結論テキスト
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 異議2018−900029(T2018−900029/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第5993458号商標(以下「本件商標」という。)は,「Omega pleon」の文字を標準文字で表してなり,平成29年3月17日に登録出願,第9類「業務用テレビゲーム機用プログラム,電気通信機械器具,腕時計型携帯情報端末,スマートフォン,電子計算機用プログラム,電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM,レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」及び第42類「機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,デザインの考案(広告に関するものを除く。),電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,機械器具に関する試験又は研究,インターネットにおける電子会議室用のサーバーの記憶領域の貸与,電子計算機用プログラムの提供,電子計算機の貸与」を指定商品及び指定役務として,同年10月11日に登録査定,同年11月2日に設定登録されたものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は,以下の6件であり,いずれも現に有効に存続しているものである(以下,これら6件の商標をまとめていうときは「引用商標」という。)。
商標の態様:「OMEGA」
優先権主張:Switzerland 2001年(平成13年)5月1日
国際登録出願日: 2001年(平成13年)9月24日
指定商品:第14類に属する国際商標登録原簿に記載の商品
設定登録日:平成14年9月27日
商標の態様:別掲1のとおり
登録出願日:昭和25年12月7日
指定商品:第14類に属する商標登録原簿に記載の商品
設定登録日:昭和27年3月7日
書換登録日:平成15年4月9日
商標の態様:別掲2のとおり
登録出願日:昭和47年4月4日
指定商品:第6類,第9類,第16類,第19類及び第20類に属する商標登録原簿に記載の商品
設定登録日:昭和54年3月23日
書換登録日:平成21年4月15日
商標の態様:別掲3のとおり
優先権主張:Switzerland 2001年(平成13年)5月1日
国際登録出願日:2001年(平成13年)7月23日
指定商品:第14類に属する国際商標登録原簿に記載の商品
設定登録日:平成14年12月13日
商標の態様:別掲3のとおり
優先権主張:Switzerland 2007年(平成19年)12月28日
国際登録出願日:2008年(平成20年)6月6日
指定商品:第16類に属する国際商標登録原簿に記載の商品
設定登録日:平成21年10月16日
商標の態様:別掲3のとおり
優先権主張:Switzerland 2008年(平成20年)8月8日
国際登録出願日:2009年(平成21年)1月27日
指定商品:第9類に属する国際商標登録原簿に記載の商品
設定登録日:平成24年11月22日
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その指定商品及び指定役務中,第9類「全指定商品」の登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人「OMEGA」の周知・著名性について
引用商標は,申立人が,腕時計をはじめとする時計及びその他の精密機器並びに宝飾品等について使用し,我が国及び世界中の取引者,需要者の間において広く知られるに至っている著名商標である。
申立人の創業は,1848年,スイスにある時計産業の代表的都市,ラ・ショー=ド=フォンにおいて,時計職人ルイ・ブランが自宅に小さな時計工房を開設したことに始まる。創業者ルイ・ブラン及びその息子たちは,時計製造にアメリカ型のマニュファクチュール(自社一貫生産)による分業方式を取り入れ,極めて高精度の時計を適正な価格で生産するごとに成功した。
その結果,申立人は瞬く間にスイスを代表する時計メーカーに成長した(甲3の1〜7)。
1894年,申立人は,常に高い精度を保つことのできる画期的なムーブメント「Ω(オメガ)」を完成させた。
