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Trademark Appeal Case

「カワチ」の識別力と周知性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2017−17639(T2017−17639/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は,別掲1のとおりの構成よりなり,第35類及び44類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として,平成28年9月8日に登録出願されたものである。

そして,願書記載の指定役務については,原審における平成28年10月6日差出及び同29年4月4日差出の手続補正書により,第35類及び第44類に属する別掲2のとおりの役務に補正されたものである。

2 引用商標

原査定において,本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして,本願の拒絶の理由に引用した登録商標は,以下のとおりであり,いずれの商標権も現に有効に存続している。

(1)登録第5407218号商標(以下「引用商標1」という。)は,「カワチのクレソン」の文字を横書きしてなり,平成22年10月28日登録出願,第31類「クレソン」を指定商品として,同23年4月15日に設定登録されたものである。

(2)登録第5422215号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲3のとおりの構成よりなり,平成22年9月21日登録出願,第35類に属する別掲4のとおりの役務を指定役務として,同23年7月1日に設定登録されたものである。

なお,以下,これらをまとめていうときは「引用商標」という。

3 当審の判断

(1)本願商標について

ア 本願商標は,別掲1のとおり,「カワチ」の片仮名をやや横長のゴシック体様の書体で一連に横書きしてなるものであって,これより「カワチ」の称呼が生じる。

「カワチ」という片仮名3文字からなる語自体は,一般の外来語辞典や国語辞典に収録されているものではない。

「カワチ」と称呼する語としては,(ア)「広辞苑第6版」には「旧国名。五機の一つ。今の大阪府南東部。」の旧地名を意味する「河内」が収録されていること,(イ)「大辞林第3版」には「旧国名の一。大阪府南東部に相当。五機内の一。」,「栃木県中央部,河内郡の町。」(なお,2007年に宇都宮市に編入しているため,旧町名である。)及び「茨城県南部,稲敷郡の町。」の地名・旧地名を意味する「河内」が収録されていること,(ウ)「コンサイス日本地名辞典第5版」には「長崎県北部,平戸市。平戸島北東部の地区」の地名を意味する「川内」や,「栃木県中部,宇都宮市北東部。鬼怒川西岸に位置する旧町」,「石川県南部,白山市南部。手取川支流の直海谷川流域を占める旧村」,「大阪府東部の旧国。五機内の一。府東部の旧郡,府東部,東大阪市中部」,「熊本県中部,熊本市北西部。島原湾に臨む旧町。」及び「茨城県南部,稲敷郡の町名」の地名・旧地名を意味する「河内」が収録されていること,(エ)請求人も主張するように,氏の一つである「河内」や,その他にも「川内」,「川地」などの氏も「カワチ」と称呼すること(「全国の苗字(名字)11万種掲載」のウェブサイト(http://www2s.biglobe.ne.jp/~suzakihp/index40.html))が認められる。

以上からすると,本願商標は,これら多数の意味合いを連想,想起させる余地があり,直ちに特定の観念を生じさせるものとまではいえない。

イ これに対し,請求人は,本願商標が長年の使用により,需要者間に広く認識されるに至った結果,本願商標に接する需要者は,商品等の出所が「ドラッグストアのカワチ」であると認識する旨主張しているので,この点について以下検討する。

証拠及び請求人の主張によれば,以下のとおりである。

(ア)売上高,営業地域

請求人は,栃木県小山市に本社を構え,ドラッグストア経営を事業とする会社である(甲1)。請求人は,1967年(昭和42年)4月に設立された有限会社河内薬品を前身とし,1980年(昭和55年)7月に現会社に改組された(甲4)。

2017年(平成29年)3月現在,請求人が経営するドラッグストアの店舗数は311店(内調剤併設型97店),売上高は2664億円であり(甲1),その営業店舗は,全国的に展開されているものではなく,全国47都道府県中,1都14件,すなわち東北地方の4県(岩手県,宮城県,山形,福島県),関東地方の1都6県(茨城,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県)及び中部地方の4県(新潟県,山梨県,長野県,静岡県)と限定的であって,また,請求人のウェブサイトによれば,インターネットショッピング等で全国的に通信販売を行っている様子もうかがわれない(甲8,10)。

(イ)本願商標の使用開始時期,使用範囲(広告宣伝)及び使用商標

請求人は,本願商標の使用開始時期は1992年(平成4年)1月であり,その使用範囲として,各店舗の商品チラシや関連ウェブサイトでの使用,及び店舗建物や看板での使用を主張しているが,当該チラシは,福島県福島市及び宮城県仙台市の店舗に係るものであって,当該チラシの配布の範囲及び枚数は不明であり,たとえ当該チラシと同様のチラシが,請求人が経営するドラッグストアの店舗の営業地域で配布されたものとしても,その配布の範囲は,当該店舗の営業地域にとどまり,全国的に配布されていたとは認められない。しかも,請求人に係る店舗の建物,看板,チラシ及びウェブサイトにおける使用商標は,いずれも図形や他の文字を組み合わせた標章であって「カワチ」の文字のみの使用ではない。

