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Trademark Appeal Case

位置商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2017−17410(T2017−17410/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,商標法第5条第4項に基づく「商標の詳細な説明」を「商標登録を受けようとする商標(以下「商標」という。)は、標章を付する位置が特定された位置商標であり、略半球状のキャップオープナー又は栓抜の正面下部に形成された円筒状窪み形状からなる。なお、キャップオープナー又は栓抜の破線は、商品の形状及び模様の一例を示したもので、商標を構成する要素ではない。」と記載するものであり,第21類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として,平成27年9月14日に位置商標として登録出願されたものである。

その後,その指定商品については,原審における平成29年1月23日付けの手続補正書により,第21類「キャップオープナー」と補正された。

2 原査定の拒絶の理由(要旨)

本願商標は,別掲1のとおりの構成からなる位置商標であり,「略半球状のキャップオープナー又は栓抜の正面下部に形成された円筒状窪み形状からなる」もので,その円筒状窪み形状の内側表面には,ギザギザの溝を間隔を空けて4か所設けるとともに,窪みの奥行き方向の中央に一周突起部分を設けたものである。

ところで,本願の指定商品である「キャップオープナー」は,一般的にペットボトルなどのキャップを容易に開けられるよう様々な工夫が施されており,正面下部に円筒状窪み形状を有するキャップオープナーや,キャップと噛み合うギザギザの溝が間隔を空けて設けられているキャップオープナーが製造,販売されている実情がある。

以上の実情を踏まえると,本願商標の「円筒状窪み形状」や「ギザギザの溝」の位置及び外観(構成)は,キャップオープナーの機能の発揮を目的に選択されたものといえるもので,取引者,需要者においては,キャップオープナーの形状として予測可能な範囲の特徴であり,その形状(各特徴)により,他社の商品との間で出所を識別することができない。

そうすると,本願商標は,その指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者において,商品の機能の発揮のために採用し得るキャップオープナーの一部の形状を表したものと理解,認識されるにとどまるもので,商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。

したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。

3 当審の判断

(1)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性

ア 本願商標は,上記1のとおり,実線により表された「円筒状窪み形状」を付する位置が商品「略半球状のキャップオープナー又は栓抜」の正面下部に特定(形成)された位置商標であるところ,その円筒状の穴の内側には,(ア)連続した溝状突起を,(イ)奥行き方向の中央付近を境に手前側と奥側で径を変えて(手前側が奥側よりわずかに大径),間隔を空けて4か所に配置し,(ウ)そのような円筒状の穴を,「略半球状のキャップオープナー又は栓抜」の正面下部の位置に,内側斜め方向に傾けた角度で設けたものである。

イ 本願商標の指定商品「キャップオープナー」は,容器(瓶やペットボトルなど)の蓋(キャップ)を開ける道具であり,市場で流通する同種商品の多くは,内側に突起又は溝状突起のある,円状又は円筒状の穴をキャップ差込口として備えている(別掲2及び3)。

そして,「キャップオープナー」のキャップ差込口の内側の突起は,対象物(ペットボトルのキャップ)を固定して,回し開けるという機能を果たすために設けられていること明らかで,現に,そのような突起を有する商品紹介において,「内側の凹凸加工・・・でキャップが滑りません。」(別掲2(1)),「レンチの溝・・・にしっかり差し込んで」(別掲2(2))のように言及する事例もある。

また,キャップオープナーのキャップ差込口の内側形状は,その機能(キャップの差込やすさ,回しやすさ,引っかかりやすさ及び口径の異なる複数サイズへの対応等)に応じて,溝や突起の数,配置,大きさなどにバリエーションがあり,具体的には,キャップ差込口の内側に,突起又は溝状突起を,それぞれ間隔を空けて,数か所に配置する事例(別掲3(1)〜(4),),溝状突起を奥側と手前側とで突起の高さを変えて交互に配置する事例(別掲3(1)),2サイズのキャップに対応するために奥側と手前側で異なる径とする2段のキャップ差込口を有する事例(別掲3(5))などが見られる。

さらに,キャップオープナーは,壁に固定した使用方法を採用する場合があり,その際に,キャップ差込口が,正面下部から,斜め上方に差し込むことが可能となるような位置に設けられている商品がある(別掲3(3))。このように下部から上方に差し込むような位置にキャップ差込口を設けるのは,利用者が当該キャップオープナーを用いてキャップを外した際に飲料がこぼれないようにするためである(甲2)。

ウ 以上を踏まえると,本願商標の構成中「円筒状窪み形状」は,その指定商品との関係においては,キャップ差込口として機能するものと容易に理解できるもので,その内側における,上記ア(ア)の形状の特徴(連続した溝状突起)も,キャップを固定して,回し開けるのを容易にするという,その商品の機能を果たす目的で採用された形状であること明らかである(請求人らも自認している。)。

