Trademark Appeal Case
立体商標の機能・美感と識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2017−12701(T2017−12701/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は,別掲1のとおりの構成よりなり,第21類「歯ブラシ」を指定商品として,平成28年1月18日に立体商標として登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
本願商標は,歯ブラシのブラシ部を柄の長手方向に沿って山形に傾斜した形状とし,かつ,幅方向の中央部の高さを両側部の高さよりも一段高くしその部分(中央部の一段高い部分)に着色を施すといった特徴を有する歯ブラシの立体的形状からなるものである。しかしながら,その特徴は,歯の汚れを落としやすくするといった機能に資することを目的として,又は見た目の美感に資することを目的として採択されたものといえ,その機能上又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものとみるのが相当である。そうすると,本願商標は,商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といわなければならない。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 当審における証拠調べ通知
本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べを実施した結果,別掲に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対し,平成30年7月5日付けで証拠調べの結果を通知し,相当の期間を指定して意見を求めるとともに,本願商標の使用実績等についての更なる証拠を提出する用意がある旨主張しているため,それらの証拠を提出するよう求めた。
4 証拠調べに対する請求人の意見等(要旨)
(1)意見
ア 証拠調べ通知における証拠のうち,別掲(2)ア(ア)「JCASTトレンド」のウェブサイトに記載された歯ブラシと,同(イ)「魔法のワハハ歯ブラシ」のウェブサイトに記載された歯ブラシは,いずれも請求人が代表取締役を務める株式会社西尾(以下「西尾社」という。)が開発した本願商標を付した商品を他社に供与したものが掲載されているものであるから,これらは,本願商標の歯ブラシのヘッドが一般的な形状であるということの証拠とはならない。
イ 本願商標の立体的形状は,「歯ブラシのブラシ部(植毛部)を柄の長手方向に沿ってその頂点が尖った三角形の山形となるように傾斜した形状とし,かつ,幅方向(柄の長手方向に対して直交する方向)の中央部の高さを両側部の高さよりも一段高くすることで,側方から見た形状が手前側の低い三角形の山形と奥側の高い三角形の山形との二段の三角形の山形を有する形状となっており,かつ,奥側の高い三角形の山形の部分(中央部の一段高い部分)に着色を施した」ものである。
証拠調べで発見された各証拠に示された歯ブラシのヘッド(植毛部)の形状は,上記アを除いて,いずれも本願商標のヘッドの形状とは具体的な形状が全く異なるものである。そのため,それらの形状がウェブサイトなどに掲載されていることで一般的な歯ブラシのヘッドの形状であると認定されたとしても,そのことをもって本願商標の歯ブラシのヘッドが一般的な形状であるということにはならない。
ウ したがって,今回の証拠調べで発見された事実をもって,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとは認定し得ない。
(2)証拠
請求人は,本願商標の使用実績等についての更なる証拠として甲6〜21を提出した。なお,平成29年10月19日付け手続補足書により提出された証拠資料1〜5は,それぞれ,甲1〜5と読み替える。
5 当審の判断
(1)立体商標における商品等の形状について
商品等の形状は,多くの場合,商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり,商品等の美観をより優れたものとする等の目的で選択されるものであって,直ちに商品の出所を表示し,自他商品を識別する標識として用いられるものではない。このように,商品等の製造者,供給者の観点からすれば,商品等の形状は,多くの場合,それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの,すなわち,商標としての機能を果たすものとして採用するものとはいえない。また,商品等の形状を見る需要者の観点からしても,商品等の形状は,文字,図形,記号等により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能や美観を際立たせるために選択されたものと認識するのであって,商品等の出所を表示し,自他商品を識別するために選択されたものと認識する場合は多くない。