(ウ)上記認定事実によれば,本願商標は,請求人の商標として,需要者間に広く認識されるに至ったものとは認められないから,本願商標に接する需要者が,その商標を見て必ずしも請求人を想起,認識するとはいえず,請求人の観念が生じるとまではいえない。

ウ 以上よりすると,本願商標は,その構成に応じて,「カワチ」の称呼が生じ,特定の観念を生じないものである。

(2)引用商標について

ア 引用商標1

引用商標1は,「カワチのクレソン」の文字を同書,同大,等間隔で横書きしてなるところ,「カワチ」の文字と,「クレソン」の文字を,格助詞「の」で結合させてなるものと容易に認識されるものである。そして,その構成中,「カワチ」の文字部分は,上記(1)と同様に,多数の意味合いを連想,想起させる余地があり,直ちに特定の観念が生じるとまではいえないものであるのに対し,「クレソン」の文字部分は,引用商標1の指定商品を表示したにすぎないものである。

そうすると,引用商標1の構成中の「カワチ」の文字部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべきであるから,引用商標1は,その構成中の「カワチ」の文字部分を要部として抽出し,この部分のみを他人の商標(本願商標)と比較して商標の類否を判断することができるものである。

したがって,引用商標1は,要部である「カワチ」の文字部分から「カワチ」の称呼が生じ,特定の観念を生じないものである。

イ 引用商標2

(ア)引用商標2は,別掲3のとおり,その構成中,左側に,円輪郭内に人物様のシルエットを図案化した図形部分と,その右側に,「KAWACHI」の欧文字を顕著に表し,該欧文字の上に横幅をそろえて小さな文字で「ARTISTS’MATERIALS & FRAMES」の文字を配した文字部分よりなるものであって,当該図形部分と文字部分とは,外観上,明確に分離して認識されるものである。

(イ)引用商標2の図形部分は,円輪郭内に人物様のシルエットを図案化してなるとしても,その構成から,直ちに特定の称呼や観念が生じるものではない。

(ウ)引用商標2の「KAWACHI」の文字部分は,一般の外来語辞典や国語辞典に収録されている語ではなく,該文字部分より生じる「カワチ」を称呼とする語は,上記(1)と同様に,多数の意味合いを連想,想起させる余地があるため,直ちに特定の観念が生じるとまではいえないものである。

他方,引用商標2の文字部分中,上部に小さく表された「ARTISTS’MATERIALS & FRAMES」の文字部分は,「画材」の意味を有する英語である「ARTISTS’MATERIALS」,英語の「and(〜と〜)」を意味する記号である「&」,及び「額縁」の意味を有する英語である「FRAMES」を一連に書したものであって,全体として「画材と額縁」程の意味合いを認識させるところ,同文字部分は,その表示態様及び意味内容からして,引用商標2の指定役務中,「紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,書画及び額縁の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」との関係では,当該小売等の役務に係る取扱商品に含まれる商品を英語表記したものと認識されるにすぎないから,出所識別標識としての称呼及び観念が生じないものといえる。

そうすると,当該指定役務との関係においては,引用商標2の文字部分中,顕著に表された「KAWACHI」の文字部分が,需要者,取引者をして,出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであって,これ以外の文字部分からは出所識別標識としての称呼及び観念が生じないから,これを要部とみることができる。

(エ)以上よりすると,引用商標2の図形部分と文字部分とは,両者を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではなく,また,引用商標2の指定役務中,「紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,書画及び額縁の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」との関係においては,引用商標2の文字部分のうち「KAWACHI」部分を要部とみるのが相当であるから,これを本願商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるものである。

(オ)したがって,引用商標2は,その要部である「KAWACHI」の文字部分から「カワチ」の称呼が生じ,特定の観念を生じないものである。

(3)本願商標と引用商標の類否について

ア 本願商標と引用商標1について

本願商標「カワチ」の片仮名と引用商標1の要部である「カワチ」の片仮名を対比するに,いずれも直ちに特定の観念は生じないため,観念において比較することはできないとしても,外観については,いずれも片仮名で同じつづりからなるものであるから酷似するものであり,「カワチ」の称呼を共通にするものである。

