Trademark Appeal Case
色彩商標と図形結合商標の区別
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2017−13496(T2017−13496/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第29類、第30類及び第43類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成27年4月1日に登録出願されたものである。
そして、願書には、「色彩のみからなる商標」と記載され、商標の詳細な説明については、原審における平成29年1月12日付けの手続補正書により、「商標登録を受けようとする商標(以下『商標』という。)は、色彩の組み合わせのみからなるものである。色彩の組み合わせとしては、赤色(R230,G0,B18)、黄色(R255,G255,B0)、橙色(R243,G151,B0)、緑色(R0,G153,B68)であり、面積比率が大きい中央部が赤色で、その両側に内側から外側に向けて左右対称に黄色、橙色、緑色の三色が配置されてなるものである。配色の割合は、左から順に、緑色3.5パーセント、橙色3.5パーセント、黄色3.5パーセント、赤色79パーセント、黄色3.5パーセント、橙色3.5パーセント、緑色3.5パーセントである。」と補正され、本願の指定商品及び指定役務については、原審における平成29年1月12日付け、及び当審における同年9月11日付けの手続補正書により、最終的に、第43類「飲食物の提供」と補正された。
第2 原査定の拒絶理由の要点
原査定は、「本件商標登録出願の願書には、色彩のみからなる商標である旨の記載があるが、本願商標は、別掲のとおり、上辺及び下辺が平行である横長六角形の内部に色彩を付した図形であるから、図形と色彩の結合からなる商標であり、色彩のみからなる商標を表示したものとはいうことができない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 本願商標の願書の記載
本件商標登録出願の願書には、「色彩のみからなる商標」と記載され、商標の詳細な説明として、「商標登録を受けようとする商標(以下『商標』という。)は、色彩の組み合わせのみからなるものである。色彩の組み合わせとしては、赤色(R230,G0,B18)、黄色(R255,G255,B0)、橙色(R243,G151,B0)、緑色(R0,G153,B68)であり、面積比率が大きい中央部が赤色で、その両側に内側から外側に向けて左右対称に黄色、橙色、緑色の三色が配置されてなるものである。配色の割合は、左から順に、緑色3.5パーセント、橙色3.5パーセント、黄色3.5パーセント、赤色79パーセント、黄色3.5パーセント、橙色3.5パーセント、緑色3.5パーセントである。」と記載されている(補正後)が、同願書の「商標登録を受けようとする商標」の商標記載欄には、別掲のとおり、全体として、上辺及び下辺が平行である横長の六角形を認識させる形状を有して、その左右の2辺に沿って外側から緑色、橙色、黄色を施した山括弧状の図形を層状に左右対称に配し、中央部分に赤色の六角形を大きく表した商標が記載されており、これは「図形と色彩の結合商標」を表したものと認められる。
2 色彩のみからなる商標
商標法第5条第2項第3号にいう「色彩のみからなる商標」は、人の知覚によって認識することができるもののうち、色彩からなるものであり、平成26年の特許法等の一部改正(平成26年法律第36号)により、商標法の保護対象に追加されたものである。
上記法改正の基本的論点が検討された産業構造審議会知的財産分科会の報告書において、「現行制度の保護対象」について、「現行商標法第2条第1項に掲げられた各標章は、いずれも一定の形状を備え、かつ、視覚で認識できるものであるから、形状を備えていない『輪郭のない色彩』や、視覚を認識できない『音』、『におい』等は、現行商標法における『標章』には該当せず、同法の保護を受けることができない。」とした上で、国際的な趨勢や我が国における保護のニーズの高まりを受け、「現行制度において商標登録されない商標の類型」である「『輪郭のない色彩』の商標」を新たに保護対象とすべきとされ、同報告書においては、「『輪郭のない色彩』の商標は、図形等と色彩が結合したものではなく、色彩のみからなる商標である。『輪郭のない色彩』の商標は、複数の色彩を組み合わせたものと、単一の色彩によるものがある。」と記載されている(「新しいタイプの商標の保護等のための商標制度の在り方について」平成25年9月産業構造審議会知的財産分科会)。
上記法改正においては、上記報告書の趣旨を踏まえて、「図形等と色彩が結合した商標」ではなく、「色彩のみからなる商標」が新たに商標法の保護対象に追加された。すなわち、同法改正前は、商標とは、「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」(旧商標法第2条第1項:以下、「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合」を「文字等」という。)と定義されており、これに該当しない、文字等と結合していない色彩のみについては、商標法の保護対象に含まれなかった。そこで、このような色彩のみを新たに商標法の保護対象とするために、同法改正により、商標とは、「人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」と定義され、色彩のみからなる商標が追加されたものである(「工業所有権法(産業財産権法)逐条改正解説(第20版)」特許庁編、「平成26年法律改正(平成26年法律第36号)解説書 第4章 商標法の保護対象の拡充等」特許庁ホームページ(https://www.jpo.go.jp/shiryou/hourei/kakokai/pdf/tokkyo_kaisei26_36/04syou.pdf/))。
