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Trademark Appeal Case

機能的形状の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−6037(T2018−6037/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は,別掲1のとおり,標章を付する位置が特定された位置商標であって,第19類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品とし,商標法第5条第4項に基づく「商標の詳細な説明」を願書に記載のとおりとして,平成28年3月1日に登録出願されたものである。

その後,指定商品については,原審における平成29年1月20日付けの手続補正書により,第19類「歩行補助手すり用合成樹脂製笠木」と補正された。

さらに,上記の「商標の詳細な説明」については,当審における平成30年6月8日付け手続補正書により,別掲1(2)のとおりに補正された。

第2 原査定の拒絶の理由(要点)

原査定は,「本願商標は,断面略C字状の笠木の両開放端部の端面に付された,空洞部分を表す図形からなるものであるところ,本願の指定商品を取り扱う業界において,様々な型の笠木の端面に空洞部分を配したものが,取引・販売等に資されている事実が見受けられることから,本願の指定商品との関係では,手すり用合成樹脂製笠木の通常採用し得る形態の一部を認識させるものである。そうすると,本願商標を,その指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者は,単に商品の機能の向上のために採用し得る商品の一形状を表したにすぎないものと理解するにとどまるから,単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示するものと判断するのが相当である。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。また,本願商標は,提出された証拠を全体的に考察しても,本願商標が使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているとは認められないことから,本願商標は,同法第3条第2項に規定する要件を具備するということはできない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知

当審において,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,別掲2に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対して,平成30年11月26日付け証拠調べ通知書によって通知し,期間を指定してこれに対する意見を求めた。

第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見(要旨)

1 本願商標の空洞部分は,該空洞部分を笠木の両開放端部に設けることにより,空洞部分の周囲が変形して芯材の曲げ形状に追従しやすくなるとの機能を有する。しかしながら,本願商標の空洞部分は,今までの手すり用笠木にはない特徴的な形状として,他社の製品と識別化を図る目的で採択されたものであり,指定商品の機能性向上の観点からのみ選択されたものではない。本願の指定商品は,歩行の際に手で握るという用途から「握りやすさ」,「滑りにくさ」,「摺動しやすさ」といった機能が求められており,その機能性を向上させるため,さまざまな形状の商品が多数販売されている。これらの商品は,笠木の断面形状や立体形状に工夫を施して商品の機能性向上を図るのが一般的であり,「握りやすさ」等機能とは何ら関係のない本願商標に係る形状は,本願指定商品の一般的な形状ではない。このような一般的形状でない形状から,商品の機能を認識し理解するのは困難である。したがって,本願商標は,その形状が特定の機能を有するものであるとしても,その独自性と特異性から,十分に本願商標に係る商品と他の商品とを識別し得るものである。

2 両開放端部に空洞部分を有する歩行補助手すり用合成樹脂製笠木は,請求人のみが販売するものであり,このような形状を有する歩行補助手すり用合成樹脂製笠木は他社において一切販売されていない。そうとすれば,取引者,需要者は,「合成樹脂製笠木の両開放端部に空洞部分を有する形状」から商品の機能を目的とした形状を理解するというよりは,むしろ,請求人が販売する歩行補助手すり用合成樹脂製笠木を認識し理解する。

3 本願商標は,仮に,商標法第3条第1項第3号に該当するものであるとしても,請求人に使用された結果,本願指定商品の取引者,需要者が本願商標をみれば,請求人の販売に係る商品であることを容易に認識し得るものであり,本願商標の形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているのは明らかである。

第5 当審の判断

1 商標法第3条第1項第3号該当性について

(1)本願商標について

本願商標は,上記第1のとおり,「商標の詳細な説明」において,「断面略C字状の合成樹脂製笠木の両開放端部に設けられた空洞部分であって,該笠木の端面に現れた空洞部分の図形からなる。」とされているところ,当該「空洞部分の図形」は,別掲1(1)の「商標登録を受けようとする商標」の記載からすれば,「合成樹脂製笠木」を断面から見た場合に,「合成樹脂製笠木」の両開放端部の内側の位置に設けられた「空洞部分の形状」が,略三角形の図形として現れるものであるから,「合成樹脂製笠木の両開放端部の内側の位置に設けられた略三角形の空洞の形状に係るもの」であるといえる(以下「本願商標に係る合成樹脂製笠木の両開放端部の内側の位置に設けられた略三角形の空洞の形状」を「本願形状」という。)。

