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Trademark Appeal Case

単一色彩商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2017−2203(T2017−2203/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は,別掲1のとおり,色彩のみからなる商標であって,黄色(マンセル値 5Y8/14)のみからなるものであり,第7類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として,平成27年4月17日に登録出願されたものであるが,その指定商品については,当審における同30年12月13日付け手続補正書により,第7類「金属加工用ロボット,塗装用ロボット,溶接用ロボット,搬送用ロボット,プラスチック加工用ロボット,電子部品製造ロボット,電子回路組立用ロボット,食料加工用ロボット」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)

原査定は,「商品に使用される色彩は,多くの場合,商品の魅力向上等のために選択されるものであって,商品の出所を表示し,自他商品を識別するための標識として認識し得ないものである。そうすると,本願商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者は,商品に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり,本願商標は,単に商品の特徴を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認める。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。また,出願人が提出した証拠からは,本願商標が使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできないから,本願商標が,商標法第3条第2項の要件を具備するということはできない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号該当性について

本願商標は,上記1のとおり,色彩のみからなる商標であって,黄色(マンセル値 5Y8/14)のみからなるものである。

そして,商品の色彩は,文字及び図形等の商標とは異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではなく,その色彩や色彩構成自体が商品と結合して特定の出所を表示する二次的意味を有するに至る場合があるにすぎないものである。

また,本願の指定商品に係るいわゆる「産業用ロボット」を取り扱う業界においては,商品の特徴として,商品の装飾や模様などに様々な色彩が用いられており,黄色ないし本願商標を構成する色彩に近似する色彩についても,原査定において示した「ストーブリ株式会社」の製造,販売に係る商品を含め,別掲2のとおり,その商品の装飾として,黄色やオレンジ色といった色彩が一般に広く用いられているというのが実情である。

そうすると,黄色の色彩のみからなる本願商標をその指定商品に使用しても,これに接する需要者は,商品に通常使用される色彩を表したものと認識するにとどまり,商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはないとみるのが相当である。

したがって,本願商標は,商品の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであり,商標法第3条第1項第3号に該当する。

(2)商標法が第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて

請求人は,「本願商標が産業ロボット分野では著名なものとなっていることは明らかであり,その結果,本願商標が使用された産業用ロボットに接した需要者はこれが請求人の業務に係るものであることを直ちに理解できる状況にある。したがって,本願商標は商標法第3条第2項によって登録されるべきである。」旨を主張し,その主張に係る証拠として甲第1号証ないし甲第192号証を提出している。

そこで,請求人提出の証拠の内容に照らし,本願商標が,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているか否かについて,以下検討する。

ア 本願商標の使用実績について

請求人の提出に係る証拠及びその主張によれば,以下の事実が認められる。

(ア)請求人について

請求人は,1956年(昭和31年)に富士通が日本の民間企業で初めて,工作機械を動かす「NC(数値制御)装置」の開発に成功し,1972年(昭和47年)に富士通からNC部門が分離し,富士通ファナックを設立した。1974年(昭和49年)にロボットを開発し,1977年(昭和52年)から販売を開始した。その後,1982年(昭和57年)富士通ファナックからファナックへ社名を変更した(甲76,甲151)。

請求人は,本願商標と同一と認められる色彩(以下「本願黄色」という。)をコーポレートカラーとして採用した(請求人の主張)。

(イ)本願商標の使用方法及び使用開始時期について

a 使用開始時期について

商品カタログ(1977年(昭和52年)7月発行)の表紙に請求人に係るロボット(以下「請求人使用商品」という。)の本体に,本願黄色が使用された(甲187)。

b 使用方法について

(a)請求人使用商品は,主に腕状及び手首状の制御軸並びに複数の関節を有する産業用ロボットであって,各用途に応じて手の部分に相当する部分等を交換することにより,様々な用途に対応するものである。当該腕状及び手首状並びに複数の関節(各用途に応じて付属する部分を除く。)の部分に本願黄色の色彩が用いられている。請求人使用商品の具体的な用途は,機械加工,アーク溶接,スポット溶接,洗浄,シーリング,塗装,ガス切断,組立,ハンドリング,重量物搬送,成形品取出し,バリ取り,レーザー切断,スプレー,塗布,描画,検査及び測定等である。(甲70:商品カタログ(1987年(昭和62年)〜2008年(平成20年,甲71)

