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Trademark Appeal Case

称呼類似による混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2017−900126(T2017−900126/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5915188号商標の指定商品中、第18類「カーボン製のスーツケース,その他のかばん類,袋物」についての商標登録を取り消す。
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5915188商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成28年6月29日に登録出願、第18類「かばん金具,カーボン製のスーツケース,その他のかばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,皮革」及び第20類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年12月16日に登録査定、同29年1月20日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立ての理由

(1)商標法第4条第1項第11号該当性について

ア 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、以下の登録商標を引用する。

国際登録第1203184号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、2013年10月21日にフランス国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、2014年3月18日に国際登録、第18類「Goods of leather or imitations of leather, namely travel bags, handbags, briefcases (leather goods); wallets, purses not of precious metal.」(参考和訳:革製又は人工皮革製の商品、すなわち旅行かばん,ハンドバッグ,ブリーフケース(革製品),財布,財布(貴金属製のものを除く。))を指定商品として、平成26年12月26日に日本国において設定登録されたものである。

イ 商標の類似

本件商標と引用商標は、中間に位置する「I」の文字の有無の差異のみであるから、外観上類似する。

本件商標より生ずる「モンターニュ」の称呼と引用商標より生ずる「モンテーニュ」の称呼は、いずれも6音よりなり、わずかに中間に位置する「タ」と「テ」の音の差異のみで、しかも、該差異音は、「タ」行に属するものであるから、該差異音が称呼全体に及ぼす影響は大きくない。してみれば、両称呼を一連に称呼するときは、語調・語感が近似し、相紛れるおそれがある。したがって、本件商標は、引用商標と称呼上も類似する。

ウ 商品の類似

本件商標の指定商品中の「カーボン製のスーツケース,その他のかばん類,袋物」は、引用商標の指定商品と類似する商品である。

エ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第15号該当性について

ア 商標「モンテーニュ」(以下「申立人商標1」という。)及び「MONTAIGNE」(以下「申立人商標2」といい、申立人商標1と併せていうときは、以下「申立人商標」という。)は、申立人の業務に係る商品「女性用バッグ」(以下「本件バッグ」という。)について、我が国では、オンライン上で2013年12月27日から使用されてきた。本件バッグの2014年から現在までの販売数量は、40,580個であり(甲25、甲26)、販売価格が1個30万円以上する高額な商品としては多いといえる。また、申立人は、その店舗やオンラインショッピングサイト等で宣伝広告をし、また、ブログや中古品販売用の広告に掲載された(甲27〜甲43)。

したがって、申立人商標は、本件バッグを表示するものとして、本件商標の登録出願前より、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものである。

イ 本件商標と申立人商標との類似性

本件商標と申立人商標1は、前者より生ずる「モンターニュ」の称呼と後者より生ずる「モンテーニュ」の称呼が、前記(1)イと同様、相紛らわしく類似する。

本件商標と申立人商標2は、前記(1)イと同様、称呼のみならず、外観も類似する。

したがって、本件商標は、申立人商標と類似する。

ウ 申立人を中核とするグループ会社は、ファッション、レザーグッズ、ワイン・スピリッツ、香水・化粧品、時計・宝飾品、セレクトショップ及び文化・芸術・ライフスタイルに関する事業を展開し、約70のブランドを有しており(甲3)、かばん類以外にも「携帯用化粧道具入れ,傘」を販売している(甲44、甲45)。

してみると、本件商標の指定商品中の第18類に属する商品は、いずれも申立人の業務に係る商品と関連性が高いものである。

エ 以上によれば、本件商標がその指定商品について使用された場合は、申立人又は申立人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(3)むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中、第18類に係る指定商品について、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。

3 当審における取消理由

当審において、商標権者に対し、「本件商標と引用商標とは、類似する商標であって、かつ、本件商標の指定商品中、第18類『カーボン製のスーツケース,その他のかばん類,袋物』は、引用商標の指定商品と類似する商品であるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるため、商標法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。」旨の取消理由を平成29年9月26日付けで通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。

4 商標権者の意見

(1)本件商標

ア 本件商標の外観

本件商標は、末尾に配された「.」(ピリオド又はドット)部分が非常に大きな存在感を示すため、外観上かかる部分を含めた「MONTAGNE.」全体として観察されるべきである。