(2)位置商標における商品等の形状

ア 立体商標における商品等の形状については,以下のとおり判示されているところ,本願形状のような位置商標における商品の形状についても,これと同じことがいえる。

イ 商品等の形状は,多くの場合,商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり,商品等の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって,商品・役務の出所を表示し,自他商品・役務を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように,商品等の製造者,供給者の観点からすれば,商品等の形状は,多くの場合,それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの,すなわち,商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また,商品等の形状を見る需要者の観点からしても,商品等の形状は,文字,図形,記号等により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し,出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。

そうすると,商品等の形状は,多くの場合に,商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり,客観的に見て,そのような目的のために採用されると認められる形状は,特段の事情のない限り,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。

また,商品等の具体的形状は,商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるが,一方で,当該商品の用途,性質等に基づく制約の下で,通常は,ある程度の選択の幅があるといえる。しかし,同種の商品等について,機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば,当該形状が特徴を有していたとしても,商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状として,商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。

けだし,商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は,同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから,先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは,公益上の観点から適切でないからである。

さらに,需要者において予測し得ないような斬新な形状の商品等であったとしても,当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択されたものであるときには,商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば,同法第3条第1項第3号に該当するというべきである。

けだし,商品等が同種の商品等に見られない独特の形状を有する場合に,商品等の機能の観点からは発明ないし考案として,商品等の美感の観点からは意匠として,それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば,その限りおいて独占権が付与されることがあり得るが,これらの法の保護の対象になり得る形状について,商標権によって保護を与えることは,商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると,商品等の形状について,特許法,意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり,自由競争の不当な制限に当たり公益に反するからである(知財高裁平成19年(行ケ)第10405号,平成20年6月24日判決参照)。

(3)上記の観点から,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かを判断する。

ア 別掲2のとおり,請求人を権利者とする実用新案登録第3167262号公報には,略三角形の空洞の形状(「空隙部A」)が,笠木の開放端部の内側の位置に設けられていることを示す図(【図2】〜【図5】)が掲載されており,【実用新案登録請求の範囲】【請求項1】には,「前記被覆材の前記切離し端部は,全長にわたって該手すりの中心部に向かい対向するように突出する突出部が形成されると共に,該突出部に隣接して空隙部が形成されていることを特徴とする,手すり。」,及び【考案の効果】として,「突出部に隣接する空隙部が形成されていることによって,空隙部の周囲が変形して芯材の曲げ形状に確実に追従し,良好な嵌合状態を保持することができる。更に,施工性の向上により施工時間の短縮を可能とし,施工費用の低減を図ることができる。」の記載がある。

そして,当該実用新案登録における考案は,平成23年3月23日に実用新案として登録されたものである。

イ 上記アの請求人を権利者とする実用新案登録公報における,笠木の開放端部の内側の位置に設けられた略三角形の空洞の形状(以下「実用新案形状」という。)は,本願形状とその位置及び形状が近似するものであるから,本願形状と同一性を損なわないものといえる。また,当該公報の記載からすれば,実用新案形状は,空洞部分の周囲が変形して芯材の曲げ形状に確実に追従し,良好な嵌合状態を保持する等により,笠木の施工性を向上する機能を目的として選択されたものであって,当該実用新案登録の請求項に含まれるものである。

そうすると,上記実用新案形状と同一性を損なわない本願形状からなる本願商標は,商品の機能向上の観点から選択されたものというのが相当であって,上記アのとおり,実用新案登録第3167262号公報における考案は,平成23年3月23日に実用新案として登録され,実用新案形状は,物品の機能の観点から,考案として,実用新案法によって独占権が付与されたものであるから,上記実用新案形状と同一性を損なわない本願形状に,商標権によって保護を与えることは,商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると,商品等の形状について,実用新案法による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり,自由競争の不当な制限に当たり公益に反する。

したがって,本願商標は,仮に,本願形状が,同種の商品等に見られない独特の形状であって,需要者において予測し得ないような形状であったとしても,本願形状は,物品の機能の観点から,考案として,実用新案法によって独占権が付与されたものであって,本願商標は専ら商品等の機能向上の観点から選択された商品の形状であるというのが相当であるから,商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。

2 商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて

請求人は,本願商標は,仮に,商標法第3条第1項第3号に該当するものであるとしても,請求人に使用された結果,本願指定商品の取引者,需要者が本願商標をみれば,請求人の販売に係る商品であることを容易に認識し得るものであり,本願商標の形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っていることから,本願商標は,商標法第3条2項の要件を具備しており,登録されるべき商標である旨主張し,証拠として,原審において第1号証ないし第41号証を,当審において新たに第1号証ないし第51号証を提出している。

なお,当審において提出された証拠(第1号〜第51号)の番号を,甲第1号証ないし甲第51号証と,原審において提出された証拠(第1号〜第41号)の番号を,甲第52号証ないし甲第92号証と読み替える。