そして,請求人使用商品は,上記のような特徴を有するハンドリング用の産業ロボットであることから,自動車,電子デバイス,コンシュマー機器/用品,業務/産業機器,建設機械・鉄道車両・船舶,食品・医薬・化学品等の分野で用いられている(甲190)。

(b)カタログ等における本願黄色の使用方法は,カタログにおいては表紙の上部の1/4にあたる部分に本願黄色を使用し,残りの部分には,主に腕状及び手首状の部分が本願黄色に色彩された産業用ロボットの写真が掲載されており,また,請求人発行の雑誌においては表紙,背表紙及び裏表紙の全面にわたって本願黄色を使用している(甲70,甲71)。

(c)本願黄色は,請求人使用商品のみならず,営業車,工場,社屋,ドア,表札,制服,雑誌にいたるまでそのものの全面に使用されている(甲77,甲78)。また,広告においても,掲載されている請求人使用商品(主に腕状及び手首状の部分が本願黄色に色彩された産業用ロボット)の写真及び広告の社名の下部に長方形の図形を本願黄色で色彩したものや本願黄色を帯状にした図形上にカテゴリーごとに請求人使用商品を載せて使用されている(甲1〜甲69,甲167〜甲80,甲87,甲88,甲90〜94,甲101,甲102,甲120,甲123,甲140,甲145,甲146,甲148,甲158,甲160,甲161,甲163,甲165,甲167〜甲172,甲175〜甲177,甲181〜甲184,甲186)。

(ウ)使用商品の販売額及びシェアについて

a 請求人の提出した「みずほ銀行 産業調査部」が2014年(平成26年)3月28日付で発行した雑誌「Mizuho Industry Focus Vol.150 産業用ロボット業界の現状と展望」(甲72)には,「日系メーカーの中でオールラウンダーとしての存在感が高いのは,安川電機,ファナックの2社であり,先に挙げたABB,KUKAを含めた4社で世界最大手のグループを形成している。」と記載されている。

b 「株式会社インターナレッジ・パートナーズ」のウェブサイト(甲74)には,「産業用ロボット全体では安川電機,KUKAロボダー(独),ABB(スイス)と4社で首位争いをしており,ファナックの世界シェアは2割ほど」の記載,及び同頁にファナックの直近売上高は4462億円と記載されている。

c 「千日ブログ〜雑学とニュース〜」(甲75)のブログには「ファナックは,主に工作機械用NC(Numerical Control,数値制御)と産業用の多関節ロボットで群を抜く企業である。・・・産業用多関節ロボットでも,世界で第3位,18.4%のシェアを握る。・・・2008年(平成20年)3月期の連結業績をみると,売上4684億円」と記載されている。

d 「富士経済」が発行したとする書籍の抜粋コピー(甲190)には,8頁の「4.ロボット事業注力セグメント比較分析」の見出しの下,「1 FAロボットメーカー」の項目の「ロボット販売」において,請求人は,2017年(平成29年実績),1830億円で第1位の販売額である。51頁には「ファナック」の見出しの下,「2.ロボット関連事業の位置づけスタンス」の項目に,「垂直多関節ロボットを中心とした総合ロボットメーカーであり,ABB,KUKA,安川電機と共に世界4大FAロボットメーカーの一角である。」と記載され,52頁には「請求人のロボットタイプ別販売実績推移」の項目に,「タイプ別構成比(2017年(平成/金額)」によれば,主要商品は,「スポット溶接ロボット33.9%」,「垂直多関節ロボット26.8%」,「小型垂直多関節ロボット16.0%」と記載され,53頁には「7.エリア別販売実績」の項目に,国内の請求人のロボット販売高は,「168億円(2017年(実績)),175億円(2018年(見込み))」の記載,国内の販売数量は,「5,700台(2017年(実績)),6,000台(2018年(見込み))」と記載されている。

