Trademark Appeal Case
論点抽出失敗
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−3654(T2018−3654/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「TrickArt」の欧文字を標準文字で表してなり、第41類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務とし、平成25年11月26日に登録出願された商願2013−92492に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として、同29年4月5日に登録出願されたものである。
その後、本願の指定役務については、原審における平成29年6月29日受付の手続補正書により、第41類「トリックアート美術作品の展示,トリックアート絵画の展示」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は、「本願商標は、『TrickArt』の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、『視覚的な錯覚を利用した作品。だまし絵。』の意味をもって理解されているトリックアートの英語表記であることを容易に認識させ、本願の指定役務との関係において、近年、全国各地の観光地や商業地に、体験型のトリックアート美術館が建設され、全国各地でトリックアート展が開催されている実情にあるから、これを指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その役務がトリックアート(視覚的な錯覚を利用した作品)を内容とするものと理解するにとどまり、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示したものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、提出された証拠からは、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するとはいえない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、上記1のとおり、「TrickArt」の文字からなるところ、原審の拒絶理由通知書及び拒絶査定で引用した証拠(別掲1)によれば、「トリックアート」及びその英語表記である「trick art」の語については、以下のとおり認めることができる。
ア 「トリックアート」及び「TrickArt」の語の辞書における記載
本願商標の構成中「Trick」の語は、「人をだますようなたくらみ。ごまかし。」等の意味を、「Art」の語は、「芸術。美術。」等の意味を有する語として、いずれも我が国でも親しまれている語である(「広辞苑第6版」、岩波書店発行)。
そして、「トリックアート」及び「trick art」の語は、その意味が複数の辞書に掲載され(別掲1(1)〜(3))、それらに共通する記載を参照すると、「視覚における錯覚を利用した作品。だまし絵。」の意味を有する語ということができるものである。
そうすると、本願商標「TrickArt」の欧文字は、その「Trick」及び「Art」の各構成文字が我が国で親しまれている語であることも相まって、前記意味を有する「トリックアート」の語の英語表記であることが容易に理解できるものであるというのが相当である。
イ 「トリックアート」の語の常設展示施設及びイベントにおける使用
「トリックアート」の語は、常設展示施設やイベントなどにおいて、視覚における錯覚を利用した作品としての展示物及びその作品分野を指称するために広く用いられている。
例えば、「トリックアート美術館」、「3Dトリックアート水族館」、「トリックアート展」、「大トリックアート展」及び「古代エジプトトリックアート展」と称する、錯覚を利用した作品を展示する施設の開設やイベントが開催されており、そこでの展示作品や作品分野を指称する語として「トリックアート」の語が用いられている(別掲1(4)〜(6)、(10)及び(11))。
また、駅前広場、店舗外壁、駅の通路の壁面や天井に描かれた絵画及び広告物や店舗内ギャラリーで展示されたアート作品を「トリックアート」と指称して紹介するものもある(別掲1(5)、(7)、(8)及び(9))。
ウ 判断
本願商標は、上記アのとおり、「視覚における錯覚を利用した作品。だまし絵。」の意味を有する「トリックアート」の文字の英語表記であることを容易に理解できる「TrickArt」の欧文字を普通に用いられる方法で表示してなるところ、上記イのとおり、「トリックアート」の語は、その指定役務の分野においても、その役務の内容が「視覚における錯覚を利用した作品」に関するものであることを表す語として、取引上普通に使用されていることが認められる。
そうすると、本願商標をその補正後の指定役務、第41類「トリックアート美術品の展示,トリックアート絵画の展示」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その役務が「視覚における錯覚を利用した作品」を内容とするものと理解するにとどまるものであるから、本願商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項の該当性について
ア 使用による自他商品・役務識別力の獲得について
商標法第3条第2項の規定によれば、商標法第3条第1項第3項に該当する商標であっても、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができるところ、ある標章が同項の規定に該当するかは、出願に係る商標と外観において同一とみられる標章が指定商品又は指定役務とされる商品又は役務に使用されたことを前提として、その使用開始時期、使用期間、使用地域、使用態様、当該商品の販売数量又は売上高等、当該商品若しくは役務又はこれに類似した商品若しくは役務に関する当該標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきである。(平成25年1月24日 平成24年(行ケ)第10285号 知的財産高等裁判所第4部判決参照)
そして、請求人は、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備している旨主張し、証拠方法として、平成29年7月7日受付の手続補足書において、証拠1ないし40(以下、「甲第1号証ないし甲第40号証」と読み替えて挙示する。)を提出しているので、以下検討する。
イ 本願商標と使用商標の同一性について
(ア)甲第4号証に掲げる、請求人が運営する常設展示施設である「那須とりっくあーとぴあ」(甲6)、「東京トリックアート迷宮館/TOKYO TRICK ART MUSEUM」(甲7)、「横浜トリックアートクルーズ/YOKOHAMA TRICK ART CRUISE」(甲8)、「トリックアート美術館/TRICK ART MUSEUM」(甲9)、「熱海トリックアート迷宮館/ATAMI TRICKART MUSEUM」(甲13)のパンフレットにおいて、「TRICK ART」の表示があることを確認できるが、「TOKYO TRICK ART MUSEUM」、「YOKOHAMA TRICK ART CRUISE」、「TRICK ART MUSEUM」のように、いずれも単独で使用されているものではなく、常に「TOKYO」、「YOKOHAMA」や「CRUISE」、「MUSEUM」の文字が併記され、一体的に使用されているものである。
