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Trademark Appeal Case

ありふれた図形の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−8761(T2018−8761/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第10類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として,平成27年4月1日に位置商標として登録出願,その後,本願商標の指定商品については,原審における同28年10月6日付け手続補正書により,第10類「内視鏡用光源装置,内視鏡用ビデオプロセッサー,内視鏡用光源一体型プロセッサー,内視鏡用ビデオプリンター」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は,「本願商標に係る指定商品の分野において,出願人以外の者が,青色の横長の略長方形図形を医療用機械器具又はその包装の正面視上部に付して使用している事実がうかがえる。そうすると,単に青色の横長の略長方形図形で構成される本願商標をその指定商品の筐体(きょうたい)の正面視上部に位置を特定して使用しても,これに接する需要者は,本願の指定商品において普通に採択される横長の略長方形図形であることを理解するにすぎないものである。したがって,本願商標は,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標であり,商標法第3条第1項第5号に該当する。また,出願人が提出した証拠からは,本願商標が使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできないから,本願商標が,商標法第3条第2項の要件を具備するということはできない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断

1 当審における証拠の取扱いについて

請求人は,原審において,甲第1号証ないし甲第62号証(請求人に係る商願2015−30675における平成28年10月6日付け手続補足書から抜粋して援用。)を提出し,さらに,当審において,甲第1号証及び甲第2号証を追加し,原審において援用した甲1号証ないし甲56号証を甲3号証ないし甲58号証と読み替えて証拠としている。

そうすると,原審と当審では各証拠に付与された番号が異なるため,本審決においては,商願2015−30675号において提出した甲第1号証ないし甲第66号証は,当審においても甲第1号証ないし甲第66号証とし,当審において提出した甲第1号証及び甲第2号証については,商願2015−30675号において提出した証拠の番号に続くように,それぞれ甲第67号証および甲第68号証に読み替えるものとする。

2 商標法第3条第1項第5号該当性について

(1)本願商標は,上記第1のとおり,医療用機械器具の筐体の正面上部に,青色の色彩が付された横長帯状図形(以下「本願青色図形」という。)を配してなる位置商標であり,第10類「内視鏡用光源装置,内視鏡用ビデオプロセッサー,内視鏡用光源一体型プロセッサー,内視鏡用ビデオプリンター」を指定商品とするものである。

(2)位置商標は,「商標に係る標章(文字,図形,記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合に限る。)を付する位置が特定される商標」であって,願書への記載は「その標章を実線で描き,その他の部分を破線で描く等により標章及びそれを付する位置が特定されるように表示した一又は異なる二以上の図又は写真によりしなければならない。」と規定されている(商標法施行規則第4条の6)。

そうすると,位置商標において実線等で表された標章は,その形状が相似形のものは含まれるとしても,標章の形状及び色彩は一定のものと解される。

(3)本願商標を構成する図形は,青色の色彩が付された横長帯状図形であるところ,商品を販売するにあたっては,出所を表示するための識別標識以外に,装飾的な種々の文字,図形等を使用したり,また,文字やロゴの背景に色彩そのものや色彩を付した図形等を施したりすることは,商品のデザイン上一般的に行われている。

(4)本願商標の指定商品を含む医療用機械器具を取り扱う業界においても,商品の美感及び機能の向上に資する目的のため様々な装飾が施されているところ,請求人以外の者が,筐体を有する医療用機械器具の正面上部という位置に,青色の横長帯状図形を装飾的に付したり,企業のロゴや文字の背景に青色の横長帯状図形等を配したりすることは,商品デザインの一類型として採択されている(別掲3,甲63)。

そうすると,その色彩を含めた本願商標の構成は,その形状や態様に特異性があるとは認められない横長の帯状図形であって極めて簡単なものであり,かつ,当該図形は,デザインの一種として普通に採択されているありふれたものというのが相当である。

加えて,当該図形が付される位置も一般的に採用し得る範囲内のものであって,筐体の正面部のデザインとして予測し難いような特異な図形及び配色並びに位置ではなく,格別な印象を与えるものであるとはいえない。

(5)以上からすると,本願商標が,その指定商品に使用された場合,本願商標に接する取引者,需要者は,商品の筐体の正面上部という位置に付された極めて簡単な構成からなるありふれた青色の横長帯状図形として認識するにとどまり,商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはないというべきである。

したがって,本願商標は,極めて簡単,かつ,ありふれた標章のみからなるものであり,商標法第3条第1項第5号に該当する。

3 商標法第3条第2項該当性について

請求人は,「本願商標が仮に商標法第3条第1項第5号に該当するとしても,同条第2項の要件を具備している。」旨を主張し,証拠として,甲第1号証ないし甲第58号証を提出している。

