフ選手権大会」(「競技情報」として)、「求人情報」、「NEWS」、「会員紹介」などの記事が掲載され、各所に引用商標が表示されている(甲3、甲6〜甲10)。また、上記オンラインストアのウェブページにも引用商標が表示されている(甲45、甲47)。

d 引用商標権者が主催する「日本プロゴルフ選手権大会」は、ほぼ毎年開催され、2018年には86回を迎え(甲42、甲43)、近年その様子はテレビ放送され、新聞、雑誌等でも紹介されている。また、2018年の同大会のポスターには「PGA CHAMPIONSHIP」の文字が大きく表示されている(甲42)。

e 1998年(平成10年)12月ないし2018年(平成30年)1月の新聞記事では、タイトル及び本文に「PGA」「日本プロゴルフ協会(PGA)」などと記載され、「PGA」が引用商標権者の略称として用いられている(甲12〜甲39)。

(イ)上記(ア)の事実によれば、引用商標は、本件商標の登録出願の日前から登録査定日はもとより現在まで継続して、引用商標権者の業務に係る役務(プロゴルファーの資格の認定、ゴルフ興行の企画・運営又は開催)(以下「引用商標権者役務」という。)を表示するものとして、ゴルフに関心を有する需要者の間に認識されている商標と判断するのが相当である。

しかしながら、引用商標は、ゴルフに関心を有する需要者の間に引用商標権者の略称と知られているとしても、ゴルフにさほど関心を有さない者は引用商標権者のホームページを見ることは少ないと推認されること、広く一般の人が目にし得る新聞記事(甲12〜甲39)は、記事の大きさなど具体的な掲載状況が確認できないこと、及びその掲載回数も平成10年ないし平成30年の21年の間に28回と決して多くはないことからすれば、一般の需要者の間において引用商標権者の著名な略称として広く認識されていると認めることはできない。

したがって、引用商標は、引用商標権者役務を表示するものとしてゴルフに関心を有する需要者の間に認識されているとしても、一般の需要者の間における周知著名性の程度は決して高いものとはいえない。

なお、申立人は、ゴルフに関する本の出版や、ポロシャツ、トートバッグ等のオフィシャルグッズに引用商標を付して販売していることを確認することができるとし、引用商標権者役務以外の商品及び役務についての使用に基づき、引用商標が周知著名である旨主張しているが、これらの商品の生産数、販売数量、書籍の出版数等に関する客観的な証拠の提出はなく、商標の使用状況が明らかでないことから、申立人のかかる主張は採用できない。

イ 引用商標の独創性の程度

引用商標は欧文字3文字からなるものであり、一般に欧文字3文字は組織、もの、サービスなどの略称として用いられることが少なくないから、引用商標の独創性の程度は高いものとはいえない。

(3)本件商標の申立役務と引用商標権者役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度

本件商標の申立役務は、上記第3のとおり、第41類「書籍の制作,放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供」であり、他方、上記(2)ア(イ)のとおり、引用商標権者役務は「プロゴルファーの資格の認定、ゴルフ興行の企画・運営又は開催」であるところ、「書籍の制作,放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供」と「プロゴルファーの資格の認定、ゴルフ興行の企画・運営又は開催」とは、その役務の提供の性質,用途又は目的は明らかに異なるものであり、関連性は見いだせない。

また、「競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催」については、「企画・運営又は開催」を内容とする役務であるという点では引用商標権者役務と一致するものの、両役務が対象とする競艇や競輪等とゴルフとは全く異なる分野のスポーツ(競技)である。

してみれば、両役務の間の関連性の程度は低いものとみるのが相当である。

(4)役務の需要者の共通性

本件商標の申立役務と引用商標権者役務は、娯楽に関する役務という点で共通点があるとしても、娯楽に関する興味は人により多種多様であり、競馬や競輪に興味を有する者が必ずゴルフにも興味を有するとはいえず、また、両役務の需要者の範囲が恒常的に一致するとみるべき取引の事情も見いだせないものである。

そうすると、本件商標の申立役務の需要者と引用商標権者役務の需要者は一部で共通する場合があったとしても、上記(3)のとおり、本件商標の申立役務と引用商標権者役務の間の関連性は低いものであることも踏まえれば、両役務の需要者の共通性の程度は決して高いとはいえないものである。

(5)判断

上記(1)ないし(4)に照らし、本件商標の申立役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標と引用商標の類似性の程度は高く、かつ、引用商標は、引用商標権者役務を表示するものとしてゴルフに関心を有する需要者の間に認識されているとしても、一般の需要者の間における周知著名性の程度は決して高いとはいえないものであり、また、引用商標の独創性の程度は高いものとはいえず、さらに、申立役務と引用商標権者役務の関連性の程度は低く、両役務の取引者及び需要者が共通性も高いものではないから、本件商標は、商標権者がこれを申立役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはないものと判断するのが相当である。

してみれば、本件商標は、商標権者がこれを申立役務について使用しても、その役務が他人(引用商標権者)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。

その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

2 申立人の主張について

なお、申立人は、引用商標権者が「PGA公認ゴルフスクール」として日本国内外あわせて132カ所を開設している(甲10)ところ、日本のゴルフ人口は、2017年度に550万人であり(甲11)、プロを目指す人はもちろん、娯楽としてゴルフを楽しむ人も「PGA公認ゴルフスクール」に通っていること、また、ゴルフの試合を観戦するギャラリーの数は、2016年に日本で開催された男子ツアーは24試合で34万9,681人、女子ツアーは37試合で54万894人であり(甲41)、ゴルフは高い人気を博しているスポーツである、特に、引用商標権者が主催する日本プロゴルフ選手権大会では、引用商標はチケット情報を扱うパンフレットに表示され(甲42)、2017年大会では一度で6,344人ものギャラリーを集めた(甲43)等と述べ、引用商標の周知性の程度が高い旨主張している。

しかしながら、日本のゴルフ人口が2017年度に550万人であったとしても、該数値は日本の人口全体に占める割合としてはさほど多いともいえないものであり、この数値のみによって本件商標の周知著名性が高いことを示す客観的な根拠とすることはできない。

また、ゴルフスクールに通う者や、ゴルフの試合を観戦するギャラリーは、ゴルフに関心を有する者であり、引用商標は、これらゴルフに関心を有する需要者の間で知られているとしても、ゴルフにさほど関心を有しない、一般の需要者の間で広く知られているとまではいうことができないのは上記のとおりである。

3 むすび

以上のとおり、本件商標は、登録異議の申立てに係る指定役務について、商標法第4条第1項第15号に該当せず、その登録は、同条第1項の規定に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その商標登録を維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

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