sokuhyo

Trademark Appeal Case

称呼類似性:語尾音の有無

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2018−900121(T2018−900121/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第6019273号商標の指定商品中、第6類「非鉄金属及びその合金,建築用又は構築用の金属製専用材料,海洋構造物構築用の金属製専用材料,金属製管継ぎ手,金属製フランジ,金属製金具(安全錠・鍵・鍵用金属製リング・南京錠を除く。)」についての商標登録を取り消す。
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第6019273号商標(以下「本件商標」という。)は、「ZAMS」の欧文字を標準文字により表してなり、平成29年1月23日に登録出願、第6類「非鉄金属及びその合金,建築用又は構築用の金属製専用材料,海洋構造物構築用の金属製専用材料,金属製管継ぎ手,金属製フランジ,金属製金具(安全錠・鍵・鍵用金属製リング・南京錠を除く。),ルアー用金属材料,釣り用の小魚の姿を模した擬餌を形成する金属材料」及び第28類「釣り具,釣り用おもり,釣り用仕掛け」を指定商品として、同年10月26日登録査定、同30年2月16日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由として引用する商標は、以下のとおりである。

1 使用商標

商標の態様:ZAM

使用商品 :融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板

2 引用商標

(1)登録第4365777号商標(以下「引用商標1」という。)

商標の態様:ZAM(標準文字)

指定商品 :第6類に属する商標登録原簿に記載の商品

出願日 :平成10年9月22日

設定登録日:平成12年3月3日

(2)登録第4365778号商標(以下「引用商標2」という。)

商標の態様:ザム(標準文字)

指定商品 :第6類に属する商標登録原簿に記載の商品

出願日 :平成10年9月22日

設定登録日:平成12年3月3日

(3)登録第4637134号商標(以下「引用商標3」という。)

商標の態様:ZAM(標準文字)

指定商品 :第6類に属する商標登録原簿に記載の商品

出願日 :平成13年12月19日

設定登録日:平成15年1月17日

(4)登録第5484949号商標(以下「引用商標4」という。)

商標の態様:ZAM(標準文字)

指定商品 :第6類に属する商標登録原簿に記載の商品

出願日 :平成23年9月30日

設定登録日:平成24年4月6日

(5)登録第4539964号商標(以下「引用商標5」という。)

商標の態様:ZAM(標準文字)

指定商品 :第6類に属する商標登録原簿に記載の商品

出願日 :平成12年9月29日

設定登録日:平成14年2月1日

(6)登録第4539966号商標(以下「引用商標6」という。)

商標の態様:ザム(標準文字)

指定商品 :第6類に属する商標登録原簿に記載の商品

出願日 :平成12年9月29日

設定登録日:平成14年2月1日

(7)登録第5236829号商標(以下「引用商標7」という。)

商標の態様:サムズ(標準文字)

指定役務 :第35類に属する商標登録原簿に記載の役務

出願日 :平成19年5月22日

設定登録日:平成21年6月5日

なお、引用商標1ないし引用商標7は、現に有効に存続しているものであり、以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標中、第6類の指定商品は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第7号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであると申立て、その理由を要旨いかのように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第79号証を提出した。

1 商標法第4条第1項第11号について

(1)商標の類否

ア 称呼について

本件商標は欧文字「ZAMS」を標準文字で横書きしてなるところ、当該文字は、特定の意味を有さない造語である。

本件商標からは「ザムズ」又は「ザムス」の称呼が生じる。

一方、引用商標1ないし引用商標6からは、その構成全体に相応した「ザム」の称呼が生じ、引用商標7からは、その構成全体に相応した「サムズ」の称呼が生じる。

本件商標から生じる称呼と、引用商標1ないし引用商標6から生じる称呼を比較するに、両者は、称呼聴別上、最も重要となる語頭音において強く発音される濁音「ザ」と、第2音「ム」の音とで共通し、一方、語尾音の「ズ」又は「ス」の有無において差異を有する。差異音「ズ」又は「ス」は、明確に聴取されにくい語尾に位置し、少なくとも清音「ス」は、それ自体微弱な摩擦音であり弱く発音されるだけではなく、発声上、前に位置する「ム」の音に吸収されるため、一層弱く聴取される。結果、需要者等においては、両称呼を明瞭に聴別することはできない。

