Trademark Appeal Case
周知商標と称呼・外観類似
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2019−900106(T2019−900106/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第6112592号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成30年3月29日に登録出願,第11類「業務用加熱調理機械器具,業務用食器乾燥機,業務用食器消毒器,業務用調理台,業務用流し台,家庭用電熱用品類(美容用又は衛生用のものを除く。),家庭用調理台,家庭用流し台」を指定商品として,同年12月7日に登録査定,同31年1月11日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第39号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号について
ア 申立人が使用する商標
申立人が,本件商標の登録出願前から使用している別掲2のとおりの構成からなる商標(外観上同一視できる商標を含む。以下「使用商標」という。)は,同人が「(調理用)焼き台」(以下「申立人商品」という。)について使用し,需要者の間に広く認識されているとするものである。
イ 周知性について
申立人は,平成29年7月31日にソーラム株式会社(以下「ソーラム社」という。)より同社の厨房機器部門が製造販売する商品の権利の譲渡を受け(甲25),以後,業務用加熱調理機械器具である焼き台を「いぶし銀」の商品名にて製造販売している(甲12〜甲15)。
申立人は,現在,申立人商品について,使用商標を広く使用しているところ(甲13〜甲15),申立人商品は,焼き台として,これまで多数の飲食店店舗に導入・使用されており(甲29),現時点で,首都圏を中心に100を超える飲食店の店舗にて導入・使用されている。具体的な地域別の販売台数は,首都圏地域約130台,その他全国22台,ロシア4台,フィリピン2台,タイ4台であり,その他にリースも行っている(甲38)。申立人商品が導入・使用されている店舗の経営主体には,株式会社柿安本店(甲33),株式会社ヨシキン(甲34),株式会社東京フード(甲36)など大手外食産業事業者が含まれており(甲29,甲38),申立人商品及び使用商標は,その販売台数に関わらず,幅広く知れ渡っている。
また,申立人商品は,他の業務用厨房機器メーカーなどからも注文を受け,製造・販売しているが,受注先には,業界大手のホシザキ株式会社,タニコー株式会社(甲37),株式会社マルゼン(甲32),クリナップ株式会社なども含まれており(甲29,甲30),申立人商品及び使用商標は,業務用厨房機器メーカー業界にも知れ渡っている。
なお,申立人及びソーラム社は,発注を検討している業者等から連絡を受けた際に,申立人商品のカタログ(甲26),取扱説明書(甲27)などを送付しており(甲29),申立人商品に使用商標が使用されていることは当然に認識されている。さらに,申立人は,申立人商品を株式会社ブランスリー報道社(甲35)が運営する厨房機器等販売ウェブサイト「ブランスリー業者街」等にも出品しており(甲29,甲31),申立人の自社販売ウェブサイト以外でも受注・販売を行っている。実際,本件商標が使用されている商品(以下「本件商標使用商品」という。)が販売されて以降,他の業務用厨房機器メーカー等から,申立人に対して,本件商標使用商品に関する多数の問い合わせがあり,使用商標が需要者に認識されているものである。
以上から,使用商標が申立人(又はソーラム社)の商標として周知性を有していることは明らかである。
ウ 商標の類似性
本件商標は,別掲1のとおりの構成からなるものであるから,「イブシギン」の称呼が生ずることは明らかである。
他方,使用商標は,「いぶし銀」の文字からなるものであるから,「イブシギン」の呼称を生ずることも明らかである。
したがって,本件商標と使用商標は,共に「イブシギン」の称呼を生ずるから,その称呼によって類似の商標である。
さらに,本件商標と使用商標は,共に「いぶし銀」の文字を毛筆書体で記載したものであり,その書体の同一性が認められる。
本件商標には「+」の記号及び「IBUSHIGIN」の文字の表示があるが,これらは,本件商標の主たる部分を構成するものではない。
したがって,本件商標と使用商標は,その外観によって類似の商標である。
以上からすれば,本件商標と使用商標は,その外観及び呼称から類似の商標であることが明白である。
エ 商品の類似性
申立人商品は,調理時間の短縮を図ることができ(甲12〜甲14),電気料金のコストを下げることができ,また,本体の清掃を簡易にし,補修費用も大幅に削減できるものとなっている。その結果,申立人商品は,焼き鳥等の焼き台としての需要が高く,焼き鳥店等の飲食店や業務用厨房機器メーカーが主たる需要者である。
さらに,申立人商品は,本体の小型化が可能になった結果,ステンレス製の省スペースデザインとなっており,その商品デザインも特徴の大きな一つである。
他方,本件商標使用商品は,申立人商品と同様に,焼き台であるところ,ステンレス製の外枠にCFH(カーボン・ファイバー・ヒーター)を搭載している点で共通しているほか,その外観も酷似しており,その製品の仕組み及び形態は,申立人商品と同一といえるほどに類似している(甲20,甲22)。
以上からすれば,両商品は,部品,用途が完全に一致し,その用途や販売形態から需要者の範囲も一致するものであり,類似する商品であることは明らかである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
申立人は,2015年(平成27年)頃から,申立人商品について「イブシギン」と容易に呼称しうる文字からなる商標(使用商標)を広く使用し今日に至っており,申立人商品は大手業務用厨房機器メーカーから発注を多数の受けており,現在,首都圏を中心に,100を超える飲食店店舗にて導入・使用されている。
