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Trademark Appeal Case

周知商標と混同のおそれ

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2018−900361(T2018−900361/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第6078850号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第6078850号商標(以下「本件商標」という。)は,「ZUNOW」の文字を標準文字で表してなり,平成29年5月12日に登録出願,第12類「自転車,自転車の部品及び附属品」を指定商品として,同30年8月10日に登録査定され,同年9月7日に設定登録されたものである。

2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標(以下「引用商標」という。)は,「ZUNOW」の文字からなり,申立人の創業者及び申立人が「自転車」について使用し,需要者の間に広く認識されているとするものである。

3 登録異議の申立ての理由

申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第10号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。

(1)緒論

申立人の創業者である蔭山照雄(以下「蔭山」という。)は,1965(昭和40)年,大阪府堺市にて「ZUNOW」との自転車ブランド(以下「ZUNOWブランド」という。)を立ち上げた(甲1 ほか)。

1965(昭和40)年の創業以降,ZUNOWブランドは,蔭山の確かな技術により,徐々に知名度を上げていくこととなり,広く自転車業界一般にその名が知られることとなった(甲1〜甲6。ZUNOWブランドの自転車に関するインターネット上の記事は多数あるので抜粋した。)。

もっとも,1995(平成7)年頃から,蔭山の身体的理由等により,ZUNOWブランドの自転車はその生産量を減少させることとなったが(生産は続いていた。),2016(平成28)年12月1日,蔭山は,吉浦正章(以下「吉浦」という。)及び川中正裕と共に,ZUNOWブランドの自転車の生産及び販売を主な目的とする申立人を設立し,本格的に活動を再開した(甲6,甲7)。

その後,申立人は,ZUNOWブランドをより広く展開するべく事業活動を行っていたところ,「ZUNOW」の自転車をー切取り扱ったことのない商標権者によって,本件商標の登録出願がなされた。

(2)商標法第4条第1項第10号該当性

上述のとおり,蔭山は,1965(昭和40)年頃からZUNOWブランドを用いて自転車製造業を展開しており,自転車専門雑誌に掲載されるなどして,「ZUNOW」の自転車といえば蔭山が製造した自転車を意味するものであると,当時から広く自転車業界一般に認知されていた(甲1)。

また,その認知度は衰えることはなく,現在においても,ZUNOWブランドといえば,蔭山(及び申立人)が製造したものを指すことは広く知られており,インターネットの検索サイトにおいて,「ZUNOW」と検索すれば,蔭山(及び申立人)が製造したものを意味する記載が多数見受けられることからも,本件商標がZUNOWブランドの自転車を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていることは明らかである(甲2〜甲6)。

したがって,本件商標は,他人の業務である蔭山(及び申立人)の自転車製造に係る商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されている商標であって,その商品である自転車について使用するものであるから,商標法第4条第1項第10号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第15号該当性

万が一,本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当しないとしても,本件商標は以下のとおり,同項第15号に該当する。

ア 商標法第4条第1項第15号にいう「出所の混同のおそれ」があるかどうかは,商標の構成自体のみについて判断すべきではなく,商標以外の諸般の事情も参酌して判断すべきである。

イ 引用商標は,1965(昭和40)年頃から,蔭山が製造した自転車に付されるブランドであることが一般的に広く認識されていることは既に述べたとおりであって,仮に,蔭山とは全く関係のない第三者が,「ZUNOW」との商標を用いて自転車を製造し,これが市場に流通することとなれば,需要者において出所の混同が生じることは明らかである。

また,2016(平成28)年12月1日,「ZUNOW」の名を冠した「ZUNOW BYCICLE合同会社」との法人が設立されたことにより,蔭山が代表社員として記載されている法人登記等の公的証明が,いかなる者も取得し得る状況が作出された現状においては(甲8),需要者において「ZUNOW」との表示がなされた自転車であれば,蔭山(及び申立人)が製造したものを意味するものと混同して解釈される危険性は一層高まっているものといえる。

したがって,本件商標は,申立人の法人登記がなされた時点以降,本件商標が表示された自転車は蔭山(及び申立人)が製造したものであるとの混同を生じさせる具体的な危険性を有するものであることは明らかであって,商標法第4条第1項第15号に該当する。

(4)商標法第4条第1項第19号該当性

ア 本件商標が需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であることについては,既に述べたとおりである。

