結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第35448号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第3370983号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示した構成よりなり、第25類「セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽」を指定商品として、平成7年3月17日登録出願、同10年12月18日に設定登録されたものである。
1.登録第1960343号商標
登録第1960343号商標(以下「引用商標A」という。)は、別掲(2)に示した構成よりなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和57年12月10日登録出願、同62年6月16日に設定登録されたものである。
2.登録第2715031号商標
登録第2715031号商標(以下「引用商標B」という。)は、別掲(3)に示した構成よりなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成4年2月5日登録出願、同8年7月31日に設定登録されたものである。
請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
1.商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標は、アルファベット「b」の右肩に点「・」を付してなるが、これは引用商標A中の「b.」の部分と外観上極めて類似する。本件商標と引用商標A中の「b.」の部分とは、いずれもアルファベット「b」に点「・」を付した構成となっており、その差異はわずかに点「・」が上にあるか下にあるかというだけにすぎず、甲第2号証に示すように、本件商標と引用商標A中の「b.」の部分を同程度の大きさにして比較してみると、より一層その類似性が明らかとなる。すなわち、本件商標は、引用商標Aの「b.」の部分を抜き出したような態様となっているのである。
引用商標Aは「agnes」と「b.」の部分がやや離れた構成をとっており、「b.」の部分が単独で認識される場合もあるため、この部分と外観上極めて類似する本件商標は引用商標Aの類似商標といえる。
(2)本件商標は、その構成より、「アルファベットbに点(・)」という観念を生ずると認められるが、これは引用商標Bより生ずる観念と同一のものである。
引用商標Bは、別掲(4)に示す商標(甲第4号証)のうち「b.」の部分を単独で表したものであるが、その構成は筆記体のアルファベット「b」に点「・」が付されたものである。すなわち、本件商標も引用商標Bも、その構成がアルファベット「b」と点「・」の組み合わせという点で共通しており、これより両者から同一の「アルファベットbに点(・)」という観念を生じるのである。両者は文字の態様がブロック体と筆記体という違いがあり、点の位置も上と下という違いがあるが、結局はアルファベット「b」と点「・」の組み合わせという以外には観念は生じない。
したがって、本件商標及び引用商標Bは、互いに「アルファベットbに点(・)」という同一の観念を生じるため、両者は類似商標といえるのである。
そして、このアルファベットに点「・」という組合せはシンプルであるがゆえに、その特徴も殊更尊重されるべきである。なぜならば、ひとたび同じアルファベットの異なる位置に点「・」を付したもの同士が非類似とされれば、権利者は自らの商標権を守るため、点「・」の位置が上下左右などに異なる全ての商標について商標登録をしなければならず、権利者に過大な負担を強いることとなり、権利者の保護に欠ける結果となるから、こうした構成上の特徴を一にする本件商標及び引用商標Bは、やはり類似商標であると判断されるべきである。
2.商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標は請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものであり、これが付された商品はあたかも請求人、もしくはこれと経済的・組織的に何らかのつながりがある者に係る商品であるかのような誤解を招くものである。請求人の服飾ブランド「agnes b./アニエスベー」のわが国における著名性は、すでに特許庁においても明らかな事実であると思われるが、一応これを補強するものとして以下の証拠を提出する。
(2)甲第5号証から甲第7号証はブランド名でもあり、デザイナー自身の名前でもある「agnes b./アニエスベー」に関する新聞記事である。記事では、コレクションが東京で発表されたことや本国のフランスを凌ぐ数のブティックが日本に存在すること(甲第5号証)、世界中で人気のあるファッションデザイナーのアニエスベーが芸術支援活動をおこなっていること(甲第6号証)、映画好きのアニエスbが自身の選んだ映画を日本で上映することや名前の「b.」は前夫の頭文字であること(甲第7号証)などが記され、人気デザイナーであるアニエスベーの活動が注目されていることが分かる。
(3)甲第8号証から甲第10号証は雑誌で「agnes b./アニエスベー」の洋服等が紹介されている記事であり、甲第11号証は通信販売のカタログ、甲第12号証はブランド品に関する本である。
通常、「agnes b.」は「アニエスベー」と呼ばれ親しまれているが、「b.」の部分がアルファベットと点「・」の組み合わせという特徴的な態様をしていること、引用商標Bのような商標を請求人が登録し使用していること、またブランドが著名であることが手伝って、後ろの「b.」の部分のみをもってしても、一般の需要者はこれが「agnes b.」を表す「b.」であると認識するものである。
