Trademark Appeal Case
商標類似性と周知性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2018−900274(T2018−900274/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第6056141号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成29年8月4日に登録出願,第9類「コンタクトレンズ,コンタクトレンズ用容器,コンタクトレンズのケース,補正レンズ(光学用のもの),眼鏡用容器,眼鏡用枠,眼鏡,光学レンズ,光学ガラス,光学機械器具用レンズ,眼鏡保護用ケース,普通眼鏡,眼鏡(光学用のもの),サングラス,光学機械器具」を指定商品として,同30年4月27日に登録査定され,同年6月29日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標(以下「引用商標」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,同人が「コンタクトレンズ」について使用し,我が国はもとより世界的に周知著名であるとするものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第7号,同項第10号,同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから,その登録は同法第43条の3第1項によって取り消されるべきものであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第40号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第7号違反について
本件商標は,引用商標の信用を利用し,不正な目的によって登録出願されたものであり,また,公正な商取引の秩序を乱し,商標秩序を乱すものであるばかりでなく,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であり,商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである(甲2〜甲21)。
(2)商標法第4条第1項第10号違反について
本件商標は,その登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品であるコンタクトレンズを表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用商標に類似する商標であり,また,引用商標の業務にかかる商品と同一若しくは類似する商品に使用されるものであるから,商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである(甲2〜甲13,甲34)。
(3)商標法第4条第1項第15号違反について
本件商標は,引用商標と類似する商標である。また,引用商標は,申立人の商品であるコンタクトレンズに永年使用された結果,本件商標の登録出願時及び登録査定時において周知著名であり,指定商品の需要者の範囲も一致するから,需要者の通常の注意力に鑑みると,本件商標をその指定商品に使用した場合には,申立人の使用する商標を想起・連想し,申立人又はその関連会社が取り扱う商品であると誤認して,商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものである。したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである(甲2〜甲13,甲35〜甲40)。
(4)商標法第4条第1項第19号違反について
本件商標は,その登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品であるコンタクトレンズについて世界的に周知著名な引用商標に類似するものであって,その引用商標の周知著名性に便乗し,引用商標と類似する本件商標の独占排他的使用を得ようとする不正の目的に基づいて登録出願し登録されたものであるから,商標法第4条第1項第19号に該当する(甲2〜甲13,甲22〜甲33)。
4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,次のとおりである。
(ア)申立人が,2006年(平成18年)3月にドメイン名「lensme.com」を登録したこと(甲2,甲3),2015年(平成27年)6月頃から「LENS.ME」ブランドの下に,アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでコンタクトレンズの委託販売を開始したこと,及び2016年(平成28年)1月頃からシンガポールで引用商標の下でコンタクトレンズの販売を行ったことがうかがえる(甲3)。
(イ)申立人が,「Instagram」,「Facebook」,「Twitter」,「YouTube」などのアカウントを取得し(以下,これらをまとめて「申立人SNS」という。),遅くとも2015年(平成27年)6月頃から,引用商標を表示しコンタクトレンズに係る広告をおこなっている(いずれも外国語である。)ことがうかがえる(甲3〜甲8)。
(ウ)申立人が,引用商標について,2017年(平成29年)2月に欧州連合において指定商品及び指定役務を「Contact lenses」(コンタクトレンズ)などとして商標登録出願をし,同年9月に登録がなされたこと,UAE,台湾,オーストラリア,バーレーン,中国,韓国などで商標登録,登録出願していることがうかがえる(甲3,甲9)。
(エ)申立人と商標権者が,2016年(平成28年)5月にドバイにおいてディナーに同席したことがうかがえる(甲3,甲10)。
(オ)引用商標の下に販売されたコンタクトレンズ(以下「申立人商品」という。)の我が国並びにUAE及びシンガポールをはじめとする外国における販売実績を裏づける証左はもとより,申立人商品が我が国で販売されていること及び我が国向けの日本語での広告を行ったことをうかがわせる証左は見いだせない。
イ 上記アの事情からすれば,申立人がコンタクトレンズについて,遅くとも2015年(平成27年)頃から引用商標を使用した広告を申立人SNS上で行い,2016年(平成28年)頃には引用商標を使用したコンタクトレンズの販売を行っていることは,うかがえるものの,申立人SNSはいずれも外国語で記載されているものであり,我が国に向けての広告が行われていること,申立人商品が我が国で販売されていること及び我が国並びにUAE及びシンガポールをはじめとする外国における申立人の商品の販売実績を示す証左はないから,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