イ 本件商標から生ずる観念

本件商標の文字部分の「MONTAGNE」の語は、フランス語を習っていない一般的な需要者・取引者にとっては、馴染みがある言葉ではない一方、本件商標の中では、末尾の「.」(ピリオド又はドット)部分が最も馴染みのある部分であるため、かかる部分にもまた注意が惹きつけられる。

したがって、本件商標は、構成全体をもって特定の観念を直感させない不可分一体の造語として把握されると言うべきである。

ウ 本件商標から生ずる称呼

フランス語の知識の無い一般的な需要者・取引者にとっては、本件商標の「MONTAGNE」の語を「モンターニュ」というフランス語読みで発音することは困難であり、無理やりローマ字読みや英語読みをしようとして、「モンタグネ」又は「モンターネ」と発音すると考えるのが自然である。

一方、末尾の「.」(ピリオド又はドット)部分は、非常に大きな存在感を示すものであるため、かかる部分から「ドット」の称呼が生じ、全体として不可分一体の商標とみるのが自然であるから、「モンタグネドット」又は「モッターネドット」のみの称呼が生ずる。

なお、仮に本件商標の指定商品の分野に特有の事情として、フランス語に明るい需要者・取引者が多く、本件商標からフランス語風の称呼が生ずることがあったとしても、本件商標から生ずる称呼は、「モンターニュドット」のみと言うべきである。

エ 本件商標の取引の実情

(ア)被申立人は、カーボン製自転車及びその周辺製品の企画、製造、販売、その他OEMカーボン製品の企画、製造、販売、セキュリティ機器の企画、製造、販売、防犯カメラの設置・施工を行っており、オリジナルブランド「MONTAGNE.」の製品を含む通信販売、南部鉄器・カーボン家具・カーボン雑貨の企画、製造、販売を行っている(乙5)。

また、被申立人は、12件の登録商標又は出願中の商標を有しており(乙6、乙7)、商標権に対する意識が高く、決して他社のブランドにフリーライドすることなく、特にカーボン製品やセキュリティ製品等について、独自ブランドとして、「MONTAGNE.」を始めとした複数のブランドを守り、育て、事業を展開している。

(イ)オリジナルブランド「MONTAGNE.」

被申立人のオリジナルブランド「MONTAGNE.」は、サンプルが出来上がったのは平成26年2月、発売を開始したのは平成26年10月、実売につながったのが平成26年11月からである(乙8)。

そして現在、被申立人は、カーボン家具・雑貨等、具体的には、家具、小物、西陣織名刺入れ、キャリーケース、アタッシュケース等のカーボン製品について、2件の登録商標を元にオリジナルブランド「MONTAGNE.」を展開している(乙9、乙10)。

本件商標を付したカーボン製品等の商品は、実際に百貨店等の実際の店舗において多数販売され(乙11)、現時点でも多くの百貨店等から「MONTAGNE.」フェアについての出店依頼を多数頂いているほど好評を博している状況である。

また、被申立人は、「楽天市場」等のインターネット上でも「MONTAGNE.」ブランドを展開しており(乙12、乙13)、「MONTAGNE.」ブランドは、特にカーボン家具・雑貨等についての被申立人のオリジナルブランドとして2014年に創設され、2015年頃からは、それ単独で顧客吸引力のある確固たるブランドとして、老若男女を問わず幅広い人々に周知・著名になっている。

(ウ)本件商標の取引の実情のまとめ

以上より、本件商標の取引の実情として、本件商標は、それ単独で顧客吸引力を有するオリジナルブランドとして、本件商標の指定商品の分野を含むカーボン家具・雑貨等について、幅広い人々に周知・著名になっている。

(2)引用商標について

ア 引用商標の外観

引用商標は、全体が明朝体に近い書体で同書同大等間隔の欧文字で一連に書されており、中間の「I」の文字は、他の文字と比較して若干横幅が狭く書されているものの、隣接する「A」の文字の右上部分と「G」の文字の左上部分とが共に凹んで空間を有しているため、その中央に存する「I」の文字は、上部が飛び出て目立つ態様で書されている。

このため、かかる「I」の文字は、他の文字と遜色ない存在感を示しているどころか、両隣の文字が凹んだ空間から上部が飛び出ている態様により、他の文字よりもむしろ際立って存在感を示している。

