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Trademark Appeal Case

単一色彩の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−799(T2018−799/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は,別掲1のとおり,本願商標の指定商品の筐体の正面視上部を青色(PANTONE287C)とする構成よりなるものであり,第10類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品とし,平成27年4月1日に登録出願,その後,本願商標の指定商品については,原審における同28年10月6日付け手続補正書により,第10類「内視鏡用光源装置,内視鏡用ビデオプロセッサー,内視鏡用光源一体型プロセッサー,内視鏡用ビデオプリンター」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は「商品に使用される色彩は,商品の特定の位置に付された色彩も含め,多くの場合,商品の魅力向上等のために選択されるものであって,商品の出所を表示し,自他商品を識別するための標識として認識し得ない。そして,本願商標の指定商品を取り扱う業界において,本願商標の青色を医療用機械器具の一部に付したものが,使用されている実情が認められる。そうすると,本願商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者は,商品に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり,本願商標は,単に商品の特徴を普通に用いられる方法で表示するにすぎないから,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。そして,提出された証拠からは,本願商標は,『永年の間,他人に使用されることなく,独占的排他的に継続使用した実績を有する』ものに該当するとは認めることができない。また,本願商標が『医療用内視鏡』に使用されている事実等を証明する資料を観察すると,本願商標である青色の色彩と共に『OLYMPUS』の文字が使用されていることも確認できる。そうすると青色のみからなる本願商標が,取引者,需要者をして,出願人の業務に係る商品であることを認識することができるとは直ちにはいい難いと判断するのが相当であるから,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備するものとは認められない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知

当審において,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて,職権により証拠調べをした結果,別掲2の事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,その結果を請求人に通知し(平成30年8月24日付け証拠調べ通知書),相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えた。

第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見(要旨)

請求人は,上記第3の証拠調べ通知に対して,以下のとおり意見を述べた。

1 本願商標との色彩の相違

証拠調べ通知書における,インターネット記事情報に掲載された製品に係る色彩は,本願商標と同じ青系統の色彩ではあっても,本願商標とは全く異なる色彩である。

2 本願商標を使用している商品との相違

証拠調べ通知書における,インターネット記事情報のうち,数社に係るものは,いずれも内視鏡関連の製品ではない。この点,病院には「内視鏡科」といった内視鏡に特化した専門部署が存在することから,これらの製品は,本願商標の使用商品とは,その需要者,使用目的,使用場所等を全く異にするものである。

第5 当審の判断

1 商標法第3条第1項第3号該当性について

(1)本願商標は,上記第1のとおり,色彩のみからなる商標であって,商品の筐体の正面上部を「青色(PANTONE287C)」とする構成よりなる。

(2)色彩は,古来存在するものであって,本来何人も自由に使用し得るものであり,単一の色彩は,特異性が認められるものではない。色彩は,商品そのものやその包装はもとより,その商品の広告等においても,商品の美感や魅力の向上等に資する装飾等として,一般に広く使用されているものであるから,例えば,ロゴ等の文字や図形等と組み合わせるなど,具体的な形態を伴う場合はともかく,そのような形態を伴わない場合には,これに接する者は,通常,その色彩について,商品の出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として認識することはないとみるのが相当である。

(3)本願商標の指定商品及びそれに類する医療用機械器具を取り扱う業界においても,当審における証拠調べ通知において示した例(別掲2)のように,商品の美感や魅力の向上等に資する装飾等として,青色ないし本願商標の色彩に近似する色彩が,商品又は商品の一部に使用されている実情がある。

(4)そうすると,商品の筐体の正面上部を青色とする構成からなる本願商標を,その指定商品について使用しても,これに接する需要者は,当該青色が商品の美感や魅力の向上等に資する装飾等として,通常使用される色彩又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり,その色彩について,商品の出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として認識することはないというべきである。

したがって,本願商標は,商品の特徴(色彩)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであり,商標法第3条第1項第3号に該当する。

