Trademark Appeal Case
欧文字商標の類否判断
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2018−900038(T2018−900038/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5997284号商標(以下「本件商標」という。)は、「Fizit」の欧文字を標準文字で表してなり、平成28年9月5日に登録出願、第25類「被服,洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,キャミソール,ティーシャツ,和服,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ナイトキャップ,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊衣服(「水上スポーツ用特殊衣服」を除く。),水上スポーツ用特殊衣服,運動用特殊靴,運動用特殊靴(「乗馬靴」及び「ウインドサーフィン用シューズ」を除く。),乗馬靴,ウインドサーフィン用シューズ」及び第35類「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,サプリメントの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,プロテインを主原料とする栄養補助食品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,商品の販売に関する情報の提供,消費者のための商品購入に関する助言と情報の提供,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,ホテルの事業の管理,広告業,広告用具の貸与,インターネットにおける広告用スペースの貸与」並びに第5類、第41類及び第44類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同29年10月10日に登録査定され、同年11月17日に設定登録されたものである。
2 引用商標
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、引用する国際登録第647720号商標(以下「引用商標1」という。)は、「fi’zi:k」の文字を別掲のとおりの態様で表してなり、2004年(平成16年)12月7日に国際商標登録出願(事後指定)、第12類、第21類及び第25類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、平成19年8月17日に設定登録され、その後、第25類の指定商品については、2008年(平成20年)3月27日付けで国際登録簿に記録された限定の通報があった結果、第25類「Outfits and dungarees, singlets, trousers and shorts, vests and jackets, ankle socks, hats, caps and footwear, all these goods used for cycling.」とされたものである。
なお、引用商標1は、2005年(平成19年)8月2日及び2015年(同27年)8月2日に商標権の存続期間の更新登録がされ、その商標権は現に有効に存続しているものである。
(2)申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するとして引用する商標は、引用商標1のほか、「Fizik」の欧文字からなるもの(以下、「引用商標2」といい、引用商標1及び引用商標2をまとめて「引用商標」という。)であり、申立人が「サイクリング・自転車競技用サドルや靴、被服等」について使用し、需要者の間に広く認識されているとする商標である。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第25類「全指定商品」及び第35類「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「申立商品・役務」という。)について、商標法第4条第1項第11号、同第10号及び同第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第41号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、申立人の登録商標である引用商標1に類似するものであって、その指定商品又は指定役務は同一又は類似するものである。
(2)商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用商標に類似するものであって、その指定商品又は指定役務は同一又は類似するものである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているから、本件商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合、商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがある。
4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実を認めることができる。
(ア)申立人は引用商標1の商標権者であり(甲2)、引用商標1の前商標権者は「SELLE ROYAL S.P.A.」(以下「セラロイヤル社」という。)である(甲8)。
(イ)セラロイヤル社は、自転車のサドルメーカーであり、自転車競技のプロ選手などが使用する最上級品(ハイエンド)のサドル等に引用商標1を表示している(甲3、甲9、甲10)。
(ウ)引用商標1が表示されたサドル及び自転車用シューズは、現在我が国において販売されている(甲4、甲5、甲37)。また、それら商品を「Fizik」「fizik」「FIZIK」として紹介等するウェブページがある(甲3〜甲5、甲32〜甲34、甲37)。
(エ)引用商標1が表示されたサドル及び自転車用シューズは、我が国においては2004年以降、外国においては2000年以降、各種の雑誌や展示会などで紹介されたことがうかがえるものの(甲11、甲16〜甲22、甲26〜甲30)、その具体的事実を確認することができる客観的な資料の提出はなく、また、我が国及び外国における販売数量、販売額など販売実績を具体的に示した証拠の提出もない。
イ 上記アの事実からすれば、次のとおり判断できる。
(ア)引用商標1の現在の商標権者が申立人であり、前商標権者がセラロイヤル社であることから、引用商標1が表示されたサドル及び自転車用シューズは両社の業務に係る商品とみて差し支えない(以下、申立人及びセラロイヤル社をあわせて「申立人等」といい、該商品を「申立人等商品」という。)。
(イ)引用商標が表示された申立人等商品は、我が国において2004年以降、雑誌や展示会で紹介されていることがうかがえ、該商品を紹介するウェブページもあり、そこに引用商標が表示されていることから、引用商標は申立人等商品を表示するものとして、自転車競技に関心を有する需要者の間に一定程度知られていることがうかがえる。
しかしながら、甲各証を検討しても、雑誌の広告や展示会の写真等のほかには、引用商標が表示された商品の販売実績を示す客観的な資料は見いだせないことから、提出された証拠に基づいて、引用商標に対する需要者の認識の程度が高いものであるということはできない。
また、その他に我が国における引用商標の使用状況を把握できる証拠は見いだせない。
してみれば、申立人等商品に使用される引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(申立人等)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(ウ)申立人は、引用商標に係る商品の我が国への輸入額(納品額)が2017年度2.4億円で我が国の自転車部品の輸入合計額の1%以上である(甲38、甲39)、周知性の判断においては外国での周知性や数か国に輸出されていることを考慮すべきである、及び引用商標1は世界各国で出願・登録され有効に存続しているなどとして、引用商標が周知である旨主張している。
