sokuhyo

Trademark Appeal Case

位置商標の機能・美感性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−3790(T2018−3790/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第9類「マイクロメータ」を指定商品として,平成27年7月24日に位置商標として登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は,「一般に,商品等の形状は,商品等の機能により相当程度の制約を受けるものであるが,同一の機能を保持しつつも,なお,選択し得る形状に一定の幅があるのが通常である。そして,多くの場合,商品の機能や美感を発揮させるため,または需要者の注意を惹くための装飾等を目的として,商品等の形状として,出所を表示するための識別標識以外の種々の立体的形状が採用され,それに色彩が付されている実情がある。そうすると,本願商標を,その指定商品のフレームの部分に位置を特定して使用しても,これに接する取引者,需要者は,単に商品の美感等を発揮するため又は機能の向上のために採用し得る商品の形状の一形態を表したにすぎないものと理解するにとどまるものであるから,単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示するものと判断するのが相当である。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。また,出願人が提出した証拠からは,本願商標が使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできないから,本願商標が,商標法第3条第2項の要件を具備するということはできない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断

1 商標法第3条第1項第3号該当性について

本願商標は,前記第1のとおり,マイクロメータのフレームの部分の位置が緑色の立体的形状の構成からなる位置商標であって,商標の詳細な説明として,「商標登録を受けようとする商標は,商標を付する位置が特定された位置商標であり,マイクロメータのフレームの部分に緑色の立体的形状を配する構成からなる。」旨の記載がなされ,第9類「マイクロメータ」を指定商品とするものである。

ところで,一般に,商品の形状は,多くの場合,商品に期待される機能をより効果的に発揮させたり,商品の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって,商品の出所を表示し,自他商品を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように,商品の製造者,供給者の観点からすれば,商品の形状は,多くの場合,それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの,すなわち,商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また,商品の形状を見る需要者の観点からしても,商品の形状は,文字,図形,記号等により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し,出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。

そうすると,商品の形状は,多くの場合に,商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり,客観的に見て,そのような目的のために採用されたと認められる形状は,特段の事情のない限り,商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。

また,商品の具体的形状は,商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるが,一方で,当該商品の用途,性質等に基づく制約の下で,通常は,ある程度の選択の幅があるといえる。しかし,同種の商品について,機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば,当該形状が特徴を有していたとしても,商品の機能又は美感に資することを目的とする形状として,それが位置商標であるとしても,商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。その理由は,商品の機能又は美感に資することを目的とする形状は,それが位置商標であるとしても,同種の商品に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから,先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは,公益上の観点から必ずしも適切でないことにある。

さらに,商品に,需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いられた場合であっても,当該形状が専ら商品の機能向上の観点から選択されたものであるときには,それが位置商標であるとしても,商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば,同法第3条第1項第3号に該当するというべきである。その理由として,商品が同種の商品に見られない独特の形状を有する場合に,商品の機能の観点からは発明ないし考案として,商品の美感の観点からは意匠として,それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば,その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが,これらの法の保護の対象になり得る形状について,商標権によって保護を与えることは,商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると,特許法,意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり,自由競争の不当な制限に当たり公益に反することが挙げられる。

(参考:知的財産高等裁判所 平成18年(行ケ)第10555号判決,平成19年(行ケ)第10215号判決,平成22年(行ケ)第10253号判決)

そして,本願商標は,マイクロメータのフレーム部分の位置に緑色が着色された立体的形状であるところ,本願の指定商品を取り扱う業界においては,原審の拒絶査定において示した例のように,マイクロメータのフレーム部分の位置に様々な色彩の立体的形状を配した商品が存在しており,加えて,別掲2において示す例のように,本願商標と近似した立体的形状をフレーム部分の位置に配したマイクロメータが多数存在し,その中にはフレーム部分の位置が緑色に着色されたマイクロメータが存在する事実(別掲2(5))がある。

そうすると,本願商標は,マイクロメータのフレーム部分の位置に緑色が着色された立体的形状を配する位置商標であるから,これを本願の指定商品について使用しても,これに接する需要者は,通常採用され得る立体的形状をフレーム部分の位置に採用したものと認識するにとどまり,その立体的形状について,商品の出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として認識することはないというべきである。