そこで,請求人提出の証拠の内容に照らし,本願商標が,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているか否かについて,以下検討する。

(1)請求人の提出に係る証拠及びその主張によれば,次の事実が認められる。

ア 請求人は,1932年(昭和7年)に創業した建材製品の製造・販売・施工を行う会社である(甲66)。

イ 商品「歩行補助手すり」の我が国における市場規模(2012年(平成24年):230万m,2015年(平成27年):241万m,2016年(平成28年):22.2万m(審決注:222万mの誤記と推認される。))において,請求人に係る同商品のシェア(2012年(平成24年):30.9%,2015年(平成27年):30.9%,2016年(平成28年):30.4%)が首位であることが認められる(甲47〜甲49)。

ウ 1977年(昭和52年)7月から1989年(平成元年)10月までに発行されたものと推認される請求人に係る手すり製品のカタログ(甲18〜甲25)においては,笠木に「ビニルタイヤ」を使用した手すり製品が掲載されており,カタログ表紙又は冒頭部分に,製品の紹介として,大きな文字で表された「ニュービニパール」,「セフティーライン」,「ビニパールO−40型」等の見出しとともに,各種の手すり製品の画像が顕著に表されているところ,当該画像はいずれも,各種の手すり製品の末端部にキャップが付された状態の画像であり,手すりの笠木の開放端部の内側の位置に設けられた空洞形状は確認できない。

そして,当該カタログにおいては,上記手すり製品の「手すり断面」を示す設計図においてのみ,笠木の開放端部の内側の位置に設けられた略長方形の空洞形状(以下「長方形形状」という。)を示す図が確認できるが,長方形形状を示す図は,設計図中において,目立つ態様で表されているものではない。

エ 2013年(平成25年)2月から2018年(平成30年)2月までに発行されたものと推認される請求人に係る手すり製品のカタログ(甲27〜甲42)においては,請求人に係る「歩行補助手すり」のうち,「スリム目地タイプ」に属する各種の「樹脂被覆」の手すり製品が掲載されており,それらの製品の紹介として,大きな文字で表された「ネオウッド」,「ビニレーン」,「ビビッド」,「グラウッド」,「グラハン」,「室内用プレーン色」及び「室内用木目調色」等の見出し,「【仕様】笠木/ウッドパウダー混合半硬質樹脂」等の材質等の記載及び「樹脂に木材の微粒子を配合し,木の質感を持たせた木目調タイプです。」等の紹介文とともに,各種の手すり製品の画像が掲載されているところ,当該画像はいずれも,各種の手すり製品の末端部にキャップが付された状態の画像であり,手すりの笠木の開放端部の内側の位置に設けられた空洞形状は確認できない。

そして,当該カタログにおいては,上記各種の手すり製品に共通する「手すり断面」を示す設計図においてのみ,笠木の開放端部の内側の位置に設けられた略三角形の空洞形状(以下「使用形状」という。)を示す図が確認できるが,使用形状を示す図は,設計図中において,目立つ態様で表されているものではない。

オ 請求人に係る「屋内外手すり(タイヤ)」の2012年(平成24年),2015年(平成27年)ないし2017年(平成29年)の出荷量を示す一覧表(甲43〜甲46)によれば,請求人に係る「歩行補助手すり」には,品名として「スリム目地タイプ」のほかに,「9mm目地タイプ」の商品があり,「スリム目地タイプ」の商品の出荷量は,2012年(平成24年)が約106万m,2015年(平成27年)が約104万m,2016年(平成28年)が約97万m,2017年(平成29年)が約111万mと記載されている。

(2)以上認定した事実を総合すれば,当合議体は,本願商標は未だ自他識別力を獲得するまでには至っていないと判断する。その理由は,以下に述べるとおりである。

ア 使用商品の販売開始時期及び販売期間について

長方形形状は,略三角形の空洞の形状である本願形状とは,明らかにその形状が異なるものであり,本願形状と同一性を損なわないものと認めることはできない。一方,使用形状は,略三角形の空洞の形状であって,本願形状と近似する形状であるから,本願形状と同一性を損なわないものと認められる。

そして,使用形状は,2013年(平成25年)2月から2018年(平成30年)2月までに発行された請求人に係る手すり製品のカタログにおいて,合成樹脂製笠木を使用した歩行補助手すり製品の「手すり断面」を示す設計図に掲載されているものであるから,請求人は,使用形状を,2013年(平成25年)2月から,歩行補助手すり用合成樹脂製笠木に使用し,当該商品を販売したと推認できる(以下,使用形状を使用した歩行補助手すり用合成樹脂製笠木を「使用商品」という。)。