ギリシヤ・アルファベットの最終文字であることにちなみ,「最高,究極」の意味を込めて付けられたこのムーブメントの名前は,1903年の社名変更の際,「ルイ・ブラン&フレールSAオメガ時計会社」と,初めて申立人の社名に取り入れられた(甲3の1〜7)。「OMEGA」(オメガ,Ω)は,それ以来現在に至るまで124年もの間,申立人により継続して使用された結果,申立人及びその業務に係る製品を表す商標として,世界的な周知・著名性を獲得している。
20世紀初頭には既に世界最大手の高級時計ブランドとして著名であった申立人は,その計時の精度の高さから,のちにスポーツの分野においてもその名を知られることとなる。契機となったのは,1932年に米国ロサンゼルスで開かれた第10回オリンピック大会において,申立人が,大会における全ての競技を単一の時計メーカーとして計測する,史上初の「公式計時」(オフィシャルタイムキーパー)の役割を担ったことによる(甲3の1,甲3の3,甲3の7,甲3の10,甲7の98)。
申立人は,その後も,オリンピック大会において数々の最新の計時・計測技術を開発・導入した(甲4の1〜6,甲7の46,98,106,107)。
なお,申立人とIOCとの間のスポンサー契約は,申立人がオフィシャルタイムキーパーとして100周年を迎える2032年まで既に延長されている(甲3の3,甲4の8)。
一方,申立人の製造に係る腕時計は,アメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士が月面で着用した唯一の腕時計としても広く知られており(甲3),現在では国際宇宙ステーションの備品としても使用されている(甲3の1〜10,甲7の2)。
以上のとおり,申立人の「OMEGA」(オメガ,Ω)は,人類の歴史に残る数々の感動の瞬間に立ち会ってきた信頼性の高い計時用具及びそれを製造する申立人を表す商標として広く知られており,長年にわたり我が国をはじめとする世界中の取引者,需要者の間で周知・著名である事実は疑いようがないのである。
したがって,本件商標の査定時においても継続してその著名性を維持していたものである。
(2)申立人の「OMEGA」製品の売上高
申立人は,1983年,スウォッチ・グループの傘下に入り,スイス及びドイツの時計産業を代表する12のブランドの一つとして,時計宝飾ブランド部門に属している。スウォッチ・グループの各ブランドの2006年における連結売上高をみると,申立人の売上高は,12ブランド中最多の13億2500万フラン(約1470億円)にのぼり,グループの時計売上全体の約3分の1を占めている(甲6の1,2)。スウォッチ・グループ以外も含めた世界の時計ブランド上位10社の概算売上高(2011年)をみると,申立人は,ロレックス,カルティエに続き,世界第3位の売上高(22億3000万フラン,約2480億円)を誇っている(甲6の1,2)。
(3)申立人の「OMEGA」商標の我が国における周知・著名性
申立人の「OMEGA」製品は,本件商標の登録査定時である平成29年(2017年)10月17日及びその出願時である同年3月17日を含め,我が国において,長年にわたり,継続的に,極めて多数の新聞,雑誌,各種刊行物,ウェブサイト等において報道,紹介されるに至っている(甲7の1〜130)。
また,申立人は,「OMEGA」製品及び「OMEGA」(オメガ,Ω)の商標に化体した信用,評判,名声を落とさぬよう,継続的に新聞や雑誌等での広告活動を行っている(甲8の1〜60)。
これらの申立人の不断の努力により,引用商標が付された申立人の「OMEGA」製品は,我が国の一般需要者の間で高い評価を得ている。
(4)小括
以上のとおり,「OMEGA」(オメガ,Ω)は,申立人及び申立人の業務に係る商品を表す商標として,我が国を含む世界中で広く知られているものである。
したがって,「OMEGA」,「オメガ」及び/又は「Ω」の文字からなる引用商標が,本件商標の出願時である平成29年(2017年)3月17日,及び登録査定時である同年10月17日において,我が国の取引者,需要者の間において広く知られた周知著名商標であったことは明らかである。
本件商標は,「Omega pleon」の文字からなるところ,その構成中の「Omega」の文字部分は,全角1文字分ほどの空白によって「pleon」と分離されているため,視覚上,「Omega」が「pleon」と分離観察される外観を呈する。また,本件商標は既成語ではなく,「Omega」と「pleon」という複数の語を組み合わせた結合商標を構成するものである。