また,本願商標のキャップ差込口における,上記ア(イ)の形状の特徴(内側の連続した溝状突起が,奥側と手前側で異径,相互に間隔を空けている。)も,上記イのとおり,キャップオープナーのキャップ差込口の内側に溝状突起を,奥側と手前側とで突起の高さを変えて交互に配置する事例,奥側と手前側で異径とする事例,間隔を空けて配置する事例があることを踏まえると,その指定商品「キャップオープナー」のキャップ差込口の形状及び特徴として,同業者によって取引上普通に採択されている程度のものであり,単に商品の機能又は美感の理由による形状の選択と予測し得る範囲にすぎない。

さらに,本願商標の上記ア(ウ)の位置の特徴(キャップ差込口が,正面下部の位置に,内側斜め方向に向けるようにあること)も,本願商標を壁に固定して使用する場合には,開栓したボトルや瓶などの中身がこぼれないようにするという機能面からの合理的な要請があることは明らかで,キャップオープナーの機能を果たす目的で採用されたにすぎないと,容易に理解できるものである。

そうすると,本願商標は,その「円筒状窪み形状」の形状及び位置はいずれも,その指定商品「キャップオープナー」の機能を果たす目的で採用された形状,又はその機能や美感上の理由による形状の選択と予測し得る程度の形状との印象を与えるにすぎず,その他,本願商標の構成中に自他商品識別標識としての機能を発揮するような特徴は見いだせないから,本願商標に接する需要者及び取引者は,商品の形状(位置)を普通に用いられる方法で表してなるものと認識,理解するにすぎないというべきである。

エ 請求人らは,本願商標の円筒状窪みは,手前側が大径で,奥側が小径となっており,この2重のギザギザ模様は,原審提示の事例には採択されておらず,キャップオープナーの形状として予測不可能なものであり,自他商品識別力を有する旨を主張する。

しかしながら,上記イのとおり,キャップオープナーのキャップ差込口の内側形状は,その機能に応じて,溝や突起の数,配置,大きさなどにバリエーションがあるもので,中にはその内側の手前側と奥側で溝状突起の高さを変えて交互に配置する事例や,2サイズのキャップに対応するために手前側と奥側で異なる径とする2段のキャップ差込口を有する事例があることを踏まえると,本願商標における請求人ら主張のような形状及び特徴も,同業者によって取引上普通に採択されている程度のものであり,単に商品の機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものというべきで,その形状自体が自他商品識別標識としての特徴を備えるものとはいえない。

オ 以上のとおり,本願商標は,商品の形状(位置)を普通に用いられる方法で表してなる標章のみからなる商標であるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。

(2)本願商標の商標法第3条第2項該当性

ア 請求人らによる本願商標の使用について

証拠及び請求人らの主張によれば,以下の事実が認められる。

(ア)請求人らは,2010年(平成22年)に,「SMILE OPENER」(スマイルオープナー)の名称のペットボトルオープナー(以下「請求人商品」という。)を発売したところ,当該商品は,半球状で,キャップを固定するための口が切削加工され,その口はキャップを外した際に飲料がこぼれないように45度(又は30度)の角度を持たせたもので,内部には,縦方向に数ミリメートル間隔で溝が彫られたものである(甲1〜4)。

(イ)請求人商品のキャップ差込口の内側は,提出された証拠からは子細が確認できないが,2015年(平成27年)1月時点において,連続した溝状突起を,奥側と手前側で2列に配置し,その両側には溝状突起のない部分もあることは確認できる(甲11)。

(ウ)請求人商品は,2010年(平成22年)から2016年(平成28年)にかけて,新聞記事,テレビ番組,インターネット記事等において紹介され(甲1〜6,9,11,12),2013年(平成25年)にはユニバーサルデザインの表彰を受けた(甲7〜9)。

(エ)請求人商品は,2013年の時点で,公共施設や大手飲料メーカーを中心に,約1万3500個を売り上げており(甲9),発売以降の約8年(2010年1月〜2017年10月)では,63,089個販売された(請求人の主張)。

イ 上記の認定事実よりすれば,本願商標と概ね共通する特徴を備える請求人商品は,約8年前から,公共施設や大手飲料メーカーを中心に販売されており,新聞記事等でも紹介,そのデザインに関して表彰を受けているとしても,請求人商品の売上個数は年間にして8千個にも至らないもので,この程度の売上規模をもって,請求人商品が日本全国における需要者の間において広く知られているに至っているとはいえない。

また,請求人商品を紹介する新聞記事等においても,本願商標の形状や位置の特徴,つまり,本願商標のキャップ差込口の内側の溝状突起の形状や位置の特徴について積極的に言及するのではなく,キャップ差込口の斜めの角度(位置)などの機能的な側面(飲料がこぼれないようにする)が紹介されているにすぎない。そのため,これら記事情報は,本願商標の形状及び位置に関する特徴について,需要者が,請求人らとの具体的関係を認識していることを直接示すものではなく,また,需要者に対して,本願商標を請求人らの自他識別標識であることを印象づけるように寄与するとはものとは直ちに理解し難い。

以上のとおり,本願商標は,その形状及び位置をもって,我が国の需要者の間において,請求人ら又は請求人商品との具体的関係を連想,想起させるに至っているものとはいえない。

したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備しない。

(3)まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,かつ,同条第2項の要件を具備しないから,これを登録することはできない。

よって,結論のとおり審決する。

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