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Trademark Appeal Case

商品形状の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−903(T2018−903/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第21類「愛玩動物用トイレ」を指定商品として,平成27年8月13日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)

原査定は,「本願商標は,猫の頭部をモチーフとしたという見た目の美感(美しさとかわいらしさ)又は手入れのしやすさ等の機能に資することを目的として採択されたものといえ,当該形状は美感上又は機能上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものとみるのが相当であるから,商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といわなければなない。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。また,本願商標は,『愛玩動物用(猫用)トイレ』について使用し,全国的に一定程度販売されて販売実績を有すること,雑誌に4回取り上げられていること,及びインターネットにおいて販売されていることは認められるものの,本願商標が,何人かの出所表示として,その商品の需要者の間で全国的に認識されているとはいい難いものであるから,指定商品に使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているものとは認められない。したがって,本願商標は,商標法第3条第2項に該当しない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

3 当審においてした証拠調べ通知

当審において,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,愛玩動物関連商品について,別掲2に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対して,平成30年9月13日付け証拠調べ通知書によってこれを開示し,相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えた。

4 証拠調べの結果に対する請求人の意見(要点)

本願商標の外観的特徴は,真上から見れば白い大きな猫と黄色い小さな猫の2匹の猫の顔が折り重なっている図形であるかのような印象を与える点にあって,これは自他商品識別機能を発揮するために導きだされたものであり,商品の機能を発揮するため,あるいは単に商品の美感を向上させるために導き出されたものではない。また,現実市場においても,本願商標が自他商品識別機能を発揮して使用されている事実を確認することができる。

また,通知書に記載された商品は,いずれも本願商標が有する外観的特徴を備えるものではなく,猫の形をモチーフにしている点以外には,本願商標とは何ら共通点が見いだせない。

5 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号該当性について

ア 立体商標における商品の形状に係る判示について

商品の形状は,多くの場合,商品に期待される機能をより効果的に発揮させたり,商品の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって,商品の出所を表示し,自他商品を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように,商品の製造者,供給者の観点からすれば,商品の形状は,多くの場合,それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの,すなわち,商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また,商品の形状を見る需要者の観点からしても,商品の形状は,文字,図形,記号等により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し,出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。

そうすると,商品の形状は,多くの場合に,商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり,客観的に見て,そのような目的のために採用されたと認められる形状は,特段の事情のない限り,商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。

また,商品の具体的形状は,商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるが,一方で,当該商品の用途,性質等に基づく制約の下で,通常は,ある程度の選択の幅があるといえる。しかし,同種の商品について,機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば,当該形状が特徴を有していたとしても,商品の機能又は美感に資することを目的とする形状として,商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。その理由は,商品の機能又は美感に資することを目的とする形状は,同種の商品に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから,先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは,公益上の観点から必ずしも適切でないことにある。

さらに,商品に,需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いられた場合であっても,当該形状が専ら商品の機能向上の観点から選択されたものであるときには,商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば,商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。その理由として,商品が同種の商品に見られない独特の形状を有する場合に,商品の機能の観点からは発明ないし考案として,商品の美感の観点からは意匠として,それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば,その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが,これらの法の保護の対象になり得る形状について,商標権によって保護を与えることは,商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると,特許法,意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり,自由競争の不当な制限に当たり公益に反することが挙げられる(知的財産高等裁判所 平成18年(行ケ)第10555号判決,平成19年(行ケ)第10215号判決,平成22年(行ケ)第10253号判決)。

イ 本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について

(ア)本願商標について

本願商標は,別掲1のとおり,猫の顔をモチーフにした形状からなる白色の上部容器の底面中央部に網目状の貫通穴を猫の顔に見立てて配し,同様に上部が開放された黄色い略楕円形状の下部容器を組合わせた立体的形状からなるものである。

(イ)愛玩動物用トイレ又は愛玩動物用の商品の形状について

愛玩動物用トイレ又は愛玩動物用の商品を取り扱う業界においては,別掲2のとおり,「ネコトイレ 猫用トイレ本体 可愛い猫の形」,「ネコ型トイレット」,「猫用トイレ ネコ型」といったことをうたった,ネコの顔をモチーフにした形状の商品(猫用トイレ)が販売されており,また,ネコ用グッズ(商品)の中にも,「食べやすい 滑り止め」,「かわいい猫の形」のようにうたった,ネコの顔をモチーフした形状の様々な商品(爪とぎ,ペット用食器,餌やりシャベルなど)が販売されている実情がうかがえる。

そうすると,本願指定商品等の愛玩動物用商品を取り扱う業界においては,ネコの頭部をモチーフにした様々な商品が販売されており,その形状は,商品等の機能や美感を効果的に際立たせるためのものというべきである。

(ウ)判断

以上の状況を踏まえて,本願商標に係る立体的形状を考察すると,本願商標は,愛玩動物の排泄物を通過させる網目状の貫通穴を備えた猫の顔をモチーフにした形状の上部容器と,楕円形の下部容器からなる立体的形状であるところ,網目状の貫通穴は,愛玩動物の排泄物を通過させ,下部容器で受けるための機能的なものというべきであり,手入れのしやすさ等の機能上の理由による形状の選択として予想し得る範囲のものであるというべきであって,商品の機能に資することを目的とする形状として採用されたものというべきである。