また,103頁,143頁及び147頁にはメーカーシェアの項目があり,請求人のスポット溶接ロボットのシェアは,数量ベースで,2017年(平成29年)実績(39.2%),2018年(平成30年)見込(40.8%)において,1位であり,小型垂直多関節ロボットのシェアは,2017年(平成29年)実績(27.6%),2018年(平成30年)見込(28.5%)において,1位であり,及び垂直多関節ロボットのシェアが,2017年(平成29年)実績(21.6%),2018年(平成30年)見込(21.6%)において,「KUKA」,「ABB」に次いで3位であることが記載されている。

(エ)広告宣伝の方法,回数及び内容について

請求人は,商品カタログ(甲70,甲187)や請求人発行の雑誌(甲71)等には表紙の上部の1/4にあたる部分に本願黄色を使用し,残りの部分には,主に腕状及び手首状の部分が本願黄色に色彩された産業用ロボットの写真が掲載され,又は表紙,背表紙及び裏表紙にわたり本願黄色の色彩を使用し,新聞(甲178〜甲186),雑誌(甲1〜甲69,甲82,甲87〜甲99,甲101,甲102,甲106,甲111,甲112,甲114,甲115,甲120,甲122〜124,甲126,甲127,甲131〜甲148,甲150〜155,甲157〜甲172,甲177)には,請求人使用商品の台座及び各関節部分を除き,主に腕状及び手首状の部分に本願黄色の色彩を使用し,又は台座及び各関節とも全てにわたって本願黄色の色彩を使用しているものと,広告には,「FANUC」の文字の下にその文字と同じ幅で長方形の中を本願黄色の色彩で塗りつぶしたもの,又は「FA」,「Robot」及び「Robomachine」の項目に分けた傾斜した3本の帯状図形の中を本願黄色の色彩で塗りつぶしたものを使用している。

(オ)アンケート調査について

請求人は,コンサルティング会社に依頼して「産業用ロボットに関するアンケート」と題して,自動車メーカー,電機メーカー,医療品メーカー,菓子メーカー等の製造業者とシステムインテグレーターの計922社に郵送によるアンケートを実施した(甲189)。

当該アンケートは,最終的に回答があった社は製造業者が26社,システムインテグレーターが19社であった。具体的なアンケート結果を見ると,製造業者の回答結果は,本願商標をみて請求人の社名を書いたものは26社中7件であり,メーカーがわかった場合のメーカーを挙げた理由として,「色」と回答した社は,上記7社のうちの5社であった。

また,システムインテグレーターの回答結果は,本願商標をみて請求人の社名を書いたものは19社中11件であり,メーカーがわかった場合のメーカーを挙げた理由として,「色」と回答した者は,上記11社のうちの6社であった。

イ 本件商標が請求人使用商品に使用して特別顕著性を獲得しているかについて

上記アで認定した事実を総合すれば,以下のように判断できる。

(ア)請求人使用商品について

請求人は,富士通の「NC(数値制御)装置」部門が分離し,1956年(昭和31年)に設立した。そして,1974年(昭和49年)にロボットを開発し,1977年(昭和52年)から販売を開始した。

請求人は,産業用ロボットメーカーとして,2017年(平成29年実績)において,第1位の1830億円の販売額があり,また,主力商品のスポット溶接ロボット及び小型垂直多関節ロボットのシェアは,2017年(平成29年)において,1位であり,垂直多関節ロボットのシェアは,2017年(平成29年)において,3位であり,売上高,市場シェアとも非常に高いことが認められる。

請求人使用商品は,機械加工,溶接,洗浄,塗装,組立及び搬送等の様々な用途に用いられ,自動車,電子デバイス,コンシュマー機器/用品,業務/産業機器,建設機械・鉄道車両・船舶,食品・医薬・化学品等の分野で用いられている。

以上よりすると,請求人使用商品自体は,本願の指定商品に係る取引者,需要者において広く知られているものなっていたものと認められる。

(イ)本願黄色について

a 単一の色彩の保護について

色彩は,古来存在し,何人も自由に選択して使用できるものであり,単一の色彩それ自体には創作性や特異性が認められるものではないから,仮に,単一の色彩が出所表示機能(自他識別機能)を持つようになったと思われる場合であっても,色彩が元々自由に使用できるものである以上,色彩の自由な使用を阻害するような商品表示(単一の色彩)の保護は,公益的見地からみて容易に認容できるものではない。