加えて、過去の審決において、語尾に「ズ」の音、又は「ス」の音の有無の差異があるとしても、称呼上類似すると判断されている事例が多数発見される(甲3〜甲17)。

これより、本件商標と引用商標1ないし引用商標6は、類似の商標である。

次に、本件商標から生じる称呼と引用商標7から生じる称呼を比較するに、両者は、語頭音の「ザ」と「サ」とで差異を有する。

しかしながら、当該差異音「ザ」と「サ」とは、発音の位置・方法において近似した摩擦音であるため、両称呼は全体の語調・語感が極めて近似しており、需要者等においては、両称呼を明瞭に聴別することはできない。

加えて、過去の審決において、語頭に「ザ」の音と「サ」の音の有無の差異があるとしても、称呼上類似すると判断されている例がある(甲18、甲19)。

これより、本件商標と引用商標7は、類似の商標である。

イ 外観について

本件商標と、引用商標1及び引用商標3ないし引用商標5との外観を比較するところ、両者は、「ZAM」の文字を共通にし、異なるところは、語尾における「S」の文字の有無の差のみであるから、「ZAMS」の文字に接する取引者・需要者は、「S」の文字が語尾に位置していることとも相侯って、外観上大部分を占める「ZAM」の文字部分を特に印象強く感受し、語尾における「S」の文字の有無の差は軽視しやすいものとみるのが相当である。

したがって、本件商標と、引用商標1及び引用商標3ないし引用商標5とをそれぞれ離隔的に観察した場合、外観印象においても、紛れ得る(甲3、甲20、甲21)。

ウ 観念について

本件商標は、一般の英語辞書には掲載されていない造語であるから、本件商標からは特定の観念は生じない。

また、引用商標1ないし引用商標7も、一般の国語辞書及び英和辞書等には掲載されていない造語であるから、特定の観念は生じない。

よって、本件商標と引用商標1ないし引用商標7は、観念上比較することはできない。

(2)指定商品の類否

本件商標の指定商品中、第6類「非鉄金属及びその合金,建築用又は構築用の金属製専用材料,海洋構造物構築用の金属製専用材料,金属製金具(安全錠・鍵・鍵用金属製リング・南京錠を除く。),ルアー用金属材料,釣り用の小魚の姿を模した擬餌を形成する金属材料」は、引用商標1ないし引用商標7に係る指定商品と同一又は類似である(甲1、甲2)。

(3)小括

以上のとおり、本件商標と引用商標1ないし引用商標7とは、称呼及び外観の点においても相紛らわしい類似の商標であり、その指定商品も同一又は類似している。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。

2 商標法第4条第1項第15号について

(1)使用商標の著名性について

ア 申立人及び使用商標について

申立人は、創業100年以上を数える、鉄鋼業界において国内第1位・世界第3位の粗鋼生産量を誇る「新日鐵住金グループ」のグループ企業であり、申立人単独でも国内第4位の規模を誇っており(甲22)、鉄鋼業界では著名な企業である。

使用商標「ZAM」は、申立人が世界で初めて工業生産化に成功した高耐食性の「溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板」(甲23 以下「申立人商品」という。)を指し示す名称として、申立人が独自に創作し、1998年9月22日に出願(引用商標1)した後、少なくとも2000年5月には指定商品「鉄及び鋼」について使用を開始している(甲24)。

申立人は、現在まで約18年間に渡り、使用商標を使用した申立人商品を継続して製造・販売しており(甲25〜甲28)、現在では申立人の売上の多くを担う主力商品になっている(甲29、甲30)。

2013年には、国内だけでなく申立人の米国子会社「Wheeling−Nisshin,Inc(ウィーリング・ニッシン)」においても申立人商品の生産・販売が行われるに至っており、国内と同様に海外でも生産・販路を現に拡大している。

また、現在では「ZAM PLUS(ZAM+)」「黒ZAM」といった主力商品から派生した商品も開発し(以下「ZAM」及びこれらを含めたものを「ZAMシリーズ」という)、ZAMシリーズについても商標登録(甲79)を行っているほか、申立人は経営戦略上のコア製品の筆頭としてZAMシリーズを挙げており、今後もZAMシリーズに係る商品の生産・販売を強化していく。

イ 使用商標を使用した申立人商品の実績・認定規格等

申立人は2000年から現在まで約18年間に渡り、使用商標を使用した申立人商品を販売している(甲25〜甲27)。申立人が継続して多大なる企業努力を行った結果、使用商標を使用した申立人商品は様々な民間事業・公共事業において採用され、数々の機関から認証取得ないし規格登録が行われている(甲31〜甲42)。