そうすると,客観的に見て,商品等の機能又は美観に資することを目的として採用されると認められる商品等の形状は,特段の事情のない限り,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみから成る商標として,商標法3条1項3号に該当することになる。
また,商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状は,同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから,先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定人に独占使用を認めることは,公益上適当でない。
よって,当該商品の用途,性質等に基づく制約の下で,同種の商品等について,機能又は美観に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものであれば,当該形状が特徴を有していたとしても,同号に該当するものというべきである。
(知財高裁平成29年(行ケ)第10155号,同30年1月15日判決参照)
(2)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
ア 本願商標
本願商標は,別掲1のとおり,商品「歯ブラシ」の形状からなる立体商標であり,以下の特徴を有している。
(ア)ヘッド(植毛部)は,毛束の高さを柄の長さ方向に山形になるように傾斜させ,かつ,幅の方向(柄の長さ方向に対して直交する方向)の中央部の毛束の高さを両側部の毛束の高さよりも一段高くしている。
(イ)ヘッド(植毛部)は,他の部分よりも一段高くした中央部の毛束のみが灰色で着色されている。
(ウ)ハンドル(把柄部)は,丸みのある真っ直ぐな棒状である。
(エ)ネック(頚部)は,ハンドルに比べてやや細い丸い棒状である。
(オ)ハンドル(把柄部)とネック(頚部)の境目には,ヘッド部側がやや山形の突起を有している。
イ 一般に市販されている「歯ブラシ」の形状について
(ア)ヘッド(植毛部)においては,毛束の高さを柄の長さ方向若しくは幅の方向に山形にした形状,又は毛束の高さに段差を設けた形状のものがある(別掲2(2))。
(イ)ヘッド(植毛部)においては,毛束の列ごとに異なる色の毛を交互に植えられたもの,先端や後端など一部の毛束に着色されたもの,及び中央部の毛束にのみ着色されたものがある(別掲2(3))。
(ウ)ハンドル(把柄部)においては,様々な形状のものがあり,丸みのある真っ直ぐな棒状のものもある(別掲2(1)イ及びウ)。
(エ)ネック(頚部)においては,様々な形状のものがあり,ハンドルに比べて細い丸い棒状のものもある(別掲2(1)イ及びウ)。
(オ)ハンドル(把柄部)とネック(頚部)の境目の形状としては,指の位置を示すため,指当りとして,ヘッド部側に山形の突起を有しているものがある(別掲2(1)イ及びウ)。
ウ 判断
(ア)ヘッド(植毛部)の形状について
本願商標と一般に市販されている「歯ブラシ」の形状とを対比するに,両者は,ヘッド(植毛部)について,毛束の高さを山形になるように傾斜させた形状,又は毛束の高さに段差を設けた形状からなることを共通にしている。
そして,一般に市販されている「歯ブラシ」のヘッド(植毛部)の形状については,「山形形状の毛先が歯と歯の間にフィットしやすく,狭い隙間に入り,汚れをスッキリと落としてくれる。また,毛先部分に段差を作る『段差型植毛構造』によって,三角の先端部が歯と歯ぐきの境目の汚れも見逃さない。」(別掲2(2)ア(ア)),「歯の表面はもちろん。ピラミッド型のブラシなので奥歯のくぼみなどの汚れに届きます。」(別掲2(2)ア(イ)),「山型になっているため,装置まわりのプラークが溜まりやすい部位にもピタッとフィット。無理なく自然な角度で磨くことができます。」(別掲2(2)ア(ウ)),「歯周ポケットにも歯ぐきにもやさしく当たる段差植毛で,歯周ポケットの奥深くの汚れをかき出します。」(別掲2(2)イ(ア))等の記載があることから,これらのヘッド(植毛部)における形状の特徴は,歯及び歯の間の汚れを落とすことを目的として,歯ブラシの機能に資することを目的として採用されたものであるといえる。