そして,単一の色彩が特定の商品に関する出所識別標識として保護される場合があるとしても,当該色彩とそれが施された商品との結びつきが強度なものであることはもちろんとして,(a)当該色彩をその商品に使用することの創造性,特異性,(b)当該色彩使用の継続性,(c)当該色彩の使用に関する宣伝広告とその浸透度,(d)取引者や需要者が商品を識別,選択する際に当該色彩が果たす役割の大きさ等も十分に検討した上で決せられなければならない。

b 以下,上記aに基づいて検討する。

(a)本願黄色を本願指定商品に使用することの創造性,特異性

そこで,本願商標について検討すると,本願黄色は,単色からなるものであって,本願の指定商品である産業用ロボットにおいても色彩は普通に使用されているから,これを本願の指定商品に使用しても,それ自体には創作性や特異性は認められない。

(b)当該色彩使用の継続性及び当該色彩の使用に関する宣伝広告とその浸透度

請求人は,1977年(昭和52年)に請求人使用商品の主に腕状及び手首状の部分に本願黄色を使用し,以降継続して,本願黄色を請求人使用商品に使用した。請求人使用商品は,主に腕状及び手首状の制御軸並びに複数の関節を有する産業用ロボットであって,当該腕状及び手首状の部分に本願黄色の色彩が用いられているほか,請求人使用商品のカタログの表紙の上部の1/4にあたる部分に本願黄色の色彩が使用され,また,請求人発行の雑誌の表紙,背表紙及び裏表紙にわたり本願黄色の色彩が使用されている。

また,請求人は,新聞及び雑誌の広告において「FANUC」の文字の下にその文字と同じ幅で長方形の中を本願黄色の色彩で塗りつぶしたもの,又は「FA」,「Robot」及び「Robomachine」の項目に分けた傾斜した3本の帯状図形の中を本願黄色の色彩で塗りつぶしたものを使用している。

さらに,請求人は,本願黄色を自社の営業車,工場,社屋,ドア,表札,制服,雑誌にいたるまで,それぞれに色彩として使用し,又は本願黄色を雑誌及び新聞の広告の色彩として40年以上使用していることが認められる。

しかしながら,上記(1)のとおり,商品の色彩は,文字及び図形等の商標とは異なり,本来的には商品の出所を表示するものではなく,本願黄色は,請求人使用商品との関係において,本願の指定商品の取引者,需要者の印象に残るような使用とはいえないし,本願黄色を自社の営業車,工場,社屋,ドア,表札,制服等への使用は,請求人の色彩として使用されているものとしても,請求人使用商品の識別性との関連は必ずしも明らかでない。

また,請求人がコンサルティング会社に依頼して行ったアンケート調査によれば,アンケートを行った922社のうち回答を得たものは,製造業者が26社,システムインテグレーター19社,合計してもわずか45社である。

そして,そのアンケート調査の結果は,製造業者で回答した社のうち請求人の社名を記載しものは26社中7社で,メーカーを挙げた理由として,「色」と回答した社は,上記7社のうち5社のみであり,システムインテグレーターで回答した社のうち請求人の社名を記載しものは19社中11社で,メーカーを挙げた理由として,「色」と回答した社は,上記11社のうち6社のみであった。

そうすると,回答した45社のち11社(24.4%)が,本願黄色を請求人使用商品である産業用ロボットに使用している「色」であると理解,認識したものであるが,これを回答した45社は,請求人使用商品の取引者,需要者のうちのごくわずかの社しか回答しておらず,当該アンケート結果が,直ちに本願の指定商品の取引者,需要者の認識を示しているとはいえない。

したがって,本願黄色は,請求人の色彩として,請求人使用商品の色彩及び自社の営業車,工場,社屋,ドア,表札,制服,雑誌に,40年以上継続して使用されていたとしても,本来的には商品の出所を表示するものではないこと,及び上記アンケート結果からも,直ちに本願の指定商品の取引者,需要者の認識を示しているとはいえないことからすると,使用による浸透度があるとはいい難い。