イ 本件商標が「不正の目的をもって使用をするもの」であることについては,次のとおりである。

(ア)商標権者がZUNOWブランドの製品を取り扱っていないこと

商標権者の作成にかかるホームページを詳細に見ても,ZUNOWブランドが付された自転車を取り扱っている形跡は全く見受けられない(甲9〜甲11)。

これに加え,既に述べたとおり,ZUNOWブランドが蔭山(及び申立人)の製造する自転車を表示するものであると広く一般的に知られており,かつ,商標権者が自転車を専門的に取り扱っている事業者であることからすれば,商標権者はかかる事情についても当然確知しているものと判断せざるを得ないところ,商標権者は,それでもなお本件商標の登録出願を行ったとの事実からすれば,蔭山又は申立人との関係で,何らかの不正の利益を得る目的,他人に損害を与える目的その他取引上の信義則に反するような目的を持っていると判断せざるを得ない。

(イ)関連事実

申立人の代表社員の吉浦は,平成28年12月1日の設立の前後を通じて,合同会社NYC(以下「NYC」という。)との間で,ZUNOWブランドの自転車の販売を展開するための事業提携に関する協議を行っていたが,平成29年1月頃から,申立人とNYCとの関係が悪化し,両社の間で紛争が発生し,当該紛争は両当事者が弁護士を通じて紛争の解決を図る事態にまで発展し,解決を見ないまま月日が経過した。

そうした中,申立人が「ZUNOW」の商標を登録出願しようと準備していたところ,本件商標が平成29年5月に登録出願されている事実が明らかとなった。

かかる事実を受け,申立人が調査したところ,商標権者は,NYCが日本国内において取扱店鋪とされている「AXMAN」とのブランドの自転車を取り扱っており,商標権者とNYCとが一定の関係性を有している事実が明らかとなった(甲9〜甲11)。

かかる事実に加え,上記NYCと申立人との間で発生した紛争の経緯及びその時期からすれば,本件商標は,上記紛争に関連して,何らかの「不正の目的をもって使用するもの」であると思料せざるを得ない。

ウ 小括

以上の事実から,本件商標が蔭山及び申立人との関係で,何らかの不正の利益を得る目的,他人に損害を与える目的その他取引上の信義則に反するような目的,すなわち「不正の目的」をもって使用するものであると判断せざるを得ず,本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。

(5)商標権者の提出に係る意見書について

本件商標は,その登録出願後,申立人が刊行物等提出書を提出し,商標法第4条第1項第10号に該当するとの拒絶理由通知書が発送され,出願人(商標権者)から意見書(以下「本件意見書」という。)が提出され,その後,登録査定された。

申立人は,特許庁が本件意見書の内容を踏まえて登録査定したものと思料するが,本件意見書は以下のとおりその論理が極めて薄弱であり,不合理な内容が記載されているものであって,申立人は本件意見書を踏まえてなされた登録査定については到底是認できない。

ア 本件意見書の論拠が極めて薄弱であること

商標権者は,本件意見書において,「ZUNOW BICYCLE合同会社」に所属している蔭山が長年に渡って同ブランドを利用してきた事実については何ら否定することなく,近時設立された申立人に焦点を当てて論点をすり替え,あたかも自身の主張が正しいかのように述べている。

少なくとも蔭山が長年にわたって「ZUNOW」ブランドを使用しており,広く自転車業界においてその名が知れ渡っていることは自転車業界において周知の事実であることから,仮に申立人に関して商標法第4条第1項第10号の要件を満たさないとしても,蔭山に焦点をあてて本件を見れば,少なくとも本件商標を認めることになると,蔭山との関係で出所混同のおそれがあり,また,蔭山が長年にわたって「ZUNOW」ブランドを使用してきた事実を不当に取り扱うことになるのは論をまたない。

したがって,「他人」とは申立人のみならず,同社の発起人である蔭山もこれに該当することは明らかであり,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。

イ 権利濫用について

既に主張している状態において,商標権者が「ZUNOW」という英語にも存在しない文字列をたまたま思い付いたなどという事態が有りうるはずがなく,商標権者は,本件商標について申立人あるいは蔭山がこれを自転車のブランドとして長年にわたって利用してきたことを知りながら,同人らを狙い撃ちし,商標法における先願主義を悪用して本件商標の出願を行っていることは明らかである。

