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Trademark Appeal Case

著名商標と結合商標の類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35323号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第2674899号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1.本件商標

本件登録第2674899号商標(以下、「本件商標」という。)は、「カルーアの誘惑」の文字を横書きしてなり、第31類「調味料、香辛料、食用油脂、乳製品」を指定商品として、平成2年7月6日に登録出願、同6年6月29日に設定登録されたものである。

2.請求の趣旨及び請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第66号証(枝番を含む。)を提出した。

(1)商標法第4条第1項第15号に関する主張

請求人は、「カナディアンクラブ」「バランタイン」等の著名なウイスキーをはじめ、各種ワイン及びリキュール等の洋酒を世界的に販売している会社である。その傘下の洋酒関係会社あるいは請求人の関連会社は、世界中に多数存在しており、世界的に著名な「KAHLUA」(以下、別掲の標章を「KAHLUA」という。)の商標を付したコーヒーリキュールもその主要な取扱い商品のひとつである。

「力ルーア」は、メキシコ産のアラビカ種のコーヒー豆を原材料として製造されるコーヒーリキュールであり、請求人が所有する登録第737034号商標に示すラベルを付して世界各国で販売されている。同ラベルは、1937年5月20日にアメリカにおいて最初に使用され、以後50年以上もの間、世界各国で一貫して上記商品及び関連商品に使用されている。また、「KAHLUA(カルーア)」関連商標は、請求人又はその関連会社の名義で、日本を含む世界各国に登録、出願されていて、コーヒーリキュールの代名詞として世界的に極めて広く知られている。

日本においては、昭和45年にサントリー株式会社が本格的な輸入販売を初めてから飛躍的に販売量が増加し、特に、これをベースにしたカクテル「力ルーアミルク」は、コーヒー牛乳のような口当たりの良さで女性や若い世代を中心に人気を博した。とりわけ女性の間では「誰でも知っているカクテル」の一つとされており、雑誌のアンケートでも最も好きなカクテルの第1位に挙げられている。また、女性誌等がカクテルの特集を組む場合には、必ず「力ルーアミルク」についての記載がなされ、昭和59年時点で、既に「力ルーア」を知っていることは当然のこととして記事に書かれている。

さらに、このことを裏付ける事実として甲第23号証を提出する。これは、昭和63年から平成3年の「輸入洋酒銘柄別輸入通関ランキング」であり、リキュール部門では、「KAHLUA(カルーア)」が常に輸入高の第1位を占めている。

「力ルーア」のこのような圧倒的な人気に鑑み、輸入元であるサントリーアライドライオンズ株式会社及び販売総代理店であるサントリー株式会社は、長年にわたって、若い女性向けの雑誌等に「力ルーア」の広告を多数掲載し続けている。また、若い世代に向けたイベントやコンサート、スポーツ大会などをいわゆる「冠スポンサー」として企画・開催し、その冠に「力ルーア」の名前を掲げて、より一層、同商品の宣伝販売に力を注いでいる。

以上のことから、「力ルーア」がコーヒーリキュールの商標として、本件商標の出願日である平成2年7月6日以前から、我が国において広く知られていたことは明らかである。

一方、本件商標の構成は前記のとおりであり、片仮名文字で表された「カルーア」と後半部分の「の誘惑」は、外観上はもとより称呼及び観念上も「力ルーア」の部分が明らかに分離して認識されるよう構成されている。しかして、「カルーア」という語は、請求人の「コーヒーリキュール」を表す以外に特定の意味を有さない造語である。

また、コーヒーリキュールは、カクテルのみならず、ケーキやコーヒーゼリーを初めとする各種洋菓子及びパンの調味料や原材料、トッピングとして頻繁に利用されているから、本願の指定商品である「調味料、乳製品」等と密接な関連を有し、販売経路も共通性を有する。

サントリー株式会社においても、「カルーア」をカクテルだけでなく幅広い料理の素材として利用してもらおうと、特に女性に向けて「カルーア」を利用したケーキやお菓子の料理法を紹介したパンフレット等を作成し、その普及に力を注いでいる。