ウ 他社による使用商標を使用した申立人商品の取扱い

使用商標を使用した申立人商品は、主に製品の材料として使用されており、多くのメーカー・商社によって使用商標を使用した申立人商品を素材とした製品の販売が多く行われており、各メーカー・商社ともに使用商標を使用した申立人商品を素材とした製品を取り扱っていることをアピールしている(甲43〜甲58)など、需要者等においても求心力・注目度の高い著名な商品であることが伺える。

エ 展示会の開催

申立人は、自社製品を紹介する展示会を精力的に開催して、ZAMシリーズを筆頭として、積極的に対外的にもアピールを行っている(甲33、甲59〜甲70)。

オ 受注高、市場占有率、宣伝等

使用商標を使用した申立人商品は需要が高く、ZAMシリーズの受注高は日新製鋼全社で約7万トン/月(甲71)、国内の受注高は約6万トン/月で推移し(甲29)圧倒的な市場シェアを獲得するに至っている。例えば、高耐食性溶融めっき鋼板の分野では、ZAMシリーズが約80%もの市場シェア(2014年度)を占めている(甲72)。

また、TOKYO MX「企業魂」において、申立人商品が紹介されている(甲73)。

カ 小括

以上より、使用商標は、少なくとも指定商品「鉄及び鋼」について現に著名性を獲得していることは明らかである。

(2)出所の混同について

ア 本件商標と「ZAM」との類似性が極めて高いものであることは、前記1のとおり。

また、使用商標の著名性については前記(1)のとおりであり、創作性の程度については、使用商標「ZAM」の語は申立人が創作した造語であり、恣意的商標、示唆的商標、記述的商標、総称的商標のいずれにも該当するものではなく、一般に最も創作性の程度が高いとされる造語商標に分類される。

イ 使用商標に係る商品と、本件商標の指定商品中、第6類「非鉄金属及びその合金」とは、それぞれ成形品の材料として用いられるが、近年、日本企業が直面する事業の多角化の傾向に伴い、特性の違う両者を取り扱う事業体は増加傾向にある(甲49〜甲52)。

本件商標の指定商品中、第6類「建築用又は構築用の金属製専用材料,海洋構造物構築用の金属製専用材料,金属製管継ぎ手,金属製フランジ,金属製金具(安全錠・鍵・鍵用金属製リング・南京錠を除く。),ルアー用金属材料,釣り用の小魚の姿を模した擬餌を形成する金属材料」は、上述のとおり、様々なメーカー・商社にて使用商標を使用した申立人商品を材料とした製品は販売され、使用商標を使用した申立人商品が材料として使用されている旨が記載されている(甲43〜甲52)。また、建築用の金属材料に「ZAM」が使用されている事実もある(甲43)。

また、申立人商品を生産し、申立人の関連会社で申立人商品を材料にして、様々な加工・成形を施した製品が販売されている(甲41)事実からも、申立人の生産する使用商標を使用した申立人商品が多種多様な分野の製品に利用されていることが分かる。

以上より、本件商標に係る指定商品と申立人の商標「ZAM」に係る商品との関連性は極めて高い。

ウ 上記イのとおり、商品の需要者等も共通している。

エ 広義の混同について

使用商標は「鉄及び鋼」の商標として著名性を獲得しているため、本件商標に接した需要者等は、商標及び商品等が類似していることも相侯って、本件商標「ZAMS」を申立人の商標「ZAM」を使用した商品であると誤認するか、又は、上述したZAMシリーズが現に存在することから、「ZAM」と1文字といった構成上の共通性もあいまって、「ZAM」に「S」(特に、等級として「S」は高性能を意味する)を付加した新たなZAMシリーズとして誤認することによって、本件商標権者(以下「商標権者」という)が申立人と何らかの関係があると誤認される。

(3)小括

商標権者と申立人は、釣り具メーカーと鉄鋼メーカーの違いはあるものの、使用商標は鉄鋼業界で著名であり、また、申立人のZAMシリーズを材料とする多種多様な製品が生産され、流通している実情がある。そして、これらの実情を全て考慮すると、商標権者が本件商標を第6類の指定商品について使用した場合、これに接する需要者等は、商標権者と申立人とが経済的又は組織的に何等かの関係があると誤認し、その商品の出所について混同を生ずる。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

