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Trademark Appeal Case

職人仕込の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−1773(T2018−1773/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第29類「牛たん」、第30類「牛たんを用いたべんとう」及び第43類「牛たん料理を主とする飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、平成27年11月12日に登録出願され、その後、本願の指定商品及び指定役務については、当審における同30年2月7日受付の手続補正書により、第29類「牛たん」に補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)

原査定は、「本願商標は、毛筆体で『職人仕込』の文字を縦書きで表してなるところ、食肉・肉製品、飲食店等の食品を取り扱う業界において、ある程度のレタリングを施した構成からなる筆文字による書体は、広く一般に採択、使用されていることからすると、筆文字で表した本願商標の書体も格別特異な構成からなるものとはいえず、それをもって自他商品、自他役務の識別力を具備する商標とは認識されるものではない。また、『職人仕込』の文字は、本願の指定商品の品質や指定役務の特徴を簡潔に表す語として使用されているものであり、『その業における専門の人が作り込んだもの』ほどの意味合いを理解、認識させるにすぎないものであるから、本願商標は、自他商品、自他役務の識別標識としての機能を有しないものである。さらに、出願人は、本願商標は、使用の結果、本願の指定商品及び指定役務について、需要者、取引者が何人かの業務に係る商品又は役務であるかを十分に認識することができる程度に周知性を有していることを主張し、証拠資料を提出しているところ、出願人が提供する商品又は役務において使用されている標章の態様は、本願商標である『職人仕込』の文字を含む『味の牛たん喜助』や『牛タンの喜助』等であり、本願商標のみによって需要者、取引者が何人かの業務に係る商品又は役務であるかを十分に認識することができる程度に周知性を有したものとはいえない。したがって、本願商標は、これをその指定商品及び指定役務に使用しても、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができないものであり、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第6号該当性について

ア 本願商標の構成態様について

本願商標は、別掲1に示すとおりの構成態様からなるところ、これよりは、直ちに毛筆風の書体をもって「職人仕込」の文字を縦書きで表してなるものと看取、把握できるものであり、また、毛筆風の書体自体は、一般に広く用いられているものといえるから、本願商標は、「職人仕込」の文字を普通に用いられる方法の域を脱しない方法で表示するものといえる。

この点について、請求人は、本願商標を構成する毛筆体の書体は、ありふれた毛筆体ではなく、線の一部がかすれたようになっているために筆者の運筆の勢いを感じることができる書体であり、また、縦書きされた四文字において各文字の間が極端に狭く、「仕」の文字の上部は、「人」の文字の下部にめり込むように表されていて、通常のワープロのフォントでは有り得ない構成であるから、その勢いのある太い毛筆体の書体に「職人仕込」の文字が持つ意味合いが加わって、「男らしく、頑固な、勢いのある職人による仕込」という印象、記憶、連想が生じるものであり、さらに、本願商標は、縦書きのひとまとまりのロゴマークとして統一感、一体感があるから、その外観の点において十分なる自他商品識別力を有する商標である旨主張している。

しかしながら、仮に、本願商標が、その書体や文字の配置等について、請求人の主張するような特徴を有するものであるとしても、別掲1に示すとおりの構成態様からなる本願商標が、これに接する取引者、需要者をして、毛筆風の書体をもって「職人仕込」の文字を縦書きで表してなるものとの認識を大きく超える際立った外観上の特徴や特定の意味合いを認識するものなどとはいい難く、また、「男らしくて頑固な、勢いのある職人による仕込」といった印象、記憶、連想を生じるとすることにつき、請求人からそのことを裏付ける客観的な証拠は提出されていないから、請求人による上記主張は採用することができない。