また、引用商標「MONTAIGNE」においては、「A」の文字を中心として左右対称に4文字ずつ配されており、「A」の文字の左隣の「T」の文字の縦線と右隣の「I」の文字の縦線とが左右対称を助長するかの如くバランス良く配置されているため、「A」の文字を中心としてバランス良く配されている右隣の「I」の文字は、左隣の「T」の文字と共により一層強く印象に残るものである。このため、引用商標に接した需要者・取引者にとって、「I」の文字は、非常に存在感があり、彼らの印象・記憶・連想に非常に大きな影響を与えるべき文字であるといえる。

したがって、引用商標は、中間の「I」の文字が非常に大きな存在感を示すため、かかる部分が見落とされる商標とは考えられず、外観上かかる部分を含めた「MONTAIGNE」全体として観察される商標である。

イ 引用商標から生ずる観念

引用商標の「MONTAIGNE」の語は、「フランスの思想家モンテーニュ」の意味合いを有する(乙2、乙3)。

しかし、欧文字の「MONTAIGNE」の語は、大学生・社会人に必要な語にも含まれない無印のDランクのその他の語であり(乙3、乙17)、フランス人の人名に由来する(乙2、乙3)ものであるから、フランス語を習っていない平均的な需要者・取引者にとっては馴染みのある言葉とは到底いえないし、引用商標の指定商品の分野における需要者・取引者が老若男女にわたる様々な人であることに鑑みれば、欧文字の「MONTAIGNE」の語が、即座に「フランスの思想家モンテーニュ」の意味合いを有する語であると認識・理解するとは到底考えられない。

したがって、引用商標は、かかる構成においては、むしろ構成全体をもって特定の観念を想起させない不可分一体の造語として把握されるとみるのが自然である。

ウ 引用商標から生ずる称呼

そして、引用商標の「MONTAIGNE」の語は、上述のとおり、一般に馴染みの無い言葉であるため、無理やりローマ字読みや英語読みをしようとして、「モンタイグネ」、「モンタイネ」、又は「モンテイネ」と発音すると考えるのが自然である。

なお、仮に引用商標の指定商品の分野に特有の事情として、フランス語に明るい需要者・取引者が多く、引用商標とからフランス語風の称呼が生ずることがあったとしても、引用商標から生ずる称呼は、「モンテーニュ」のみと言うべきである。

エ 引用商標の取引の実情

引用商標の商標権者は、世界的に著名な「LOUIS VUITTON」及び「ルイヴィトン」ブランドを有している。

そのため、申立人の販売する例えば革製のバッグ等は、「LOUIS VUITTON」及び「ルイヴィトン」ブランドのバッグだからこそ顧客吸引力を有するのであって、引用商標の「MONTAIGNE」ブランドが直接顧客吸引力を有しているわけではない。実際、申立人の提出する甲号証を精査してみても、引用商標は「LOUIS VUITTON」及び「ルイヴィトン」ブランドの中の一つとして表示されているか、併記されて表示されているのみである。

したがって、引用商標の取引の実情として、引用商標は、申立人の有するブランドを示す商標として、それ単独で周知になっているとはいえず、いたずらに類似の幅を拡大して解釈すべき商標ではない。

(3)本件商標と引用商標との類否

ア 外観について

本件商標と引用商標とは、末尾に書された「.」(ピリオド又はドット)部分の有無と中間に書された「I」の文字の有無が相違する。

本件商標及び引用商標の上記相違部分が非常に大きな存在感を示すこと、両商標は、書体も大きく異なり、本件商標がその文字部分から「.」(ピリオド又はドット)部分が飛び出るような態様で書されているのに対し、引用商標は、「A」の文字を中心としてバランス良く配されていることからも、両商標に接した需要者・取引者が両商標から受ける印象は大きく相違し、外観上相紛れるおそれの無い非類似の商標である。

イ 観念について

本件商標及び引用商標は、上記(1)及び(2)のとおり、特定の観念を直感させない造語であるから、両商標は、観念において比較することができない。

なお、仮に本件商標の指定商品の分野に特有の事情として、フランス語に明るい需要者・取引者が多く、本件商標と引用商標とから観念が生ずることがあったとしても、本件商標から生ずる観念は、「山」であり、引用商標から生ずる観念は、「フランスの思想家モンテーニュ」であることから、両者は観念において大きく相違する。