3 商標法第4条第1項第7号について

商標権者のウェブサイトや動画共有サイトでの宣伝ならびに「ZAMS」の製品パッケージによると(甲75〜甲78)、商標権者は、「鉛よりも軽いオリジナルの素材『ZAMS』を使用することで〜」や「ZAMS\非鉛超硬低比重合金」など、金属材料(非鉛低比重合金)を特性とするルアーの名称として「ZAMS」を採択されたようである。

すなわち、商標権者は従来とは異なる新たな金属素材「ZAMS」を用いることで、ルアーに新たな特性が備わり、それを商品の特性として謳うことで、その他商品との差別化を行っている。一方、申立人のZAMシリーズは、高耐食性や錆びにくさ、加工の容易性等の特徴をアピールしている優れた商品であり、鉄鋼分野で既に広く知られているものである。すなわち、両者の商品は共に金属の特性を備えている点で共通する。

また、商標権者は、ルアーに採用するオリジナルの金属材料を独自開発していることから、鉄鋼・金属分野については一般に想定される需要者等以上の情報及び知識を有していると考えるのが自然である。そして、申立人の商標「ZAM」や「ザム」等は多数登録され、最も古い商標登録としては引用商標1(出願日:1998年(平成10年)9月22日、登録日:2000年(平成11年)3月3日)が存在することから、商標権者は、本件商標の出願時点において、当該商標「ZAM」を認識していた可能性が極めて高いと考える。

よって、商標権者は、少なくとも本件商標の登録時点において、鉄鋼メーカーである申立人の広く知られた使用商標に化体した信用及び優位性にフリーライドする目的を持っていたと考える。

したがって、本件商標は、公序良俗、社会一般の道徳観念、公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神、さらには国際信義の観点からも認められるべきでなく、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 むすび

以上のとおり、本件商標の指定商品中、第6類の指定商品は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第7号に該当するものである。

第4 本件商標の取消理由

当審において、商標権者に対し、「本件商標は、その指定商品中、第6類『全指定商品』について、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨の取消理由を内容とする取消理由通知を、平成30年9月14日付けで通知した。

第5 商標権者の意見

本件異議に係る取消理由通知書により、本件商標は、その指定商品中、第6類について、商標法第4条第1項第15号に違反したとしているが、本件商標の指定商品の第6類のうち、少なくとも「ルアー用金属材料,釣り用の小魚の姿を模した疑似を形成する金属材料」(以下「本件釣具材料」という。)については、取消理由に該当しない。

1 使用商標は、申立人商品に使用するものであり、申立人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとの認定に異論はない。

2 本件商標と使用商標の類似性の程度において、本件商標と使用商標は類似性の程度は高いとするが、このことは査定時において審査された事項である。

また、使用商標の周知著名性及び独創性の程度において、「ZAM」の申立人商品は、高耐食性の「溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板」とされ、甲第23号証などに、Zinc(鉛)、Aluminum(アルミニウム)、Magnesiumの頭文字を組み合わせたもと解される記事が記載されている(甲23)。一般に金属材料の呼び名として、合金の組成元素の頭文字を組み合わせて呼ぶことはよく行われることである。

一方、本件商標「ZAMS」は、商標権者が鉛フリーに関する製品開発において研究中の、亜鉛−スズ系合金の組成金属元素の、Zn(鉛)、Al(アルミニウム)、Mg(マグネシウム)、Sn(スズ)の頭文字を組み合わせたものでる。

商標権者は、レジャーの魚釣りや漁業で使用する錘のメーカーである。錘に使用されてきた鉛が動物に有害であることから、鉛が使用されない鉛フリー製品が世界的に望まれており、商標権者においても、鉛フリーの製品開発を志向しており、地方独立行政法人北海道立総合研究機構との共同研究を実施し、その成果を特許出願している。

この研究をもとに、製品化の展開の中で本件商標を出願したものでる。

3 本件商標の指定商品と申立人商品間の関連性の程度について及び取引者・需要者の共通性について

引用商標の指定商品の「鉄及び鋼、非鉄金属及びその合金」のうち、「鉄及び鋼」についてはめっき鋼板、「非鉄金属及びその合金」についてはめっき材料であると思料される。

「非鉄金属及びその合金」材料は、一般に高価であることから、大型の構造物等にそのものを使用することは考えられず、申立人商品のように少量で済むめっき等へ利用されるものと思料される。

