Trademark Appeal Case
称呼の類似性と要部抽出
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2017−15582(T2017−15582/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は,「TENRYU」の欧文字を標準文字で表してなり,第7類「金属加工機械器具用刃物,製材機械器具用刃物,木工機械器具用刃物,合板機械器具用刃物,除草機械器具用刃物」を指定商品とし,平成29年1月26日に登録出願されたものである。
2 引用商標
原査定において,本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして,本願の拒絶の理由に引用した登録商標は,以下のとおりであり,いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第2610787号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲1(1)のとおりの構成からなり,平成3年5月24日に登録出願され,第9類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同5年12月24日に設定登録されたものであり,その後,指定商品については,2回にわたる商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録があった結果,第7類に属する別掲1(2)に記載のとおりの商品とされたものである。
(2)登録第5042231号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲2(1)のとおりの構成からなり,平成18年6月16日に登録出願され,第11類に属する別掲2(2)のとおりの商品を指定商品として,同19年4月20日に設定登録され,その後,同29年4月25日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(3)登録第5454874号商標(以下「引用商標3」という。)は,別掲3(1)のとおりの構成からなり,平成21年12月10日に登録出願され,第7類に属する別掲3(2)のとおりの商品を指定商品として,同23年12月2日に設定登録されたものである。
3 当審の判断
(1)本願商標について
本願商標は,前記1のとおり「TENRYU」の欧文字を標準文字で表してなり,該文字は,辞書等に載録のない語であるところ,これをローマ字とする日本語として,一般に親しまれている「天竜,天龍」を表記したものとして看取,理解される場合も決して少なくないとみるのが相当であり,該「天竜,天龍」から想起する「天の竜(龍)」程の意味合いを認識させるものである。そして,これからは「テンリュー」の称呼が生じる。
(2)引用商標について
ア 引用商標1は,別掲2(1)のとおり,「天龍」の文字を横書きにしてなるところ,これからは,「テンリュー」の称呼が生じ,該「天龍」は,辞書等に載録のない語であることから,上記(1)同様,一般に親しまれている「天の竜(龍)」程の意味合いを認識させるものである。
イ 引用商標2及び引用商標3は,別掲2(1)及び3(1)のとおり,黒色で塗り潰した円図形の中に,白抜きの太線で三角形を描き,該三角形内の各辺に接続するように「T」と思しき文字を白抜きの太字で描いた図形と(以下「図形部分」という。),該三角形の下端部に白抜きで「TENRYU」の文字(以下「文字部分」という。)を書してなるものである。
そして,引用商標2及び引用商標3の構成中の図形部分は,特定の観念を認識させる等の特段の事情は見いだせないことからすれば,該図形部分は,特定の称呼及び観念を生じないのに対し,引用商標2及び引用商標3の構成中の文字部分「TENRYU」は,辞書等に載録のない語であるところ,これをローマ字とする日本語として,一般に親しまれている「天竜,天龍」を表記したものとして看取,理解される場合も決して少なくないとみるのが相当であり,該「天竜,天龍」より,「天の竜(龍)」程の意味合いを想起する場合があるといえるものである。
そうすると,引用商標2及び引用商標3,図形部分と文字部分とからなる結合商標であって,両部分は,外観上,明確に分離して認識されるものであること,かつ,それぞれの称呼及び観念においても,密接な関連性を見いだせないものであることから,引用商標2及び引用商標3の図形部分と文字部分は,これらを分離して観察することが取引上不自然であると思わせるほど一体不可分に結合しているものとは認められないものである。
してみれば引用商標2及び引用商標3は,文字部分から生ずる称呼,観念をもって取引に資される場合もあるというのが相当であり,該部分から「テンリュー」の称呼及び「天の竜(龍)」ほどの観念が生ずるものである。
(3)本願商標と引用商標の類否について
ア 本願商標と引用商標1との類否について
本願商標と引用商標1とは,上記(1)及び(2)アのとおり,外観においては,欧文字及び漢字という文字種を異にするところがあるものの,称呼においては,本願商標と引用商標は,「テンリュー」の称呼を共通にするものであり,また,観念においては,「天の竜(龍)」ほどの意味合いを共通にするものである。
そして,商標の使用においては,商標の構成文字を同一の称呼を生じる範囲内で平仮名,片仮名及びローマ字等相互に変更したり,デザイン化したりすることが一般に行われている取引の実情があることから,称呼及び観念において記憶し,これを頼りに取引に当たることがすくなくないというのが相当である。
以上によれば,本願商標と引用商標1は,その外観,称呼及び観念によって,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合し,上記取引の実情を考慮すると,両者の外観が相違するとしても,取引上必要な役割を果たす称呼及び観念を共通にするものであるから,商標の出所について誤認混同を生じさせるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。
イ 本願商標と引用商標2及び引用商標3との類否について
本願商標と引用商標2及び引用商標3とは,その構成が上記(1)及び(2)イのとおりであり,その構成全体をもって比較するときは,外観上,相違するものの,本願商標の「TENRYU」の欧文字と,引用商標2及び引用商標3の構成中にあって出所識別標識として強く支配的な印象を与える「TENRYU」の文字部分を比較するときは,そのつづりを同じくするものである。次に,本願商標と引用商標2及び引用商標3とは,「テンリュー」の称呼を共通にするものである。そして,観念においても「天の竜(龍)」ほどの意味合いを想起する場合があるといえる点において共通するものである。