事実、甲第8号証及び甲第9号証(雑誌)では、ブランド名が「アニエスb.」と紹介されており、片仮名とアルファベットという異なる字体の組み合わせから、より一層「b.」の部分が強調されている。特に「b.」の部分をアルファベットと点(・)で表していることが、このブランドの表示上の特徴が「b.」にあることを示している。
また、甲第10号証(雑誌)では、筆記体の「b.」が単独で表されている洋服が、また、甲第11号証(カタログ)では、香水ではあるが筆記体の「b.」が大きく表されたものが紹介されている。
(4)このように、ファッションブランドの「agnes b./アニエスベー」に関しては、雑誌で「アニエスb.」と紹介されたり、洋服や香水などへの「b.」の単独での使用を通じて、アルファベットの「b」と点「・」との組み合わせが、同ブランドを表すものとして広く知られるところとなっているのである。そこで同じ構成よりなる本件商標が使用された場合には、需要者はこれを「agnes b.」の「b.」と混同し、また、少なくとも著名ブランドである「agnes b./アニエスベー」と何らかの関係がある商品であると誤解すること必至である。
百歩譲って、本件商標が図形として把握されアルファベットの「b」が認識されないとしても、これは図形的にさえ「agnes b.」の「b.」に似ているのである。
「agnes b.」の「b.」の部分が非常に特徴的であるため、これが一体何を意味するのかということが甲第7号証及び甲第12号証で取りあげられており、ここでも人々の「b.」の部分に対する興味・注目度、及び著名性を知ることができる。もはや「b.」は同ブランドのシンボルの一つともなっているものであり、このような事情において使用される本件商標は、請求人の「agnes b./アニエスベー」ブランドと混同を生じるものである。
3.以上、本件商標は、引用商標A及び引用商標Bに類似するものであり、また、請求人の業務に係る商品と混同を生じるものであるから、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するため、その登録は無効とされるべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、参考図面を提出した。
1.商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標は、黒色の「b」の如き形状とその右上に赤色の「・」を配した構成よりなるものであって、「b」の部分はローマ文字を思わせるものであるといい得ないではないが、「・」に特徴があり、むしろ外形的なものを強く印象づけ、構成全体として特定の称呼、観念が生ずるものとはいえない図形として看取されるものである(参考図面)。
(2)引用商標Aは、上段の「agnes b.」が、「s」と「b.」の間に一字程度の間隔があるとしても、下段の「アニエスべー」と全体的にまとまりよく表されていることから、構成全体として看取されるものであり、これにより「アニエスべー」の称呼を生ずる。
(3)引用商標Bは、アルファベット文字bの筆記体の如き構成よりなるが、その外形的なものが強く印象付けられ、構成全体として図形として看取されるものである。
(4)上記のように、本件商標と引用商標A、引用商標Bは、その構図において異なるものであり、外観において明らかに区別し得るものといえる。
(5)本件商標について、請求人は、その構成から引用商標Aの「b.」の部分及び引用商標Bとは外観において類似し、観念を同一にすると主張するが、全体としてみた場合、本件商標は一種独特な図形として把握させるものであり、一方、引用商標Aは分離して看取されないものであること、及び引用商標Bより特定の称呼を生ずるものでないことは上記のとおりであるから、本件商標と引用商標A、引用商標Bは、別異のものとして看取させるものというべきである。
2.商標法第4条第1項第15号について
引用商標Aが、仮に広く知られているものであるとしても、本件商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似しないことは上記のとおりであるから、本件商標をその指定商品に使用しても、商品の出所について混同を生ずるおそれはないと思料される。
3.したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に該当しないので、本件審判請求には理由がない。
1.商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標Aとの比較
イ.本件商標は、別掲(1)に示したとおり、アルファベットの「b」と赤点との組み合わせよりなる図形を表したとみるのが相当である。
そして、本件商標は、これより「アルファベットノビートアカテン」(アルファベットの「b」と赤点)などの称呼、観念が生ずる場合があるとしても、該称呼、観念は、いずれも一般に親しまれているものとはいい難いばかりでなく、冗長であるところから、これに接する取引者、需要者は、構成全体の特異性に印象付けられるとみるのが相当であるから、これより特定の称呼、観念は生じないとみるのが相当である。
ロ.引用商標Aは、別掲(2)に示した構成よりななるものであるところ、全体として軽重の差なく一体的に表されているばかりでなく、上段の欧文字部分は、後述するように、「アニエスベー」と称呼され、フランスのデザイナーを表すものとして、わが国の服飾関連の取引者、需要者に知られているものであるから、下段に書された片仮名文字部分が上段の文字、記号全体の読みを特定したものと容易に理解されるものである。
