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Trademark Appeal Case

警報音の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2017−1806(T2017−1806/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第42類「インターネット・電子計算機端末および携帯電話・モバイル端末を利用した津波情報の提供,その他の津波情報の提供」及び第45類「携帯電話通信による防犯又は防災に関する情報の提供,弾道ミサイル・航空機による攻撃・ゲリラ・特殊部隊による攻撃・テロに関する危険情報の提供」を指定役務として、平成27年4月1日に音商標として登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、電気通信事業者各社が提供している緊急速報メールのうち、津波警報及び各種緊急情報の報知音を認識させるものであるため、これを本願の指定役務中の『緊急津波警報及び各種緊急情報の提供』に使用しても、これに接する需要者は、役務の提供に当たり通常使用される音であることを認識するにすぎない。また、出願人提出の資料によっても、本願商標は、緊急津波警報及び各種緊急情報を知らせ、需要者の注意を喚起するための警報音として、本願の指定役務中の『緊急津波警報及び各種緊急情報の提供』について通常使用される音として需要者に認識されているものといわざるを得ない。さらに、出願人が独自に創作し、出願人の許諾により事業者間で音源を統一しているとの経緯や実情、あるいは、津波警報等の音として本願商標以外の音も使用されている実情があるとしても、そのことをもって本願商標が出所識別標識として機能するものと判断することはできない。そうすると、本願商標は、単に役務の特徴を普通に用いられる方法で表示するものと判断するのが相当である。したがって、本願商標は、本願の指定役務中の『緊急津波警報及び各種緊急情報の提供』に使用するときは、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記以外の『津波情報及び各種情報の提供』に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号該当性について

ア 本願商標は、四分音符=130のテンポ及び4分の4拍子の1小節からなる別掲1のとおりの音符、音部記号で構成される音の要素からなる音商標であり、その指定役務を第42類「インターネット・電子計算機端末および携帯電話・モバイル端末を利用した津波情報の提供,その他の津波情報の提供」及び第45類「携帯電話通信による防犯又は防災に関する情報の提供,弾道ミサイル・航空機による攻撃・ゲリラ・特殊部隊による攻撃・テロに関する危険情報の提供」とするものである。

そして、本願商標は、2007年(平成19年)以降、請求人と契約した国又は地方公共団体が配信する災害・避難情報を、該当地域にある携帯電話等に一斉配信する際に、さらに、2012年(平成24年)2月以降は、気象庁から大津波警報又は津波警報が発せられたときに、該当する沿岸地域にある携帯電話等に当該警報を一斉配信する際にも使用される専用着信音(以下「本件着信音」という。)であり、着信時の混乱を避けるため、移動体(携帯)通信事業者で統一されたものである(甲1〜甲4)。現在では、各社合計でおよそ9割の国内シェアを占める移動体(携帯)通信事業者3社(NTTドコモ(請求人)、au及びソフトバンク)が一斉配信を行っている(甲3、甲9)。

なお、別掲2によれば、地域住民に災害・避難情報を配信するために請求人等と契約している国又は地方公共団体は、広範囲にわたっており、災害時又は訓練の際には、請求人を含む上記移動体(携帯)通信事業者3社により、災害・避難情報が一斉配信されていることがうかがえるが、各社ごとに異なる警報音(着信音)が使用されているなどといった状況は見いだせない。

イ 本件着信音は、請求人の依頼を受けた音楽家が創作したものであり、特異な音として聞き取られていることはうかがえる(甲3)が、本件着信音の使用を移動体(携帯)通信事業者で統一することにつき、請求人から他の事業者へ本件着信音の使用の許諾がなされているなどといった事実は明らかでなく、また、本件着信音を聞いた者が、その音を請求人の業務に係る役務を表すものとして認識したと認めるに足る事実も見いだせない。

ウ スマートフォンにダウンロードすることができる津波速報に係るアプリケーションは、遅くとも2016年(平成28年)3月頃には、複数の事業者により提供されており、そのようなアプリケーションには、その報知の際に、独自の音を使用していると見受けられるものが含まれているが、その詳細は明らかでない(甲7、甲8)。

エ 上記アないしウによれば、本件着信音は、2007年(平成19年)以降、国又は地方公共団体が災害・避難情報を配信したときに加え、2012年(平成24年)2月以降は、気象庁が大津波警報又は津波警報を発したときも、その情報又は警報の内容に応じて、被災が想定される地域にあった携帯電話等のほとんどにおいて、災害・避難情報又は津波警報等を一斉配信する際の警報音として統一的に使用されてきたといえる。

