Trademark Appeal Case
論点抽出失敗
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2017−1804(T2017−1804/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第42類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務とし、平成27年4月1日に音商標として登録出願、その後、本願の指定役務については、当審における同29年3月14日付け手続補正書により、第42類「携帯電話・モバイル端末を利用した緊急地震速報の提供」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、電気通信事業者各社が提供している緊急地震速報の報知音を認識させるものであるため、これを本願の指定役務中の『緊急地震速報の提供』に使用しても、これに接する需要者は、役務の提供に当たり通常使用される音であることを認識するにすぎない。また、出願人提出の資料によっても、本願商標は、緊急地震速報を知らせ、需要者の注意を喚起するための警報音として、本願の指定役務中の『緊急地震速報の提供』について通常使用される音として需要者に認識されているものといわざるを得ない。さらに、出願人が独自に創作し、出願人の許諾により事業者間で音源を統一しているとの経緯や実情、あるいは、地震速報の音として本願商標以外の音も使用されている実情があるとしても、そのことをもって本願商標が出所識別標識として機能するものと判断することはできない。そうすると、本願商標は、単に役務の特徴を普通に用いられる方法で表示するものと判断するのが相当である。したがって、本願商標は、本願の指定役務中、『緊急地震速報の提供』に使用するときは、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記以外の『地震情報の提供』に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
ア 本願商標は、別掲のとおり、「ブィッ、ブィッ、ブィッ」と0.25秒間隔で3回、電子音が鳴る構成となっており、全体で1.5秒間の長さからなる音商標であって、その指定役務を第42類「携帯電話・モバイル端末を利用した緊急地震速報の提供」とするものである。
ところで、近年、我が国において大規模地震が頻発していることを踏まえ、気象庁等による検討を経て、2007年(平成19年)10月から、気象庁が一般向け緊急地震速報(一定以上の強い揺れが推定される地域(全国約200区分)を発表するもの)を開始したところであるが、本願商標は、当該速報が発せられたときに、広く国民に周知されるように、テレビやラジオといった放送媒体とは別に、強い揺れが想定される地域にある携帯電話等に当該速報を一斉配信する際に使用される専用ブザー音(以下「本件ブザー音」という。)であり、着信時の混乱を避けるため、移動体(携帯)通信事業者で統一されたものである(甲1)。そして、本件ブザー音を使用する一斉配信は、同年12月から始まり(甲7)、その後、技術的な改良を経て(甲2〜甲4)、現在では、各社合計でおよそ9割の国内シェアを占める移動体(携帯)通信事業者4社(NTTドコモ(請求人)、au、ソフトバンク及びワイモバイル)が行っている(甲9、甲19)。
なお、請求人が、本願商標の使用実態を示すものとして提出した甲第10号証の内容及び「ケータイWatch」のウェブサイトにおける2013年(平成25年)7月11日付け記事にある「NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルの各社は、緊急地震速報の警報音を、ブザー音に加えて音声で『地震です』と案内するものに今後変更すると発表した。今後発売される機種を中心に対応していく方針。」の記載(https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/607324.html)によれば、遅くとも同年末頃からは、上記一斉配信の際には、本願商標を構成する音に「地震です」の音声を加えたものが、請求人を含む上記移動体(携帯)通信事業者4社で使用されていることがうかがえるが、各社ごとに異なる警報音(ブザー音)が使用されているなどといった状況は見いだせない。
イ 本件ブザー音は、請求人の依頼を受けた音楽家が創作したものであり(甲5〜甲7)、特異な音として聞き取られていることはうかがえる(甲14、甲15)が、本件ブザー音の使用を移動体(携帯)通信事業者で統一することにつき、請求人から他の事業者へ本件ブザー音の使用の許諾がなされているなどといった事実は明らかでなく、また、本件ブザー音を聞いた者が、その音を請求人の業務に係る役務を表すものとして認識したと認めるに足る事実も見いだせない。
ウ スマートフォンにダウンロードすることができる地震速報に係るアプリケーションは、遅くとも2016年(平成28年)3月頃には、複数の事業者により提供されており、そのようなアプリケーションには、その報知の際に、独自の音を使用していると見受けられるものが含まれているが、その詳細は明らかでない(甲16〜甲18)。
エ 上記アないしウによれば、本件ブザー音は、2007年(平成19年)12月以降、気象庁が一般向け緊急地震速報を発したときに、その速報の内容に応じて、強い揺れが想定される地域にあった携帯電話等のほとんどにおいて、緊急地震速報を一斉配信する際の警報音として統一的に使用されてきたといえる。
そして、本件ブザー音は、上記のとおり、緊急地震速報の一斉配信の度に、携帯電話等の利用に当たり契約している移動体(携帯)通信事業者が誰であるかにかかわらず、異なる移動体(携帯)通信事業者間で統一的に使用されてきたといえることから、それを聞いた者は、その音について、緊急地震速報の際、テレビやラジオから発せられる警報音とは別途に、携帯電話等から統一的に発せられる警報音として認識するようになっているとみるのが相当である。
