Trademark Appeal Case
位置商標の識別性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−3372(T2018−3372/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は,別掲1(1)のとおりの構成からなり,第9類「火災報知機」を指定商品とし,平成27年8月24日に位置商標として登録出願されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,火災報知機の発信機の外縁に配された朱色の立体的形状からなるものであるところ,本願の指定商品を取り扱う業界においては,火災報知機の発信機の外縁部分に立体的形状を配したものが,取引・販売等に資されている事実が見受けられることから,本願の指定商品との関係では,火災報知機の発信機の通常採用し得る形態の一部を認識させるものである。そうすると,本願商標を,その指定商品の発信機の外縁部分の位置を特定して使用しても,これに接する取引者,需要者は,単に商品の美感等を発揮するため又は機能の向上のために採用し得る商品の一形状を表したにすぎないものと理解するにとどまるものであるから,単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示するものと判断するのが相当である。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 本願商標について
(1)本願商標に係る標章の形状とこれを付する位置について
本願商標は,別掲1(1)のとおりよりなるところ,本願商標に係る標章を構成する立体的形状は,「(破線で表された商品の形状に対し)垂直に立ち上がっている外周と,外周に向け斜めに立ち上がり外周の縁に接しているすり鉢状の内周からなる環状の立体的形状(以下「本願立体形状」という。)」であって,その本願立体形状が付されている位置は,別掲1(1)のとおりであり,同(2)の「商標の詳細な説明」として,「商標登録を受けようとする商標は,標章を付する位置が特定された位置商標であり,火災報知機の発信機の外縁に付された朱色の立体的形状部分からなる。」旨のとおり,「火災報知機の発信機の外縁」である。
(2)本願商標を構成する色彩について
本願立体形状に施された色彩である「朱」は,「赤い色(広辞苑第6版[株式会社岩波書店])」の意味を有する色であるところ,本願商標の指定商品である「火災報知機」の構造,色を定めている「火災報知設備の感知機及び発信機に係る技術上の規格を定める省令」第32条第8項によれば(P型発信機の構造及び機能)として「外箱の色は,赤色であること。」と定められていることからすると,本願商標の本願立体形状に施された色彩は,本件商標の指定商品「火災報知機」については,法律において定められた色彩といえる。
2 商標法第3条第1項第3号について
(1)商標法第3条第1項第3号は,「商品等の形状は,多くの場合,商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり,商品等の美観をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって,商品の出所を表示し,自他商品を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように,商品等の製造者,供給者の観点からすれば,商品等の形状は,多くの場合,それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの,すなわち,商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また,商品等の形状を見る需要者の観点からしても,商品等の形状は,文字,図形,記号等により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能や美観を際立たせるために選択されたものと認識し,出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。
そうすると,商品等の形状は,多くの場合に,商品等の機能又は美観に資することを目的として採用されるものであり,客観的に見て,そのような目的のために採用されたと認められる形状は,特段の事情のない限り,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。