そして,本件商標の前半部をなす「Omega」と後半部をなす「pleon」は,その意味内容において,馴染まれた熟語的意味合いを有している等の密接あるいは自然な牽連性はなく,その他両者を常に一体のものとして把握しなければならない格別の事情も見当たらない。寧ろ,上記1に述べたとおり,「Omega」の文字が,申立人が124年もの長きにわたり自らの社名及びその製品を示す商標として使用を継続し,我が国において周知・著名なものとなっている「OMEGA」と文字綴りを同一にするものであるから,そのことが本件商標に接した取引者,需要者をして脳裏に強く印象付けられると考える。他方,本件商標中の「pleon」の文字は,一部の英和辞典に徴するならば,「泳腹」(小エビ・カニ・ロブスターの腹)を意味する英単語であることがわかるものの,例えば,我が国の高校生から大学生及び一般社会人を対象とした辞書である「小学館プログレッシブ英和中辞典」には掲載されていない(甲15の1)。さらに,「pleon」の片仮名表記である「プレオン」の語は,カタカナ語辞典にも掲載されていない (甲15の2)。そうすると,「pleon」の語は,我が国の一般的な需要者にとって広くなじみのある英単語であるとまではいえず,本件商標に接した取引者,需要者にとって,前半部の「Omega」ほどの強く支配的な印象を与える語ではないといえる。これらに鑑みれば,本件商標の構成にあって,「Omega」の部分こそが,本件商標に接する取引者,需要者をして脳裏に強く印象付けられるのであり,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部であるということができる。
これに対し,引用商標は,いずれも「OMEGA」,「オメガ」及び/又は「Ω」の文字からなるものであるところ,上記1に述べたとおり,これらの文字は,申立人が長年にわたり使用を継続した結果,申立人及び申立人の業務に係る商品を示す商標として我が国及び世界中で周知・著名となっていることに鑑みれば,引用商標からは,その構成文字に照応した「オメガ」の称呼とともに,スイスの著名な高級時計メーカー,あるいはその製造に係る商品との観念が生じる。
そこで,本件商標と引用商標とを対比して観察すると,まず,本件商標は「Omega」の文字列を含んでいることが明らかであり,外観において少なくとも引用商標1と類似する。
また,本件商標のうち,「Omega」の文字部分が取引者,需要者に対し強く支配的な印象を与える要部といえるのに対し,「pleon」の文字部分は我が国の一般的な需要者において特段の観念を生じないことに照らすと,本件商標は,「Omega」の文字に照応して「オメガ」の称呼も生じるものといえ,したがって,本件商標の称呼は,引用商標の称呼「オメガ」に類似する。
さらに,観念においても,本件商標は全体として既成語ではなく,特定の観念を生じるとはいえないものであるが,申立人の周知・著名商標と同一の「Omega」の文字列を含んでいることから,スイスの著名な高級時計メーカー,あるいはその製造に係る商品との観念が生じる点において,観念上も,引用商標と相当程度類似し,誤認混同を生じるおそれが極めて高いものであるということができる。
本件商標は,「Omega pleon」の欧文字を横書きに表してなる商標であって,本件商標出願日前の商標登録出願に係る引用商標と類似する商標であり,その指定商品と同一又は類似の商品について使用される商標である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するというべきである。
(1)本件商標と引用商標との類似性
本件商標は,「Omega pleon」の文字から構成されるところ,前記2のとおり,「Omega」の部分を要部とする商標として,引用商標との類似性は極めて高いものである。
(2)引用商標の著名性及び独創性
引用に係る「OMEGA」,「オメガ」又は「Ω」の文字が,申立人の商標として我が国はもちろんのこと世界中で著名である事実は上記したとおりである。そしてその著名性は,我が国の英和辞典やカタカナ語辞典にも掲載されるほどに極めて高度のものである。また,申立人の「OMEGA」の商標は,ギリシャ・アルファベットの最終文字であることにちなみ,「最高,究極」の意味を込めて申立人が製作したムーブメントに付けた「Ω(オメガ)」の名に由来するものであり,十分な独創性が認められる。
さらに,「OMEGA」,「オメガ」又は「Ω」の文字は,引用商標の指定商品との関係において何ら直接的に商品の品質等を表すものではなく,このような文字を採択すること自体,高い顕著性を有しているといえる。