したがって,本願商標は,商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであり,商標法第3条第1項第3号に該当する。

2 商標法第3条第2項について

(1)使用による自他商品識別力の獲得

商標法第3条第2項の規定によれば,同条第1項第3号に該当する商標であっても,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては,同項の規定にかかわらず,商標登録を受けることができるところ,ある標章が同項の規定に該当するかは,出願に係る商標と外観において同一とみられる標章が指定商品又は指定役務とされる商品又は役務に使用されたことを前提として,その使用開始時期,使用期間,使用地域,使用態様,当該商品の販売数量又は売上高等,当該商品又はこれに類似した商品又は役務に関する当該標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきである。

(平成25年1月24日,平成24年(行ケ)第10285号,知的財産高等裁判所第4部判決参照。)

また,商標法は,商標登録の要件について,第3条第1項で,同項に掲げる商標を除き,商標登録を受けることができる旨定め,同条第2項で,前項第3号から第5号に該当する商標であっても,その使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては,同項の規定にかかわらず,商標登録を受けることができる旨定めていることからすると,同条第2項により商標登録が認められるためには,前項第3号から第5号までに該当する商標が,その使用の結果,指定商品又は指定役務の需要者の間で,特定の者の出所表示として我が国において全国的に認識されるに至ったことが必要であるものと解される。

(平成27年7月16日,平成27年(行ケ)第10002号,知的財産高等裁判所第4部判決参照。)

(2)本願商標が商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて

請求人は,「本願商標は商標第3条第1項第3号に該当するおそれがあるとしても,本願商標は,充分なる商品識別力を獲得しており,したがって,同条第2項の規定により商標登録を受けることができるものと確信する。」旨主張し,証拠として,資料1ないし資料19を提出している。

そこで,上記(1)で述べた観点を踏まえ,請求人提出の証拠の内容に照らし,本願商標が,使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているか否かについて,以下検討する。

ア 使用による本願商標の識別性について

(ア)「位置商標『マイクロメータのフレーム部分が緑色』を使用している商品売上推移表」(資料2)には,平成21年より本願商標を使用した商品の販売がなされ,平成27年までの間に,1億3,715万円の売上げがあったことが記載されている。

(イ)商品仕様書(資料4)及び商品発注書(資料5)によれば,本願商標と実質的に同一と認められる色彩に着色された立体的形状をフレーム部分の位置に有するマイクロメータが発注されていることが確認できる。

(ウ)各種チラシ(資料12及び13),製品カタログ(資料15〜19)によれば,フレーム部分の位置に,本願商標と実質的に同一と認められる色彩に着色された立体的形状を有するマイクロメータが掲載されている。

なお,各種チラシのうち資料11及び製品カタログのうち資料14には,本願商標と実質的に同一と認められる色彩に着色された立体的形状をフレーム部分の位置に有するマイクロメータが掲載されていることは認められない。また,展示会等写真(資料10)については不鮮明であり,具体的にどのような商品が展示されていたのか不明である。

そうすると,上記のカタログやチラシによれば,本願商標と実質的に同一と認められる色彩に着色された立体的形状をフレーム部分の位置に有するマイクロメータが,平成24年には広告,販売されていたことが確認できる。

(エ)判断

請求人は,商品売上推移表(資料2)を示して,平成21年より本願商標を付した商品を販売し平成27年までの間に,1億3,715万円の売上げがあったことを主張し,請求人が提出する商標法第3条第2項の証明書(資料3及び資料6〜9)において平成21年1月21日頃から使用している旨の記載があるものの,その日付を証明するような資料の提出はないことから,具体的にいつから使用されていたのかは不明であるが,上記(ウ)によれば,平成24年には,本願商標の色彩及び立体的形状をフレーム部分の位置に有するマイクロメータ(以下「本願商標を有するマイクロメータ」という場合がある。なお,実質的に同一と認められるフレーム部分を有するマイクロメータを含む。)について広告がなされ,販売されていたことが確認できることから,本願商標の使用期間は少なくとも約6年間と認められる。