(c)取引者や需要者が商品を識別,選択する際に当該色彩が果たす役割の大きさ等

本願の指定商品である産業用ロボットに係る取引者,需要者は,商品を識別,選択する際に,色彩のみに着目して本願の指定商品を識別,選択して購入するということは,通常考え難く,本願の指定商品である産業用ロボットは,当該商品の金額,機能性,信頼性,アフターサービスのほか,どのメーカーの商品であるか等の点も確認したうえで商品を選択し購入するものと考えられるから,色彩が果たす役割の大きさは,極めて小さい。

そして,本願の指定商品である産業用ロボットに関しては,別掲2のとおり,請求人以外の第三者が黄色の色彩を産業用ロボットの色彩として採用している。

また,黄色の色彩が,道路標識,工事用の建設機械,安全・保安用の看板,ヘルメット等に用いられるなど,人に危険な場所,危険な物であることを注意喚起するための色彩として採用されていることは,当庁において顕著な事実である。さらに,請求人は,原審における意見書において,「本願商標の採択の理由」として「出願人は黄色が中国皇帝を表す色であり,また,黄色で目立たせることによって人が近づいてケガをするリスクを減らすことができるため本願商標を採択した」旨述べている。そうすると,黄色の色彩は,請求人以外の第三者においても危険な物であることを注意喚起するための色として採用されるものといえる。

c 以上よりすると,本願黄色は黄色からなる単色の商標であって,これを本願の指定商品に使用しても,それ自体には創造性や特異性が認められないこと,本願黄色が請求人の色彩として,請求人使用商品の色彩や自社の営業車及び工場等に40年以上継続して使用されていたとしても,本願黄色が,請求人使用商品の識別性との関連において継続性及び浸透度があるとはいい難いこと,本願の指定商品である産業用ロボットは,商品の機能性等のほか,どのメーカーの商品であるか等の点も確認したうえで商品を選択し購入するものと考えられるから,色彩が果たす役割の大きさはさほど大きくないこと,請求人以外の第三者が黄色を産業用ロボットの色彩として採用していること,黄色の色彩が注意喚起するための色彩として採用されていることなどを総合的に判断すると,本願商標を保護することは,色彩の自由な使用を阻害するものであって,公益的見地からみて容易に認容できるものではない。

(ウ)小括

以上のことを総合勘案すると,請求人使用商品自体は本願の指定商品に係る取引者,需要者において広く知られているものになっていたものと認められるとしても,本願商標は,それ自体には創造性や特異性が認められず,本願黄色の使用の継続性及び使用による浸透度があるとはいい難く,黄色の色彩が本願の指定商品との関係において,果たす役割の大きさは,さほど大きいとは認められず,黄色の色彩が危険な物であることを注意喚起するための色彩として採用されるものといえるから,公益的見地からみて容易に認容できるものではない。

したがって,本願商標は,これに接する取引者,需要者をして,これが何人かの業務に係る商品であることを認識させるということはできず,商標法第3条第2項の要件を具備するものといえない。

(3)請求人の主張について

ア 請求人は,「人は常に文字をもって商品の出所を認識するものではなく,その特徴を捉えて商品の出所を認識するものである。本願商標は商品全体に表示されているものであるから,文字部分によりも必然的に需要者の目を惹くものである。・・・本願商標の使用期間はおよそ40年であり,その商標と共に『FANUC』『FANUC ROBOT』の文字が使用されていたとしたら,需要者はおのずと『請求人の産業用ロボット=黄色 ファナック=黄色』の認識を有するものである。色彩商標と共に『FANUC』『FANUC ROBOT』の文字商標が使用されていた場合に,人はことさら色彩商標を捨象して,文字商標のみをもって商品の出所を識別(認識)するものではない。文字商標と共に色彩商標も商品の出所表示として記憶され,その使用が積み重ねられれば,次第に色彩商標だけでも商品の出所を認識できるようになる。したがって,文字商標がともに使用されていることをもって色彩商標が出所表示として機能しないとはいえない。」旨を主張している。

しかしながら,上記のアンケート調査では,本願商標の「黄色」は,「産業用ロボット」の取引者,需要者において,色彩をもって請求人の会社名を回答した社は11社(24.4%)でしかないことは上記(2)で述べたとおりであり,取引者,需要者である製造業者やシステムインテグレーターをして,本願商標を請求人の業務に係る商品を表すものとして広く知られているものであると判断することはできない。