したがって,引用商標の著名性及び独創性は,極めて高いものである。
(3)本件商標と引用商標の指定商品の関連性の程度
ア 第9類「電気通信機械器具,腕時計型携帯情報端末,スマートフォン,電子計算機用プログラム,電子応用機械器具及びその部品,レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」について
本件商標の指定商品中,「電気通信機械器具,腕時計型携帯情報端末,スマートフォン,電子計算機用プログラム,電子応用機械器具及びその部品,レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」は,引用商標3,5及び6の指定商品と同一又は類似する商品として取り扱われており,非常に関連性の高いものである。
イ 第9類「腕時計型携帯情報端末」について
本件商標の指定商品中,「腕時計型携帯情報端末」は,特許庁審査基準において,第14類「腕時計」に類似すると推定するとされており,いわゆる「備考類似」の関係にある。
そうすると引用商標1及び4の指定商品中,第14類「horological and chronometric instruments」,並びに引用商標2の指定商品中,第14類「時計」には,「腕時計」が含まれるところ,これは,本件商標の指定商品中の「腕時計型携帯情報端末」と備考類似の関係にあることからすれば,互いに極めて関連性の高い商品である。
また,「腕時計型携帯情報端末」は,身に着けて持ち歩くことができるコンピュータ,すなわち「ウェアラブルコンピュータ」の一種であり,多くは腕時計のように腕に固定することができるベルトを備えている(甲17の1)。2015年4月に米国のIT企業であるアップル社が「Apple Watch」(アップルウォッチ)を発売して以降,腕時計型携帯情報端末は,腕時計のように常時腕に装着できるほどに小型ながら,スマートフォンと連動させて電子メールや様々なアプリケーションソフトウェアを使うことができるといった利便性の高さが注目され,様々なデジタル機器メーカーにより製造・販売されている(甲17の2,5)。
近年では,我が国の時計メーカー,米国の時計メーカー,スイスの高級腕時計メーカー等,各国を代表する腕時計メーカーが,次々に腕時計型携帯情報端末を発売していることが新聞等のメディアでも度々報道されている(甲17の2〜5)。
これらの報道によれば,時計メーカーが手掛けた腕時計型携帯情報端末は,伝統的な時計製造技術と最先端テクノロジーが融合した,あくまで腕時計の一種として,取引者,需要者の間で位置づけられているといえる。
以上の具体的な取引の実情に照らせば,第9類「腕時計型携帯情報端末」と第14類「腕時計」は,生産者及び販売者が互いに共通しているということができ,また需要者の範囲も一致しているといえる。そして,ともに腕時計の形状をとるものであることから,腕に身に着けて使用する精密機器であるという点においても共通する。
してみると,本件商標の指定商品中「腕時計型携帯情報端末」は,引用商標が著名となっている「腕時計」との関係において,極めて高い関連性を有していることは明白である。
(4)取引者,需要者の共通性
本件商標の指定商品中,上記(3)アの商品は,引用商標の指定商品と同一又は類似するものであり,よって,本件商標の商標権者の取引者,需要者は,申立人の業務に係る商品の取引者,需要者と共通するといえる。特に,本件商標の指定商品中,「腕時計型携帯情報端末」は,近年,申立人のような大手腕時計メーカーにより製造・販売された製品も数多く市場に出回っていることからすれば(甲17の2〜5),「腕時計型携帯情報端末」の取引者,需要者の多くは,引用商標の指定商品である第14類「horological and chronometric instruments」及び「時計」に含まれる「腕時計」の取引者,需要者でもあるといえる。
また,本件商標の指定商品は,いずれも特定の取引者,需要者を対象とするものというよりも,むしろ,広く一般需要者を対象とする商品が含まれているといえる。
他方,引用商標は,申立人の腕時計を表す商標として我が国の取引者,需要者の間で極めて著名であるところ,腕時計の需要者は,あらゆる分野の広範囲にわたる一般の消費者である。よって,引用商標の需要者の中には,本件商標に係る取引者,需要者も当然に含まれていると考えられ,そうとすれば,本件商標の指定商品の需要者と引用商標の需要者とは,相当程度共通するものであるといえる。さらに,腕時計とは,基本的に毎日身に着けるものであって,一日のうち多くの時間を腕に装着したまま過ごすことの多い,極めて実用的かつ身近なファッションアイテムの一つであり,そのような商品に使用される著名な引用商標が,本件商標の指定商品の需要者に強い印象を与え,記憶されることは疑う余地がない。