そうすると,使用商品は,2013年(平成25年)2月から販売されているものであって,本件の審決時まで継続して販売されているものとしても,本願商標の使用期間は約6年半であり,永年使用されてきたものとはいえない。

イ 使用商品における標章の使用態様について

上記(1)エのとおり,請求人に係る手すり製品のカタログにおいては,「スリム目地タイプ」に属する各種の手すり製品が掲載されており,それらの製品の紹介として,大きな文字で表された「ネオウッド」,「ビニレーン」等の見出し,材質等の記載及び紹介文とともに,各種の手すり製品の画像が掲載されているところ,当該画像はいずれも,各種の手すり製品の末端部にキャップが付された状態の画像であり,当該画像において使用形状は確認できず,製品の紹介文中にも,使用形状に関する記載はなく,使用形状は,上記各種の手すり製品に共通する「手すり断面」を示す設計図においてのみ,確認することができる。

しかしながら,使用形状を示す図は,設計図中において,目立つ態様で表されているものではなく,カタログ全体として見ても,使用形状を示す図が掲載された設計図自体が,大きな文字で表された「ネオウッド」,「ビニレーン」等の見出しやその末端部にキャップが付された状態の手すり製品の画像に比して,特段目立つように表示されていない。

そして,上記カタログにおける手すり製品の画像からすれば,使用商品は,完成品として実際に使用されるときには,常に,末端部にキャップが付された状態で使用されるものであるから,使用商品の利用者が笠木の末端部の内側に位置する使用形状を目にする機会はまずないものといえる。

さらに,使用商品を取り扱う内装工事業者にしても,使用形状は,長尺の使用商品の両端において確認できるものにすぎず,使用商品の両端を注視しつつ施工するものとは必ずしもいえないこと,使用商品の施工後は,両端にキャップが付されことからすると,当該内装工事業者をして,使用形状に接する機会が多いということはできない。

そうすると,取引者,需要者は,使用形状を,上記手すり製品のカタログにおいて,特段目立つようには表示されていない「手すり断面」を示す設計図の一部としてしか確認できないことから,使用形状は,他社製品と区別する指標として,需要者の目につきやすく,強い印象を与える態様で使用されているものではないことが認められ,仮に,取引者,需要者がその形状を認識したとしても,「スリム目地タイプ」の手すり製品の断面図に示された製品の内部形状であると認識するにすぎず,その形状をもって,自他識別標識として,印象に残ることはないものというのが相当である。

ウ 使用商品の販売実績について

請求人は,1932年(昭和7年)に創業した建材製品の製造・販売・施工を行う会社であり,請求人に係る商品「歩行補助手すり」は,我が国の同商品の市場において,2012年(平成24年)から2016年(平成28年)までのシェアが首位であり,約30%のシェアがあることが認められる。

しかしながら,上記カタログの記載からすれば,請求人に係る「歩行補助手すり」には,「スリム目地タイプ」のほかに,「9mm目地タイプ」の商品が販売されているものと認められ,使用商品は,上記カタログの記載からすれば,請求人に係る「歩行補助手すり」のうち,「スリム目地タイプ」として販売されているものと認められる。

そして,上記(1)オのとおり,使用商品(スリム目地タイプ)の出荷量は,請求人に係る「屋内外手すり(タイヤ)」の出荷量を示す一覧表(甲43〜甲46)において,2012年(平成24年)が約106万m,2015年(平成27年)が約104万m,2016年(平成28年)が約97万m,2017年(平成29年)が約111万mと記載されている。

他方,請求人に係る「歩行補助手すり」には,使用商品に該当する「スリム目地タイプ」のほかに,「9mm目地タイプ」の商品があるから,歩行補助手すりの我が国における市場規模が年間に220万mないし240万m程であることからすると,使用商品の出荷量として一覧表に記載された出荷量は,上記(1)イにおける請求人に係る「歩行補助手すり」全体の,我が国の同商品の市場規模に対するシェア約30%(すなわち,約66万mないし約72万m)を上回り,これは,甲第47号証ないし甲第49号証の記載と矛盾する。

そうすると,請求人に係る商品「歩行補助手すり」は,我が国の同商品の市場において,平成24年から平成28年までのシェアが首位であり,約30%のシェアがあるとしても,使用商品(スリム目地タイプ)のシェアは,必ずしも明らかであるとはいえない。