しかしながら,本願商標を有するマイクロメータの販売数量又販売シェア等の具体的な数値については,これを証明するような証拠の提出もなく不明であるから,本願商標を有するマイクロメータが,どの程度の需要者,取引者の目に触れたのかについても不明である。

また,商品売上推移表については,実際にどのような商品が販売されていたのかを示すような資料の提出はなく不明であり,証明者も請求人の代表者及びその関係者であることから,その信憑性は高いとはいい難く,証明力は低いといわざるを得ない。

さらに,請求人から提出された本願商標の使用実績を示すその他の証拠(資料4,資料12,資料13及び資料15〜19)によれば,本願商標を有するマイクロメータが製造され,請求人が提出した製品カタログや各種チラシに掲載され販売されていたことはうかがえるものの,製品カタログ及び各種チラシについては,どの程度の期間,範囲,数量が頒布されたものなのか不明であること,展示会等写真については,その来場者数等が不明であることなどからすれば,これら広告や本願商標を有するマイクロメータがどの程度の需要者,取引者の目に触れたのかについても不明である。

以上の事実を総合的に考慮すると,請求人の提出に係る証拠からは,本願商標を有するマイクロメータが,平成24年には広告,販売されていたことを認めることができる。

しかしながら,本願商標を有するマイクロメータの販売数量や販売シェア等の具体的な数値については,証拠の提出もなく不明であり,また,本願商標を有するマイクロメータが,展示会等において出展されていたことや,その来場者数等も不明である。

そして,製品カタログ及び各種チラシについては,どの程度の期間,どの範囲に,どれくらいの数量が頒布されたものか不明である。

したがって,請求人が提出しているこれらの証拠によっては,フレーム部分の位置が緑色に着色された立体的形状の構成からなる本願商標は,請求人の商標として全国的に広く知られて,需要者が出願人の業務に係る商品であることを認識できるに至っていると認めることはできない。

イ 「商標法第3条第2項の証明書」(資料3及び資料6〜9)について

提出された56件の「商標法第3条第2項の証明書」によれば,その証明者が,「上掲位置商標(マイクロメータのフレームの部分を緑色とする構成)は,上記指定商品において,上記商標登録出願人の使用に係る位置商標であることが,少なくとも大阪府及び東京都において,平成21年1月21日頃から継続して使用された結果,周知,著名な商標となっていることに相違ないことを証明する。」旨に,同意し署名,捺印していることが確認できる。

しかしながら,該書証は,予め記載された定型文書に日本各地の事業者等が証明日を書き加えた上で,記名押印等をしたものであって,その証明内容の信用性は高いとはいいがたいものであるし,該書証に掲載されている本願商標の説明には「マイクロメータのフレーム部分を緑色とする構成」と記載されており,「立体的形状」の文言がないこと,さらに商標見本として掲載されているものは正面図のみで,背面図がないことから,証明者がどのような形状のフレーム部分について証明をしようとするものであるか不明といわざるを得ない。また,そもそも該書証は「少なくとも大阪府及び東京都において,周知,著名な商標となっている」ことを証明しようとするものであるから,本願商標が出願人の業務に係る商品であることを認識できるものとして,全国的に広く知られた商標となっていることを証明するものとはなっていない。

ウ 本願商標と近似する緑色に着色された立体的形状がフレーム部分の位置に配された他人の商品の存在

本願商標は,マイクロメータのフレームの部分の位置に緑色が着色された立体的形状の構成からなる位置商標であるところ,上記1のとおり,請求人以外の者によって,本願商標に近似する立体的形状がフレーム部分の位置に使用された商品が販売されており,その中には緑色に着色されたものも存在する。

エ 小活

以上からすると,本願商標は,使用をされた結果,出願人の業務に係る商品であることを認識させる位置商標として,需要者において広く認識されているとはいい難いものであるから,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる商標としての識別力を獲得するに至っているとはいえない。

したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備しない。

3 まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであって,かつ,同法第3条第2項の要件を具備するものではないから,これを登録することはできない。

よって,結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。