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Trademark Appeal Case

著名家紋の商標登録と公序良俗

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−5163(T2018−5163/J1)
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

原査定を取り消す。
本願商標は,登録すべきものとする。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は,別掲のとおりの構成からなり,第45類「特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権・その他の知的財産権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務,訴訟事件その他に関する法律事務,特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権・その他の知的財産権に関する契約の代理又は媒介,特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権・その他の知的財産権に関する助言及びコンサルティング,特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権・その他の知的財産権の利用に関する情報の提供」を指定役務として平成28年11月10日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は,「本願商標は,徳川家康四天王の一人であり,安土桃山・江戸初期の武将として知られる本多忠勝が使用した家紋である『丸に立ち葵』の図形を表してなるものであり,『丸に立ち葵』の図形は,例えば,本多忠勝が使用した家紋として該図形が付されたTシャツ,ステッカー及び飲食料品等の商品が生産・販売されている事実が認められるほか,千葉県大多喜町などの本多忠勝のゆかりの地における地域的なイベント等に用いられている事実が確認できる。そうすると,本願商標を一私人である出願人が自己の商標として登録することは,観光振興や地域興しなどの施策の遂行を阻害するおそれがあることから,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するものと認められる。したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断

1 商標法第4条第1項第7号の趣旨について

商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,(1)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,(3)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである(知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決言渡)。

ところで,周知・著名な家紋は,その家やその家に関する人物の郷土やゆかりの地において,例えば,地方公共団体等の公的な機関が,地元のシンボルとして地域振興や観光振興のために使用するような実情があることから,当該地域においては強い顧客吸引力を発揮する場合があると考えられる。

そうすると,このような場合には,当該家紋と無関係な第三者が登録を受けることによって,その地域住民全体の不快感や反発を招き,地域振興等の施策の遂行を阻害することとなる。

また,家紋の中には,従前から他家での使用を厳しく禁じ,それが現代においても特定の家やゆかりの神社等を表す紋として使用されているものがあり,そのことが広く一般に認識されているような場合がある。

そうすると,このような場合にも当該家紋と無関係な第三者が登録を受けることは,家紋が表す特定の家等の著名性や顧客吸引力に便乗することとなる。

してみれば,特に,周知・著名な家紋を使用した公益的な施策等に便乗し,その遂行を阻害し,公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら,利益の独占を図る意図をもって出願をした場合や特定の家を表す紋として著名な家紋を第三者が出願するなど,登録出願の経緯や商標を採択した理由に,著しく社会的妥当性を欠く場合においては,公正な取引秩序を乱し社会公共の利益に反することとなるものであるから,前記のような場合には商標法第4条第1項第7号に該当するものと判断されるものである。

2 商標法第4条第1項第7号該当性について

(1)事実認定

ア 当該家紋の周知・著名性及び当該家紋に対する国民又は地域住民の認識

本願商標は,上記第1のとおり「丸に立葵」の家紋からなるところ,その構成中の立葵は,「紋所の名。茎のある葵の葉3個を杉形に立てたもの」(株式会社岩波書店「広辞苑第六版」)であり,それを円で囲ったものである。

また,当該家紋は,徳川家康の近くに仕え,江戸幕府の創設に功のあった徳川四天王の1人である「本多忠勝」が使用していた家紋であり,「本多立ち葵」とも呼ばれているものである(株式会社西東社「決定版 由来・期限がよくわかる!家紋と名字」)。

これよりは,本願商標は家紋の一つである「丸に立葵」を表しものであって,当該家紋は徳川家康に仕えた武将「本多忠勝」が使用していたことで知られているものの,特定の家やゆかりの神社等を表す紋として広く一般に認識されているような事実は見出せない。

イ 当該家紋の利用状況

原審説示の証拠及び当審における職権調査によれば,「丸に立葵」の家紋は,徳川四天王の一人として著名な武将である「本多忠勝」が使用していた事実が認められ,2016年頃に「本多忠勝」のゆかりのある地方公共団体等において,その人物の名声により,NHK大河ドラマの誘致が行われ,地域振興や観光振興に関するイベントが行われ,それらイベントにおいて「本多忠勝」の名称とともに当該家紋が利用されていることが認められる。

ウ 当該家紋の利用状況と指定商品又は指定役務との関係

本願商標に係る指定役務は,前記第1のとおりであるところ,前記イのとおり,「本多忠勝」とゆかりのある地方自治体が地域振興や観光振興等において「本多忠勝」の名称とともに,本願商標に係るの家紋が利用されていることが認められるものの,本願商標の指定役務は,地域振興や観光振興に関するイベント等において利用される蓋然性の高い,地方の特産物,土産物等の商品又は役務とは,密接な関係性を有するものとはいえない。

エ 出願の経緯・目的・理由及び当該家紋と請求人(出願人)との関係に係る事情

本願商標の出願の経緯,目的及び理由について具体的事情は確認できないが,請求人は,請求人の家紋でもある本願商標を,請求人が商標登録出願することは,剽窃的行為に該当するものではなく,公序良俗違反に該当するものではない旨を主張している。

(2)判断

上記(1)のとおり,「丸に立葵」に家紋は,徳川四天王の1人として著名な武将である「本多忠勝」が使用していた家紋であることが認められ,「本多忠勝」とゆかりのある地方自治体が地域振興や観光振興等において「本多忠勝」の名称とともに,「丸に立葵」の家紋が利用されていることが認められる。

しかしながら,本願商標の指定役務は,地域振興や観光振興に関するイベント等において利用される蓋然性の高い地方の特産物,土産物等の商品又は役務と密接な関係性を有するものとはいえない上,本願指定役務を取り扱う分野においては,請求人以外に,「丸に立葵」の家紋を利用している事実を見いだすことはできなかった。

そうとすれば,本願商標が,歴史上著名な武将である「本多忠勝」が使用していた家紋として知られているとしても,その指定役務について使用した場合に,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するとはいえない。

また,本願商標は,その構成自体がきょう激,卑わい,差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような図形からなるものではなく,その出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないようなものともいえない。

したがって,本願商標は,その指定役務について独占排他的に使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念にも反するものというべきものではない。

2 むすび

以上のとおり,本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は,妥当ではなく,取消しを免れない。

その他,本願について拒絶の理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

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