したがって,本件商標と引用商標の取引者,需要者の共通性は極めて高いものである。
(5)取引の実情
上記(3)イで詳述したとおり,本件商標の指定商品中「腕時計型携帯情報端末」については,近年多くの腕時計メーカーが市場に参入し,外観のデザインや着け心地も従来の腕時計とほとんど変わらない製品を数多く製造・販売しているという実情がある。
また,申立人は,我が国において,引用商標のほか,第14類又は第16類についての商標登録を有している(甲18)。これらの商標はいずれも欧文字からなり,「OMEGA」の語の次に約1文字分のスペースを空けて次の語が結合された,全体で2語からなる商標であって,これらは,本件商標が「Omega」の語の次に1文字分のスペースを空けて「pleon」の語を結合した,いずれも欧文字からなる2語から構成されるものである点と共通する。よって,本件商標は,あたかも,申立人の著名な「OMEGA」ブランドのシリーズの一つとして取引者,需要者に認識されうるものであり,取引上極めて紛らわしいものである。
このような取引の実情のもと,申立人とは何らの関係も有しない本件商標の商標権者が,本件商標「Omega pleon」をその指定商品について使用した場合,あたかも,申立人であるオメガ社,あるいはその関連会社の製造・販売に係る商品であるかの如く,取引者,需要者に誤認を生じさせるおそれがあることは明白である。
(6)ハウスマークとしての使用
上記1(1)で述べたとおり,申立人は,1894年に完成させた画期的なムーブメントの名前である「Ω(オメガ)」を,1903年の社名変更の際,「ルイ・ブラン&フレールSAオメガ時計会社」と申立人の社名にも取り入れた。それ以来,現在に至るまでの長きにわたり,申立人は,「OMEGA」の商標を,申立人を表す大切なハウスマークとして継続して使用するとともに,我が国をはじめとする世界各国で商標登録を行い,その保護に努めている(甲11)。このような申立人の不断の努力により,「OMEGA」は,申立人及び申立人の業務に係る商品を表す商標として,我が国のみならず世界的な著名性を獲得していることは上述のとおりである。
(7)小括
以上の事実等に基づき総合的に勘案すれば,本件商標は,その構成中に,申立人及びその製品を表す商標として周知著名性を有する「OMEGA」商標と同一の文字部分を含む商標であり,また,本件商標の指定商品は,申立人の引用商標の指定商品と同一又は類似し,さらに,広く一般需要者を対象とするものであり,他方,引用商標が申立人の腕時計を表す商標として我が国の一般需要者の間で極めて著名であることからすれば,両商標の使用される商品は,その需要者の範囲を共通にすることが多い。特に,本件商標の指定商品中,「腕時計型携帯情報端末」は,申立人商標が周知著名性を獲得した「腕時計」と極めて高い関連性を有するものであって,取引者,需要者の範囲を共通にする。よって,本件商標を,引用商標と需要者を共通にするその指定商品に使用した場合,取引者,需要者において,本件商標中の「Omega」の文字部分と称呼及び観念を同一にする著名な申立人に係る引用商標を想起して,その商品があたかも申立人又は同人と同一の営業主体の業務に係る商品,又は申立人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の取り扱う業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
そして,本件商標の登録を認めた場合には,引用商標が持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を免れない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
当審において,商標権者に対し,「本件商標は,その指定商品及び指定役務中,第9類『腕時計型携帯情報端末』について使用した場合,これに接する需要者において,引用商標を連想,想起させるものであり,その商品が申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く誤認させ,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから,商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨の取消理由を平成30年7月20日付けで通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。
