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Trademark Appeal Case

音商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2017−15179(T2017−15179/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第9類及び第10類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品とし,平成27年4月1日に音商標として登録出願,その後,本願の指定商品については,原審における同29年4月5日付け手続補正書により,第9類「デジタルカメラ,工業用内視鏡装置」及び第10類「医療用機械器具」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は「本願商標は,別掲1のとおりの構成からなるところ,商品若しくは役務の魅力を向上させるため又は広告等における需要者への注意喚起,印象付け若しくは効果音として,多種多様な音が一般的に用いられている実情があり,本願商標についても,需要者は自他商品又は役務の識別標識としてではなく,商品若しくは役務の魅力向上又は広告の演出等に用いられる音の一種として認識するにとどまるものと認められる。また,本願商標は,ロゴや「OLYMPUS」の文字とともに使用されているから,本願商標のみが独立して出願人の業務に係る商品を示すものとして需要者の間に認識されているものではない。そうすると,本願商標は,何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標と判断するのが相当である。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第6号該当性について

ア 本願商標は,別掲1の楽譜に記載されたとおり,四分音符=110のテンポ及び4分の4拍子の2小節からなる別掲1のとおりの音符,音部記号で構成される音の要素からなる音商標であって,願書に添付された経済産業省令で定める物件(平成27年4月1日付け提出の手続補足書に添付の音声ファイル)とともに特定されたものである。

イ テレビ,ラジオ又はインターネット等による商品の広告においては,聴覚を通じて,商品の魅力を向上させるため,又は需要者への注意喚起,若しくは印象付けのための効果音等として,多種多様な音が一般的に用いられている実情がある。

そうすると,音は,通常,商品の出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として聴取され,認識されることはないとみるのが相当であり,このことは,本願の指定商品を取り扱う業界においても,事情を異にするとみるべき理由は見当たらない。

ウ 本願商標は,上記アのとおり,別掲1の楽譜の記載によれば,音のみで構成され,自他商品の識別標識としての機能を果たし得る言語的要素は含まれていないことは明らかである。

そうすると,上記イの実情を踏まえれば,本願商標をその指定商品について使用しても,これに接する需要者は,本願商標においても,聴覚を通じて,商品の魅力を向上させるため,又は需要者への注意喚起,若しくは印象付けのための効果音等を理解し認識するものであるから,自他商品の識別標識とは認識しないというべきである。

(2)本願商標の使用による識別性について

請求人は,本願商標は本願に係る指定商品に対して長年使用された結果,請求人を示すものとして,その取引者,需要者の間に広く認識されているとして,商標法第3条第2項により登録されるべきであると主張し,原審において,第1号証ないし第185号証(枝番号を含む。)及び当審において,甲第1号証ないし甲第177号証(枝番号を含む。)を提出している。

なお,原審で提出された証拠と当審で提出された証拠には重複しているものもあるため,本審決では当審において提出された証拠の番号とする。

また,原審において提出され,当審において提出されていない証拠もあるところ,これらの証拠については,番号をそれぞれ以下のとおり読み替えることとする。第37号証を甲第178号証,第71号証を甲第179号証,第93号証ないし第95号証を甲第180号証ないし甲第182号証,第98号証ないし第100号証を甲第183号証ないし甲第185号証,第131号証を甲第186号証,第156号証を甲第187号証,第159号証ないし181号証を甲第188号証ないし甲第210号証。

そこで,請求人の主張及び同人提出の証拠について,以下検討する。

ア 請求人について

請求人は,1919年(大正8年)設立された精密機械器具メーカーであり,その事業分野は,内視鏡を始めとした医療分野に加え,顕微鏡・工業用内視鏡等を扱う科学分野,デジタルカメラ等を扱う映像分野等,多岐にわたる(甲14)。

また,そのグループ会社は,我が国を始めとして,北米,欧州,アジア・オセアニア地域など,世界主要国に拠点を有している(甲14,甲178)。

そして,グループ全体の連結売上高は,7481億円(2017年(平成29年)3月期)に上り,連結従業員数は,約3万5千人(2017年(平成29年)3月31日現在)である(甲14)。

