Trademark Appeal Case
音商標の識別力と周知性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−570(T2018−570/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第5類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品とし、平成27年4月1日に音商標として登録出願、その後、本願の指定商品については、原審における同28年3月11日付け手続補正書により、第5類「蚊取線香」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、別掲のとおりの構成からなるところ、商品の魅力を向上させるため又は広告等における需要者への注意喚起、印象付け若しくは効果音として、多種多様な音が一般的に用いられている実情があることからすれば、本願商標についても、需要者は、自他商品の識別標識としてではなく、商品の魅力向上又は広告の演出等に用いられる音の一種として認識するにとどまるものと認められる。また、出願人による本願商標の使用状況をみると、本願商標と同一と推測される音が使用される際は、『金鳥の夏、日本の夏』の音声の後に続いて、『金鳥』又は『KINCHO』の文字をかたどった仕掛花火の映像と一緒に使用されていることから、これらの使用実績があるからといって、『金鳥の夏、日本の夏』、『金鳥』又は『KINCHO』が認識される音(歌詞やナレーション)が含まれない本願商標についてまで、需要者が、直ちに、出願人の業務に係る商品を表示するものとして認識するに至っているということはできない。そうすると、本願商標と同一と推測される音の使用状況を踏まえても、本願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識するに至っているということができない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号該当性について
ア 本願商標は、別掲のとおり、仕掛花火の音が「パン、パラ、パラ、パラ」と連続して聞こえる構成となっており、全体で3秒間の長さからなる音商標であって、その指定商品を第5類「蚊取線香」とするものである。
ところで、テレビ、ラジオ又はインターネット等による商品の広告等においては、聴覚を通じて、商品の魅力を訴求したり、需要者の関心を引くべく、本願商標に係る仕掛花火の音と同様の音を含め、多種多様な音が一般に広く使用されていることから、例えば、音が自他商品の識別標識としての機能を果たし得る言語等からなる又は音にそのような言語等が含まれている場合はともかく、そうでない場合には、その音は、通常、商品の出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として聴取され、認識されることはないとみるのが相当であり、このことは、本願の指定商品である「蚊取線香」を取り扱う業界においても、事情を異にするとみるべき理由は見当たらない。
そして、本願商標は、上記のとおり、仕掛花火の音が「パン、パラ、パラ、パラ」と連続して聞こえる音商標であるところ、その音は、上記一般に広く使用されている音の一つである仕掛花火の音として聴取され得るものにすぎず、それ自体、自他商品の識別標識としての機能を果たし得る言語等からなるものではないし、そのような言語等が含まれているものでもない。
そうすると、本願商標をその指定商品について使用しても、これに接する需要者は、商品の広告等において一般に広く用いられている仕掛花火の音の一種として聴取、把握するにとどまり、その音について、特定の者(請求人)の業務に係る商品を表示するものとして認識することはないというべきである。
してみれば、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標である。
イ 請求人は、昭和40年代から、テレビCMやラジオCM等といった映像や音声により需要者層に訴える広告宣伝について積極的に力を注いできた結果、「金鳥の夏、日本の夏」の音声の後に続く、本願商標の「仕掛け花火の音が『パン、パラ、パラ、パラ』と連続して聞こえる音」は、「金鳥の夏、日本の夏」の文言や音声から独立して聴取され、認識されていることから、本願商標に接する取引者、需要者は、本願商標が請求人に係る「蚊取線香」のCMであると認識し、すなわち、これが請求人の業務に係る商品であると認識することができるに至っているものである旨主張し、その主張を裏付ける証拠として、甲第1号証ないし甲第22号証を提出している。
そこで、請求人の主張及び同人提出の証拠について、以下検討する。
(ア)請求人は、大正8年に設立された「家庭用殺虫剤、衣料用防虫剤、家庭用洗浄剤、防疫用殺虫剤の製造及び販売」等を主な業務とする会社であり、代表的な商品とされる「蚊取線香」は、全国で販売され、その2015年ないし2017年の売上高は、約100億円前後で推移していることがうかがえる(甲1、甲2)。
また、「蚊取線香」の市場において、請求人の製造、販売するものが占める割合(シェア)は、1987年から1994年までの間が76%前後、1996年から2003年までの間が80%前後で推移していることがうかがえる(甲7〜甲22)。
(イ)請求人は、自己の商品「蚊取線香」について、少なくとも1969年から2017年までの毎年、俳優や歌手等を起用したテレビCMを制作し、当該商品の需要期に合わせた概ね5月から8月にかけて、全国で放映したことがうかがえるが、そのテレビCMの具体的な内容が明らかなものは一部に限られ、その放映がされた地域、日時、回数の詳細は明らかでない(甲3、甲5)。
また、上記テレビCMのうち、具体的な内容が明らかなもの(1970年、1971年、1976年、1987年、1988年、1991年、1994年、2000年、2003年、2004年、2006年、2008年、2010年、2012年〜2017年)においては、「蚊取線香」が映し出されるほか、その最終部で、「金鳥の夏、日本の夏」の音声の後(ただし、1970年及び1971年のテレビCMについてはその音声と同時。)に、「金鳥」又は「KINCHO」の文字をかたどった仕掛花火が映し出され、その映像に合わせて本願商標を構成する音と同じものと認識され得る音(以下、「本件花火音」という。)が発せられることは認められるものの、本件花火音は飽くまでも当該仕掛花火の映像に合わせて発せられるにすぎないことからすれば、これに接する視聴者は、本件花火音を当該仕掛花火が着火したときの音、すなわち、当該仕掛花火の映像に付随する音として聴取、把握し、記憶するとみるのが相当である。
なお、請求人は、ラジオCMについても、上記テレビCMと同様に、長年継続して行われている旨主張するが、請求人提出の証拠によっては、そのラジオCMの具体的内容は何ら明らかでなく、その放送がされた地域、日時、回数の詳細も明らかでない。
(ウ)請求人は、自己の商品「蚊取線香」について、テレビCMやラジオCMのみならず、新聞、雑誌、ポスター等においても、長年にわたり膨大な数の広告を行ってきた旨主張するが、それらの広告は、通常、紙を媒体として行われるものであり、そこで本件花火音が使用されることは想定できないし、当該主張に係る証拠として請求人が提出した甲第4号証を見ても、それを覆すに足りる事実は見いだせない。
(エ)上記(ア)ないし(ウ)によれば、請求人の製造、販売する「蚊取線香」は、長年にわたり、その商品分野において多大なシェアを占めており、また、請求人は、当該「蚊取線香」について、少なくとも1969年から2017年までの間、毎年、本件花火音を使用したテレビCMを制作し、期間は概ね夏季に限定されるものの、全国で放映したことが推認される。
しかしながら、本件花火音は、上記テレビCMの最終部において映し出される「金鳥」又は「KINCHO」の文字をかたどった仕掛花火の映像に付随する音として、視聴者に聴取、把握され、記憶される態様で用いられているにすぎないから、当該テレビCMが放映されたことをもって、本件花火音のみが、需要者において、商品の出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として認識されるに至っているとはいい難い。
その他、請求人の主張及び同人提出の甲各号証を総合してみても、本件花火音が、その使用の結果、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者に認識されていると認めるに足る事実は見いだせない。
(2)まとめ
以上によれば、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であり、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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