したがって、仮に本件商標と引用商標とから観念が生ずることがあったとしても、本件商標と引用商標とは、観念上相紛れるおそれの無い非類似の商標である。

ウ 称呼について

本件商標から生ずる称呼は、「モンタグネドット」又は「モンターネドット」のみであり、引用商標から生ずる称呼は、「モンタイグネ」、「モンタイネ」、又は「モンテイネ」のみであるから、本件商標から生ずる称呼と、引用商標から生ずる称呼とは、音数が大きく相違するとともに、語調・語感が顕著に相違し、称呼上相紛れるおそれの無い非類似の商標である。

なお、仮に、本件商標と引用商標とからフランス語風の称呼が生ずることがあったとしても、本件商標から生ずる称呼は、「モンターニュドット」のみであり、引用商標から生ずる称呼は、「モンテーニュ」のみであるから、両称呼は、音数が大きく相違するとともに、語調・語感が顕著に相違し、称呼上相紛れるおそれの無い非類似の商標である。

エ 取引実情について

本件商標は、被申立人オリジナルの商品ブランドを示す商標として、需要者・取引者の間で既に認識・理解されており、本件商標と引用商標との間で現実にその商品の出所の混同が生じているという事実は存在しないし、インターネットで「MONTAGNE.」の文字を検索すると、本件商標の指定商品の分野においては、上位には被申立人のブランドのみが検出され、申立人のブランドは検出されない(乙18)。

さらに、被申立人は、大手百貨店において、本件商標の指定商品を含むカーボン製品等について「MONTAGNE.」フェアを開催し、現時点でも多くの百貨店等から「MONTAGNE.」フェアについての出店依頼を受けていることから、本件指定商品の分野におけるプロのバイヤー、一般の需要者・取引者において、本件商標と引用商標とが類似しているとは認識していない。

一方、申立人は、周知性・著名性があり顧客吸引力を有しているのは「LOUIS VUITTON」及び「ルイヴィトン」であって、引用商標では無いことは明らかであるから、現実に混同が生じていない取引の実情の下において、引用商標は、いたずらに類似の幅を拡大して解釈すべき商標ではない。

また、被申立人が実際に本件商標を付して販売している商品は、カーボン製の商品にほぼ限られており、申立人が引用商標を付して販売している革製の商品とは、商品が大きく相違し、価格自体も大きく相違するため、取消理由にかかる本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、同一の類似群コードが付されており類似の商品であるとされているが、実際は、生産部門、販売部門、原材料、品質、用途、需要者の範囲のいずれも異なる非類似の商品である。

仮に商品が類似するとしても、本件商標及び引用商標の指定商品の分野の商品は、慎重に選択する選択性の高い商品であるため、需要者・取引者は、自ら商品を手に取り、ブランド、デザイン、色、サイズ、素材、価格等を確かめて、商品を購入するか否かを決めるという取引の実情が存在する。そして、本件商標に関連する家具やキャリーケース、アタッシュケース等は、十万円前後から数十万円にわたる高価な価格で販売されるものであり(乙10)、需要者・取引者は、日用品の購入とは異なり、通常の注意力を超えて慎重に商標を観察して取引にあたると考えられる。ましてや、著名なブランドである申立人の「LOUIS VUITTON」及び「ルイヴィトン」ブランドの商品は、被申立人の商品よりもさらに高価であるため、需要者・取引者は、さらに慎重に商標を観察して取引にあたるというべきである。また、著名なブランドである申立人の「LOUIS VUITTON」及び「ルイヴィトン」ブランドの商品は、その著名性がゆえに類似品や偽物も多く、需要者・取引者は、より一層細心の注意を払って慎重に商標を観察して取引にあたっているといえる。

したがって、取引の実情からして、本件商標と引用商標とが混同を生ずるものではないことは明らかである。

(4)まとめ

以上から、本件商標と引用商標とを総合的全体的に考察すれば、本件商標と引用商標とは、外観、観念、称呼のいずれの点においても、互いに相紛れる恐れのない商標というべきであって、取引の実情も勘案すると、両者は極めて顕著な差異をもって看取されるものといえるから、本件商標と引用商標とは、彼此混同することのない非類似の商標であることは明らかである。