また、スマートフォン用の地震速報に係るアプリケーションにおいて、本件ブザー音と異なる音が発せられる場合があるとしても、当該アプリケーションは、任意にダウンロードするものであり、かつ、その詳細が明らかでないから、そのようなアプリケーションがあるからといって、上記本件ブザー音を聞いた者におけるその音に対する認識が大きく変化するとはいい難い。
してみれば、本件ブザー音と同一の音からなる本願商標をその指定役務である第42類「携帯電話・モバイル端末を利用した緊急地震速報の提供」について使用するときは、これに接する需要者は、その役務の提供に当たり、通常使用される音として認識するにとどまり、役務の出所を表示する標識又は自他役務の識別標識として認識することはないとみるのが相当である。
したがって、本願商標は、役務の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであり、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)請求人の主張について
請求人は、音商標の識別力の判断においては、警報音であるか否かなどといったことを一律に論じるのではなく、その音が他の音と聴別することが可能であるか否かといった点を重視し、実際の需要者の認識等から総合的に判断すべきであるところ、本願商標は、請求人の依頼を受けた音楽家により創作されたものであって、「通常」使用されるサイレンやベル等の報知音とも全く異なる極めて高い独自創作性を有しているものであるから、たとえ、本願商標が警報音として認識され得るとしても、他の音とは差別化され、請求人に係る緊急地震速報サービスを特定するものとして、十分に識別力を有しているものである旨主張する。
しかしながら、本願商標を構成する本件ブザー音については、上記(1)イのとおり、実際にそれが発せられたときに、それを聞いた者において、特異な音として聞き取られていることはうかがえるものの、その発信は、請求人を含む移動体(携帯)通信事業者4社で統一的になされており、また、その統一的な発信が請求人から他の事業者への許諾の下になされているなどといった事情があり、かつ、それを本願の指定役務に係る需要者が広く知っているといった事実は見いだせない。そのため、たとえ、本件ブザー音が他の音と聴別することができる特異な音であるとしても、それを聞いた者は、その音について、緊急地震速報の際、テレビやラジオから発せられる警報音とは別途に、携帯電話等から統一的に発せられる警報音として認識するとはいえても、それが特定の者(請求人)の業務に係る役務を表すものとして認識するとまではいい難い。
そうすると、本願商標は、その指定役務との関係においては、需要者をして、その役務の提供に当たり、通常使用される音と認識されるものである。
したがって、請求人による上記主張は、採用することができない。
(3)商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
請求人は、本願商標について、国内シェアのおよそ9割を占める大手移動体通信事業者各社によって独占的に使用されているものであること、2007年(平成19年)以降に気象庁が発した183回の一般向け緊急地震速報に応じて請求人が提供した「緊急地震速報」の一斉配信の際に使用されたこと、毎年の防災週間において全国の各自治体が行う訓練で使用されているため、実際に地震を経験していない需要者であっても接する機会が多数存在することなどを挙げて、仮に、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、請求人等による継続的使用の結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識できるに至っているものであるから、同条第2項の適用により、登録されるべきものである旨主張する。
そこで、請求人による主張及び同人提出の甲各号証をみるに、気象庁は、2008年(平成20年)4月28日に発生した宮古島近海を震央地とする地震から、2016年(平成28年)12月28日に発生した茨城県北部を震央地とする地震までの間、183回の一般向け緊急地震速報を発している(甲22)ことから、その速報の内容に応じて、強い揺れが想定される地域にあった携帯電話等への一斉配信の際には、請求人のいう大手移動体通信事業者各社により、本願商標、すなわち、本件ブザー音が統一的に使用されたことが推認されるが、その使用に当たり、本件ブザー音を聞いた者が、それを請求人の業務に係る役務を表すものとして認識したと認めるに足る事実は見いだせない。
また、防災週間の趣旨(甲26)に鑑みれば、全国の各自治体が行う訓練において、本件ブザー音が使用された可能性は否定できないが、その訓練の詳細は、何ら明らかでない上、仮に、そのような訓練において本件ブザー音が使用されたとしても、そのことをもって、本件ブザー音を聞いた者が、それを請求人の業務に係る役務を表すものとして認識したとはいい難い。
そして、本願商標は、2007年(平成19年)12月以降、現在に至るまでの間、本件ブザー音として継続的に使用されている実態を考慮してもなお、本願の指定役務との関係において、需要者が役務の出所を表示する標識又は自他役務の識別標識として認識することはないとみるのが相当であること、上記(1)において述べたとおりである。
してみれば、本願商標は、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるものとは認められないから、商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものではない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、かつ、同条第2項に規定する要件を具備するものとも認められないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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