イ 本願商標の使用状況について

(ア)請求人は,2011年(平成23年)より現在に至るまで「デジタルカメラ」,「工業用内視鏡装置」,「医療用内視鏡」の日本語によるテレビCMやプロモーションビデオの最後に「青地に白色で書した『OLYMPUS』の欧文字,その文字の下に表示した黄色の線状の図形及びその下に白色で書した『Your Vision, Our Future』の欧文字」(別掲2)が表示されるタイミングに合わせて,本願商標に係る音声と同一と認められる音声を使用している事実が認められる(甲16,甲18〜甲29,甲61,甲87,甲123,甲124)。

a テレビCMにおける使用

請求人の提出した証拠によれば,本願商標を使用した「デジタルカメラ」,及び「医療用内視鏡」についてのテレビCMは,2011年(平成23年)8月から2017年(平成29年)8月まで,全国において放送された(甲30〜甲56)。

b インターネットでの使用

上記aにおけるテレビCM及び「工業用内視鏡装置」のCMは請求人のウェブサイト及び「You Tube」のサイト上でも公開している(甲59,甲60,甲88〜甲90,甲168〜甲173,甲187,甲188,甲210)。

そして,当該CMの閲覧が可能な請求人のウェブサイトへのアクセス(セッション)数は,2014年(平成26年)にのべ約434万人及び2015年(平成27年)にのべ約381万人であり,ページビュー数はこれらの約2倍である(甲176,甲177)。

c 請求人の出展したイベント,展示会等での使用

請求人が出展したイベント,展示会等において本願商標を使用した企業PR動画を放映した(甲62〜甲74,甲77〜甲81,甲84,甲91〜甲101,甲103〜甲116,甲118,甲120,甲122,甲130〜甲167,甲179,甲180〜甲182,甲183,甲185,甲186)。

当該PR動画には,請求人の製造に係る商品として「デジタルカメラ」,「医療用内視鏡」,「顕微鏡」及び「工業用内視鏡装置」が紹介されている(甲61)。

(イ)請求人は,本願商標を音声のみでも使用している事実が認められる。

a ラジオCMでの使用

請求人は,本願商標を使用した「医療用内視鏡」についてのラジオCM(甲128,甲129)を,2013年(平成25年)7月に放送した(甲125〜甲127)。

b その他の本願商標の使用

その他,請求人は,本願商標を請求人の製造販売するデジタルカメラの起動音に使用し(甲85,甲86),本願商標を構成に含む音に使用した電話保留音を2013年(平成25年)4月より,全国の事業所・関連会社の電話保留音として使用している(甲174,甲175)。

ウ 判断

上記ア及びイによると,請求人は本願商標を2011年(平成23年)から現在まで,主に「デジタルカメラ」及び「医療用内視鏡」に係るテレビCMにおいて使用しており,それらのCMの放映地域は全国に及びその放映回数は,相当数にのぼるといえるものである。

また,請求人は上記「デジタルカメラ」及び「医療用内視鏡」の他にも「工業用内視鏡装置」に係るCMを,請求人のウェブサイトで公開しており,当該ウェブサイトのアクセス数は,2014年(平成26年)にのべ約433万人,2015年(平成27年)にのべ約381万人にのぼる。

そして,請求人は,学会,展示会等における「デジタルカメラ」,「工業用内視鏡装置」及び「医療用内視鏡」に係る企業PR動画内でも本願商標を使用しており,その出展回数は2011年(平成23年)から2015年(平成27年)まで,年に13回から19回程度であり,来場者も少なくはないことが認められる。

しかしながら,本願商標は,CM及びPR動画の最後において,「OLYMPUS」の文字等とともに使用されているものであるところ,他社の一般的なテレビCMにおいては,別掲3のとおり,CMの末尾に効果音が企業のロゴの表示とともに使用されていることが少なくない。