2 本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて

請求人は,「本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当する場合であっても,本願商標は,請求人による本願商標の指定商品についての使用によって,自他商品の識別標識としての機能を発揮しているものである。」旨を主張し,その主張に係る証拠として原審における平成28年10月6日付けで甲第1号証ないし甲第62号証,当審における同30年3月1日付けで甲第1号証ないし甲第6号証を提出している。

なお,請求人は,当審において甲第1号証ないし甲第62号証を提出すると主張し,当該甲第7号証ないし甲第62号証は,平成28年10月6日付けで提出した商願2015−30675号の証拠のうち甲第1号証ないし甲第56号証を援用する,としているところ,原審においては当該証拠中,甲第57号証ないし甲第66号証も証拠として提出しているのに対し,甲第26号証,甲第28号証,甲第50号証及び甲第51号証は証拠として提出していない。

そうすると,請求人は,本件について,商願2015−30675号で提出した証拠の全てを援用しているところ,原審と当審では各証拠に付与された番号が異なるため,本審決においては,商願2015−30675号において提出した甲第1号証ないし甲第66号証は,当審においても甲第1号証ないし甲第66号証とし,当審において提出した甲第1号証ないし甲第6号証については,商願2015−30675号において提出した証拠の番号に続くように,それぞれ甲第67号証ないし甲第72号証に読み替えるものとする。

そこで,請求人が提出した証拠及び同人の主張の内容に照らし,本願商標が,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているか否かについて,以下検討する。

(1)請求人及び本願商標の使用地域について

請求人は,大正8年(1919年)に創設され,現在は精密機械器具の製造販売を主たる事業内容としている(甲3,甲4)。

請求人は,1950年(昭和25年)に世界で初めて胃カメラの実用化に成功し,1964年(昭和39年)には,ファイバースコープ付き胃カメラを発表し,さらに1985年(昭和60年)には,ビデオスコープを発売した(甲15)。

請求人は,東京をはじめとする全国15か所に支店,営業所又は事業場を有する他,全国各地及び海外に子会社120社及び関連会社4社を有しているものであって(2016年(平成28年)3月末時点),これらの営業所等から日本各地の病院施設へ本願商標を使用した商品の販売を行っている(甲12〜甲14,審判請求書における請求人の主張)。

そして,現在,請求人は,本願商標の色彩と同様の青色の色彩(四角とは限らない。)をコーポレートカラーとして使用している(甲1,甲2,甲19〜甲35,甲41,甲42,甲45〜甲51,甲53〜甲59)。

(2)本願青色の使用開始時期について

請求人は,2011年(平成23年)10月に内視鏡統合ビデオシステムの一部の機器の筐体の正面上部に,本願商標を付して販売し,現在も本願商標の使用を継続している(甲11,審判請求書における請求人の主張)。

(3)本願商標の指定商品に係る使用について

本願商標の指定商品「内視鏡用光源装置,内視鏡用ビデオプロセッサー,内視鏡用光源一体型プロセッサー,内視鏡用ビデオプリンター」の範ちゅうに含まれるものと認められる商品の筐体の上部には,本願商標と同一視できる,青色の四角形(以下「本願青色」という。)が配されており,本願青色の向かって左端に「OLYMPUS」の文字が白抜きで表示されている(甲19,甲21,甲25,甲27,甲29)。

(4)請求人の広告について

ア 請求人は,「内視鏡用超音波測定装置」,「内視鏡システム」,「ビデオスコープ」の広告を,株式会社東京医学社発行「消化器内視鏡」第26巻第1号(2014年(平成26年)1月25日発行:甲30),第27巻第10号(2015年(平成27年)10月25日発行:甲31),株式会社日本メディカルセンター発行「INTESTINE」第19巻第6号(2015年(平成27年)11月20日発行:甲32),日本内視鏡外科学会ニュースレターNo.21(2015年(平成27年)11月15日発行:甲33)において行った。

