Trademark Appeal Case
備蓄の記述的商標性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2017−18527(T2017−18527/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「備蓄」の文字を標準文字で表してなり、第9類「スニーカータイプの安全靴,安全靴,事故防護用靴,事故用、放射線用及び火災用保護靴,事故防護用手袋,事故防護用のヘルメット,事故防護用のゴーグル,事故防護用の被服」及び第25類「スニーカー,靴類,履物,運動用特殊靴,被服,ベルト」を指定商品として、平成28年6月29日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は、「本願商標は、『備蓄』の文字を標準文字により書してなるところ、当該商標は、『万が一に備えて、蓄えておくこと』の意味を有するものであるから、本願商標をその指定商品に使用した場合、これに接する需要者は、『災害などの万が一に備えて、常備しておける商品』、すなわち、単に商品の品質(内容)を表示しているにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審における審尋
当審において、平成30年6月27日付けの審尋により、請求人に対し、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当する旨通知し、それに対する意見(回答)を求めたところ、請求人は、同年9月11日付けの意見書を提出した。
4 審尋に対する意見の要旨
(1)本願商標の指定商品を備えておこうとする場合、通常、用いられると考えられる用語は「常備」(常に備えておくこと)であり、防災用品など不測の事態に備えるものに用いられることは、通常あり得る。これに対し、「備蓄」とは「たくわえておくこと」であり、食品や生活用品など、日々費消される物を相当数量、蓄えておく場合に用いる。防災用品などは、万一の場合に必要数量の備えがあれば足りるのであって「たくわえておくこと」の対象ではない。
したがって、本願商標は、指定商品について、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たすことができる。審尋において指摘された理由は、本願商標が恣意的商標又は暗示的商標だからである。しかし、恣意的商標又は暗示的商標であっても、自他商品の識別機能を果たすことは十分可能である。
(2)上記(1)のとおり、「常備」と「備蓄」は、その対象が異なり、本願商標の指定商品には、通常「備蓄」の語は用いない。
(3)審尋において開示された例は、本願の出願後に公開されたものや誤用を記載したもので、ごくまれな例外事例であるから、本願商標をその指定商品に使用した場合、十分な自他商品識別機能を有する。これに接する需要者が、「単に商品の品質(内容)を表示するもの」として認識することはない。
したがって、本願商標「備蓄」を本願商標の指定商品に使用しても、商標法第3条第1項第3号に定める、産地、販売地、品質、原材料等のいずれを表示することにはならない。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、前記1のとおり、「備蓄」の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、「万一に備えて、たくわえておくこと。」の意味を有する語(株式会社岩波書店 広辞苑「第6版」)として、一般によく知られている語である。
そして、「備蓄」の文字については、その使用の事実が、審尋において示した、以下のインターネット情報において確認できる。
ア 流山市のウェブサイト中「防災」の項において、「防災士が勧める 我が家の災害用備蓄品等」の見出しの下、「災害に備え、市は水・食糧、防災資機材の備蓄をすすめるとともに、他自治体や民間企業と災害時応援協定を進めています。・・・1.ご自分自身及び家族の生命と健康を守るのに必要な備蓄品等・・・(6)防寒用ブランケット、レインコート・・・(7)ヘルメット、軍手及び安全靴又は長靴等・・・(11)使い捨て下着・・・。」との記載がある。
イ 八尾市のウェブサイト中「防災」の項において、「家庭での備蓄について」の見出しの下、「災害時に必要なものとして・・・『備蓄品』外部からの支援が届くまでの数日分の食糧等。(例)下着・上着、毛布・・・」との記載がある。
ウ 倉敷市児島観光・情報サイト「こじまさんぽ」のウェブサイトにおいて、「6 ワーキングウェア」の見出しの下、「震災用の備蓄を行っている。・・・そのため、児島では作業服の備蓄を行っている。・・・。」との記載がある。
エ 株式会社産経デジタルが運営する「産経ニュース」のウェブサイトにおいて、2014年11月5日付け「エボラ出血熱対策、神奈川県内でも強化 指定医療機関や港湾施設で準備」との見出しの下、「世界的な感染拡大が・・・県内で唯一対応できる『第一種感染症指定医療機関』の横浜市立市民病院(保土ヶ谷区)に搬送される。・・・同病院は、防護服の備蓄を100着から400着に増やすなど対策を強化した。・・・」との記載がある。