(5)審判決例

以上の主張は、審判決例(乙19)及び併存登録例(乙20)にも表れているとおり、確立した判断であり、これらの登録例の審査・審判の傾向を踏まえ本件商標を観察すれば、本件商標は当然に引用商標とは非類似の商標として登録が維持されるべきものである。

(6)むすび

以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号には該当せず、登録が維持されて然るべきものである。

3 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第11号について

ア 指定商品の類否等について

本件商標の指定商品中、本件登録異議の申立てに係る指定商品は、第18類「かばん金具,カーボン製のスーツケース,その他のかばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,皮革」である。そして、そのうちの「カーボン製のスーツケース,その他のかばん類,袋物」は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品と認められる。また、本件商標の指定商品中、引用商標の指定商品と抵触する上記商品と引用商標の指定商品は、いずれもファッション関連商品の一つといえる。

イ 商標の類否について

(ア)外観について

本件商標は、別掲1のとおり、サンセリフ系の書体で「MONTAGNE」の文字を横書きし、末尾に「.」(ピリオド)を付した構成よりなるものである。

これに対して、引用商標は、別掲2のとおり、セリフ系の書体で「MONTAIGNE」の文字を横書きしてなるものである。

そこで、本件商標と引用商標の外観について対比すると、両者は、書体において相違し、かつ、中間部に位置する「I」の文字と末尾に位置する「.」(ピリオド)の有無の相違を有するものであって、それ以外の文字列を全て同じくするものである。そして、本件商標は8文字、引用商標は9文字の構成よりなり、いずれも決して簡潔な文字構成とはいえないところから、中間部に位置する「I」の文字の有無の相違は、印象に残り難いものであり、また、本件商標中の「.」(ピリオド)にしても、末尾に位置し、文字に比べてかなり小さく表記されているものであるから、見落とされる傾向にあるといえる。さらに、本件商標と引用商標とは、書体において相違するものの、その書体は、格別に特徴的なものではなく、いずれも通常の書体で横書きしたものである。そうすると、これらの相違点が両商標の構成全体に及ぼす印象は僅かなものであるといえる。

したがって、本件商標と引用商標は、外観上近似した印象を与えるものであって、とりわけ、これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合には、外観上互いに紛れるおそれが高いものと認める。

(イ)称呼について

本件商標は、前記のとおり、「MONTAGNE.」の文字及び記号を横書きしてなるものであるところ、その構成中の文字部分の後に配された「.」(ピリオド)は、終止符を認識させるものであり、特に具体的な意味や読みを有するものとは認められない。

また、本件商標の指定商品は、かばん類を始めとするファッション性の高い商品を中心とするものであって、英語のみならずフランス語も普通に採択される業界であることに加え、例えば、末尾が「GNE」で終わるフランスの著名な地名又は公園である「Champagne」を「シャンパーニュ」、「Bourgogne」を「ブルゴーニュ」、「Boulogne」を「ブローニュ」と読むことが一般に広く知られていることからすれば、本件商標は、その構成文字に相応して、「モンターニュ」の称呼を生ずるものである。

引用商標は、前記のとおり、「MONTAIGNE」の文字を横書きしてなるものであるから、本件商標と同様に、その構成文字に相応して、「モンテーニュ」の称呼を生ずるものである。

そこで、本件商標より生ずる「モンターニュ」の称呼と引用商標より生ずる「モンテーニュ」の称呼を比較すると、両者は、いずれも長音を含む5音よりなり、中間部において「タ」の音と「テ」の音の差異を有するものである。そして、該差異音は、子音「t」を共通にする50音図中の同行音であり、かつ、帯有する母音「a」と「e」は、母音三角形の隣同士に位置し、発音する際の口の開き、舌の位置など調音方法が近い音であるから、近似音として聴取されるものといえる。そうすると、該差異音が両称呼全体に及ぼす影響は大きいものとはいえず、両称呼を一連に称呼した場合には、称呼全体の語調、語感が著しく近似したものとなり、称呼上互いに紛れるおそれがあるものと認める。