そうすると,本願商標に接する需要者には,本願商標が,「OLYMPUS」の文字等に付随する効果音として,聴取,把握され,記憶されるというのが相当であり,当該CMが放映されていること等をもって,本願商標のみによって,需要者において,商品の出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として認識されるに至っているとはいい難い。

また,本願商標のみの使用についても,ラジオCMは,2013年(平成25年)7月8日より14日までの放送でその回数も46回と少なく,カメラの起動音については,その起動音を生じるカメラの販売台数,シェア等を証する証拠の提出はない。

さらに,請求人は,本願商標を全国の事業所・関連会社の電話保留音として使用しているとしても,当該電話保留音は,請求人に電話した者のみが聞くことができるもので,広く一般に向けたものとはいえず,また,当該保留音には,本願商標がその一部に使用されているのはうかがえるものの,保留音全体の構成は,本願商標の構成と相違するものである。

その他,本願商標は,これのみによって,需要者において,商品の出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として認識されているということができる事実及び事情は認められない。

してみれば,請求人の主張及び同人提出の甲各号証を総合してみても,本願商標が,その使用の結果,請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者に認識されていると認めることはできない。

なお,請求人の提出した証拠によっては,本願商標の指定商品中,第9類「デジタルカメラ,工業用内視鏡装置」及び第10類「医療用内視鏡」への使用は認め得るものの,それ以外の第10類「医療用機械器具」については,本願商標の使用を確認することができないところ,請求人は,請求書において,「指定商品の補正等の必要ある場合には,可能な限りこれに応ずる。」旨述べているが,仮に本願の指定商品が,第9類「デジタルカメラ,工業用内視鏡装置」及び第10類「医療用内視鏡」に補正されたとしても,本願商標がその補正後の指定商品との関係において,使用による識別性を具備していないことは上記のとおりであるから,補正を指示することなく審理を進めた。

(3)請求人の主張について

ア 請求人は,「本願商標は,商品CMや企業CMなどに同一的かつ積極的に使用されており,その音構成は独自,特異なものであるから,『音商標』導入にあたり,『保護すべき』である。」旨主張している。

しかしながら,上記(1)イのとおり,商標が単に音のみからなる場合には,その音は,通常,商品の出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として聴取され,認識されることはないとみるのが相当であり,本願商標は,音のみで構成され,その音構成も特異なものということはできず,単なる効果音として認識されるというべきであるから,自他商品の識別性を有するものとは認められない。

イ 請求人は,「本願商標は,欧州,米国,韓国において登録されているから,我が国においても識別力が認められるべきである。」旨主張している。

しかしながら,出願に係る商標が登録要件を具備しているか否かについては,当該出願に係る国の法令及びその国の取引の実情に照らして判断されるべきであるところ,諸外国における登録をもって,上記の判断が否定されるものではない。

ウ 請求人は,「本願商標は,『OLYMPUS』の文字からなる請求人の周知,著名商標とともに使用されることにより,本願商標の音構成自体が有する需要者・取引者に対する訴求力と,請求人商標の周知著名性とが相まって,それに接する需要者・取引者の印象に残りやすくなり,強い印象を与えるから,本願商標が,請求人の業務に係る商品について使用されるものであるとの認識をより強化することになる。その結果,本願商標は独立して十分な自他商品等識別機能を獲得するに至っているものである。」旨主張している。

しかしながら,上記(2)イ(ア)のとおり,本願商標は,「OLYMPUS」の文字とともに使用された結果,本願商標が「OLYMPUS」の文字に付随する効果音として,視聴者に聴取,把握され,記憶される態様で用いられているといえるものであるから,本願商標のみが,「OLYMPUS」の文字と離れて自他商品の識別機能を有しているものとは認められない。

エ 請求人は,「更なる証拠資料の提出の必要ありと判断した場合は、可能な限りこれに応ずる」旨主張しているが,提出する証拠の具体的な内容は述べておらず,証拠の必要性について判断することができない。

よって,請求人の上記主張は,いずれも採用できない。

(4)まとめ

以上によれば,本願商標は,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であり,商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

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