(4)指定商品の類否について
本願商標と引用商標に係る指定商品の類否について,商標法第4条第1項第11号に規定する指定商品が類似のものであるか否かは,取引の実情,すなわち,生産部門,販売部門,品質,用途,需要者の範囲が一致するかどうか,完成品と部品との関係にあるかどうか等を総合的に考慮して判断をすべきであり,結局,その類否は,2つの商品に同一又は類似の商標が使用された場合,これに接する取引者,需要者が商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるかどうかにより判断すべきものである。そこで本願商標と引用商標に係る各指定商品の類否について検討する。
ア 本願商標の指定商品と引用商標1の指定商品の類否について
本願商標の指定商品は,前記1のとおり「金属加工機械器具用刃物,製材機械器具用刃物,木工機械器具用刃物,合板機械器具用刃物,除草機械器具用刃物」であるところ,請求人が提出した平成29年5月29日付け手続補足書に係るパンフレットによれば,いずれの商品も本願指定商品の各機械器具に取り付けるための中心穴をもつ円盤状の鋸刃であり,機械器具の1部品であることが理解できるものである。
次に,引用商標1の指定商品は前記2(1)のとおりである。
そこで,本願商標の指定商品と,引用商標1の指定商品について検討すると,引用商標1の指定商品中「金属加工機械器具,製材用・木工用又は合板用の機械器具,耕うん機械器具(手持ち工具に当たるものを除く。),栽培機械器具,収穫機械器具,植物粗製繊維加工機械器具,飼料圧搾機,飼料裁断機,飼料配合機,飼料粉砕機」(以下「抵触商品」という。)については,本願商標の指定商品と,部品と完成品の関係であり,その用途及び需要者の範囲が一致するものある。
イ 本願商標の指定商品と引用商標2の指定商品の類否について
本願商標の指定商品は,上記アのとおりであるところ,その指定商品中「除草機械器具用刃物」と,引用商標2の指定商品中「飼料乾燥装置」(以下「抵触商品」という。)は,その用途及び需要者の範囲が一致するものである。
ウ 本願商標の指定商品と引用商標3の指定商品の類否について
本願商標の指定商品は,上記アのとおりであるところ,その指定商品中「金属加工機械器具用刃物」と,引用商標3の指定商品中「金属加工機械器具」(以下「抵触商品」という。)とは,部品と完成品の関係であり,その用途及び需要者の範囲が一致するものである。
エ 以上によれば,本願商標の指定商品は,引用商標1ないし3の指定商品中の各抵触商品と,同一又は類似するものである。
(5)小括
以上からすれば,本願商標と引用商標1ないし3とは,類似の商標であり,その指定商品も同一又は類似するものであるから,本願商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(6)請求人の主張について
ア 本願商標が未登録周知商標であることについて
請求人は,平成29年5月29日付け手続補足書として提出した「請求人のホームページ」,「設立100周年記念誌」(CDR含む)及び「パンフレット」を参考資料とし,本願に係る商標「TENRYU」は,請求人の社名である「天龍製鋸株式会社」英語名「Tenryu Saw Mfg.Co.,Ltd.」の「天龍」あるいは「Tenryu」を基にした商標であり,請求人は,「TENRYU」なる商標を,単独で,あるいは他の文字又は図形と組み合わせて,大正2年(1913年)12月20日の創立以来使用しており,該手続補正書の参考資料1には,大正8年に開設した秋田支店の看板,大正10年に開設した盛岡出張所の看板に「Tenryu Saw Mfg.Co.,Ltd.」が書かれていることからも,商標「TENRYU」及びその称呼である「テンリュー」は,請求人の刃物に使用される商標として全国的に知られ,需要者間で周知であって,商標法第4条第1項第10号に該当する未登録周知商標である旨主張する。
しかしながら,請求人の会社が,大正時代に創立したこと,1913年から2013年までの売上高及び利益額等については「設立100周年記念誌」より確認ができるものの,本願商標のみを,その指定商品に使用している事実を認めることはできない。また,本願商標の使用開始時期,使用期間,広告宣伝等についても証明し得る資料は提出されていない。
してみれば,本願商標は,その指定商品について需要者間に広く認識されている商標と認めることができないから,本願商標がその指定商品に使用されたとしても,これに接する需要者又は取引者が,直ちに請求人の商品であると認識するとはいえないものであるし,本願商標と引用商標が類似するものであってその指定商品も同一又は類似するものであることは,上記(3)及び(4)のとおりであるから,本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当することについての判断を覆す理由とはなり得ない。
イ 天竜川あるいは「天龍」,「天竜」,「TENNRYU」及びこれらのいずれかを含む標章は,多くの企業名に使用されていることについて
請求人は,引用商標は,広大な範囲で後願排除効があり,商標を使用する者の選択の余地を狭めています。実際の取引の場において出所の混同のおそれの殆どない場合にまでも商標法第4条1項11号を適用すべきものではなく,本願商標の指定商品は,第7類の中の刃物類に過ぎず,引用商標1とは出所の混同は生じ得ず,商標登録されるべきである旨主張する。
しかしながら,商標法第4条第1項第11号は,先願に係る他人の登録商標と同一又は類似する商標であって,その登録に係る指定商品若しくは指定役務と同一又は類似する商品若しくは役務について使用するものの登録を認めないとするものであるところ,本願商標は,引用商標1ないし3と類似するものであって,本願の指定商品は,引用商標1ないし3の指定商品と同一又は類似するものであることは,上記(3)及び(4)において認定,判断したとおりである。
そして,たとえ,請求人の主張のとおり天竜川あるいは「天龍」,「天竜」,「TENNRYU」の文字を称号に含む企業又は該文字を含む商標を使用する企業が我が国に複数あるとしても,それをもって,本願商標と引用商標1ないし3の指定商品において抵触する商品との関係において,上記(3)のとおり認定判断した出所識別機能が否定されることはないし,本願商標と引用商標1ないし3から生じる「テンリュー」の称呼により取引に資される場合も少なくないというべきである。
(7)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第11号に該当し,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
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