したがって、「非鉄金属及びその合金」そのものは小型製品への利用に限られ、本件商標の指定商品が「非鉄金属及びその合金」である根拠がここにある。

また、申立人商品は、「高耐食性の溶融めっき鋼板」(甲24など)とも称する一次製品の供給者であって、需要者はこれを原材料として購入し二次製品に加工することが推測される(甲40など)。

これに対して商標権者など、金属を溶融して成形する鋳造などの手段を主体とするメーカーでは、合金材料を購入することはなく、製造過程で組成元素を配合して合金化する。

特に、本件商標の指定商品の「本件釣具材料」については、「非鉄金属及びその合金」が、前記のとおり主に鋳造で製造され釣具として最終製品とする。

したがって、少なくとも「本件釣具材料」は、申立人商品である「高耐食性の溶融めっき鋼板」を含む類似の一次製品や、「高耐食性の溶融めっき鋼板」をその原材料とすることが容易に想起される金属製品及び金属材料ではないので、本件商標の指定商品と申立人商品間の関連性の程度、及び、取引者・需要者の共通性についての関連性は極めて低いものである。

4 出所の混同のおそれについて

本件商標の第6類の指定商品中、「本件釣具材料」に限定すれば、申立人商品間の関連性の程度が極めて低く、取引者・需要者が共通することはない。

したがって、商標権者が本件商標を、その指定商品中「本件釣具材料」に使用した場合に、これに接する需要者が、その出所を申立人と何らかの関係がある商品であるかのように混同することはない。

第6 当審の判断

1 商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)使用商標の周知著名性

申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する使用商標は、「ZAM」の欧文字からなり、同人が世界で初めて工業化に成功した商品、高耐食性の「溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板」(以下「申立人商品」という。)について使用するものである。

申立人は、創業100年以上を数える、鉄鋼業界において国内第1位・世界第3位の粗鋼生産量を誇る「新日鐵住金グループ」のグループ企業であり、申立人単独でも国内第4位の規模を誇っており(甲22)、鉄鋼業界では著名な企業である。

そして、申立人が製造、販売する使用商標を使用した申立人商品は、すくなくとも2000年(平成12年)5月に販売を開始し(甲24)、以後、現在に至るまで継続して製造・販売しており(甲25〜甲28)、申立人の主力商品となっている(甲29、甲30)。

申立人が継続して多大なる企業努力を行った結果、申立人商品は様々な民間事業・公共事業において採用され、数々の機関から認証取得ないし規格登録が行われている(甲31〜甲58、甲60〜甲64、甲66〜甲73)。

申立人商品は、国内での受注高は月に6万トン程で推移しており(甲29)、2014年度(平成26年)の時点で、「高耐食性溶融メッキ鋼板」の分野で80%の市場シェアとなっている(甲72)。

そうすると、使用商標を使用した申立人商品の取引の実情からすれば、使用商標は、本件商標の登録出願の日(平成29年1月23日)前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、申立人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであり、周知著名性の程度は、極めて高いものとみるのが相当である。

(2)本号の判断基準

本号における「混同を生ずるおそれ」の有無は、ア)当該商標と他人の表示との類似性の程度、イ)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、ウ)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度、エ)並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、オ)当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(最高裁判決 平成10年(行ヒ)第85号)。

(3)本件商標と使用商標の類似性の程度

本件商標は、上記第1のとおり「ZAMS」の欧文字からなり、使用商標は上記第2のとおり「ZAM」の欧文字からなるものである。

そこで、両商標を比較すると、上記1(2)の、使用商標と、その構成文字を同じくする引用商標Aとの比較からすれば、両商標は類似するとまではいえないながら、本件商標は、その構成中の第1文字から第3文字までを、著名な使用商標の構成文字「ZAM」と同一とし、相違するところが第4文字目の「S」の有無のみであることからすれば、その類似性の程度は高いものである。

(4)使用商標の周知著名性及び独創性の程度

使用商標の周知著名性は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願の時ないし査定時において極めて高いものである。

また、使用商標は我が国で親しまれた外国語である英語の辞書等に掲載されていない造語であって、その独創性の程度も高いといえる。

(5)本件商標の指定商品と申立人商品間の関連性の程度

本件商標の指定商品は、上記第1のとおりであるところ、その第6類の指定商品中、「非鉄金属及びその合金,建築用又は構築用の金属製専用材料,海洋構造物構築用の金属製専用材料,金属製管継ぎ手,金属製フランジ,金属製金具(安全錠・鍵・鍵用金属製リング・南京錠を除く。)」は、申立人商品を含む類似の商品である「非鉄金属及びその合金」及び申立人商品を、その原材料とすることが容易に想起される金属製品及び金属材料であることから、関連性の程度が高いものであること明らかである。