このような出願行為は権利の濫用にほかならず,かかる点を放置して商標登録を認めることは,商標法の趣旨(目的)に反することは疑いようがない。

(6)結語

以上のとおり,本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当することは明らかであり,同号に該当しないとしても,同項第15号又は同項第19号に該当する。

4 当審の判断

(1)引用商標の周知性について

ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,次のとおりである。

(ア)申立人は,平成28年12月に設立された法人であり,自転車の製造,自転車に関する付属品の製造などを行っている(甲8)。

(イ)申立人の代表社員の一人である蔭山氏(以下,申立人と合わせて「申立人等」という。)は,1965(昭和40)年から引用商標「ZUNOW」の文字を付した自転車及びその部品(以下「申立人等商品」という。)の製造販売を行っていた(甲1,甲4,甲6,甲8)。

(ウ)申立人等商品は,「現時点での最高のスポーツ車を集めて一冊にまとめ,...90年度初頭の成果を長く残したい」との企画のもとで,1990(平成2)年6月に発行された雑誌「ニューサイクリング6月増刊」に掲載された(甲1)。

(エ)申立人等商品は,1995(平成7)年頃から生産が減少し,2013(平成25)年頃にはほとんど生産されず,ヴィンテージ市場で取り扱われる程度であったが(甲4,甲6),2009(平成21)年ないし2017(平成29)年においてもインターネットのブログなどで取り上げられている(甲3〜甲6)。

(オ)申立人等は,平成28年10月に「自転車用バッヂ ゴールド」などの商品を発注した(甲7)。

(カ)申立人等商品の売上高,販売数量など販売実績を示す主張はなく,その証左も見いだせない。

イ 上記アの事実からすれば,申立人等は1965(昭和40)年頃から申立人等商品の製造販売を行っていたことが認められ,申立人等商品は1990(平成2)年頃には需要者の間である程度知られていたことがうかがえる。

しかしながら,申立人等商品は1995(平成7)年以降その生産が減少し,2013(平成25)年頃にはヴィンテージ市場で取り扱われる程度であり,かつ,申立人等商品の販売実績を示す証左は見いだせないから,本件商標の登録出願の日前ないし登録査定時において,申立人等商品は,需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。

そうすると,申立人等商品に付される引用商標も,本件商標の登録出願の日前ないし登録査定時において,他人(申立人等)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。

なお,申立人は,平成28年10月1日を受注日とする同人宛と認められる注文請書を提出している(甲7)が,これによれば,申立人が自転車関連商品を取り扱っていることがうかがえるものの,申立人等商品の販売の事実は確認できないから,引用商標の周知性を基礎付けるものといえない。

(2)商標法第4条第1項第10号及び同項第15号について

本件商標及び引用商標は,上記1及び2のとおり,いずれも「ZUNOW」の文字からなるものであるから,同一又は類似の商標であること明らかである。

しかしながら,上記(1)のとおり引用商標は,他人(申立人等)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。

そうすると,本件商標は,これに接する取引者,需要者が引用商標を連想又は想起するものということはできない。

してみれば,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者をして申立人等の使用に係る引用商標を連想又は想起させることはなく,その商品が他人(申立人等)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものといえない。

(3)商標法第4条第1項第19号について

ア 不正の目的

申立人は,引用商標は申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている,商標権者は本件商標を付した商品を取り扱っていない,及び商標権者は申立人と紛争が生じている合同会社NYC(NYC)と一定の関係性を有しているなどとして,本件商標は不正の利益を得る目的,申立人等に損害を与える目的などの不正の目的をもって使用するものである旨主張している。

しかしながら,引用商標は上記(1)のとおり,申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,また,商標権者とNYCとの一定の関係性とは同一のブランドの自転車を取り扱っているということであり,そのことをもって商標権者がかかる紛争に関連しているとみるのは困難である。

さらに,他に,商標権者が現在まで本件商標を付した商品を取り扱っていないことを考慮しても,本件商標が不正の目的をもって使用をするものであると認めるに足る事情は見いだせない。

したがって,本件商標は,不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。

イ 商標法第4条第1項第19号該当性

上記(2)のとおり本件商標と引用商標は同一又は類似の商標であるが,上記(1)のとおり引用商標は申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,上記アのとおり本件商標は不正の目的をもって使用をするものと認められないものである。

してみれば,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当するものといえない。

(4)むすび

以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第10号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。

よって,結論のとおり決定する。

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