本願商標に係る商品であると請求人が主張する商品の広告等においても,「歯と歯の間,歯と歯茎の境目,歯の溝の部分などの見えない箇所,落ちにくい部分の汚れをしっかり落とすことを目的に,(略),歯に当たる箇所を異なった毛の長さにする工夫が施されている。」(甲8),「短期間のブラッシングでも効率的に歯の汚れが落ちるよう設計されたピラミッド型の歯ブラシ」(甲10),及び「山形カットのブラシがさっとなでるだけで歯の隙間汚れをスッキリ落とします」(甲12)(甲9,11,18〜21の広告等にも同趣旨の記載がある。)との記載があるから,本願商標のヘッド(植毛部)における形状の特徴は,歯及び歯の間の汚れを落とすことを目的として,歯ブラシの機能に資することを目的として採用されたものであるといえる。
(イ)ヘッド(植毛部)の形状における色彩について
本願商標と一般に市販されている「歯ブラシ」とのヘッド(植毛部)の形状における色彩について対比するに,上記イ(イ)のとおり,一部の毛束に着色されていることを共通にしている。
そして,一般に市販されている「歯ブラシ」のヘッド(植毛部)の形状における色彩については,色違いの商品を複数販売していることが認められるから(別掲2(3)イ),本願商標のヘッド(植毛部)の形状における色彩は,美観に資することを目的として採用されたものであるといえる。
(ウ)ハンドル(把柄部),ネック(頚部)及びハンドル(把柄部)とネック(頚部)の境目の形状について
本願商標と一般に市販されている「歯ブラシ」とのハンドル(把柄部),ネック(頚部)及びハンドル(把柄部)とネック(頚部)の境目の形状について対比するに,ハンドルの形状については丸みのある真っ直ぐな棒状であること,ネック(頚部)の形状についてはハンドル(把柄部)に比べて細い丸い棒状であること,及び,ハンドル(把柄部)とネック(頚部)の境目の形状として山形の突起を有する点を共通にしている。
これらの形状については,「把柄部は握ったときに手にフィットするよう様々な形状が工夫されています。(略)指の位置を示す指当りが付いたものもあります。頚部は,唇にあまり当らないように細くしたり,湾曲になったりしています。」(別掲2(1)イ)等の記載があることから,歯ブラシの機能に資することを目的として採用されたものであるといえる。
(エ)そうすると,本願商標に係る立体的形状は,歯ブラシの形状として,機能又は美観に資することを目的として採用されたものと認められ,また,需要者において,機能又は美観に資することを目的とする形状と予測し得る範囲のものであるから,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標である。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。
エ 請求人の主張について
請求人は,(a)証拠調べ通知における証拠のうち,別掲2(2)ア(ア)及び(イ)のウェブサイトに掲載された歯ブラシは,いずれも西尾社が開発した商品を他社に供与したものが掲載されているものであるから,本願商標を付した商品そのものであるため,これらは,本願商標の歯ブラシのヘッドが一般的な形状であるということの証拠とはならない旨,(b)証拠調べ通知における各証拠に示された歯ブラシのヘッド(植毛部)の形状は,上記(a)を除いて,いずれも本願商標のヘッドの形状とは具体的な形状が全く異なるものであるため,それらの形状をもって本願商標の歯ブラシのヘッドが一般的な形状であることにはならないから,今回の証拠調べで発見された事実をもって,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとの認定はできない旨主張する。
しかしながら,(a)については,仮に別掲2(2)ア(ア)及び(イ)に係る歯ブラシが請求人から他社に供与した商品であるとしても,当該商品には,請求人の商品であることを示す標章が何ら示されておらず,かつ,当該商品は,それぞれ,「オーラルホワイト歯ブラシ」及び「魔法のワハハ歯ブラシ」の商品名で紹介されているため,需要者は,当該商品における請求人の関係性を認識できない。そうである以上,これらも一般に市販されている歯ブラシの形状であることを示すものとみることに,特段の支障はない。