また,猫の顔を模した貫通穴の形状及び本願商標の全体形状は,上記(イ)のとおり,愛玩動物用トイレ又は愛玩動物用の商品を取り扱う業界において,ネコの顔をモチーフした形状の商品が,普通に採択されている実情よりすると,その形状がやや特徴的なものであったとしても,それは商品等の美感をより発揮させるために施された形状であるというべきである。

そうすると,本願商標に係る立体的形状は,手入れのしやすさ等の機能又は美感上の理由による形状の選択として予想し得る範囲のものであるというべきであって,その形状がやや特徴的なものであったとしても,それは商品等の機能や美感をより発揮させるために施されたものであり,商品等の形状を普通に用いられる方法の範ちゅうで表示する標章のみからなる商標というべきであるから,本願商標は,その形状に特徴を持たせたことをもって自他商品の識別力を有するものとは認められない。

以上よりすると,本願商標をその指定商品に使用しても,需要者は,商品の形状の一形態を表したものとして理解するにとどまり,自他商品を識別するための標識としては認識し得ないものと判断するのが相当である。

したがって,本願商標は,商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。

(エ)請求人の主張について

請求人は,「本願商標は真上から見れば白い大きな猫と黄色い小さな猫の2匹の猫の顔が折り重なっているような印象を与える独創的な外観的特徴を有するものであり,これは商品の機能を発揮するために導き出されるような立体的形状でもなく,単に商品の美感を向上させるようなものではない。」旨主張する。

しかしながら,上記(ウ)のとおり,本願商標に係る立体的形状は,手入れのしやすさ等の機能又は美感上の理由による形状の選択として予想し得る範囲のものであるというべきであって,商品の機能又は美感に資することを目的とする形状として採用されたものというべきであるから,本願商標は,その形状に特徴を持たせたことをもって自他商品の識別力を有するものとは認められない。

したがって,請求人の上記主張は,採用できない。

(2)商標法第3条第2項該当性について

請求人は,仮に本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとしても,同条第2項の規定により登録を受けることができる旨主張し,その証拠方法として,甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。平成29年5月8日付け提出の甲1は甲2,甲2は甲3,甲3は甲5,甲3の2〜3の5は甲5の2〜5の5,甲4は甲6に読み替える。)を提出している。

ところで,出願に係る商標が,商標法第3条第2項に該当し,登録が認められるかどうかは,使用に係る商標及び商品,商標の使用開始時期,使用期間及び使用地域,当該商品の販売数量等並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して,出願に係る商標が使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるかどうかによって決すべきものである。

そこで,以上の観点を踏まえて,本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて,請求人の提出した証拠及び主張を検討する。

ア 請求人は,本願商標は愛玩動物用トイレのうち,2013年10月から子猫用のトイレ(以下「本件使用商品」という。)について用いられるもので,本件使用商品は,透明の外箱に包装されて販売されており,2015年の一年間で,約55,000台を売り上げ,2017年2月時点の累計販売台数は170,000台を超える。また,販売実績は,2015年に我が国において販売された猫用トイレ全体のうち第4位である旨主張する(甲3,4)。

該証拠によれば,請求人は,本件使用商品を2013年10月から製造,販売しており,2017年2月の時点の約3年間で合計170,000台を販売していることから,ある程度の販売実績があることは認められるが,その販売期間は短いものである。

イ 請求人は,本願商標は,請求人が2013年10月から現在まで継続して「愛玩動物用トイレ」に使用している商標であり,ペット専門誌「ねこのきもち」において定期的に取り上げられている。また,全国のイオンペットで無料配布されるフリーペーパー及びペットショップの店頭に設置されるフリーペーパーにおいて本願商標を紹介する記事が掲載されている旨主張する(甲5の1〜7,6)。

本件使用商品の広告宣伝等については,ペット専門誌,フリーペーパーによって本件使用商品の特徴,使用例等が紹介・広告されているが,需要者に商品の使用例として看取されるにとどまり,立体形状によって商品の出所を認識されたとはいえないものであり,フリーペーパーの配布にしても,その裏付けとなる証拠の提出はない。

ウ 請求人は,日本国内において約200店舗を有し,中国にも店舗を出店しているイオンペット株式会社と提携して,本願商標に関する販売促進キャンペーンを定期的におこなっている旨主張する(甲6)。

この証拠は,2014年5月から2016年6月まで数量限定のカラー企画商品が導入されたこと,2016年3月から上容器と下容器を4色から自由に組み合わせで購入できるキャンペーンが企画されたことを示すにすぎない。

エ 判断

以上を総合して考察すると,請求人の提出に係る証拠からは,本願商標に係る立体的形状のみをもって,請求人の業務に係る商品であることが,日本国内で広く知られているとまでは認めることはできないものである。

したがって,本願商標は,その指定商品である「愛玩動物用トイレ」について使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとはいえず,商標法第3条第2項の要件を具備するということはできない。

(3)まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであって,かつ,同法第3条第2項の要件を具備するものではないから,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

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