また,本願商標の黄色の色彩の出所識別機能については,上記(2)イ(イ)のとおり,請求人の社名等の文字商標とともに使用されていることをもって色彩が出所表示として機能しないと判断したものではなく,本願商標の創造性,特異性,継続性,使用による浸透度,役割の大きさ及び公益的観点から判断したものである。

イ 請求人は,「本願商標は請求人のコーポレートカラーとしても徹底して使用されている。需要者がシステムインテグレーター並びに工場の生産技術者及び経営者という専門家である以上,取引の経験則上,当然この事実を知り得ているといえる。すわなち,産業用ロボットの分野では『請求人=黄色』という認識が需要者の間に定着している。本願商標は請求人のコーポレートカラーとして認識されていることからも著名なものとなる。すなわち,請求人のコーポレートカラーとしても徹底して本願商標を使用してきたことからも,当該商標を使用した産業用ロボットが請求人の業務に係るものと認識されるに至っている。」旨を主張している。

確かに,請求人は,請求人が製造する商品のみならず,ホームページ,商品を製造する機械,営業車,工場,社屋,ドア,表札,制服,雑誌に至るまで本願商標が使用されていることは認められる。

しかしながら,請求人が使用している本願商標は,黄色の単色であり,本願の指定商品において,他者も類似した商品に類似した色彩を使用している実情がある。

また,本願商標が,これを使用した商品が請求人の業務に係る商品であることを需要者に認識されるに至っているものでないことは,上記(2)イで述べたとおりである。

ウ 請求人は,「本願商標が使用された産業用ロボットは請求人の業務に係るものであると認識されている。さらにいえば,産業ロボットの分野では『本願商標に接した顧客は一目でファナックだと理解し,競合はたじろぐ。』『工場の生産技術者などモノ作りに携わる人は大抵黄色を見るだけでファナックという企業を思い浮かべるようになった。』というように本願商標をもって商品の出所を識別しているのである。このような状況下にあって,競業他社がその自己の商品を黄色で着色した場合には,需要者が当該商品を請求人の業務に係るものであるとしてその出所を混同するものとなることは必定である。このような状況は商標法上好ましくなく,商標の登録によって不正競争を防止し取引秩序の維持を図るという趣旨に反するものである。」旨を主張している。

また,請求人は,「拒絶査定で挙げた例の認知度の低さからして,これらの例によって,産業用ロボットの分野では『請求人=黄色』『請求人の産業用ロボット=黄色』という需要者の認識が損なわれるとは考えらえない。言い換えれば,拒絶査定において挙げられた例によって,本願商標の独占適応性が否定されるべきではない。もし,本願商標が自他商品識別力を有しないものとして拒絶された場合には,誰でも本願商標を使用しても問題ないと考えてしまうおそれがある。これは不正競争を助長しかねず,ひいては,取引秩序の維持が図れないものとなる。このような状況は商標法の趣旨に反するものであり,かつ,御庁にとっても望ましいものではない。以上述べたように,本願商標の使用を取引界に開放しておくべき理由はなく,本願商標は独占適応性を有するものである。」旨を主張している。

しかしながら,本願商標のような単色の場合,色彩は,文字,図形,文字と図形の組合せと異なり無限にあるものではなく,限られた有限の色彩しかないものであり,これを特定人が独占することは,その色彩ばかりでなく,類似の色彩にまでも禁止権が及ぶことになるから,他者の色彩の選択の範囲が制限されることとなる。また,本願商標の黄色の色彩は,人に危険な場所,危険な物であることを注意喚起するための色彩として採用されていることから,誰しも一般に使用を欲するものであり,自由利用を認める必要性がある。

したがって,本願商標を請求人が独占することは,本願商標に類似した色彩を他者が使用できなくなり,また,危険を注意喚起する色彩が使用できなくなることから,産業の発達や安全性を阻害するおそれがある。

エ よって,上記請求人による主張は,いずれも採用することができない。

(4)まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,かつ,同条第2項に規定する要件を具備するものではないから,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

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