しかしながら、仮に、引用商標に係る商品の我が国への輸入額が我が国の自転車部品の輸入合計額の1%強であるとしても、それが引用商標の周知性を基礎付けるほどの割合であるとはいい難いし、上記ア(エ)のとおり、我が国における申立人等商品の販売実績は確認できない。
また、申立人等商品が、外国において、2000年以降各種の雑誌や展示会などで紹介されたことはうかがえるものの(甲11、甲16〜甲22、甲35、甲36)、それらの具体的な内容はもとより、それらの事実を認めるに足りる証左は見いだせない上、外国における申立人等商品の販売実績も確認できない。
さらに、商標の周知性は商標登録の有無によって左右されるものではない。
したがって、申立人のかかる主張は採用できない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標は、上記1のとおり、「Fizit」の欧文字を標準文字で表してなり、該文字に相応して「フィジット」の称呼を生じ、辞書等に採録のない語であることから、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標1は、上記2(1)のとおり、「fi’zi:k」の文字及び記号からなるところ、その構成中「:」は長音を表す発音記号(IPA国際音声記号)と酷似するものであり、これを長音記号と見ることができるから、該文字及び記号に相応して「フィジーク」の称呼を生じ、また、該文字及び記号は辞書等に採録のない語であり、特定の意味合いを有することのない一種の造語を表したものとみるのが相当であるから、これより特定の観念を生じないものである。
ウ そこで、本件商標と引用商標1の類否を検討すると、両者は、外観において記号「’」及び「:」の有無並びに語尾の「t」と「k」の差異を有し、この差異が比較的短い文字構成からなる両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく、外観上、判然と区別し得るものである。
次に、本件商標から生じる「フィジット」と引用商標1から生じる「フィジーク」の称呼を比較すると、両者は語尾において「(ジ)ット」と「(ジ)ーク」の差異を有し、この差異音が共に4音という短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから、観念上、比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標1は、観念において比較できないものであるとしても、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
エ 申立人は、引用商標1の構成中、記号「’」及び「:」は我が国の需要者にとって称呼上馴染みがないため、引用商標1はアルファベット5文字「fizik」が着目され「フィジック」の称呼を生じる旨主張している。
しかしながら、引用商標1の構成中「:」は長音を表す発音記号(IPA国際音声記号)と酷似していることから、引用商標1は「フィジーク」と発音されると判断するのが相当であるし、また、引用商標1の構成中「Fizik」の文字のみを分離抽出すべき理由も見いだせないから、申立人のかかる主張は採用できない。
また、申立人は、過去の審決例を挙げ、両商標は称呼上類似する旨を主張しているが、本件と該審決例は、商標の構成等において相違し、事案を異にするものであるから、同一に論ずることは適切ではなく、また、そもそも商標の類否判断は、当該商標の査定時又は審決時において、その商標が使用される商品及び役務における取引の実情等を考慮し、本件の事案に即して本件商標と引用商標とを対比することにより、個別具体的に判断されるべきものであって、過去の審決例の判断に拘束されるものではないから、申立人のかかる主張も採用できない。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 本件商標と引用商標1との関係において
引用商標1は、上記(1)のとおり、申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、本件商標は、上記(2)のとおり、引用商標1と非類似の商標というべきものである。
そうすると、本件商標は、引用商標1との関係において、商標法第4条第1項第10号に該当するものといえない。
イ 本件商標と引用商標2との関係において
(ア)引用商標2の周知性
引用商標2は、上記(1)のとおり、申立人等の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標と認められないものである。
(イ)本件商標と引用商標2の類否
本件商標は、上記(2)アのとおり、「Fizit」の欧文字からなり、「フィジット」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
引用商標2は、上記2(2)のとおり、「Fizik」の欧文字からなるところ、該文字は辞書等に採録のない語であり、特定の意味合いを有することのない一種の造語を表したものとみるのが相当であるから、その構成文字に相応して英語風又はローマ字風の発音をもって「フィジック」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
そこで、本件商標と引用商標2の類否について検討すると、両者は、綴り字の比較においても、語尾に「t」と「k」の文字の差異を有し、この差異がともに5文字という比較的短い文字構成からなる両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さくなく、外観上、判然と区別し得るものである。
次に、本件商標から生じる「フィジット」と引用商標2から生じる「フィジック」の称呼を比較すると、両者は語尾において「ト」と「ク」の差異を有し、この差異音が共に促音を含む4音という短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は小さくなく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、明瞭に聴別できるものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標2は、観念において比較できないものであるとしても、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して考察すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(ウ)判断
引用商標2は、上記(ア)のとおり、申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、本件商標と引用商標2は、上記(イ)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
そうすると、本件商標は、引用商標2との関係において、商標法第4条第1項第10号に該当するものといえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記(1)のとおり、申立人等商品を表示するものとして、自転車競技に関心を有する需要者の間に一定程度知られていることがうかがえるものの、申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとまではいい難く、かつ、本件商標と引用商標は、上記(2)及び(3)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標である。
そうすると、本件商標の指定商品・指定役務と引用商標に係る商品(役務)の間に一定の関連性があり、さらに、需要者の範囲が共通する場合があるとしても、本件商標に接する取引者、需要者が、本件商標から引用商標を連想又は想起するものということはできない。
そして、ほかに、本件商標が商品又は役務の出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれを申立商品・役務について使用しても、その商品又は役務が他人(申立人等)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、申立商品・役務について、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その商標登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。