(ウ)観念について

本件商標と引用商標を構成する文字は、いずれもフランス語であるところ、我が国の一般国民は、フランス語にはさほど馴染みがないこと、フランス語が商標などに比較的多く採択・使用されるファッション関連等の商品分野の取引者・需要者は、その発音については、それなりに発音することができるとしても、その文字(語)の意味を正確に把握することは困難であるとみるのが相当である。

してみれば、本件商標と引用商標は、共に特定の語義を想起させない造語を表したと認識されるとみるのが相当であるから、本件商標と引用商標は、観念において比較することができない。

(エ)以上によると、本件商標と引用商標は、観念において比較することができないものの、外観及び称呼において類似する商標と認めることができる。してみると、本件商標をその指定商品中、引用商標の指定商品と抵触する「カーボン製のスーツケース,その他のかばん類,袋物」について使用した場合には、これに接する取引者・需要者は、その出所について誤認・混同を生ずるおそれがあるものと認める。

ウ したがって、本件商標の指定商品中の第18類「カーボン製のスーツケース,その他のかばん類,袋物」は、商標法第4条第1項第11号に該当するものと認める。

エ 商標権者の主張について

(ア)外観について

商標権者は、本件商標と引用商標とは、末尾に書された「.」(ピリオド又はドット)部分が大きな存在感を示すこと、引用商標の「I」の文字を含め「A」を中心としたバランスの良さにより需要者・取引者が両商標から受ける外観上の印象は大きく相違する旨主張する。

しかしながら、両商標は、いずれも決して簡潔な文字構成とはいえない中で、本件商標における末尾に位置する「.」(ピリオド)と引用商標における「I」の文字の有無の相違以外の文字列を全て同じくするものであるところ、本件商標の「.」部分は末尾に小さく付記的に表されているものであって、その存在により重要な意味合いを意識させるものでもないことから、需要者・取引者にとって存在感のあるものとはいえないし、引用商標中の「I」の文字にあっても、他の文字の半分以下の幅で、決して目を惹く位置とはいえない中間部に配置されていることにより、やはり存在感のあるものとはいえないから、これらの相違点が両商標の構成全体に及ぼす印象は僅かなものといわざるを得ず、商標権者の主張は採用できない。

(イ)称呼について

商標権者は、本件商標の構成中の「.」(ピリオド)部分が大きな存在感を示すことを前提として、本件商標から生ずる称呼は、「モンタグネドット」、「モンターネドット」又は「モンターニュドット」のみであると主張する。

しかしながら、本件商標中の「.」部分は、例えば、インターネットにおけるアドレスを口頭により伝える場合のように、「.」部分についても「ドット」と称して明確に伝えなければその機能を果たすことができない等の事情は存在しないし、本件商標の構成においては、終止符としての意味合いを理解させるものであるから、特に具体的な意味や読みを有するものとは認められない。

してみると、本件商標は、上記イ(イ)のとおり、その構成文字に相応して、「モンターニュ」の称呼を生ずるものであるから、商標権者の主張は採用できない。

(ウ)取引実情について

商標権者は、本件商標と引用商標との間で現実にその商品の出所の混同が生じていない、商標権者が本件商標の指定商品を含むカーボン製品等について「MONTAGNE.」フェアを開催しているが、需要者・取引者において、本件商標と引用商標とが類似しているとは認識されていない、また、商標権者が実際に本件商標を付して販売している商品は、カーボン製の商品にほぼ限られており、申立人が引用商標を付して販売している革製の商品とは、同一の類似群コードが付されているとしても、実際は、生産部門、販売部門、原材料、品質、用途、需要者の範囲のいずれも異なる非類似の商品である旨主張している。

しかしながら,商標権者の主張は、商標権者及び申立人が現在使用している限定された商品、限定された業態における事情を述べるものであるところ、商標の類否判断において参酌されるべき取引の実情とは、その指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指すものであって、単に該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的、限定的なそれを指すものではないと解される(最高裁昭和47年(行ツ)第33号・昭和49年4月25日第一小法廷判決参照)と判示されているように、商標の類否判断にあっては、本願商標の指定商品と引用商標の指定商品について比較するべきであり、引用商標の指定商品は、本件商標の指定商品中「カーボン製のスーツケース,その他のかばん類,袋物」に含まれる商品であって、生産部門、販売部門、用途、需要者の範囲等を同一にする同一又は類似する商品であるから、商標権者の主張は、その前提を欠くものであって、採用することはできない。

