Trademark Appeal Case
個人情報保護検定の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2017−12410(T2017−12410/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、「個人情報保護検定」の文字を標準文字で表してなり、第41類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成28年6月8日に登録出願され、その後、指定役務については、当審における同30年10月22日付け手続補正書により、第41類「検定試験の企画・運営又は実施及びこれらに関する情報の提供,検定試験受験者へのセミナーの開催及びこれらに関する情報の提供」と補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、本願商標は、「個人情報保護」の文字と、「検定試験の略」を意味する「検定」の文字を一連に「個人情報保護検定」と標準文字で表してなるにすぎず、全体として「個人情報保護についての検定」程の意味合いを容易に認識させる。そして、「個人情報保護検定」の文字は、上記意味合いで使用されている実情がある。そうすると、本願商標を、本願指定役務中、例えば、個人情報保護についての検定に関する役務に使用しても、前記役務であることを認識させるにとどまり、単に役務の質(内容)を表示するにすぎないものといえる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審においてした証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、その指定役務の分野における「個人情報保護」に関連する役務について、別掲1ないし別掲3に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき請求人に対して、平成30年8月22日付け証拠調べ通知書によってこれを開示し、相当の期間を指定して、意見を求めた。
第4 証拠調べの結果に対する請求人の意見(要点)
請求人は、前記第3の証拠調べ通知に対して、以下のように述べるとともに、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
なお、当該証拠の番号については、審判請求書において証拠方法として提出した甲第1号証ないし甲第218号証(甲第7号証ないし甲第133号証及び甲第168号証ないし甲第190号証を除く。)に続けて、甲第219号証ないし甲第228号証と読み替える。
1 証拠調べ通知において挙げられた役務の例は、構成中に「個人情報保護」の文字を有し、かつ、自他役務の識別力を有する民間資格「個人情報保護オフィサー」や登録商標「金融個人情報保護オフィサー2級」(甲219)等に関する記述を根拠として、本願商標の識別力を否定しており、論理矛盾である。
2 本願商標は、「個人情報保護実務検定」(甲226)、「個人情報保護実務試験」(甲227)及び「個人情報保護認定試験」(甲228)等の登録商標との対比において、はるかに間接的、かつ、抽象的であるから、登録されるべきものである。
3 本願商標は、たとえ全体から「個人情報保護についての検定」程の意味合いが生ずる場合があるしても、これがその指定役務の質等を直接的、かつ、具体的に表示するものとして、取引者・需要者に理解、認識されることはない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)商標法第3条第1項第3号については、「商標登録出願に係る商標が商標法3条1項3号にいう『商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標』に該当するというためには、必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを要せず、需要者又は取引者によつて、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることをもつて足りるというべきである。」(最高裁昭和60年(行ツ)68号)及び「『役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標』に該当するというためには、指定役務に関する需要者又は取引者が当該商標に接した場合、これをどのように認識し理解するかが重要なのであるから、需要者又は取引者が、役務の質、すなわち、役務の内容を表示したものと一般に認識することをもって足り、それ以上に、現実にその役務が実施されていることまで必要ということはできない。」(知財高裁平成21年(行ケ)第10351号)と判示されている。
(2)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、「個人情報保護検定」の文字よりなるところ、個人情報の保護については、「個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第57号)(以下「個人情報保護法」という。)の第1条において、「この法律は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」と定められている。
そして、高度情報通信社会の進展に伴い、個人情報の更なる活用とその適切な保護の調整が求められていた中で、平成29年5月30日全面施行された改正後の個人情報保護法においては、取り扱う個人情報の規模の大小に関係なく、個人情報を取り扱う全ての事業者が法の対象となり、また、匿名加工情報の利活用の規定等が新設されるなど、個人情報のより有効な活用と、より確実な保護に資するための規定が拡充され、個人情報の保護の重要性や意義が、より広く認識されることとなった。