また,申立人商品と本件商標使用商品は,いずれの製品も飲食店にて使用される業務用の焼き台であるところ,その形態や製品の仕組みは同一といえるほどに類似した製品であり,需要者において,使用商標と呼称及び外観において類似する本件商標を用いている商品(本件商標使用商品)が申立人の製品であると誤認することとなる可能性が極めて高い。
さらに,本件商標使用商品は,その商品名(いぶし銀+)からして,申立人商品(いぶし銀)の後継機種又は上位機種であると誤認されることが明らかな商品名であり,このことは,本件商標と使用商標との関係においても,同様である。
したがって,本件指定商品の需要者は,本件商標がその指定商品について使用された場合には,申立人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
3 当審の判断
(1)使用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証,同人の主張及び職権調査(インターネット情報など)によれば,次の事実を認めることができる。
(ア)東京都渋谷区に本社を置くソーラム社は,遅くとも2014年(平成26年)9月頃には,使用商標を使用して申立人商品の販売等を行っていた(甲27)。
なお,申立人がいう「(調理用)焼き台」(申立人商品)は,「業務用焼き鳥器」と認められる(甲27,甲28)。
(イ)申立人とソーラム社は,平成29年7月に,ソーラム社が持つ厨房機器事業の全ての権利を申立人に移行することに同意した(甲25)。
(ウ)申立人は,2018年(平成30年)5月頃には,使用商標を使用して申立人商品「業務用焼き鳥器」の販売等を行っていた(甲26)。
(エ)しかしながら,申立人及びソーラム社(以下「申立人等」という。)による申立人商品の売上高,販売数,市場シェアなど販売実績,使用地域,並びに広告宣伝の方法,期間,地域及び規模を示す具体的な証左は見いだせない。
イ 上記アの事実からすれば,申立人等が遅くとも平成26年9月頃から現在まで申立人商品を継続して販売していることは推認できるものの,申立人商品の販売実績等を示す証左は見いだせないから,申立人商品は,需要者の間で広く認識されているものと認めることはできない。
そうすると,申立人商品に使用されている使用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
ウ なお,申立人は,申立人商品が首都圏を中心に100を超える飲食店の店舗で導入・使用されている,及び申立人商品の販売台数は首都圏が約130台,その他全国が22台,ロシア等海外が10台である旨主張しているが,それらを裏付ける証左はなく,また,仮に,かかる導入店舗数及び販売台数が事実であるとしても,それが申立人商品及び使用商標の周知性を裏付けるほどの数量とは認められない。
したがって,かかる主張をもって上記判断を覆すことはできない。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 使用商標の周知性
上記(1)のとおり,使用商標は,申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められない。
イ 商標の類否
(ア)本件商標は,別掲1のとおり,「いぶし銀」,「IBUSHIGIN」の文字及び「+」の記号からなるところ,その構成中,太く顕著に表された「いぶし銀」の文字部分が,取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとみるのが自然である。
そして,下段のローマ字は,上段の「いぶし銀」の読みを表したものと無理なく把握させるものであるから,その構成文字に相応して,「イブシギン」の称呼を生じるものである。
また,「いぶし銀」の文字は,「『いぶし』をかけて表面を灰色に変化させた銀。また,その色。渋くて味わいのあるもののたとえ(株式会社岩波書店「広辞苑第六版」)」等の意味を有する語である。
したがって,本件商標は,「イブシギン」の称呼を生じ,「『いぶし』をかけて表面を灰色に変化させた銀。また,その色。渋くて味わいのあるもの」程の観念を生じるものである。
(イ)使用商標は,「いぶし銀」の文字を別掲2のとおりの態様で表してなるものであるところ,本件商標と同様に「イブシギン」の称呼を生じ,「『いぶし』をかけて表面を灰色に変化させた銀。また,その色。渋くて味わいのあるもの」程の観念を生じるものである。
(ウ)本件商標と使用商標との類否を検討すると,本件商標の構成中,取引者,需要者に対し強く支配的な印象を与える「いぶし銀」の文字部分と使用商標との比較において,両者は,ともに「いぶし銀」の文字からなるものであるから,外観においてつづり字を共通にするものである。
そして,本件商標と使用商標とは,その称呼及び観念を同じくするものである。
そうすると,両者は,外観において類似するものであって,称呼及び観念を同じくするものであるから,両者の外観,称呼,観念によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのある類似の商標というのが相当である。
ウ 商品の類否
申立人商品は,本件商標の指定商品中「業務用加熱調理機械器具」の一種と認められるものであって,同指定商品中「業務用加熱調理機械器具,業務用食器乾燥機,業務用食器消毒器,業務用調理台,業務用流し台」と同一又は類似の商品と認められる。
エ 小括
上記イのとおり,本件商標と使用商標とは類似するものであり,上記ウのとおり,本件商標の指定商品中に申立人商品と同一又は類似の商品が含まれているものの,上記アのとおり,使用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(2)イのとおり,本件商標と使用商標とは類似するものであり,上記(2)ウのとおり,本件商標の指定商品中に申立人商品と同一又は類似の商品が含まれているものの,上記(1)のとおり,使用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者をして使用商標を連想又は想起させることはなく,その商品が他人(申立人等)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
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