上記第3の取消理由に対し,本件商標権者は,何ら意見を述べていない。
(1)使用商標について
申立人が本件登録異議の申立ての理由として引用する商標は,「OMEGA」の欧文字からなり(以下「使用商標」という。),同人の業務に係る商品「時計」について使用するものである。
(2)使用商標の周知性著名性について
ア 申立人の提出に係る証拠及びその主張の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
(ア)申立人は,1848年,スイスにある時計産業の都市,ラ・ショー=ド=フォンにおいて,時計職人ルイ・ブランが自宅に小さな時計工房を開設したことに始まり,申立人は,スイスを代表する時計メーカーに成長した(甲3の1〜7)。
(イ)「OMEGA(オメガ,Ω)」の名前は,1903年の社名変更の際,「ルイ・ブラン&フレールSAオメガ時計会社」と,初めて申立人の社名に取り入れられ,それ以来現在に至るまで124年もの間,申立人により継続して使用された。
(ウ)1932年の第10回オリンピック大会において,申立人は,史上初の「公式計時」(オフィシャルタイムキーパー)の役割を担った(甲3の1,3,7,10,甲7の98)。
(エ)申立人の製造に係る時計は,アメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士が月面で着用した唯一の腕時計としても広く知られている(甲3の1〜12,甲5の2〜4,甲7の2)。
(オ)申立人は,1983年,スウォッチ・グループの傘下に入り,スイス及びドイツの時計産業を代表する12のブランドの一つとして,時計宝飾ブランド部門に属し,各ブランドの2006年における申立人の売上高は,12ブランド中最多の13億2500万フラン(約1470億円)にのぼり,グループの時計売上全体の約3分の1を占めている(甲6の1,2)。また,世界の時計ブランド上位10社の概算売上高(2011年)をみると,申立人は,ロレックス,カルティエに続き,世界第3位の売上高(22億3000万フラン,約2480億円)を誇っている(甲6の1,2)。
(カ)申立人の「OMEGA」製品は,本件商標の登録査定時である平成29年(2017年)10月11日及びその出願時である同年3月17日を含め,我が国において,長年にわたり,継続的に,極めて多数の新聞,雑誌,各種刊行物,ウェブサイト等において報道,紹介されるに至っている(甲7の1〜130)。また,継続的に新聞や雑誌等での広告活動を行っている(甲8の1〜60)。
イ 上記アによれば,使用商標は,1903年以来,124年にわたりスイスに生産拠点を築き,その体制を確立した時計メーカーの名称,またその製造する腕時計の名称(商標)であり,使用商標を付した時計は,スイスを代表するものとして,オリンピックの公式計時やNASAの公式時計及び時計雑誌,業界誌,新聞記事等において取り上げられ,注目される存在であったものである。
そうすると,使用商標は,本件商標の登録出願時には,申立人の業務に係る商品「時計」を表示するものとして,取引者,需要者間において広く認識されていると認められるといえる。
(3)本件商標と使用商標の類似性
本件商標は,前記1のとおり「Omega pleon」の欧文字を書してなるところ,その構成中の「Omega」の文字部分は,大文字と小文字の相違はあるとしても,使用商用「OMEGA」と同じつづりであるから,両者の類似性は低くはないといえる。
(4)使用商標の独創性
「OMEGA」の文字は,ギリシャ語のアルファベットの24文字目である「Ω」の文字の表音として知られている成語であるといえるから,独創性の程度は必ずしも高いものではない。
(5)本件商標の指定商品中,第9類「腕時計型携帯情報端末」と申立人の業務に係る商品である「時計」との関連性
本件商標の登録異議の申立てに係る商品中,第9類「腕時計型携帯情報端末」は,腕時計のような形をした,手首に巻いて用いるタイプのウェアラブル端末であり,演算処理や通信といった電子機器の機能に加え時計機能をも有しているものである。
また,腕時計型携帯情報端末は,コンピュターメーカーばかりではなく,腕時計メーカーも製造,販売していることが認められる(甲17の2〜5)。
そうすると,「腕時計型携帯情報端末」と「時計」とは,その性質,用途等において関連性の強い商品であるというのが相当であり,また,需要者を共通にするといえるものである。