イ 請求人は,内視鏡の新聞広告を2014年(平成26年)7月14日に読売新聞,日本経済新聞,毎日新聞,産経新聞の全国版の朝刊において行った(甲35)。

ウ 請求人は,2015年(平成27年)3月28日ないし4月5日に行われた「未来医XPO‘15」の請求人ブースにおいて,内視鏡を紹介した(甲45)。

そして,請求人が同様のブースを出展しているとする,「日本消化器関連学会週間」における,2011年(平成23年)ないし2015年(平成27年)の参加人数は,1回におよそ2万人前後である(甲43)。

(5)請求人の製造に係る商品の販売実績及びシェアについて

請求人の製造に係る内視鏡の売上高は,2015年(平成27年)度には3133億円,2016年(平成28年)度に3416億円であり,請求人の医療事業全体の56%を占めている(甲7)。

そして,請求人の製造に係る内視鏡の2012年(平成24年)の日本国内のシェアは,43%である(甲18)。

(6)判断

ア 本願青色の使用形態は,上記(3)のとおり,本願青色が請求人の「OLYMPUS」のロゴの背景色として使用されるものであり,その場合は,本願青色は,これに接する需要者をして,常に「OLYMPUS」の文字と一体のものと認識されるとみるのが相当であり,その使用に係る本願商標に係る青色の色彩のみが分離して観察され,これが商品の出所識別機能を有するものとして強く印象付けられるとはいい難い。

イ また,請求人が,本願青色を,遅くとも2011年(平成23年)10月より,「内視鏡統合ビデオシステム」に使用し,以降,現在まで,請求人に係る商品等に継続的に使用していることは認められるものの,その使用期間は約8年と長いものとはいえない。

ウ 本願青色が付されている商品が掲載されているカタログの配布数及び配布方法,ウェブサイトの閲覧数を示す証拠の提出はない。また,請求人に係る内視鏡の関連商品の広告はあるものの,本願商標の指定商品を直接広告したものではなく,またその回数も専門誌に4回,全国紙に1回である。

そして,請求人が本願青色を付した商品を使用した平成23年以降の「日本消化器関連学会週間」の参加者は,毎年約2万人であるところ,当該学会週間は年に1度の開催であるから,本願青色を付した請求人に係る商品の発売以降の平成23年ないし同27年の当該学会週間の回数は,5回程度であり多いとはいえない。また,請求人の各年の展示内容も確認できない。

エ 本願商標の指定商品及びそれに類する医療用機械器具を取り扱う業界においても,当審における証拠調べ通知において示した例(別掲2(1)〜(4))のように機器の筐体の正面に青色を使用しているものが見受けられる。

オ 請求人に係る内視鏡及びその関連装置の市場シェアは高いことがうかがえることから,請求人の製造に係る本願商標の指定商品を含む内視鏡及びその関連装置は,取引者,需要者において,ある程度,広く知られているものであると認められる。

カ 上記オより,請求人に係る内視鏡及びその関連装置が,取引者,需要者において,ある程度広く知られているとしても,上記アないしエよりすると,請求人が本願青色からなる本願商標を,その指定商品に使用した結果,需要者が,本願商標のみをもって,専ら請求人の業務に係る色彩であることを認識しているとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠の提出はない。

してみれば,本願商標は,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとは認められないから,商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものではない。

3 請求人の主張について

(1)請求人は,「原審において提示した商品及び当審における証拠調べ通知書において掲載した商品は,本願商標と同じ青系統の色彩ではあっても,色相面で全く異なる印象を需要者に与えるものであり,本願商標とは全く異なる色彩であるから,本願商標を,商品に通常使用される,あるいは使用され得る色彩を表したものと認識するようなことはない。また,拒絶理由通知で示したインターネット情報記事には,サイトが存在していないもの及び販売を終了しているものがあるから,これらの情報を元に本願商標の識別力を否定することは不適切である」旨を主張している。