このような立法の経緯からすれば、「色彩のみからなる商標」とは、上記法改正前から商標法の保護対象に含まれていた「図形と色彩の結合商標」ではなく、文字等と結合していない色彩からなるものである。
そして、このような「色彩のみからなる商標」について商標登録を受けようとする際には、願書に、「色彩のみからなる商標」である旨(商標法第5条第2項第3号)及び「商標の詳細な説明」を記載しなければならず(同条第4項)、8センチメートル平方の大きさとされている商標記載欄(商標法施行規則第2条(様式第2))に記載する商標は、文字や図形ではなく、視覚上認識できる色彩そのものを「表示した図又は写真」を記載しなければならない(同施行規則第4条の4第1号)。また、「色彩のみからなる商標」を「図又は写真によって記載するときは、なるべく商標登録を受けようとする色彩が全体にわたり表示された図又は写真によって記載する」こととなっている(同施行規則第2条(様式第2)備考7ヨ)。
3 本願商標についての判断
本願商標の願書には、上記1のとおり、「色彩のみからなる商標」である旨の記載及び「商標の詳細な説明」の記載があるものの、「商標登録を受けようとする商標」の商標記載欄には、「色彩のみからなる商標」ではなく、「図形と色彩の結合商標」が記載されている。
そうすると、本願は「色彩のみからなる商標」についての商標登録出願であるにもかかわらず、願書の商標記載欄には「色彩のみからなる商標」が記載されていないものであり、「色彩のみからなる商標」として、商標法第3条第1項柱書に規定する「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」が記載されていないといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、「色彩のみからなる商標」については、商標法上、特に定義はなく、本願商標は「商標登録を受けようとする複数の色彩を表示した図」を表しているものであって「色彩のみからなる商標」に該当する旨主張している。
しかしながら、「色彩のみからなる商標」には、上記2のとおり、「図形と色彩の結合商標」が含まれないことは、商標の定義規定や商標法改正の経緯に照らして明らかであり、本願商標の構成態様は、上記1のとおりであって、「色彩のみからなる商標」ということはできない。
(2)さらに、請求人は、本願商標は平成27年4月の商標審査便覧54.400.01(以下、「審査便覧1」という。)に例示された「色彩のみからなる商標」の記載例と比較して決して複雑とはいえない構成からなるため、色彩のみからなる商標と認められないと判断されるべきでない旨主張している。
しかしながら、審査便覧1における記載の例示は、請求人が指摘する「1.(例4)」や「2.」の例も含め、いずれも8センチメートル平方の商標記載欄の形に合わせて色彩を表示しているものであり、形状を認識させない「色彩」としての「色彩のみからなる商標」の記載例を示したものである。
一方、本願商標は、商標記載欄に、明らかに六角形の形状からなる商標として記載しており、六角形の図形を認識させる本願商標を「色彩のみからなる商標」とみることができないことは前述のとおりである。
(3)また、請求人は、平成27年10月改訂の商標審査便覧54.01(以下、「審査便覧2」という。)が、正方形及び長方形を「特定の文字や図形を認識させない表示」としている法律的な根拠はなく、特定の文字や図形を認識させない表示として商標記載欄に表された色彩の全体の形状を「正方形及び長方形(それらに準じるものも含む)」のみに限定して認めるとすることは極めて不合理であり、六角形の形状の本願商標も「色彩のみからなる商標」として認められるべきである旨主張している。
しかしながら、審査便覧2においては、「色彩のみからなる商標」の商標見本における色彩の表し方について、特定の文字や図形を認識させる表示は色彩のみを表示したものとして認められないとした上で、商標記載欄に表された色彩の全体の形状が商標記載欄の形に準じる正方形及び長方形であれば、特定の文字や図形を認識させない表示として扱い、これを認めることとしたものである。
これに対し、本願は、その商標記載欄に表された商標が明らかに左右両端に山括弧状の形状を有する六角形の図形を認識させる態様のものであるから、これを「色彩のみからなる商標」を表示したものとして認めることはできない。
したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
5 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものであるから、その他の拒絶の理由について検討するまでもなく、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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