してみると、引用商標Aは、全体が一つの商標を表したと判断するのが相当である。
そうとすれば、引用商標Aは、その構成中の「b.」の部分のみが独立して把握、認識されるものではなく、書された文字全体より「アニエスベー」の称呼を生ずるものであって、フランスのデザイナーの観念を生ずるものといわなければならない。
ハ.したがって、本件商標は、引用商標Aと外観上類似するものではなく、称呼及び観念においても相紛れるおそれはないものである。
(2)本件商標と引用商標Bとの比較
引用商標Bは、別掲(3)に示したとおりの構成よりなるものであるところ、本件商標は、前記認定のとおり、特定の称呼、観念を生じないものであるから、引用商標Bと称呼及び観念において類似するということはできないし、両商標は、外観上明らかに区別し得るものである。
(3)以上のとおり、本件商標は、引用商標A及び引用商標Bとは、外観、称呼、観念のいずれの点においても非類似の商標といわざるを得ない。
2.商標法第4条第1項第15号について
(1)甲第5号証ないし甲第7号証(1997年、1998年発行の新聞記事)及び甲第12号証(1999年発行「ブランド品/ここだけの耳よりな話」)によれば、アニエスベーは、フランスの服飾デザイナーであって、そのデザイン手法は、流行に左右されないシンプルなものとして、1976年にパリに最初のブティックを開いて以来、世界的に高い評価を得ており、「日本では現在、ブティックが53店と、本国フランスの26店の倍以上になっている。」(1997年5月22日付毎日新聞;甲第5号証)ことが認められる。
(2)しかしながら、上記服飾デザイナーとしての名称及びそのデザインに係る被服等に使用される「agnes b.(アニエスベー)」(欧文字中の「e」にはアクサン−テギュが付されている。以下同じ。)は、わが国においては、別掲(4)に示した独特なサイン風の表記全体をもって、また、これより生ずる「アニエスベー」の称呼全体をもって、この種商品の取引者、需要者によく知られているというべきであり、引用商標A中の「b.」のみが単独で使用され、需要者間に広く認識されているという事実は、甲各号証を総合しても、見い出すことはできない。
(3)上記(2)に関し、請求人は、雑誌で「アニエスb.」と紹介されたり、洋服や香水に「b.」の単独使用を通じて、アルファベットの「b」と点「・」との組み合わせが、「agnes b.(アニエスベー)」のデザインに係る被服等を表示するものとして広く知られる旨主張する。
確かに、甲第8号証及び甲第9号証(雑誌)によれば、「アニエスベー」のデザインした被服を紹介する文章中に、「アニエスb.」と、片仮名文字の「アニエス」とサンセリフ風に書された「b.」との組み合わせよりなる表記が認め得るところであるが、これらの表記は、依然として「アニエスベー」とのみ称呼されるものであって、このような表記が使用されていることをもって、これより直ちに引用商標A中の「b.」の文字部分のみが独立して、需要者間に広く認識されている証左となり得ないことは明らかである。
また、甲第10号証(雑誌)には被服に、甲第11号証(商品カタログ)には、香水にそれぞれ引用商標Bと同一態様からなる表示が使用がされていることが認められるが、いずれの商品についても、アニエスベーのデザインに係るものであることの説明がなされた上での使用であり、その説明により、これを見る者にアニエスベーのデザインに係る商品であることが理解され、かつ、別掲(4)に示したアニエスベーの独特なサイン風の表記の一部であることを想起させるというのが相当であるから、引用商標Bと同一態様からなる表示が単独で使用され、需要者に広く知られているとする請求人の主張は、理由がないものといわざるを得ない。
さらに、請求人は、「agnes b.」の「b.」の部分が非常に特徴的であり、その意味するところからも、需要者は、「b.」の部分に注目するものであり、「b.」は、「agnes b./アニエスベー」ブランドのシンボルの一つともなっているから、本件商標は、「agnes b./アニエスベー」ブランドと混同を生じるものである旨主張する。
しかしながら、前記したように、わが国においては、別掲(4)に示した独特なサイン風の表記全体をもって、「agnes b.(アニエスベー)」の商品ブランドとして知られているものであり、引用商標Bと同一態様からなる表示、若しくは引用商標A中の「b.」のみが、単独で使用され、本件商標の登録出願前より、需要者間に広く認識されているものとは認められない。
仮に、引用商標Bと同一態様からなる表示が、「agnes b.(アニエスベー)」の商品ブランドとして知られているとしても、その構成自体の特異な構成により、需要者に印象付けられたといえるものであり、前記したとおり、本件商標とは、商標において別異のものといわなければならない。
(4)したがって、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者は、「agnes b.(アニエスベー)」の「b.」を想起、連想することはできず、該商品が「agnes b.(アニエスベー)」のデザインに係る商品、もしくは同人と組織的に何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
3.以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づきその登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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