(b)については,上記ウのとおり,本願商標のヘッド(植毛部)についての形状の特徴,ハンドル(把柄部),ネック(頚部),及びハンドル(把柄部)とネック(頚部)の境目の形状は,それぞれ,機能又は美観上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものといい得るものであるから,別掲2(2)ア(ア)及び(イ)に記載された歯ブラシが,子細にみれば本願商標のヘッドの形状とは具体的な形状が異なるものであるとしても,上記判断を左右するものではない。
オ したがって,請求人の主張は,いずれも採用することができない。
(3)本願商標の商標法第3条第2項該当性について
ア 本願商標
本願商標は,上記(2)アにおいて認定したとおりの構成からなるものである。
イ 使用の実情
証拠及び請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(ア)請求人は,西尾社及び株式会社あるほっぷ(以下「あるほっぷ社」という。)の代表取締役である(甲8,9)。
西尾社は,歯科機器開発などを行う会社であり,「奇跡の歯ブラシ」を商品名とした,本願商標と実質的に同一と認め得る形状からなる商品「歯ブラシ」(以下「使用商品」という。)を開発,製造及び販売した(甲8)。
あるほっぷ社は,使用商品を販売する会社である(甲9)。
C&C Company Co.,Ltd.(以下「C&C社という。」は,西尾社の関連会社であり,使用商品を販売する会社である(甲8,9)。
株式会社リジェンティス(以下「リジェンティス社」という。)は,西尾社から,使用商品を購入し,販売する会社である(甲1)。
(イ)西尾社は,遅くとも平成21年5月から同29年3月までの約8年間,リジェンティス社に対し,使用商品を合計約200万本販売し,リジェンティス社は,CSデジタル放送のショップチャンネルの番組並びに同ショップチャンネル及び自社の各ウェブサイトを通じて,使用商品を顧客へ販売した(甲1〜5)。
上記CSデジタル放送のショップチャンネルの番組における販売時の映像をキャプチャした複数の画像(甲2)によれば,1ページの1つ目の画像の中央付近に「奇跡の歯ブラシ 累計販売数 122万0,171本突破!」の表示が,4ページの3つ目の画像の中央やや左下に「奇跡の歯ブラシ 累計販売数 254万1,821本突破!」の表示が,5ページの1つ目の画像の中央に「奇跡の歯ブラシ 累計販売数 167万6,748本突破!」の表示が,及び6ページの画像の中央に「奇跡の歯ブラシ シリーズ累計販売数 314万2,942本突破!」の表示がある。
なお,リジェンティス社のウェブサイト(甲5)にある使用商品の画像は,歯ブラシのヘッドと,ネックがわずかに表示されているにとどまり,ハンドルの表示はない。
(ウ)リジェンティス社が販売を行った,使用商品に関するCSデジタル放送のショップチャンネルの番組は,平成23年から同30年までの約7年間で合計61回放映された(同23年は5回,同24年は7回,同25年は2回,同26年は6回,同27年は12回,同28年は10回,同29年は12回,同30年(7月まで)は7回。)。請求人は,同29年放映分のうち11回及び同30年放映分のうち5回の番組に出演した(甲6)。
(エ)「買えるAbemaTV社」のウェブサイト(甲11)及び「KISEKI Online Shop」のウェブサイト(甲12)においては,「奇跡の歯ブラシ」の商品名をウェブサイト上に表示の上,使用商品を販売しており,甲12には,「500万本突破!」の記載がある。
(オ)歯科医院「MUSEE WHITENING」のウェブサイトにおいては,「奇跡の歯ブラシ」の商品名をウェブサイト上に表示の上,使用商品を販売した(甲10)。また,「買えるAbemaTV社」の番組である「マジでヤバいモノが手に入る! 買えるAbemaTV社#4」の放送内容を示したウェブサイトの記事には,上記番組において「買えるAbemaTV社」が使用商品を紹介したこと,及び商品の紹介の中で,請求人が使用商品を説明したとの記載がある(甲13)。
なお,歯科医院「MUSEE WHITENING」のウェブサイト(甲10)における使用商品の画像には,歯ブラシのヘッドと,ネックがわずかに表示されているにとどまり,ハンドルの部分の表示はない。また,「買えるAbemaTV社」の番組の放送内容を示したウェブサイトの記事(甲13)における使用商品の画像は,歯ブラシのヘッド及びネックは表示されているが,ハンドルの表示は一部のみの表示にとどまる。
(カ)あるほっぷ社による使用商品の販売に関するパンフレットには,「奇跡の歯ブラシ」の商品名,「累計販売本数 約260万本突破!」及び「ピラミッド形状が隙間にピッタリ入り込む」の記載がある。また,使用商品の開発者及びあるほっぷ社の代表取締役として,請求人に関する記載がある(甲9)。