オ 小郡市のウェブサイトにおいて、「防災」の項中「備蓄品・非常持出品」の見出しの下、「■備蓄品・・・衣類 防寒具や替えの下着などを準備しておきましょう。・・・」との記載があり、さらに、「■非常持出品・・・避難時の服装 安全な避難のために非常持出品とともにヘルメット・運動靴・レインコート・軍手を準備しておきましょう。」との記載がある。
カ 日本放送協会(NHK)のウェブサイト「NHK そなえる 防災」中の「コラム」の項において、「第3回 防災グッズを備えよう〜多機能防災グッズの勧め〜」の見出しの下、「【図1】非常用持ち出し袋に入れておきたい防災グッズ」中に「ヘルメット、軍手・厚手の手袋、歩きやすい運動靴、衣類」の図及び説明書きがあり、さらに「・・・備蓄を進めるにあたって最も重要なのは、その『防災グッズ』にまつわる知識や情報をきちんと理解して、本当に必要で有効なものをそろえることです・・・本当に災害時に役に立つ『防災グッズ』をそろえ備蓄することが重要です。・・・」との記載がある。
上記インターネット情報における使用の実情によれば、「備蓄」の文字は、その語意に則し、自治体や企業等が、災害時や緊急時などの万一に備えて、その際に必要となるであろうもの、例えば、飲料水や食料等の消耗品のみならず、「ヘルメット、作業着、衣服、靴」等をも備えてたくわえるものであることを表す際において使用されていると認められる。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、当該商品は、「万一に備えて、たくわえておくもの(備蓄用の商品)」程の意味合いを容易に理解、認識するにとどまるものというのが相当である。
してみれば、本願商標は、商品の品質、用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、「『備蓄』との語を用いることができるのは、使用すると消費されて無くなる物、すなわち消耗品に限られる(明鏡国語辞典)。したがって、『備蓄』との語が妥当するのは、『飲料水』や『食糧』など、使用すると消費されて無くなる物(消耗品)のみである。『防寒用ブランケット、レインコート、ヘルメット、軍手、安全靴又は長靴』等については『備蓄』との語を用いるのは、誤用であり、『常備』という語を用いるのが正しい」旨を主張している。
しかしながら、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かは、本願商標の指定商品の取引者、需要者が、本願商標に接してどのように認識するかが問題となるところ、上記(1)のとおり、万一に備えて行う「備蓄」に際し、その対象となるもの(商品)は、飲食料等の消耗品に限定されること無く、万一の際に必要となるであろうもの、例えば、安全靴、ヘルメット、軍手、下着等についても同様に、その対象としてたくわえることが実際に行われている。
そうすると、「備蓄」の文字が、本願の指定商品に使用された場合、当該商品の取引者、需要者は、「災害などの、万が一に備えてたくわえておくもの(備蓄用の商品)」であると認識、理解するにすぎず、商品の出所識別標識としては機能しないと判断するのが相当である。
イ 請求人は、上記(1)において示された事実は、極めて稀な例外であって、一般的な用法ではなく、また、行政サービスや、情報サービスの部類(区分)であって、商品の製造販売を目的としていないという事情もある旨を主張している。
しかしながら、上記(1)に示した災害対策に関する情報(以下「本件情報」という。)は、国民や自治体の住民全員を対象とする啓蒙的な情報であるところ、本願の指定商品の需要者が、防災のために必要な商品を検討し、購入するに際して、これらの本件情報等を参考にすることは普通に行われていると考えられることから、本件情報のウェブサイトを閲覧する者と本願の指定商品の需要者の範囲は共通にすることが少なくないといえる。
よって、本願商標の「備蓄」の文字が、その指定商品との関係で自他商品の識別標識としての機能を有するか否かを判断するにあたり、本件情報を参酌することは妥当である。
ウ 請求人は、審判請求書において、他の登録例を挙げて、本願商標も同様に取り扱われてしかるべきである旨主張し、また、平成30年6月27日付け審尋に対する同年9月11日提出の意見書において、出願後に生じた事情をもって拒絶理由とするのは、適正ではない旨を主張している。
しかしながら、出願された商標が、商品の出所識別標識としての機能を果たすものであるか否かは、本願商標自体の具体的な構成とその指定商品との関係から、査定時又は審決時において、指定商品の取引の実情等を考慮して個別かつ具体的に判断されるべきものであるところ、請求人の挙げた商標登録の事例は、いずれも本願商標とは、使用する商品又は役務が異なるものであるばかりか、商標の構成態様においても異なるものであるから、事案を異にするというべきであり、また、そもそも、他の商標登録の事例の存在によって、本件の判断が左右されるものではない。
よって、請求人の上記アないしウの主張は、いずれも採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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