Trademark Appeal Case
位置商標の識別力とありふれた形状・位置
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−3136(T2018−3136/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第7類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品とし,平成27年11月2日に位置商標として登録出願,その後,本願の指定商品については,原審における同29年1月6日提出の手続補正書により,第7類「化学機械器具,プラスチック加工機械器具,半導体製造装置,半導体製造用洗浄装置」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標を構成する図形は,単に青色の円図形であると認められる。そして,本願商標の指定商品の取引において,商品の筐体の一部に青の色彩が採用されている商品及び筐体の一部に円形のビューポート(覗き窓)を採用している商品が存在する実情があることからすれば,本願商標に接する需要者・取引者は,指定商品の筐体に普通に使用される円形のビューポートを,青の色彩で表示したにすぎないものと認識するといえるから,本願商標は,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなるものと判断するのが相当である。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第5号に該当する。また,提出された証拠をみても,本願商標が『永年の間,他人に使用されることなく,独占的排他的に継続使用した実績を有するもの』に該当するとはいえず,単に青色の円図形で構成される本願商標を,一般の需要者・取引者はもとより,その指定商品に精通する需要者・取引者をしても,本願商標が出願人の業務に係る商品であることを認識することができるとは直ちにはいい難いと判断するのが相当である。したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備しない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第5号該当性について
ア 商標法第3条第1項第5号は,「極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標」について,このような商標は,自他商品又は役務についての識別力を欠いており,商標としての出所表示機能を果たし得ないものである以上,通常,特定人による独占的使用を認めるのに適しないことから,商標登録を受けることができない旨規定している。
イ 本願商標
本願商標は,別掲1のとおり,「本願指定商品の本体の扉の中央部に設けられたビューポート(覗き窓)の外周の位置に付された青色の肉太のリング状の図形」(以下「本願図形」という。)からなるものである。
そして,位置商標は,「商標に係る標章(文字,図形若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合に限る。)を付する位置が特定される商標(商標法施行規則第4条の6)」とされている。
ウ 本願商標の構成に係る図形について
本願商標を構成する図形は,青色の肉太のリング状の図形(本願図形)よりなるものであるが,本願図形のような形状は,極めて簡単,かつ,ありふれた形状であって,一般には標章の輪郭又は枠を表すためのものとして,普通に採択使用されている実情にあるといえる。
また,本願商標の指定商品を取り扱う業界においては,商品の美感の向上に資する目的のため様々な色彩が用いられているところ,本願図形に係る青色ないしそれに近似する色彩については,原査定において示した例示(別掲2)のとおり,広く一般に用いられている色彩というのが実情である。
そうすると,本願図形は,輪郭図形として普通に採択されている,極めて簡単,かつ,ありふれた形状である肉太のリング状の図形を,広く一般に用いられる青色で着色したものであるから,その色彩を含めた形状は,ありふれた標章と判断するのが相当である。
エ 本願図形を付す位置について
本願図形を付す位置は,上記イのとおり,「本願指定商品の本体の扉の中央部に設けられたビューポート(覗き窓)の外周」であるところ,本願商標の指定商品においては,別掲2(1),(2)のとおり,指定商品の内部における製造又は洗浄に係る対象物がよく見えるようにビューポート(覗き窓)を扉の中央に設けることが,広く一般に行われており,その外周にはビューポード(覗き窓)部分と装置本体の気密を保つために必要なリング状の枠が付されている。
そうすると,本願商標に接する需要者,取引者は,本願商標が本願商標の指定商品の中央に設けられるビューポート(覗き窓)の外周の枠部分を構成するリング状の図形を青色に彩色したものと認識するにとどまるというのが相当であるから,本願図形が付される位置により本願商標が自他商品の識別標識としての機能を有するものとは認められない。
オ 判断
以上からすると,上記ウのとおり,本願図形の形状は,「極めて簡単で,かつ,ありふれた」形状からなる図形であり,また,その図形に付される色彩も,本願商標の指定商品を取り扱う業界において広く一般に用いられている色彩であるから,本願図形は,「極めて簡単で,かつ,ありふれた標章」といえる。
そして,本願図形が,本願商標で特定される位置に付されても,そのことが自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものとは認められないから,これらを総合的に検討すれば,本願商標は,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなるものであり,商標法第3条第1項第5号に該当する。
(2)商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
請求人は,本願商標が仮に商標法第3条第1項第5号に該当するとしても,同条第2項の要件を具備している旨主張し,原審において甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。)並びに当審において証拠資料1及び証拠資料2を提出している。
ア 使用による自他商品識別力の獲得について
(ア)商標登録出願された商標が,商標法第3条第2項の要件を具備し,登録が認められるか否かは,使用に係る商標及び商品,使用開始時期及び使用期間,使用地域,当該商品の販売数量等並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して,出願商標が使用された結果,判断時である審決時において,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否かによって決すべきものであり,商標法第3条第2項の要件を具備するためには,使用商標は,出願に係る商標と同一であることを要するものというべきである(知財高裁平成21年(行ケ)第10388号 同22年6月29日判決参照)。