なお,当該パンフレットを配布した事実,配布年月日及び配布先が不明であり,また,当該パンフレットにおける使用商品の画像には,歯ブラシのヘッド及びネックは表示されているが,ハンドルの表示は一部のみの表示にとどまる。
(キ)雑誌「週間文春(平成29年4月13日号)」に掲載された,C&C社による使用商品の販売に関する広告(1件)において,「奇跡の歯ブラシ」の商品名及び「計算し尽くされたピラミッド形状 トリプル植毛 清掃効果UP!歯の汚れ0を目指す」の記載とともに使用商品の画像が掲載された(甲7)。
(ク)雑誌における紹介記事(2件)として,雑誌「STORY(平成24年11月号)」において,リジェンティス社による使用商品の販売に関する情報として,「奇跡の歯ブラシ」の商品名及び「ピラミッドのように前から見ても横から見ても山形なのが特徴。中心の高いブラシ部分が歯と歯の間,歯と歯茎の間に入り隅々まで磨けます。」の記載とともに使用商品の画像が掲載され(甲21),また,「千葉商工会議所の会報(夢シティちば:平成26年2月号)」において,西尾社による使用商品の販売に関する情報として,請求人は,西尾社の代表取締役として紹介され,請求人が商品を紹介する形で,「奇跡の歯ブラシ」の商品名及び「ピラミッド型の歯ブラシ。・・・歯に当たる箇所を異なった毛の長さにする工夫が施されている。」の記載とともに使用商品の画像が掲載された。(甲8)。
(ケ)インターネットにおけるブログ記事(3件)において,「奇跡の歯ブラシ」の商品名が表示された包装袋の画像,「C&C Companyさんから歯ブラシが送られてきました。」,「非常に斬新なカット」,「毛が山形にカットしてあるのが実用新案」及び「横から見ると<山形>になっていて」などの記載とともに使用商品の画像が掲載された(甲16,18,19)。
なお,上記インターネットにおけるブログ記事のうち,甲16における使用商品の画像には,歯ブラシのヘッドとネックがわずかに表示されているにとどまり,ハンドルの表示はなく,また,甲18における使用商品の画像には,歯ブラシのヘッド及びネックが表示されているが,ハンドルは一部のみの表示にとどまる。
(コ)「日本ネット経済新聞」のウェブサイトにおける記事(1件)において,「奇跡の歯ブラシ」の商品名,「ブラシ部分がピラミッド型になっていることが大きな特徴です。」及び「商品を開発・販売する株式会社西尾」の記載とともに使用商品の画像が掲載された(甲20)。
なお,上記ウェブサイトにおける記事(甲20)における使用商品の画像には,歯ブラシのヘッドとネックがわずかに表示されているにとどまり,ハンドルの表示は一部のみの表示にとどまる。
ウ 本願商標と同一又は類似する他人の標章の使用の有無
本願商標は,指定商品である歯ブラシの立体的形状に係るものであって,その形状は上記(2)アのとおりである。そして,本願商標と同一又は類似の形状を有する歯ブラシは,「ポーラ(東京都品川区)は,歯と歯の間の汚れをスッキリ落とす『オーラルホワイト歯ブラシ(8本セット)』を2015年3月3日に発売する」の記載(別掲2(2)ア(ア)),及び「魔法のワハハ歯ブラシ(略)歯医者さんおすすめでもない。歯医者さん推奨でもない。歯医者さんが作った歯ブラシ。(略)虫歯や歯周病の原因となる磨き残しゼロを目指して開発しました。吉留秀俊 よしどめデンタルクリニック総医長(略)」の記載(別掲2(2)ア(イ))とともに他人により販売された。
エ 判断
(ア)使用による自他商品識別力について
上記イの認定事実によれば,西尾社は,平成21年5月から同29年3月までの約8年間において,使用商品を約200万本〜約500万本販売したものと推認できる。
なお,西尾社の代表取締役である請求人は,同社が販売する使用商品についての宣伝及び広告において,使用商品の説明を行ったことが認められるが,使用商品を製造及び販売しているのは,あくまでも西尾社なのであって,請求人ではないから,本願商標は,商品「歯ブラシ」に使用された結果,需要者が請求人の出所に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。
(イ)西尾社の使用による自他商品識別力について
上記(ア)のとおり,使用商品の製造及び販売元は西尾社であって,請求人ではないところ,仮に,西尾社の使用としてみた場合であっても,上記イ及びウの認定事実によれば,下記a及びbのとおりであるから,これらの事情を総合すると,本願商標は,商品「歯ブラシ」に使用された結果,需要者が特定の出所に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。