なお,その金額,数量を裏付ける証左はないが,仮に,申立人が宣誓供述書(甲3)で述べているシンガポールにおける2016年1月からの(期間の末日は確認できない。)売上高6.4万米ドル,注文数500件超との金額等が事実であるとしても,かかる金額及び数量が当該国におけるコンタクトレンズの1ブランドの売上,数量としてその周知性を基礎付けるほど多額,多数であるとは認められない。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同項第15号について
ア 上記(1)のとおり,引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
そうすると,本件商標は,引用商標と類似し,本件商標の指定商品が申立人商品と同一又は類似するとしても,本件商標に接する取引者,需要者が引用商標を連想又は想起するものということはできない。
したがって,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく,その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれのないものというべきである
イ なお,申立人は,実際に本件商標と引用商標との間には出所混同が生じているとして,(ア)グーグルの検索結果を表示する画面に,引用商標と本件商標が表示され関連付けられている(甲36),(イ)本件商標の広告記事の投稿者が,誤って申立人のフェイスブックに広告を投稿した(甲37の1),(ウ)商標権者にメールを送信しようとする者が,誤って申立人にメールを送信した(甲37の2)旨を主張している。
しかしながら,検索エンジンの検索結果は,同様の文字についての検索結果であるから,本件商標と引用商標が同じ画面に表示されたことをもって,実際に需要者が混同を生じているとは認められず,また,広告記事の誤投稿及びメールの誤送信は,それぞれの送信者が,アドレスの確認を怠ったことに起因するものであるから,これらをもって,実際に需要者が混同を生じているとはいい難い。また,上記の証拠は,いずれも外国語であり,我が国での需要者によるものではない。
そうすると,申立人の主張は採用できない。
ウ したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号のいずれにも該当するものといえない。
(3)商標法第4条第1項第19号について
上記(1)のとおり,引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,上記(2)のとおり本件商標は引用商標を連想又は想起させるものでもない。
したがって,本件商標は,その余の点について判断するまでもなく,商標法第4条第1項第19号に該当するものとはいえない。
(4)商標法第4条第1項第7号について
ア 不正の目的などについての,申立人の主張は,次のとおりである。
(ア)商標権者は,申立人とは同業であり,かつ,近隣する国々で事業を行っており,商標権者は引用商標の存在を認識していた。
(イ)商標権者と申立人は,2016年(平成28年)5月にコンタクトレンズ製品を製造するモンロス インターナショナル主催のディナーに招待され(甲3,甲10),その際,商標権者は,引用商標のブランドの急速な成長,成功を知り,その後,引用商標の周知性や顧客吸引力にあやかって,引用商標に酷似する本件商標の使用を進めることを考えた。
(ウ)そうすると,商標権者による日本国への本件商標の登録出願は,申立人が未だ日本国へ登録出願していなかったことを奇貨として,引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りするなどの不正の目的でしたことは明らかである。
イ 申立人提出の証拠によれば,上記(1)ア(エ)のとおり申立人と商標権者は,2016年(平成28年)5月にドバイにおいてディナーに同席したことがうかがえるほか,商標権者が開設する本件商標(同一視し得る商標)が表示された「Facebook」「Instagram」には,2017年5月以降に投稿がされたこと(甲11)がうかがえ,2017年10月10日にプリントアウトされた商標権者のホームページに「in 2017 Lens Me colored lenses started.(2017年にLens Meカラーレンズが始動しました)」旨の記載(甲12)が認められる。
しかしながら,上記(1)ア(ア)のとおり,申立人は,2015年(平成27年)6月頃から「LENS.ME」ブランドの下に,アラブ首長国連邦(UAE)において,コンタクトレンズの委託販売を開始したのであるから,たとえ,申立人と商標権者が,2016年(平成28年)5月にドバイにおいてディナーに同席し,商標権者が,同ディナー等において引用商標を知り得たとしても,本件商標の登録出願は,同ディナーから1年以上経っており,上記(1)ア(ウ)のとおり,この間に申立人は,引用商標を欧州連合に登録出願していた事実からすれば,申立人は,自らすみやかに「LENS.ME」ブランドに係る商標を我が国に登録出願できたにもかかわらず,これを怠っていたといえる。
しかも,申立人と商標権者は,両者の間に製造又は販売等に関する契約等(「LENS.ME」ブランドに係る商標に関するものを含む。)が存在したとする証拠はなく,商標権者の契約義務違反というものでもない。
そうすると,申立人と商標権者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は,あくまでも,当事者同士の私的な問題として解決すべき問題であるから,そのような場合にまで,「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情があると解することはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当するものとはいえない。
(5)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同項第10号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当せず,同条第1項の規定に違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
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