そこで,以上の観点を踏まえて,本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて,請求人の提出した証拠及び主張を検討する。
(イ)請求人の使用に係る商品及び使用開始時期
請求人は,2005年(平成17年)より,少なくとも,本願商標の出願後の2016年(平成28年)までは,本願商標と同一視される商標を,その指定商品中,「半導体製造用洗浄装置」と認められる小型精密電子部品や半導体基板向けの「小型バッチ式プラズマ処理装置(ドライ洗浄装置)」又は「プラズマクリーナー(洗浄装置)」(製品名:PC−300,PC−1100,以下「使用商品」という。)に使用している(甲1〜甲4)ことは認められる。
しかしながら,使用商品以外の指定商品についての使用に係る証拠の提出はない。
(ウ)使用商品の販売地域,販売台数及びシェアについて
請求人は原審において,使用商品の販売台数は300台にのぼり,そのシェアは70%である旨主張しているところ,この主張を裏付ける客観的な証拠の提出はない。
また,使用商品が国内外において実際に使用されている事実(甲7〜甲10)は認め得るものの,これをもって本願商標が自他商品の識別機能を有しているとは認められない。
(エ)使用商品が掲載された記事及び宣伝,広告について
a 請求人の業務に係る使用商品についての記事が新聞に掲載されているものの(甲2),これらの記事は,2005年に発行された4紙のみであり,このうち本件商標が付された使用商品の写真が確認できるのは僅か2紙(甲2(1),甲2(2))にすぎず,さらに,掲載された写真についても白黒の写真であって,本願商標に係る色彩は確認できない。
b また,請求人は,使用商品の写真を掲載した広告を,月刊誌「応用物理」に2015年(平成17年)3月号より2016年(平成18年)6月号までに計7回掲載している(甲5)ものの,該雑誌は公益財団法人応用物理学会の機関誌(甲6)であることから,一般に販売又は頒布されたものとは直ちに認められず,仮に一般に販売又は頒布されたものとしても,その部数,地域の範囲も不明なうえ,掲載された写真についても白黒の写真であって,本願商標に係る色彩は表示されていない。
c さらに,請求人は,自己のウェブサイトにおいて,使用商品を掲載し(甲1,甲3),使用商品が掲載された請求人のパンフレット(甲4)の印刷総数は,2009年より2014年の5年間に7,000枚である旨主張しているが,請求人のウェブサイトに本願商標を付した使用商品の掲載時期及びその閲覧数,パンフレットを作成した事実及びその頒布の事実と頒布数は不明である。
d 加えて,請求人は,原審において,パンフレットと雑誌広告等を合わせた広告宣伝費が約150万円である旨の主張をしているが,これを裏付ける証拠の提出はなく,また,仮にこの額がパンフレット作成開始した2009年から月刊誌「応用物理」の2016年6月号発行までの7年分とした場合には,年に約21万円にすぎず,この金額も高いものとはいえない。
イ 判断
前記ア(イ)の事実によれば,本願商標の指定商品中,使用商品以外の商品について本願商標の使用は確認できない。
また,前記アによれば,請求人は,本願商標を付した使用商品を2005年(平成17年)より,少なくとも本願商標の登録出願時までは使用していることがうかがえるものの,使用商品の販売台数及びシェアを裏付ける証拠の提出はない。
そして,使用商品に関する記事及び広告についても,新聞に4紙,一般に流通販売しているものと認められない学会の機関誌に7回掲載されたにとどまり,決して多い回数とは認められないうえ,これらに掲載された使用商品の写真は白黒の写真であるから,需要者,取引者は本願商標部分に青色の色彩が付されていることも認識できない。
さらに,広告宣伝費の約150万円との主張についても,これを裏付ける客観的な資料の提出も無く,この額についても多い額とはいえず,使用商品に関するウェブサイトや商品パンフレットについても,その掲載時期,閲覧数や頒布数等が不明であることから,当該ウェブサイトや商品パンフレットによって,本願商標を付した使用商品がどの程度,需要者,取引者の目に触れ,それにより本願商標が記憶されたかについては評価することはできない。
そうすると,請求人が提出した証拠からは,請求人が本願商標を,使用商品を含む指定商品に使用した結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているとは認められないから,本願商標は,商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものではない。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は,「本願商標のように,そのリング部分の幅が十分に大きい場合,そこに様々な任意性・恣意性が生じ,それらは個別に識別力を持つ能力を有するようになる。また,本願商標は,リング部の太さが最も美しく見えるように,したがって需要者の記憶に最も残りやすいように,という目的をもって,その外形と内径の比を熟慮した上で決定されたものである。」旨主張している。
しかしながら,本願商標に接する取引者,需要者は,請求人による本願商標の採択の意図には関わらず,その構成から受ける印象を自由に発想するというのが相当である。
そして,本願商標を付した指定商品に接した取引者,需要者が,その構成中のリング状の図形部分から強い印象を受け,それを記憶し,それにより同業他社商品と区別し,商品の出所を表示するものとして認識していることを認め得る証拠の提出はない。
そうとすれば,本願商標の構成に係る図形は,上記(1)ウのとおり,ありふれた形状の輪郭図形を普通に用いられる方法により表したものというのが相当であるから,この主張を採用することはできない。
イ 請求人は,「本願商標に係る青色を1979年の創業以来,コーポレートカラー及びコーポレートロゴの色として採用しており(証拠資料1,証拠資料2),このことは半導体製造装置業界で広く知られているから,本願商標についても,まずはその色により,取引者,需要者に請求者の商標であることが理解される。」旨主張している。
しかしながら,上記(1)ウのとおり,本願商標の構成中の青色及びその近似色は,一般的に商品等の美感の向上に資する目的のため及び特定の部分を目立たせるというような機能的な目的のために普通に用いられる色彩の一と認められるところ,請求人のコーポレートカラーとする青色を,本願商標の指定商品に使用した場合に,これに接した取引者,需要者が,その色から請求人の業務に係る商品であることを認識するほどに知られていることを認め得る証拠の提出は無い。
そうすると,本願商標の図形部分に付されている青色からは,請求人の使用により自他商品の識別標識を獲得するに至ったものと認めることはできないから,この主張を採用することはできない。
(4)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第5号に該当するものであり,同条第2項の要件を具備しないものであるから,登録をすることができない。
よって,結論のとおり審決する。
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