そうすると,本願商標と引用商標1の上記要部とは,互いに類似する商標というべきであるから,本願商標と引用商標1とは類似する商標であると認められる。

イ 本願商標と引用商標2について

本願商標「カワチ」の片仮名と引用商標2の要部である「KAWACHI」の文字とを対比するに,いずれも直ちに特定の観念は生じないため,観念においては比較できないとしても,「カワチ」の称呼を共通にするものであり,また,両者の外観は,文字種(片仮名と欧文字)に相違があるものの,「カワチ」の片仮名を欧文字で表記する場合には「KAWACHI」と記載されることも多く,商取引の実際においては,片仮名で表した商標を欧文字で表記するなど,相互に置き換えた表記も一般的に行われていることや,本願商標が比較的平易な書体からなるものであって,本願商標の外観は,取引者,需要者に対し,特段印象付けられるものではないことからすると,両者の外観における差異は,取引者,需要者に対し,特段印象付けられるものではない。

以上の点を総合的に勘案すれば,本願商標と引用商標2の要部とを時と所を異にして接するときは,その出所について誤認混同を生じるおそれがあるというのが相当である。

そうすると,本願商標と引用商標2の要部とは,互いに類似する商標というべきであるから,本願商標と引用商標2とは類似する商標であると認められる。

(4)本願商標の指定役務と引用商標の指定商品又は指定役務との類否

ア 本願商標の指定役務と引用商標1の指定商品との類否

引用商標1の指定商品である第31類「クレソン」は,本願商標の指定役務中の第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に係る取扱商品である「飲食料品,野菜」に含まれるものである。

そうすると,本願商標の上記指定役務の取扱商品と引用商標1の指定商品とは共通又は類似する商品を有するため,商品の販売及び役務の提供が同一業者によって行われるのが通常で,その商品の販売場所と役務の提供場所,需要者の範囲も一致することから,それぞれの商品と役務の間に出所の混同を生じるおそれがあるものであり,相互に類似するものといえる。

イ 本願商標の指定役務と引用商標2の指定役務との類否

本願商標の指定役務及び引用商標2の指定役務とは,少なくとも「紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の同一の役務を有する。

(5)小括

以上によれば,本願商標は,引用商標と類似する商標であり,かつ,本願商標の指定役務は,引用商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似するものを含むものである。

したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。

(6)請求人の主張について

ア 請求人は,「カワチ」ないし「KAWACHI」の文字は,地名の「河内」又は氏の「河内」を想起させ,多数の者に用いられやすく,これらの文字を普通に用いられる方法で表示しても高い識別力を発揮することは困難といわざるを得ない旨主張する。

しかしながら,「カワチ」及び「KAWACHI」の文字は,上記(1)のとおり,多数の意味合いを連想,想起させる余地があるため,直ちに特定の観念が生じるとまではいえないものである。

よって,「カワチ」及び「KAWACHI」の文字は,自他商品・役務の識別力を有しないものとまではいえない。

イ 請求人は,本願商標はその書体に特徴が認められる上,請求人の長年の使用より,これに接する需要者は,商品等の出所が「ドラッグストアのカワチ」であると認識する旨主張する。

しかしながら,請求人は,本願商標の書体の特徴を具体的に述べていないところ,本願商標は,上記(1)アのとおり,横長のゴシック体様の書体が用いられていると認識されるにすぎないものと認められる。また,上記(1)イのとおり,本願商標は,請求人の商標として,需要者の間に広く認識されるに至ったものとは認められないから,請求人の観念が生じるとまではいえない。

ウ 請求人は,引用商標1については,「クレソン」についてのみ使用される商標であるのに対し,本願商標は幅広い生活用品を取り揃えた店舗の小売等役務について使用される商標であり,本願商標が使用される小売等役務と引用商標1が使用される商品とでは,その需要者層,役務・商品の提供場所,関連商品の流通経路,及び役務・商品提供者の業態が異なるから,それぞれの役務・商品にそれぞれの商標を付して使用したとしても,取引者,需要者の間において,出所混同の生じる余地はない旨,及び,引用商標2については,本願商標が実際に使用される小売等役務と引用商標2が実際に使用される小売等役務とでは,一般消費者とアートに興味を持つ人とで需要者層を異にし,役務の提供場所及び業種も異なることからすれば,「カワチ」の称呼が共通し,役務に関連する物品が一部において類似するところがあるとしても,サービスの出所につき誤認混同が生じるおそれはない旨主張している。

しかしながら,商標の類否判断に当たり考慮すべき取引の実情は,当該商標が現に,当該指定商品に使用されている特殊的,限定的な実情に限定して理解されるべきではなく,当該指定商品についてのより一般的,恒常的な実情を指すものである(昭和47年(行ツ)第33号 昭和49年4月25日最高裁判所第一小法廷判決)と解されるところ,請求人の主張に係る取引の実情は,商標の類否判断に考慮すべき一般的,恒常的な実情ということはできないから,本願商標の上記判断が左右されるものではない。

エ よって,請求人の上記主張はいずれも採用できない。

(7)まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するから,登録することはできない。

よって,結論のとおり審決する。

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