このような社会的背景を踏まえれば、本願商標を構成する「個人情報保護検定」の文字は、上記法律の保護法益及び目的を表す「個人情報保護」の文字に、本願指定役務「検定試験の企画・運営又は実施及びこれらに関する情報の提供,検定試験受験者へのセミナーの開催及びこれらに関する情報の提供」の役務の対象(内容)を認識させる文字であって、「検定試験の略。」の意味(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)を有する「検定」の文字を結合してなるものであって、全体として「個人情報保護に関する検定試験」程の意味合いを容易に理解させるといえるものである。
そして、別掲1に挙げた事実における、例えば、「個人情報保護法の遵守に必要とされる知識・判断力および日常業務に必要とされる個人情報取扱いルールの理解度を多角的に問う・・・法令等の知識の習得度、実務への対応力を検証」(別掲1(1))、「個人情報の適切な保護と利用に関する基本知識および実務能力について、その習得程度を測定」(同(2))、「『個人情報保護法に添った個人情報の概念や保護対策の理解』及び『実際の企業実務上、個人情報の管理・運用を行っていく上で必要な知識や能力』の培養を目指したエキスパートの資格講座・・・講義終了後、筆記試験を行い」(同(4))、「本検定試験では、個人情報保護法の基本、金融庁ガイドライン、全銀協自主ルールなどの制度・ルールの基礎知識から、実際の金融取引における個人情報の取扱いについて、・・・その知識・実務上の判断能力を判定」(同(5))等の記載に照らせば、本願商標の指定役務の分野においては、個人情報を保護するための知識や運用能力等を測定するための各種検定試験が、企画、実施されているものである。
そうすると、「個人情報保護検定」の文字からなる本願商標は、その構成文字より「個人情報保護に関する検定試験」程の意味合いを容易に理解させるものであり、かつ、本願指定役務の分野において、個人情報を保護するための知識や運用能力等を測定するための検定試験が実際に企画、実施されている実情があることからすると、「個人情報保護検定」の文字からなる本願商標を、その指定役務に使用したときは、これに接する取引者、需要者は、個人情報を保護するための知識や運用能力等についての検定試験に関する役務であること、すなわち役務の質(内容)を表示したものとして認識するにとどまるというのが相当であって、本願商標は、自他役務の識別標識としては機能し得ないものである。
してみれば、本願商標は、その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 請求人の主張について
(1)請求人は、本願商標は、たとえ全体から「個人情報保護についての検定」程の意味合いが生ずる場合があるしても、これがいかなる内容の個人情報をどのように保護する検定なのかを、直接的、かつ、具体的に想起させるものではないから、役務の質を、直接的、かつ、具体的に表示するものとして、取引者、需要者に理解、認識されることはない旨主張している。
しかしながら、前記1(1)のとおり、商標登録出願に係る商標が、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当するというためには、指定役務に関する需要者又は取引者が当該商標に接した場合、これをどのように認識し理解するかが重要であり、需要者又は取引者が、役務の質、すなわち、役務の内容を表示したものと一般に認識することをもって足りると解されるものである。
そして、前記1(2)のとおり、個人情報保護法の改正によって、個人情報の適切な保護、管理の重要性が広く知られ、本願指定役務の分野において、実際に個人情報を保護するための知識や運用能力を測定するための検定試験が、企画、実施されている実情が別掲1のとおりあることからすれば、本願商標に接する取引者、需要者は、これを、個人情報を保護するための知識や運用能力等についての検定試験に関する役務であるとの、役務の質、すなわち役務の内容を表示したものと一般に認識し、理解するものであるから、本願商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当するというのが相当である。
(2)請求人は、「個人情報保護実務検定」(甲226)、「個人情報保護実務試験」(甲227)及び「個人情報保護認定試験」(甲228)等、その構成中に「個人情報保護」の文字を有する他の登録例があることを述べ、本願商標についても、これらの登録例と同一の判断がなされ、登録されて然るべきものである旨主張する。
しかしながら、請求人は、本願商標と似たような構成の登録例があることを理由に、本願商標も登録すべきと主張するのみで、既登録例がいかなる理由で識別力があるとみるべきか、及びその理由が本願商標の識別力の判断に妥当するものであることを明らかにしていない。
してみれば、請求人が挙げた登録例を基礎として、本願商標を登録しなければならない理由があるということはできない。
さらに、前記1(2)のとおり、平成29年5月30日に、改正後の個人情報保護法が全面施行となり、取り扱う個人情報の規模の大小に関係なく、個人情報を取り扱う全ての事業者が法の対象となり、また、匿名加工情報の利活用の規定等が新設されるなど、個人情報のより有効な活用と、より確実な保護に資するための規定が拡充され、個人情報保護の重要性や意義が、より広く認識されることとなった社会的背景を考慮すれば、本願商標については、上記のとおり判断するのが相当である。
(3)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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