(6)出所の混同を生ずるおそれについて
本件商標は,構成全体としては,特定の熟語的な意味合いを有するものとはいえないものであり,その構成中の「Omega」の文字部分は,文字自体の独創性は高くはないといえるものの,申立人の商標として周知となっている使用商標と文字つづりが同じであり,これより生ずる「オメガ」の称呼を共通にするものといえる。
そうすると,本件商標は,少なくとも,「時計」を取り扱う業界においては,その取引者,需要者によって,申立人の周知商標である「OMEGA」と同じつづりの文字を含む構成であると認識,把握され,本件商標の構成中の「Omega」の文字が看者に強い印象を与えるものである。
そして,本件商標の指定商品中の「腕時計型携帯情報端末」と「時計」とは上記(5)のとおり,その用途等において関連性の強い商品であるものというのが相当であり,また,需要者を共通にするといえるものである。
してみると,商品「時計」の分野における使用商標の著名性の程度,引用商標と本件商標の類似性の程度,両商標が使用される「時計」と「腕時計型携帯情報端末」の関連性及び需要者の共通性,取引の実情等を総合勘案すれば,本件商標の登録査定時はもとより登録出願時において,本件商標をその指定商品中「腕時計型携帯情報端末」について使用した場合,これに接する需要者において,引用商標を連想,想起させるものであり,その商品が申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く誤認させ,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
(7)小活
したがって,本件商標は,その登録異議の申立てに係る指定商品中,第9類「腕時計型携帯情報端末」について,商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(8)本件異議申立に係る第9類の指定商品中,「腕時計型携帯情報端末」以外の商品について
第9類の指定商品中,「腕時計型携帯情報端末」以外の指定商品(以下「その余の指定商品」という場合がある。)については,一般に電気通信メーカー,電気機械メーカー等が製造し,家電量販店等の売り場で販売されているものといえる。
他方,使用商標を使用した商品「時計」は,時計メーカーが製造することが多く,小売店の時計売り場において販売がなされているものである。
そうすると,同一の事業者が一般的に両商品を製造,販売等を行っているというべき実情は見出せず,両商品の販売場所,流通経路は相違するから,互いの商品の関連性は乏しく,取引者,需要者の共通性も低いものというべきである。
してみると,本件商標は,引用商標が申立人の業務に係る商品「時計」を表示するものとして知られているとしても,これをその余の指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者が引用商標を連想又は想起するとはいえず,申立人又は申立人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると,その商品について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって,本件商標は,本件登録異議の申立てに係る「腕時計型携帯情報端末」以外の第9類の指定商品については,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(1)本件商標
本件商標は,「Omega pleon」の欧文字を横書きしてなるところ,該欧文字部分は「Omega」の文字と「pleon」の文字との間が一文字程度の間隔があるとしても,構成各文字は同じ書体,同じ大きさで表されており,外観上まとまり良く一体的に看取し得るものである。
そして,本件商標のかかる構成から生じる「オメガプレオン」の称呼も格別冗長とはいえず,一気一連に称呼し得るものである。
ところで,「Omega」の語は「(ギリシア語の最終字母)(ア)最終。最尾。(イ)電気抵抗の単位オームを表す記号(Ω)。(ウ)有機化合物において位置を示す記号の一つ(ω)。(広辞苑第六版 株式会社岩波書店)」の意味を有するよく知られたギリシャ語であり,「pleon」の文字が「泳腹」の意味を有する,一般になじみのない語であったとしても,上記構成態様の本件商標にあっては,「Omega」の文字部分と「pleon」の文字部分を分離した上で,「Omega」の文字部分が自他商品の識別機能を果たすものとして支配的な印象を与えるとして,当該部分に相応した称呼や観念をもって取引に資されることがあるとすべき理由はみいだせない。さらに,「pleon」の文字部分が出所識別標識としての称呼・観念を生じないと認め得る事情を見出すことはできないものである。