そこで,請求人が提出した証拠及び当審で採用した証拠並びに同人の主張に照らし,本願商標が,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているか否かについて,以下検討する。

(1)請求人及び本願商標の使用地域について

請求人は,1919年(大正8年)に創設され,現在は精密機械器具の製造販売を主たる事業内容としている(甲3,甲4)。

請求人は,1950年(昭和25年)に世界で初めて胃カメラの実用化に成功し,1964年(昭和39年)には,ファイバースコープ付き胃カメラを発表し,さらに1985年(昭和60年)には,ビデオスコープを発売した(甲15)。

請求人は,東京をはじめとする全国15か所に支店,営業所又は事業場を有する他,全国各地及び海外に子会社120社の及び関連会社4社を有しているものであって(2016年(平成28年)3月末時点),これらの営業所等から日本各地の病院施設へ本願商標を使用した商品の販売を行っている(甲12〜甲14)。

(2)本願商標の使用開始時期について

請求人は,2011年(平成23年)10月に「内視鏡統合ビデオシステム」の一部の機器の筐体の正面上部に,本願商標を付して販売し,現在も本願商標の使用を継続している(甲11)。

(3)本願商標の指定商品に係る使用について

ア 「内視鏡用光源装置」の範ちゅうに含まれるものと認められる商品「高輝度光源装置 CLV−290SL/CLV−290」(甲19),「高輝度光源装置 CLV−S190」(甲25,甲29)(別掲2(1))及び「高輝度光源装置 CLV−S400」(甲27)は,それらの筐体の正面上部において,青色の横長帯状図形を配し,当該図形の左端には「OLYMPUS」の白抜き文字が表示されている。

イ 「内視鏡用ビデオプロセッサー」の範ちゅうに含まれるものと認められる商品「ビデオシステムセンター CV−290」(甲19),「ビデオシステムセンター OTV−S190」(甲25),「ビデオシステムセンター CV−190」(甲29)及び「3Dビデオプロセッサー 3DV−190」(甲29)(別掲2(2))は,それらの筐体の正面上部において,青色の横長帯状図形を配し,当該図形の左端には「OLYMPUS」の白抜き文字が表示されている。

ウ 「内視鏡用光源一体型プロセッサー」の範ちゅうに含まれるものと認められる商品として,「光源一体型プロセッサー」との説明がある「ビデオシステムセンター CV−170」(甲21)は,その筐体の正面上部において,青色の横長帯状図形を配し,当該図形の左端には「OLYMPUS」の白抜き文字が表示されている。

エ 「内視鏡用ビデオプリンター」の範ちゅうに含まれるものと認められる商品「カラービデオプリンター OEP−5」(甲19)の筐体正面上部において,青色の横長帯状図形を配し,当該図形の左端には「OLYMPUS」の白抜き文字が表示されている。

(4)請求人の広告について

ア 請求人は,日本の主要都市で1993年(平成5年)から2015年(平成27年)まで毎年開催されている,日本における最大級の医学系の学会である「日本消化器関連学会週間」(甲39)に参加しているところ,2007年(平成19年)から2015年(平成27年)に開催された当該学会の「医療品・医療機器展示会」を紹介するウェブサイトの「主な出展内容(主な展示品)」の項目欄には,「内視鏡システム及び内視鏡関連機器」等の記載がある(甲40)。

また,当該学会の臨時増刊号(甲41,甲42)において,請求人に係る内視鏡システム及び内視鏡関連製品等の広告が掲載されているが,発行年及びその出典は不明である。

イ 請求人は,請求人に係る内視鏡システム及び内視鏡関連装置の広告を,株式会社東京医学社発行「消化器内視鏡」第26巻第1号(2014年(平成26年)1月25日発行:甲30),第27巻第10号(2015年(平成27年)10月25日発行:甲31),株式会社日本メディカルセンター発行「INTESTINE」第19巻第6号(2015年(平成27年)11月20日発行:甲32),日本内視鏡外科学会ニュースレターNo.21(2015年(平成27年)11月15日発行:甲33)に掲載した。

(5)請求人の製造に係る商品の販売実績及びシェアについて

請求人の製造に係る内視鏡の売上高は,2015年(平成27年)度には3133億円,2016年(平成28年)度に3416億円であり,請求人の医療事業全体の56%を占めている(甲7)。

そして,請求人の製造に係る内視鏡の2012年(平成24年)の日本国内のシェアは,43%である(甲18)。

(6)判断

ア 本願商標の指定商品及びそれに類する医療用機械器具を取り扱う業界においても,請求人以外の者により,商品の筐体の正面に青色の横長帯状図形等が使用されている例が見受けられる(別掲3,甲63)。