してみれば、使用に係る「TRICK ART」の文字自体は、標準文字である出願商標と同一のつづりであるとしても、常に他の文字と一体的に使用されているものであって、このような使用態様にあっては、単独で識別力を獲得した否かを判断する上で本願商標と同一といえない。
(イ)また、常設展示施設のパンフレット(甲6〜甲13)には、別掲2の「TrickArt」(以下「使用商標」という。)の語が独立して表記されているが、当該使用商標と本願商標とは、図案化の有無、着色の有無、字間の配置などの外観的特徴に顕著な差異があり、同一のものとはいえない。
(ウ)さらに、請求人が現在運営する常設展示施設(甲4)において、例えば、「トリックアートの館」、「トリックアート美術館/SOWA美術館」、「かみふらのトリックアート美術館」、「トリックアート迷宮?館」、「高尾山トリックアート美術館」、「那須とりっくあーとぴあ ミケランジェロ館」、「とりっくあーとぴあ日光」のように、「トリックアート」の片仮名又は「とりっくあーと」の平仮名表記がその名称中に含まれていたとしても、それらは、上記(ア)と同様に本願商標と外観において同一のものということはできない。
(エ)そして、トリックアートのイベントである「ドラえもんトリックアート ふしぎBOX展」(甲25)にしても、「ドラえもんトリックアート」の表示は確認できるが、これも単に「トリックアート」の語をイベント名称中に含むにすぎず、当該語が単独で出所識別標識として使用されているものとは理解し難いばかりか、「TrickArt」の文字は表示されていないし、その他のイベント及びトリックアート作品、テレビ番組にしても、そこで具体的にどのように「TrickArt」の欧文字が使用されているのかは示されていない。
(オ)上記を踏まえると、請求人が提出する証拠からは、請求人により、「TRICK ART」の語を名称中に含む常設展示施設やイベントが運営、開催されていることがうかがえるにしても、本願商標と同一の商標が使用されているとはいい難いものである。
ウ 役務の同一性について
請求人が運営するトリックアートの常設展示施設(甲6〜甲13)において、「トリックアート絵画の展示」を行っていることが確認できるが、これは本願商標の指定役務と同一又は類似するものである。
エ 本願商標の使用実績
請求人は、請求人が運営する全国各地の「トリックアート」常設展示施設(栃木県那須町など、全国18か所)の入館者数は、2015年及び2016年実績では、約196万3千人(2015年)、192万8千人(2016年)であり、また、2015年に実施した全国各地でのトリックアート展は、川越丸広百貨店など、31か所で開催され、総入場者数は約59万人(2015年)であり、2016年に実施した全国各地でのトリックアート展は、淡路大鳴門橋記念館「トリックアート展」など、22か所で開催され、総入場者数は約32万7千人(2016年)である等主張しているが(甲4及び甲5)、これらの常設展示施設数、入場者数について、客観的に裏付ける証拠の提出はないものである。
そして、常設展示施設のパンフレット(甲6〜甲13)にしても、その作成枚数、作成時期は不明であり、当該パンフレット等による広告宣伝がされた期間、地域、規模等についての具体的な証拠も何ら提出されていない。 オ 判断
以上によれば、本願商標「TrickArt」と外観において同一の標章が、請求人により使用されている事実を見いだすことができず、また、本願商標の使用の実績に基づいて、本願商標が請求人の業務を表すものとして、需要者の間に広く知られていると認めることはできないものである。
したがって、本願商標は、請求人により使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができたものに至ったものということはできず、商標法第3条第2項の規定を適用することはできない。
(3)請求人の主張について
請求人は、「TrickArt(トリックアート)」なる語が、既に一般に広く使用されている状況にあることは承服しつつも、以下について主張する。
ア 「TrickArt(トリックアート)」の語を「トリックアート美術作品の展示,トリックアート絵画の展示」という役務において、現実に使用しているのは実質的に請求人だけである旨主張する。
しかしながら、仮に、「トリックアート美術作品の展示,トリックアート絵画の展示」という役務の提供において、「TrickArt(トリックアート)」なる語を使用しているのが請求人だけであったとしても、該文字から「視覚における錯覚を利用した作品」の意味合いを理解することは、前述のとおりであり、役務の内容、質を表す記述的表示であることに変わりなく、該文字を使用している他者が存在しないことが、本件における判断を直ちに左右するものではない。
イ 請求人が運営するトリックアート美術館のパンフレット等に表示された表示には、常設展示施設の所在地を示す「接頭語」や美術館等の「接尾語」が付いているが、要部は「TrickArt(トリックアート)」であり、本願商標と実質的に同一の商標について証明するものである旨主張する。
しかしながら、上記(2)イのとおり、これらの表示は、本願商標と同一の商標ということはできない。
ウ 請求人は、別掲3のとおり、「トリックアート」の文字からなる登録第4138556号商標(以下「請求人登録商標1」という。)の原権利者であり、平成20年4月24日の存続期間満了まで保有していたが、誰からも異議申立及び無効審判を請求されておらず、競合他社を含めて誰一人、請求人登録商標1が請求人の独占権である点に異議を唱えていない旨主張する。
しかしながら、請求人登録商標1を保有していたとしても、当該請求人登録商標1の指定商品は第16類「雑誌,新聞」であり、本願商標の指定役務
とは異なるものであるから、この登録例が本願の判断に影響を及ぼすものではない。
エ 請求人は、別掲4のとおり、デザイン化された「TrickArt」の文字からなる登録第5539378号商標(以下「請求人登録商標2」という。)を保有しており、その指定役務には第41類「美術品の展示,絵画の展示」が含まれており、これと類似する本願商標は登録されるべきである旨主張する。
しかしながら、本願商標と請求人登録商標2とは、上記(2)イ(イ)のとおり、その構成態様を異にするものであるから、同一に論ずることは適切ではなく、本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性の判断を左右するものではない。
したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、かつ、同法第3条第2項の要件を具備するものではないから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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