また,商品等の具体的形状は,商品等の機能又は美観に資することを目的として採用されるが,一方で,当該商品の用途,性質等に基づく制約の下で,通常は,ある程度の選択の幅があるといえる。しかし,同種の商品等について,機能又は美観上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば,当該形状が特徴を有していたとしても,商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状として,商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。その理由は,商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状は,同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから,先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは,公益上の観点から必ずしも適切でないことにある。(知財高裁平成22年(行ケ)第10253号 同23年6月29日判決参照)。」旨判示されている。
そして,本願商標が位置商標であるとしても,本願立体形状の自他商品の識別標識としての機能の有無の判断については,上記判決に準じて判断すべきものと解される。
(2)本願商標の指定商品における同業他社による取引の実情
ところで,火災報知機を取り扱う業界においては,火災報知機の発信機の外縁に環状の立体的形状が赤色によって施されている商品が複数の事業者によって製造,販売されている事実が認められる(原審において提示されたウェブサイト(別掲2〜別掲4)及び平成29年4月3日付け刊行物提出書の株式会社横井製作所発行の「リング型表示灯サークルアイ」のカタログ(別掲5))。
(3)本願立体形状は,別掲1(1)のとおり,垂直に立ち上がっている外周と,外周に向け斜めに立ち上がり外周の縁に接しているすり鉢状の内周からなる環状の立体的形状であるところ,該形状は,請求人の提出した平成30年3月8日付け手続補足書(なお,請求人は,原審においても平成28年10月18日付で,甲第1号証ないし甲第19号証を提出しているが,本審決における各甲号証の号証番号は,当審において提出された証拠の番号とする。)により提出したグッドデザイン賞の広告(甲2)において,請求人の火災報知が「・・・近年の建物にマッチするデザインです。・・・夜間における押しボタンの見やすさが向上・・・視認性も追求しました。」とあることから,本願立体形状は,本願商標の指定商品の美観及び機能の向上のために採択されたものと認められる。
また,その形状が,上記(2)のウェブサイト及びカタログに表された,同業他社による商品の外縁に付されている立体的形状とは,内周部分がすり鉢状である点において異なるものであったとしても,これが,殊更特殊な形状とは認められず「火災報知機」の「発信機」の外縁が通常とり得る形状の範囲を大きく超えるものではないといえる。
そして,本願立体形状が付される位置についても,本願商標の指定商品を取り扱う業界においては,上記(2)のウェブサイト及びカタログに表されているように,商品に立体的形状が施される場合の位置として普通に用いられることの多い外縁部である。
また,上記1(2)のとおり,本願立体形状部分に施された色彩についても,その指定商品との関係では法律において定められた色彩にすぎないから,上記(2)のウェブサイト及びカタログにあるように火災報知機の発信機において普通に使用されている色彩である。
そうすると,本願商標は,構成に係る立体的形状,色彩及びそれが付される位置によって,自他商品の識別機能を有するものとは認められない。
したがって,本願商標に係る位置商標は,その指定商品「火災報知機」との関係においては,これに接する取引者,需要者にはその構成全体として商品等の機能の向上及び美観に資することを目的とする形状,位置並びに法律において定められ普通に使用されている色彩である赤色を表したものと認識するにとどまり,自他商標の識別標識とは認識し得ないものと判断するのが相当であるから,商品の特徴又は形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって,商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,「本願商標は,『朱色立体』のみからなり,指定商品『火災報知機』の発信機の外縁に位置する『リング型表示灯』の立体的形状を表した位置商標であり,本願商標にかかる朱色立体は,競合他社が採用する平たい形状ではなく傾斜形状を設けているところ,商品機能を満たすための必須形状ではなく,指定商品の取引事情をも考慮して採用した出願人独自の特異な形状と認識されるというべきであるから,指定商品の形状をそのものの範囲を超えて,自他商品を識別する標識として機能するというのが相当である。」旨主張している。
しかしながら,本願商標は,別掲1(2)のとおり,「火災報知機の発信機の外縁に付された朱色の立体的形状」であり,本願立体形状が,表示灯である旨の記載はない。
また,本願立体形状が火災報知機の発信機の表示灯を兼ねる部分の形状であったとしても,上記2(2)のとおり,原審において提示されたウェブサイト及び平成29年4月4日付け刊行物提出書における株式会社横井製作所発行の「リング型表示灯サークルアイ」のカタログ(別掲3〜別掲5)の写真において,火災報知機の発信機の外縁が環状の形状によって縁取られており,その環状の形状が表示灯としての機能も果たしている事例が認められる。