そして、本件着信音は、上記のとおり、災害・避難情報又は津波警報等の一斉配信の度に、携帯電話等の利用に当たり契約している移動体(携帯)通信事業者が誰であるかにかかわらず、異なる移動体(携帯)通信事業者間で統一的に使用されてきたといえることから、それを聞いた者は、その音について、被災のおそれがあることを予告する際、携帯電話等から統一的に発せられる警報音として認識するようになっているとみるのが相当である。

また、スマートフォン用の津波速報に係るアプリケーションにおいて、本件着信音と異なる音が発せられる場合があるとしても、当該アプリケーションは、任意にダウンロードするものであり、かつ、その詳細が明らかでないから、そのようなアプリケーションがあるからといって、上記本件着信音を聞いた者におけるその音に対する認識が大きく変化するとはいい難い。

してみれば、本件着信音と同一の音からなる本願商標をその指定役務中、第42類「携帯電話・モバイル端末を利用した津波情報の提供」及び第45類「携帯電話通信による防災に関する情報の提供,携帯電話・モバイル端末を利用した弾道ミサイル・航空機による攻撃・ゲリラ・特殊部隊による攻撃・テロに関する危険情報の提供」について使用するときは、これに接する需要者は、その役務の提供に当たり、通常使用される音として認識するにとどまり、役務の出所を表示する標識又は自他役務の識別標識として認識することはないとみるのが相当である。

したがって、本願商標は、その指定役務中、第42類「携帯電話・モバイル端末を利用した津波情報の提供」及び第45類「携帯電話通信による防災に関する情報の提供,携帯電話・モバイル端末を利用した弾道ミサイル・航空機による攻撃・ゲリラ・特殊部隊による攻撃・テロに関する危険情報の提供」との関係においては、役務の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであり、商標法第3条第1項第3号に該当する。

(2)請求人の主張について

請求人は、音商標の識別力の判断においては、警報音であるか否かなどといったことを一律に論じるのではなく、その音が他の音と聴別することが可能であるか否かといった点を重視し、実際の需要者の認識等から総合的に判断すべきであるところ、本願商標は、請求人の依頼を受けた音楽家により創作されたものであって、リズムとメロディーを備える音楽的要素を有するものであり、緊急速報等に「通常」使用されるサイレンやベル等の報知音と全く異なる極めて高い独自創作性を有しているものであるから、たとえ、本願商標が警報音として認識され得るとしても、他の音とは差別化され、十分に識別力を有しているものである旨主張する。

しかしながら、本願商標を構成する本件着信音については、上記(1)イのとおり、実際にそれが発せられたときに、それを聞いた者において、特異な音として聞き取られていることはうかがえるものの、その発信は、請求人を含む移動体(携帯)通信事業者3社で統一的になされており、また、その統一的な発信が請求人から他の事業者への許諾の下になされているなどといった事情があり、かつ、それを本願の指定役務に係る需要者が広く知っているといった事実は見いだせない。そのため、たとえ、本件着信音が他の音と聴別することができる特異な音であるとしても、それを聞いた者は、その音について、被災のおそれがあることを予告する際、携帯電話等から統一的に発せられる警報音として認識するとはいえても、それが特定の者(請求人)の業務に係る役務を表すものとして認識するとまではいい難い。

そうすると、本願商標は、その指定役務中、第42類「携帯電話・モバイル端末を利用した津波情報の提供」及び第45類「携帯電話通信による防災に関する情報の提供,携帯電話・モバイル端末を利用した弾道ミサイル・航空機による攻撃・ゲリラ・特殊部隊による攻撃・テロに関する危険情報の提供」との関係においては、需要者をして、その役務の提供に当たり、通常使用される音と認識されるものである。

したがって、請求人による上記主張は、採用することができない。

(3)まとめ

以上のとおり、本願商標は、その指定役務中の第42類「携帯電話・モバイル端末を利用した津波情報の提供」及び第45類「携帯電話通信による防災に関する情報の提供,携帯電話・モバイル端末を利用した弾道ミサイル・航空機による攻撃・ゲリラ・特殊部隊による攻撃・テロに関する危険情報の提供」について使用するときは、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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