イ 「職人仕込」の文字について

本願商標は、上記アのとおり、「職人仕込」の文字を普通に用いられる方法の域を脱しない方法で表示するものといえるところ、当該文字又はこれと実質的に同一といえる「職人仕込み」の文字は、食品を取り扱う業界においては、その製造若しくは販売又は提供に係る食品について、職人が材料を仕入れ、手間をかけて味付けや調理などして仕込んだものであることを端的に示す語として、それらの宣伝、広告等を行う際に一般に広く用いられており、このことは、本願の登録出願時における指定商品及び指定役務についてはもとより、その後に補正された本願の指定商品についても同様といえる(別掲2に示す原審において示した例及び別掲3に示す例参照)。

そうすると、「職人仕込」の文字からなる本願商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その使用に係る商品が、職人が材料を仕入れ、手間をかけて味付けや調理などして仕込んだものであることを表したものとして認識するにとどまり、自他商品の識別標識として認識することはないとみるのが相当である。

ウ 小括

上記ア及びイによれば、本願商標は、本願の指定商品について使用するときは、取引者、需要者をして、自他商品の識別標識として認識することはないものとみるのが相当であり、何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標というべきである。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。

(2)請求人の主張について

ア 請求人は、原査定が提示した「職人仕込」の使用例は1件のみである上、その1例に係る事業者は、過去に請求人が商品の出所について誤認、混同を生じるおそれがある標章の使用中止を求める警告書を発した結果、使用標章を変更した者であり(甲1、甲2)、このように、請求人が使用する本願商標の顧客吸引力にフリーライドせんとする他の事業者の使用例をもって本願商標の自他商品識別力が否定されることは、本末転倒であるし、また、原査定が提示した他の使用例は、補正後の指定商品「牛たん」に関するものではないから、これらをもって本願商標の自他商品識別力が否定されるべきではない旨主張する。

しかしながら、上記警告は、請求人が有する本願商標と別異の図形商標に係る商標権に基づきなされたものであるから、これをもって、本願商標の顧客吸引力にフリーライドせんとする他の事業者の使用例ということはできない。また、「職人仕込」の文字又は「職人仕込み」の文字は、上記(1)イにおいて述べたとおり、食品を取り扱う業界において、その製造若しくは販売又は提供に係る食品について、職人が材料を仕入れ、手間をかけて味付けや調理などして仕込んだものであることを端的に示す語として、それらの宣伝、広告等を行う際に一般に広く用いられているところ、このような食品業界における一般的な取引の実情が、取引者、需要者を共通にし得る商品「牛たん」には当てはまらないとみるべき特段の事情は見いだせないから、その一般的な取引の実情をもって、本願商標を「牛たん」に使用した場合における取引者、需要者の認識を推し量ることに何ら矛盾はない。

したがって、請求人による上記主張は採用することができない。

イ 請求人は、本願商標を構成する「職人仕込」について、「牛タン」をキーワードにインターネット検索すると、その画像検索結果として、太い毛筆体で堂々と大きく書された本願商標が多数表示される(甲3)ことからすれば、本願商標は、その構成自体に特徴がある外観を有するという点において、一定程度の自他商品識別力を有しているものいえるし、また、本願の指定商品「牛たん」について使用した結果、取引者、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができる程度に周知性を有しているので、十分な自他商品識別力を有するものである旨主張する。

しかしながら、請求人の提出に係る甲第3号証は、検索エンジンである「Google」を用いて、「職人仕込」と「牛タン」とをキーワードとする画像検索をした結果を表示するものといえるところ、その結果は、本願商標の登録出願日後の2018年(平成30年)3月16日におけるものであるし、少なくともその結果の表示自体から請求人との関係が明らかであるとはいい難い上、その結果の表示のいくつかにおいては、本願商標と同一視し得る「職人仕込」の文字からなる標章が見受けられるものの、当該標章は、箱様のものの表面に他の文字や図形等と組み合わせられた態様でのみ表されているものであるから、これらをもって、本願商標が、その構成全体に特徴がある外観を有するという点において、一定程度の自他商品識別力を有しているなどとはいい難く、まして、それを「牛たん」について使用した結果、取引者、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる程度に周知性を有しているなどとはいえない。

したがって、請求人による上記主張は採用することができない。

(3)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものであって、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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