しかしながら,上記1のとおり,商品に使用される色彩のみでは,出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として認識することはないとみるのが相当であり,また,指定商品及びそれに類する医療用機械器具を取り扱う業界においては,商品の美感や魅力の向上等に資する装飾等として,青色ないし本願商標の色彩に近似する色彩が普通に採択,使用されている実情がある。

そうすると,本願商標と,原審において提示した商品及び当審における証拠調べ通知書において掲載した商品に付されている青色が色相において多少異なっているとしても,両者は,ともに青色であって,通常使用される色彩又は使用され得る色彩を表したものと認識されるものであるから,本願商標に係る青色のみが,その色彩について,商品の出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として認識される実情は認められない。

また,現在,サイトを閲覧できない場合及び商品の販売が終了している場合であっても,商品に青色を付して販売していたことに変わりはない。

(2)請求人は,「指定商品は,内視鏡に関連する装置であるのに対し,原審において提示した商品及び当審における証拠調べ通知書において掲載した商品のうち,いくつかは,内視鏡に関連した製品ではなく,病院には『内視鏡科』といった内視鏡に特化した専門部署が存在することから,これらの製品は,使用商品とは,その需要者,使用目的,使用場所等を全く異にするものである。」旨を主張している。

しかしながら,本願商標の指定商品並びに原審において提示した商品及び当審における証拠調べ通知書において掲載した商品はいずれも医療用機械器具の範ちゅうの商品である。

そして,請求人も,審判請求書において「指定商品の需要者は,病院等で診療に関わる消化器内科,外科等の医師や検査技師・看護師等の医療従事者である。」旨を主張していることから,指定商品もまた,医療用機械器具の範ちゅうの商品である。

そうすると,本願商標の指定商品と原審において提示した商品及び当審における証拠調べ通知書において掲載した商品とはいずれも需要者,使用目的,使用場所等において共通する商品であるというべきである。

(3)請求人は,日本消化器関連学会週間に参加し,本願商標を使用した医療機器商品を継続して展示するとともに,大会参加者に配布される冊子にも本願商標を使用した広告を掲載していることを根拠としても本願商標の周知性を主張している。

しかしながら,日本消化器関連学会週間における商品の展示は,その展示内容が確認できず,また,請求人がプログラムにおける広告としている甲第39号証及び甲第40号証は,広告面のみの提示であり出典が確認できない。

(4)請求人は,手術装置及び消化器内視鏡システムがグッドデザイン賞を受賞していることをも根拠として,本願商標の周知性を主張している。

しかしながら,請求人が,グッドデザイン賞を受賞した商品は,本願商標の指定商品の範ちゅうの商品と認められない商品及び本願商標の指定商品の範ちゅうの商品と認められる商品を含む複数の商品からなるものであって,本願商標の指定商品と構成が異なるものである。

(6)請求人は,「本願商標を使用している商品は,医療機関の手術室等におかれ,手術のたびに医療従事者の目に触れるものであって,単なる商品のデコレーションの域を超えて商品の識別標識としての機能を果たし得る。」及び「本願商標が,高い周知性を獲得している前提の下,商品自体に,識別力の非常に高い『OLYMPUS』の文字の背景に必ず本願商標が使用され,そのような使用が継続して行われているからこそ,本願商標が請求人の識別標識として認識されているものであって,文字と共に使用されていることを捉えて機械的にその識別力を否定すべきではない」旨を主張している。

しかしながら,本願商標の指定商品を含む,本願商標が付されている商品の全てには本願商標を背景色とした「OLYMPUS」の文字が表示されており,「『OLYMPUS』の文字の背景に必ず本願商標が使用される」ことは,上記2(6)アのとおり,本願商標が,これに接する需要者に「OLYMPUS」の文字と一体のものと認識されるというべきであり,本願商標の色彩のみが分離して観察され,これが商品の出所識別機能を有するものとして,需要者に強く印象付けられるとはいい難いというべきである。

(7)したがって,請求人の主張は,いずれも採用できない。

4 まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであって,かつ,同法第3条第2項の要件を具備するものではないから,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

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