ここで特記すべきは、平成元年から平成3年にかけて、日本全国で一大ブームを巻き起こしたイタリアのケーキ「ティラミス」の原材料に調味料として「カルーア」コーヒーリキュールが欠かせないという事実である。「ティラミス」は、女性雑誌「Hanako」(株式会社マガジンハウス発行、平成2年4月号)が、その特集を行ったことから全国的なブームが起こった。前述の「輸入洋酒銘柄別輸入通関ランキング」において、昭和63年から平成3年のりキュール部門で「KAHLUA(カルーア)」が輸入高の第1位を占めていたことの背景には、「カルーア」が「ティラミス」の原材料に調味料として必要だったという側面もあった。しかして、本件商標は、まさしくその渦中の平成2年7月6日に出願されている。

以上の事実を勘案すれば、本件商標は、明らかに被請求人が請求人の著名な商標「カルーア」を利用して選択した商標と疑わざるを得ない。さらに、本件の指定商品には「乳製品」が含まれているという点にも注目しなければならない。

請求人は、「力ルーア」及び「カルーアミルク」の人気に応えて、家庭でも気軽に「力ルーアミルク」が楽しめるようにと、昭和60年に従来のボトルの半分にあたるハーフサイズを、平成3年には、さらに小さいベビーサイズを発売し、缶飲料「力ルーアミルク」を平成5年秋に発売している。これらの商品は家庭用に作られたものであり、主として酒店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等で販売されるため、本件の指定商品とは、流通・販売経路とも酷似する。

したがって、仮に、請求人の著名商標「カルーア」が付された「コーヒー牛乳味のカクテル」と、本件商標の付された「コーヒー牛乳」とが同一店舗で並んで販売されるようなことになれば、本件商標が付された商品は、あたかも請求人又はその関連会社の製造販売する商品であるかの如く、その出所につき誤認・混同を生じさせることは必至である。

以上述べてきたとおり、本件商標がその指定商品について使用されれば、その出所につき誤認・混同を生じさせることは明らかであり、少なくとも、本件商標の付された商品は、請求人のコーヒーリキュール「カルーア」と関連して認識されるおそれが高いというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第16号に関する主張

上述したように、「力ルーア」という語は、請求人の「コーヒーリキュール」を表す以外に特定の意味を有さず、とくに女性や若い世代に人気のある著名なコーヒーリキュールの名前である。したがって、仮に、本件商標が付された調味料や乳製品等が市場に出回れば、その商品に接する者は、その調味料等に請求人の「コーヒーリキュール」すなわち「酒」が入っていると商品の品質について誤認を生じるおそれがあることは明らかである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号にも該当する。

(3)商標法第4条第1項第7号、同第19号に関する主張

「KAHLUA(力ルーア)」は、コーヒーリキュールについての商標として著名であるがゆえに、一般的な辞書や各種事典にも多数掲載されている。

このように世界的に著名な商標を含んだ本件商標の使用・登録を容認することは、請求人の著名な商標が有する出所表示機能を稀釈化するばかりでなく、請求人の著名商標に化体した業務上の信用すなわち莫大なグッドウィルに“ただ乗り”することを認めることとなり、国際信義上穏当でない。また、被請求人は、そのことにより不正の利益を得ることになる。

さらに、本件商標が請求人の商標「KAHLUA(カルーア)」と無関係に選択されたとは考えられず、その顧客吸引力を利用しようとするものであることは容易に看取されるというべきである。したがって、請求人がその製造・販売について何らの関連性もしくは責任を持たない商品について本件商標が使用されれば、商標「KAHLUA(カルーア)」に対して有する請求人の業務上の信用が損なわれ、他方、同商標に寄せる需要者・取引者の信頼を裏切る結果を招来することは明らかである。

すなわち、被請求人による本件商標の登録は、国際的な信義及び商業倫理に反するものであり、また、本件商標の使用は、客観的に不正の利益を得、若しくは請求人に損害を加える目的を有するものというべきである。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号にも該当する。

(4)以上詳述したとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第15号、同第16号及び同第19号の規定に該当し、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。