しかしながら、第6類の指定商品中、「ルアー用金属材料,釣り用の小魚の姿を模した擬餌を形成する金属材料」、すなわち本件釣具材料については、その用途を釣り具の製造用に限定された商品であり、その取引量も多いとはいえない。一方、申立人商品は、汎用性が高く、様々な商品の材料となり得、大量に取引される商品であることから、両者の関連性の程度は高いとはいえない。

(6)取引者・需要者の共通性等

本件商標の指定商品中、第6類「非鉄金属及びその合金,建築用又は構築用の金属製専用材料,海洋構造物構築用の金属製専用材料,金属製管継ぎ手,金属製フランジ,金属製金具(安全錠・鍵・鍵用金属製リング・南京錠を除く。)」と申立人商品は、上記(5)のとおり同一のもの又は関連性の程度が高いものであるから、両商品に共通する取引者・需要者は少なくないものといえる。

しかしながら、第6類の指定商品中、本件釣具材料については、その取引者・需要者を釣り具を製造するメーカーに限定するものであるから、両商品に共通する取引者・需要者は少ないものといえる。

(7)出所の混同のおそれ

上記(1)ないし(6)のとおり、本件商標はその構成中に使用商標の構成文字「ZAM」を有し、類似性の程度が高いこと、使用商標の周知著名性の程度は本件商標の登録出願の時ないし査定時において極めて高いこと、使商標の独創性の程度も高いこと、また、本件商標の指定商品中、第6類「非鉄金属及びその合金,建築用又は構築用の金属製専用材料,海洋構造物構築用の金属製専用材料,金属製管継ぎ手,金属製フランジ,金属製金具(安全錠・鍵・鍵用金属製リング・南京錠を除く。)」と申立人商品間の関連性の程度が高いこと、及び取引者・需要者が共通することが少なくないことに照らし、本件商標の指定商品中、第6類の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、その登録出願の時及び査定時において、商標権者がこれをその指定商品中、第6類「非鉄金属及びその合金,建築用又は構築用の金属製専用材料,海洋構造物構築用の金属製専用材料,金属製管継ぎ手,金属製フランジ,金属製金具(安全錠・鍵・鍵用金属製リング・南京錠を除く。)」に使用した場合、これに接する需要者がその構成中の周知著名性が極めて高い「ZAM」の文字部分に着目し使用商標を想起、連想することが少なくないものと判断するのが相当である。

してみれば、本件商標は、その登録出願の時及び査定時において、商標権者がこれをその指定商品中、第6類「非鉄金属及びその合金,建築用又は構築用の金属製専用材料,海洋構造物構築用の金属製専用材料,金属製管継ぎ手,金属製フランジ,金属製金具(安全錠・鍵・鍵用金属製リング・南京錠を除く。)」に使用した場合、これに接する需要者が使用商標を想起、連想し、当該商品を申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。

しかしながら、本件商標の指定商品中、第6類「ルアー用金属材料,釣り用の小魚の姿を模した擬餌を形成する金属材料」については、申立人商品とは、その商品の関連性、取引者及び需要者の共通性は、いずれも低いものであるから、これに本件商標を使用しても、これに接する需要者が使用商標を想起、連想し、当該商品を申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるとはいえない。

(8)小括

したがって、本件商標は、その指定商品中、第6類「非鉄金属及びその合金,建築用又は構築用の金属製専用材料,海洋構造物構築用の金属製専用材料,金属製管継ぎ手,金属製フランジ,金属製金具(安全錠・鍵・鍵用金属製リング・南京錠を除く。)」について、商標法第4条第1項第15号に該当する。

2 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標について

本件商標は、上記第1のとおり、「ZAMS」の欧文字を標準文字により表してなるところ、その構成文字は、特定の意味を有する語として知られていたり、辞書等に掲載されている等の事情もないことから、特定の意味を有しない造語と認められる。

そうとすれば、本件商標は、その構成文字に相応して「ザムズ」及び「ザムス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものといえる。