(2)商標法第4条第1項第15号について

ア 申立人商標の周知性

(ア)申立人の提出した証拠によれば、以下の事実を認めることができる。

a 申立人及び申立人を中核とするモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)は、主として、婦人用被服、香水、化粧品、時計、宝飾品、靴、かばん類等のファッション関連商品等の製造・販売を行うグループ企業として世界的によく知られている(甲3、甲5)。

b 申立人は、2017年(平成29年)7月現在、我が国において、57店舗を展開していること(甲6)、申立人商標1を表示した本件バッグは、我が国において、2014年(平成26年)1月頃から「So−netブログ」等で紹介され始め(甲27、甲28)、同年8月頃から2016年(平成28年)6月頃には、様々な中古品販売用の「買取情報」サイトに掲載されたこと(甲29〜甲43)、2017年(平成29年)7月頃に、申立人のショッピングサイトにも、様々な商標が付された女性用バッグ(全部で545製品)とともに、申立人商標1が表示された本件バッグも掲載されたこと(甲7)、なお、同時期の、日本向けに本件バッグを紹介する申立人のサイトには、申立人商標1が、米国向けに本件バッグを紹介する申立人のサイトには、申立人商標2が、それぞれ表示された(甲19〜甲24)。

c 本件バッグは、我が国において、2014年(平成26年)には、年間11,294個、2015年には、年間15,011個、2016年には、年間10,702個が、それぞれ販売され、2014年1月頃の発売開始から本件商標の登録査定日(平成28年12月26日)とほぼ同時期までの約3年間に、合計37,007個が販売された(甲25、甲26)。

(イ)前記(ア)で認定した事実によれば、本件バッグに関し、日本での発売開始(2014年(平成26年)1月頃(甲25〜甲27)。なお、申立人は、申立人商標を本件バッグについて、2013年(平成25年)12月27日からオンライン上で使用してきた旨主張するが、この主張を裏付ける証拠の提出はない。)前後から本件商標の登録査定日に至るまでの間に、申立人が雑誌や新聞等のメディアを介して積極的に宣伝広告をした事実を明らかにする証拠はないといっても過言ではない。また、本件商標の登録査定日後の2017年(平成29年)7月の時点において、申立人の「レディースバッグカタログ」のサイトに掲載された申立人の取扱いに係る女性用バッグは、「545製品」が存在し、同サイトにおいて、申立人商標1を表示した本件バッグは、様々な商標を表示したこれら多数の女性用バッグとともに掲載されたことが認められるものの、その掲載方法は、申立人商標1を表示した本件バッグが、申立人の取扱いに係る多数の女性用バッグのうちの1つとして掲載されたにすぎず、特に目立つような態様のものではないから、需要者の印象に強く残るものとはいえない。さらに、本件バッグが、発売開始から本件商標の登録査定日頃までの約3年間に、合計37,007個が販売されたとしても、本件バッグは、その販売価格が30万円前後と極めて高額であるのみならず、そもそも「LOUIS VUITTON」ブランドの女性用バッグは、15万円前後のものから60万円を超えるものもあり(甲7)、全般的に高額なバッグとして、我が国の需要者の間にも知られているところから、申立人の取り扱う女性用バッグそれ自体の需要者がある程度限定されていたと考えられ、以上を併せ考慮すると、申立人商標は、本件商標の登録出願日(平成28年6月29日)及び登録査定日の時点において、本件バッグを表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたとまで認めることはできない。

イ 出所の混同のおそれ

前記ア認定のとおり、申立人商標は、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、本件バッグを表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。

そうすると、本件商標に接する需要者が、申立人商標を想起又は連想することはないから、本件商標は、これをその指定商品中の第18類「カーボン製のスーツケース,その他のかばん類,袋物」以外の第18類に属する商品(かばん金具,携帯用化粧道具入れ,傘,皮革)について使用しても、該商品が申立人又はこれと組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれのある商標ということはできない。

ウ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(3)むすび

以上のとおりであるから、本件商標の登録は、その指定商品中の第18類「カーボン製のスーツケース,その他のかばん類,袋物」については、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものであり、本件登録異議の申立てに係る指定商品中、その余の商品については、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものと認める。

よって、結論のとおり決定する。

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