3.被請求人は、何等答弁していない。

4.当審の判断

(1)「KAHLUA」及び「カルーア」標章の著名性について

本件審判請求の理由及び甲第12号証乃至同第66号証を総合してみるに、以下の事実が認められる。

a)請求人は、ウイスキー、ワイン、リキュール等の洋酒を販売する企業であって、同人の主要な取扱商品となっている「KAHLUA」のコーヒーリキュールも、古くから世界各国で販売されている。

そして、我が国では、昭和45年から、「サントリー株式会社」により、上記コーヒーリキュールが輸入販売されていて、「輸入洋酒銘柄別輸入通関ランキング」(酒類飲料日報発行)によれば、昭和63年、平成1年及び同2年のリキュール部門において、「カルーア」のコーヒーリキュールが輸入高第1位となっている。

b)また、雑誌等の広告宣伝においては、昭和59年から平成2年にかけて発行された雑誌「an.an」(株式会社マガジンハウス発行)及びその他「プレイボーイ 」「with」「MORE」「non−no」等の雑誌に、「KAHLUA」コーヒーリキュールのボトルを中心にして、「KAHLUA」と「カルーア」の文字を大きく顕著に表示した広告が掲載されているほか、雑誌「CLASSY」(光文社、昭和60年8月1日発行)には、「ミルクとの相性の良さが特徴」、「BRUTUS」(株式会社マガジンハウス、昭和63年11月1日発行)には、「カクテルでお馴染みのカルーア・ミルクはこのリキュールからきている」、「毎日グラフ」(毎日新聞社、平成1年10月15日発行)には、「女性に人気のカクテルは、カルーアミルクが第1位」として、カルーア・コーヒーリキュールの紹介記事が掲載されている。

c)さらに、「英和商品名辞典」(株式会社研究社、平成2年発行)の「Kahlua カルーア」の項には、「ストレート・カクテルの基酒・コーヒーに添加・ミルク割りなどで飲む」、「新版 世界の酒事典」(株式会社柴田書店、昭和57年5月20日発行)の「カルーア(Kahlua)」の項には、「コーヒーリキュールの商品名、メキシコ市でつくられているコーヒーリキュール」の記載が認められ、「世界の名酒事典」(講談社、昭和53年1月5日発行)には、既に、カルーア・コーヒー・リキュールが載っていて、昭和58年12月16日発行の同事典においては、「メキシコ高原産コーヒーの風味に、バニラ香を絶妙に配した人気の高いブランド」として、カルーア・コーヒー・リキュールが紹介されている。

以上の事実からみれば、「KAHLUA」及び「カルーア」標章は、遅くとも本件商標の登録出願時の平成2年には、コーヒーリキュールを表示する商標として、取引者・需要者の間に広く認識されていたものということができる。そして、該標章の著名性は、現在も継続していると認められるものである。

(2)出所の混同について

本件商標は、前記1.のとおり、「カルーアの誘惑」の文字を横書きしたものであるところ、その構成中前半部の「カルーア」の文字は、何ら特定の意味合いを理解させない造語よりなるものであって、後半部に「の誘惑」の文字を結合することにより、1つの熟語を形成するものということもできない。さらに、本件商標は、その前半の「カルーア」と後半の「の誘惑」の文字との書体が相違するものであって、他に、これらを常に一体のものとしてのみ把握しなければならないとする格別の事情は見当たらない。

そうとすると、前記(1)のとおり、「KAHLUA」及び「カルーア」標章が、本件商標の登録出願時には、既に、「コーヒーリキュール」を表示するものとして、取引者・需要者の間において広く認識されていたものであること、「コーヒーリキュール」と本件商標の指定商品とは、調味料としての用途を同じくする場合も少なくないなど比較的密接な関連を有する商品であること等を併せ考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、その前半部の「カルーア」の文字のみを捉え、著名な「KAHLUA」及び「カルーア」標章を連想、想起し、その商品が請求人又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあったものと判断するのが相当である。

したがって、本件商標は、請求人のその余の主張について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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