そうすると,火災報知機の発信機の外縁が表示灯を兼ねることは,単に商品の視認の性向上を目的として普通に採用し得る商品の機能の一つといえる。
そして,本願商標に係る本願立体形状についても,上記2(3)のとおり,形状自体がその指定商品との関係において通常とり得る商品の外縁の形状の範囲を超えるものではなく,本願商標に接した需要者は,本願商標は,商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状及び位置並びに指定商品について,法律において定められた色彩である赤色を表したものと認識するというのが相当である。
(2)請求人は,「本願商標にかかる朱色立体は,それ自体の美観に資するためだけのものではなく,上述した三次元的位置(配置)との絶妙な調和により朱色立体を含んだ商品全体が洗練された美観を有するように看取されることに貢献を果たす。発信機本体は従来からある製品と変わらないのに朱色立体を備えたとたんに全体として洗練された美観性が看取できる事を考慮すると,出願人の指定商品中における朱色立体はあたかも『標章を付したもの』のように機能しているというのが相当である。」また「本願商標にかかる朱色立体を備えた出願人商品がそのような洗練されたデザインとして認識されることは,2014年度に,グッドデザイン賞の金賞を受賞したことからも客観的に認められ,商品のデザインが独自である。」旨主張している。
しかしながら,請求人の主張及びグッドデザイン賞を受賞した事実は,本願商標が商品の美感に資するために採用されたものであることを認め得るとしても,それが直ちに商品の出所を表示し,自他商品を識別する標識として機能することを証明するものとは認められない。
(3)請求人は,「建築会社等の取引者は出願人を含めた競合各社の商品を一瞥しただけで,その出所を正確に区別できるようになっている。加えて,この業界における出願人商品のシェア率が高いという特別な事情があり,また,本願商標にかかる朱色立体を備えた商品がグッドデザイン賞を受賞した事実は沢山のメディアの紹介等により取引者に既に知られているから,これらの事情を考慮すれば,本願商標にかかる朱色立体が業界内で商標として機能しないはずがないし,次の商品選択の手がかりとなっていることは必至である。」旨主張する。
当該主張は,本願商標が使用による識別性を有するに至っている(商標法第3条第2項)旨の趣旨と解されるものの,請求人の「建築会社等の取引者は出願人を含めた競合各社の商品を一瞥しただけで,その出所を正確に区別できるようになっている。」旨の主張を立証する客観的な証拠の提出は無く,商標法第3条第2項に該当性の判断にあたり,考慮すべき,周知性を認識する主体である本願商標の指定商品の取引者,需要者は,建築会社等の取引者に限られず,建築,リフォーム工事を注文する需要者も含まれると解されるところ,この点についても何ら立証していない。
また,本願商標の指定商品に係る広告の規模,回数,範囲,広告に表された本願商標の態様等も不明である。
さらに,請求人が提出した証拠において,請求人の業務に係る商品が確認できる甲第1号証ないし甲第12号証,甲第14号証及び甲第15号証に表された商品の形状は,本願商標の構成中,垂直に立ち上がっている外周部分は,ほとんど視認できず,(商品が設置されている壁面に対して)円形の外周から内側にすり鉢状に奥まった形状の部分が確認できるのみであって,本願商標と同一形状といえる商品は確認することはできない。
したがって,請求人の提出した証拠からは,本願商標が使用により自他商品の識別標識としての機能を獲得するに至っているとは認められない。
(4)請求人は,「本願商標にかかる朱色立体の形状を含んだと理解される立体商標の登録を既に受けている。したがって,位置商標という権利の取得手続き上で朱色立体の位置を特定しただけの相違でしかない本願商標も登録を認められて然るべきである。」旨主張している。
しかしながら,請求人の主張する立体商標(登録第5788914号商標,甲17。)と本願商標とは,商標の種類及び指定商品の範囲が異なる別異の商標であるから,これを同列とする請求人の主張は失当である。
そして,上記2(3)のとおり,本願商標を本願商標の指定商品に使用するときは,これに接する取引者,需要者は,本願商標が,商品等の特定の部分を目立たせるという機能又は美観に資することを目的とする形状及び位置であり,また,指定商品について法律において定められた色彩である赤色を表したものと認識するにとどまるものであるから,本願商標は,自他商標の識別標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
(5)したがって,請求人の主張は,いずれも採用できない。
4 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから,登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
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