エ 広告宣伝について

請求人は,2013年(平成25年)以降,使用商品について,商品カタログを頒布していることは認め得るとしても,当該カタログの頒布数量及びその頒布方法等については,明らかでないうえに,上記イのとおり,当該カタログにおいて,本願商標は,他社製品と区別する指標として,需要者の目につきやすく,強い印象を与える態様で使用されているものではない。

また,その他,新聞・雑誌等において,請求人が,本願商標を使用した宣伝広告を行ったとする証拠はない。

(3)以上のとおり,本願商標の使用期間は約6年半であり,永年使用されてきたものとはいえないこと,本願商標は,他社製品と区別する指標として,需要者の目につきやすく,強い印象を与える態様で使用されているものではないこと,使用商品の市場シェアは,必ずしも明らかであるとはいえないこと,請求人が,本願商標を他社製品と区別する指標として,需要者の目につきやすく,強い印象を与える態様で使用した宣伝広告を行ったとする証拠はないことから,本願商標が使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとは認められない。

したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。

3 請求人の主張について

請求人は,「本願商標の空洞部分は,当該空洞部分を笠木の両開放端部に設けることにより,空洞部分の周囲が変形して芯材の曲げ形状に追従しやすくなるとの機能を有する。しかしながら,本願商標の空洞部分は,今までの手すり用笠木にはない特徴的な形状として,他社の製品と識別化を図る目的で採択されたものであり,指定商品の機能性向上の観点からのみ選択されたものではない。本願の指定商品は,歩行の際に手で握るという用途から『握りやすさ』,『滑りにくさ』,『摺動しやすさ』といった機能が求められており,その機能性を向上させるため,さまざまな形状の商品が多数販売されている。これらの商品は,笠木の断面形状や立体形状に工夫を施して商品の機能性向上を図るのが一般的であり,『握りやすさ』等機能とは何ら関係のない本願商標に係る形状は,本願指定商品の一般的な形状ではない。このような一般的形状でない形状から,商品の機能を認識し理解するのは困難である。したがって,本願商標は,その形状が特定の機能を有するものであるとしても,その独自性と特異性から,十分に本願商標に係る商品と他の商品とを識別し得るものである」旨,及び「両開放端部に空洞部分を有する歩行補助手すり用合成樹脂製笠木は,請求人のみが販売するものであり,このような形状を有する歩行補助手すり用合成樹脂製笠木は他社において一切販売されていない。そうとすれば,取引者,需要者は,『合成樹脂製笠木の両開放端部に空洞部分を有する形状』から商品の機能を目的とした形状を理解するというよりは,むしろ,請求人が販売する歩行補助手すり用合成樹脂製笠木を認識し理解する」旨主張する。

しかしながら,上記1(3)イのとおり,本願形状は,その空洞部分の周囲が変形して芯材の曲げ形状に確実に追従し,良好な嵌合状態を保持する等により,笠木の施工性を向上する機能を目的として選択されたものであって,請求人に係る実用新案登録の請求項に含まれるものであるから,たとえ,本願形状が,本願指定商品の分野において,商品の機能面に関する一般的な形状であるとはいえないとしても,そのことをもって,本願商標が,商品の機能向上の観点から選択されたものであるという判断を覆すことはできない。また,上記1(3)イのとおり,本願形状は,物品の機能の観点から,考案として,実用新案法によって独占権が付与されたものであるから,他社において本願形状と同一又は類似の形状を有する商品が販売されていないのは当然のことであり,そのことをもって,本願商標が直ちに商標登録に必要な自他識別力を備えたことにはならない。上記1(2)のとおり,商標権は,存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができることを踏まえると,実用新案権の対象となっていた商品の形状について商標権によって保護を与えることは,実用新案法による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じかねず,事業者間の公正な競争を不当に制限することになる。

そうすると,実用新案権の対象となっていた商品の形状について,権利による独占とは無関係に自他識別力を取得していた等の特段の事情の認められない限り,使用による自他識別力を取得したと認めることはできない。そして,上記2(3)の検討結果に照らすと,本願形状に接する取引者,需要者は,その形状をもって,自他識別標識として,印象に残ることはないものというのが相当であり,ほかに,本願商標について,権利による独占とは無関係に自他識別力を取得していた等の特段の事情があることを認めるに足りる事実は見あたらない。

してみれば,仮に,本願形状が,本願指定商品の分野において,商品の機能面に関する一般的な形状であるとはいえず,他社において本願形状と同一又は類似の形状を有する商品が販売されていないとしても,そのことから,取引者,需要者が,本願形状により,商品の出所が請求人であることを想起すると推認することはできず,本願商標が商標登録に必要な自他識別力を備えたものであるということはできない。

したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用することができない。

4 まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,かつ,同条第2項に規定する要件を具備するものではないから,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

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