そうすると,本件商標は,一連に書された構成全体をもって一体不可分のものとして認識し把握されるとみるのが自然であって,その構成文字全体に相応して,「オメガプレオン」の一連の称呼のみを生じ,特定の観念を生じない造語よりなるものというのが相当である。
(2)引用商標
引用商標1は,「ONEGA」の文字からなるものであり,引用商標3は,「OMEGA」と「オメガ」の文字からなるものであり,引用商標2,引用商標4〜引用商標6は,ギリシャ文字「Ω」と「OMEGA」の文字からなるものである。
そうすると,引用商標は,これより「オメガ」の称呼及び「ギリシャ語の最終字母」程の観念を生ずるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを対比するに,全体の外観においては,それぞれの構成文字に明らかな差異を有するものであり,引用商標2,引用商標4〜引用商標6は,「Ω」のギリシャ文字を有すること及び引用商標3は「オメガ」の片仮名文字を有することにより,両者は判然と区別し得るものである。また,本件商標と引用商標の欧文字部分のみとを対比してみても,両者は,その構成中の「pleon」の文字の有無,かつ,本件商標の欧文字部分が大文字と小文字の組み合わせからなるのに対し,引用商標の欧文字部分は全て大文字で表されていることからすれば,文字構成が異なり,全体として看者に別異の印象を与えるものであるから,時と処を別にして離隔的に観察しても,外観上,相紛れるおそれはないものといえる。
そして,本件商標から生ずる「オメガプレオン」の称呼と,引用商標から生ずる「オメガ」の称呼を比較すると,両者はその構成音数及び「プレオン」の称呼の有無において明らかな差異を有するものであるから,両者をそれぞれ一連に称呼しても全体の音感,音調が著しく相違し,両称呼は,明瞭に区別することができるものであって,称呼上,相紛れるおそれはないものといえる。
さらに,本件商標は,親しまれた既成の観念を有するものでない以上,「ギリシャ語の最終字母」の観念を生じる引用商標とは明らかに区別し得るものであるから,観念上,相紛れるおそれはない。
したがって,本件商標と引用商標とは,称呼,外観及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであり,かつ,他に出所の混同を生じさせるおそれがあるなど,両者が類似するというべき特段の理由は見いだせないから,その指定商品が引用商標の指定商品と同一又は類似のものであるとしても,商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
申立人は,引用商標は,外国で登録され,「OMEGA」(オメガ,Ω)商標は世界中でその著名性が維持されている。また,引用商標の周知・著名性については,我が国の裁判所も明確に認定している事実である。そして,商品又は役務が一般的に類似関係にない商標であっても,商標の周知著名性の程度,商品(役務)の関連性や需要者の共通性等を鑑みて,出所の混同を生じるおそれがあると判断している判決及び審決が存在する旨を主張している。
しかしながら,商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質等を総合的に勘案して,個別具体的に判断すべきものであって,申立人主張に係る判決及び審決例が存在するからといって,本件商標が同号に該当しないことを否定することはできない。
よって,商標権者の主張は,採用することができない。
以上のとおり,本件商標の登録は,その指定商品及び指定役務中,第9類「腕時計型携帯情報端末」については,商標法第4条第1項第15号に該当するものであり,その登録は,同法43条の3第2項の規定により,取り消すべきである。
しかしながら,本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品については,取り消すべき理由がないから,商標法43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
Next Action
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