a 上記イの認定事実によれば,
(a)使用商品は約8年間で約200万本〜約500万本販売されたことが推認できるが,その数量は年間平均で約62.5万本にすぎないことからすると,その販売本数は多いものということはできない。
また,販売の際に表示された使用商品は,その構成部分の一部の表示のみからなるものが複数あることからすると,当該表示をもって,需要者は,使用商品の立体的形状の全体を認識することはできないものというべきであるから,使用商品は,どの程度の範囲の需要者の目にふれたのかが不明である(甲5,10,13)。
(b)使用商品に関するCSデジタル放送のショップチャンネルの番組における宣伝及び広告は,約7年間で61回行われているものの,CSデジタル放送は衛星放送であることからすると視聴者の範囲は限定的といわざるを得ないし,そもそも,多くても月1回程度の放映にすぎないことからすると,使用商品は,どの程度の範囲の需要者の目にふれたのかが不明である。
(c)使用商品に係るパンフレット配布については,仮に事実だとしても,当該パンフレットの発行部数は1000部と極めて少なく,また,使用商品は,その構成部分の一部のみしか表示されていないため,需要者は,当該表示をもって,使用商品の立体的形状の全体を認識できないものである。
(d)使用商品に関し,新聞における広告記事はなく,雑誌における広告記事は1件にすぎない。また,他者による雑誌における紹介記事は2件,ウェブサイト上の記事における紹介記事は4件にすぎないし,これらの紹介記事には,使用商品の表示として,その構成部分の一部の表示のみからなるものが複数あることからすると(甲16,18,20),当該表示をもって,需要者は,使用商品の立体的形状の全体を認識することはできないものというべきであるから,使用商品は,どの程度の範囲の需要者の目にふれたのかが不明である。
b 上記ウによれば,西尾社以外の第三者による,本願商標と同一又は類似する標章の使用が認められる。
(ウ)小括
以上からすると,使用商品を製造及び販売しているのは,あくまでも西尾社なのであって,請求人ではないから,本願商標は,商品「歯ブラシ」に使用された結果,需要者が請求人の出所に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。また,仮に,西尾社の使用としてみた場合であっても,本願商標は,商品「歯ブラシ」に使用された結果,需要者が特定の出所に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。
したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備しない。
(エ)請求人の主張
請求人は,需要者は,通常の歯ブラシとは全く異なる本願商標のヘッドの特徴的な形状及び色彩を商品の目印として選択して購入しているものであるから,本願商標のヘッドの形状及び色彩が識別力を有している旨主張する。
しかしながら,上記(ア)のとおり,請求人によって使用商品が製造及び販売された事実が認められないから,本願商標は,商品「歯ブラシ」に使用された結果,需要者が請求人の出所に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められなし,仮に,請求人が使用商品の製造及び販売元である西尾社であったとしても,上記(イ)のとおり,本願商標は,西尾社によって使用商品が使用された結果,需要者が西尾社の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。
なお,本願商標の構成中,ヘッドの形状及び色彩に関する特徴は,上記(2)ウ(ア)及び(イ)のとおり,歯ブラシの機能又は美観に資することを目的として採用されたものであるといえるから,自他商品識別力があるものとはいえないし,そもそも,本願商標は,上記(2)アに記載のとおり,商品「歯ブラシ」の形状からなる立体商標であるから,使用商品の一部の表示のみによっては,需要者は,使用商品の立体的形状の全体を認識することはできないものというべきである。
したがって,請求人の主張は,採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,かつ,同条第2項の要件を具備するものでもないことから,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
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