(2)引用商標について

ア 引用商標1ないし引用商標6について

引用商標1ないし引用商標6は、上記第2のとおり、「ZAM」の欧文字又は「ザム」の片仮名を標準文字により表してなるところ、その構成文字は、特定の意味を有する語として知られていたり、辞書等に掲載されている等の事情もないことから、特定の意味を有しない造語と認められる。

そうとすれば、引用商標1ないし引用商標6は、その構成文字に相応して「ザム」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものといえる。

イ 引用商標7について

引用商標7は、上記第2のとおり、「サムズ」の片仮名を標準文字により表してなるところ、その構成文字は、特定の意味を有する語として知られていたり、辞書等に掲載されている等の事情もないことから、特定の意味を有しない造語と認められる。

そうとすれば、引用商標7は、その構成文字に相応して「サムズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものといえる。

(3)本件商標と引用商標との比較

ア 外観について

本件商標が「ZAMS」の欧文字からなり、引用商標は「ZAM」、「ザム」及び「サムズ」の文字からなるところ、両者は、その構成文字数が、本件商標は4文字に対し引用商標は3文字及び2文字と、比較的少ない文字数であることから、構成文字数の違い、文字種の違いが、商標の外観全体に及ぼす影響は小さいものとはいえず、両商標は、外観上、十分に区別し得るものである。

イ 称呼について

本件商標から生じる「ザムズ」及び「ザムス」の称呼と引用商標1ないし引用商標6から生じる「ザム」の称呼について比べてみるに、両者は、第1音及び第2音の「ザム」の音を共通とし、第3音目の「ズ」又は「ス」の有無に相違点を有するところ、両者の音構成が3音と2音と比較的少ない音数であることから、第3音目の「ズ」又は「ス」の有無が、商標の称呼全体に及ぼす影響は小さいものとはいえず、両商標は称呼において区別し得るものである。

次に、本件商標から生じる「ザムズ」及び「ザムス」の称呼と引用商標7から生じる「サムズ」の称呼について比べてみるに、両商標の構成音が3音と、比較的少ない音数であることから、第1音目の「ザ」と「サ」の相違に加えて、本件商標から生じる「ザムス」の称呼の場合には、第3音目の「ス」と「ズ」の相違が両商標の称呼全体に及ぼす影響は小さいものとはいえず、両商標は称呼において区別し得るものである。

そうとすれば、本件商標と引用商標とは、称呼上、十分に聴別し得るものである。

ウ 観念について

本件商標と引用商標は、共に特定の観念を有しないものであるから、観念上、両者を比較することはできない。

エ 小括

以上、上記アないしウより、本件商標と引用商標とは、類似する商標とはいえないことから、たとえ、両商標の指定商品が類似するとしても、両商標が類似しないのであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

オ 申立人の主張について

申立人は、過去の審決例を挙げ、本件商標と引用商標とは類似する旨主張する(甲3〜甲21)。

しかしながら、申立人の挙げる審決例の商標は、いずれも本件商標とは、その構成態様が異なるものであることに加え、商標の類否の判断は、査定時又は審決時における取引の実情を勘案し、その指定商品の取引者・需要者の認識を基準に対比される商標について個別具体的に判断されるべきものであるから、それらをもって本件の判断が左右されるものでもない。

3 商標法第4条第1項第7号該当性について

申立人は、商標権者の業務係る商品と申立人商品は共に金属の特性を備えている点で共通することからすれば、商標権者は、少なくとも本件商標の登録時点において、鉄鋼メーカーである申立人の広く知られた使用商標に化体した信用及び優位性にフリーライドする目的を持っていたと考えられ、これより、本件商標は、公序良俗、社会一般の道徳観念、公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神、さらには国際信義の観点からも認められるべきでなく、商標法第4条第1項第7号に該当する旨を主張する。

しかしながら、本件商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、本件商標の登録を認めることが公正な取引秩序を乱し、社会一般の道徳観念に反するものというべきことを裏付ける証拠の提出はない。

その他、本件商標が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものというべき事情も見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

4 むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中、第6類「非鉄金属及びその合金,建築用又は構築用の金属製専用材料,海洋構造物構築用の金属製専用材料,金属製管継ぎ手,金属製フランジ,金属製金具(安全錠・鍵・鍵用金属製リング・南京錠を除く。)」については、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、商標法第43条の3第2項の規定によって、取り消すべきものとする。

そして、本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品については、その登録を取り消す理由がないから、同第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものとする。

よって、結論のとおり決定する。

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