イ 請求人が,本願青色図形を,遅くとも2011年(平成23年)10月より,「内視鏡統合ビデオシステム」に使用し,以降,現在まで,請求人に係る商品等に継続的に使用していることは認められるものの,その使用期間は約8年と長いものとはいえない。

ウ 請求人に係る内視鏡及びその関連商品の売上高及び市場シェアは高いことがうかがえる。

エ しかしながら,本願青色図形は,デザインの一種として普通に採択されている極めて簡単で,かつ,ありふれた横長帯状図形を看取させるものであり,また,上記(3)のとおり,請求人の「OLYMPUS」のロゴの背景には,必ず青色の横長帯状図形が使用されているため,青色の横長帯状図形に接する需要者は,常に「OLYMPUS」の文字と一体のものと認識するのが自然であり,本願青色図形のみが分離して観察され,これが商品の出所識別機能を有するものとして強く印象付けられるとはいい難い。

オ 請求人は,「本願商標を使用した各商品カタログの出荷部数は,2016年(平成28年)時点において平均2万部超,多いものについては9万4千部を超え,カタログ出荷部数合計では33万7千部弱である」旨主張しているが,その部数を裏付ける証拠の提出はなく,頒布状況も明らかではない。

カ 「日本消化器関連学会週間」の「医療品・医療機器展示会」における本願商標を使用した商品の展示の様子を確認できる証拠の提出はなく,多数の会社等が多くの商品を展示する展示会において,本願青色図形が目立つ態様で展示されていたか判断することはできない。

さらに,請求人が,1993年(平成5年)から上記学会に参加していたとしても,上記学会は年1回の開催であるから,本願商標の使用を開始した2011年(平成23年)10月以降,本願商標を使用した商品の展示は,2015年(平成27年)までの間,僅か5回程度であり,多いものとはいえない。

キ 以上からすると,請求人が本願商標をその指定商品に使用した結果,需要者が,本願商標のみをもって,専ら請求人の業務に係る出所識別標識であることを認識しているとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。

してみれば,本願商標は,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとは認められないから,商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものではない。

4 請求人の主張について

(1)請求人は,「本願商標は、請求人のシンボルカラーで塗りつぶした、特定の名称を持たない形状からなる、請求人の創作に係る特有の図形であって、単なる青色の横長の略長方形図形ではないから、需要者は、本願商標を極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標であると認識するようなことはなく、請求人の自他商品の識別標識と認識する。」旨を主張している。

しかしながら,その正面上部の本願青色図形の左右両端の上方の角が少し欠けているとしても,請求人が,平成28年10月6日付け意見書で述べているように,本願商標の指定商品は,「直方体の形状を有する医療用機械器具」であるため,その正面上部に付している本願青色図形に接した需要者は,特有の図形というより,商品デザインの一種として普通に採択されている極めて簡単で,かつ,ありふれた青色の横長帯状図形であると認識するのが自然である。

そうすると,本願商標をその指定商品に使用しても,これに接する需要者は,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標と理解するといわざるを得ない。

(2)請求人は,日本消化器関連学会学術集会に参加し,本願商標を使用した医療機器商品を継続して展示するとともに,大会参加者に配布される冊子にも本願商標を使用した広告を掲載していることを根拠としても本願商標の周知性を主張している。

しかしながら,日本消化器関連学会学術集会における商品の展示は,その展示内容が確認できず,また,請求人がプログラムにおける広告としている証拠(甲41,甲42)は広告面のみの提示であり出典元が確認できない。

(3)請求人は,手術装置及び消化器内視鏡システムがグッドデザイン賞を受賞していることを根拠としても本願商標の周知性を主張している。

しかしながら,請求人が取り扱う商品がグッドデザイン賞を受賞した事実は,受賞した商品の形状等が美感に資するために採用されたものであることを認め得るとしても,本願青色図形が商品の出所を表示し,自他商品を識別する標識として機能することを証明するものとは認められない。

(4)請求人は,「本願商標を使用している商品は,医療機関の手術室等におかれ,手術のたびに医療従事者の目に触れるものであって,単なる商品のデコレーションの域を超えて商品の識別標識としての機能を果たし得る。」及び「『OLYMPUS』の文字の背景に必ず本願商標が使用され,そのような使用が継続して行われているからこそ,本願商標が請求人の識別標識として認識されているものであって,文字と共に使用されていることを捉えて機械的にその識別力を否定すべきではない」旨を主張している。

しかしながら,上記のとおり,本願青色図形が「OLYMPUS」の文字とともに用いられていることのみをもって出所識別力を有しないと判断したものではない。

(5)したがって,請求人の主張は,いずれも採用できない。

5 まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第5号に該当するものであって,かつ,同法第3条第2項の要件を具備するものではないから,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

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