Trademark Appeal Case
エキナカの記述性と識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2017−16876(T2017−16876/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「エキナカクリニック」の文字を標準文字で表してなり、第44類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成28年7月20日に登録出願され、その後、指定役務については、原審における同29年3月21日受付け手続補正書により、第44類「医業,医療情報の提供,健康診断,調剤,栄養の指導,動物の治療,動物の美容,病院の紹介又は取次ぎ,病院の予約の媒介又は取次ぎ,美容,理容」に補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『エキナカクリニック』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の『エキナカ』の文字は、『駅構内に立地する店舗など』を意味し、『クリニック』の文字は、『診療所』を意味することから、全体として、「駅構内に立地する診療所」程の意味合いが容易に認識される。また、実際に駅構内に診療所が立地されている実情にある。そうすると、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する需要者等は、当該役務が、『駅構内に立地する診療所における役務』であること、すなわち、単に役務の提供の場所を表示したにすぎないものと認識するというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審においてした証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲1ないし別掲3に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、平成30年9月28日付け証拠調べ通知書によってこれを開示し、相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えた。
4 証拠調べの結果に対する請求人の意見(要点)
「エキナカ」という表記は、これ単独では、駅の中の商業施設という意味がかろうじて感得できたとしても、一般的に他の語と結合して一体の一語となったときには、結合前の各語の意味が薄まって感じられるところ、意味が薄まった「エキナカ」と結合された「エキナカクリニック」は、全体として識別力がないとはいえない。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
商標法3条1項3号に関して、商品との関係については、「商標法3条1項3号にいう『商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標』に該当するというためには、必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを要せず、需要者又は取引者によつて、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることをもつて足りるというべきである。」(最高裁昭和60年(行ツ)68号)旨判示されており、これを受けて、役務との関係については、「『役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標』に該当するというためには、指定役務に関する需要者又は取引者が当該商標に接した場合、これをどのように認識し理解するかが重要なのであるから、需要者又は取引者が、役務の質、すなわち、役務の内容を表示したものと一般に認識することをもって足り、それ以上に、現実にその役務が実施されていることまで必要ということはできない。」(知財高裁平成21(行ケ)第10351号)旨判示されているところである。
そこで、上記の観点から、本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について判断する。
(2)本願商標の同法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、前記1のとおり、「エキナカクリニック」の文字からなるところ、その構成中の「エキナカ」の文字は、原審説示のとおり、我が国の一般的な国語辞典や百科事典において、例えば「【駅ナカ】『駅の中』の意。『エキナカ』『駅中』とも書く。鉄道会社が駅の構内・・・に設けた商店街をいう。」(「デジタル大辞泉」参照。拒絶理由通知書中の理由2の記1)、「駅ナカ えきなか 鉄道会社が管轄する土地のうち、乗降客などの駅利用者だけでなく一般消費者が利用できる駅構内の商業スペース。・・・『エキナカ』『駅中』などとも表記される。」(「日本大百科全書(ニッポニカ)」参照。同)と掲載されていることからすると、「駅の中」、あるいは「駅構内の商業スペース」を意味する「駅ナカ」又は「駅中」の語を片仮名で表したといえるものである。
また、構成中の「クリニック」の文字は、「診療所」を意味する語(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)として、親しまれている語である。
そして、別掲1のとおり、例えば、「JR小倉駅:エキナカ、よじ登れ」の見出し及び「JR小倉駅(北九州市小倉北区)構内に5月に開業したボルダリングジムが人気だ。・・・」の記載(別掲1(3))、「駅ナカで茨城の味を楽しんで・・・東京のJR品川駅構内に新店舗をオープンした。・・・JR品川駅のエキナカにオープンした」(同(6))の記載、並びに「茅乃舎エキナカ初出店」の見出し及び「・・・JR東京駅構内地下1階の商業施設『グランスタ丸の内』に販売店『茅乃舎』を出店した。」(同(7))のように、「エキナカ」の文字が、「駅構内」を意味するものとして使用されている実情が認められる。
加えて、別掲2及び別掲3のとおり、例えば、「JR立川駅構内に開業した。・・・同院は立川駅から徒歩0分。日本初の『エキナカクリニック』だ。」(別掲2(1))、「金沢駅に北陸初の『駅ナカクリニック』を開設。」(同(3))、「JR品川駅構内に・・・『エキナカ診療所』を開設。」(同3(1))、「駅ナカ薬局でお手軽健康チェック!・・・当薬局は市営地下鉄のコンコース内にある店舗・・・」(同3(7))のように、本願指定役務の分野において、実際に駅の構内に位置する診療所や医療機関が存在しており、こうした施設について、「駅構内」の意味合いを認識させる「エキナカ」や「駅ナカ」の文字に、医療機関の施設名を結合させた「エキナカクリニック」、「駅ナカクリニック」、「エキナカ診療所」及び「駅ナカ薬局」等の文字が使用されているところである。
以上の実情があることからすれば、「エキナカクリニック」の文字からなる本願商標は、「駅の構内にある診療所」の意味合いを容易に理解させるものというのが相当である。
そうすると、本願商標を、その指定役務中、「医業」等について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その役務が「駅の構内にある診療所」において提供される役務であること、すなわち役務の提供の場所を表示したものと一般に認識するというべきであり、自他役務の識別標識としては認識し得ないものである。
してみれば、本願商標は、役務の提供の場所を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3項に該当する。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、「『エキナカ』単独であれば、駅の中の商業施設という意味がかろうじて感得できたとしても、一般的に他の語と結合して一体の一語となったときには、結合前の各語の意味が薄まって感じられるところ、意味が薄まった『エキナカ』と結合された『エキナカクリニック』が全体として識別力がないとはいえない。」旨、主張している。
しかしながら、「エキナカ」の文字が、他の語と結合して一体の一語となったときには、結合前の各語の意味が薄まるという点について、これを証する証拠の提出はない。
そして、「エキナカ」の文字については、上記(2)のとおり、「駅の中」、あるいは「駅構内の商業スペース」を意味する「駅ナカ」、「駅中」を片仮名表記したものとして、辞典等に掲載されている語であり、実際に、別掲1ないし別掲3のように、駅の構内に位置する医療機関や施設,店舗等が存在しており、それらについて、施設名や店舗名を表す語と結合して、「駅の構内にある○○」(○○は、施設名や店舗名を表す文字)、すなわち、その施設や店舗が、駅の構内にあることを表すものとして、広く使用されている実情があることからすれば、「エキナカ」の文字に、施設名や店舗名などの他の語を結合した語は、全体として「駅の構内にある施設や店舗」程の意味合いを容易に認識させるものである。
してみれば、「エキナカ」の文字に「クリニック」の文字を結合した本願商標を、その指定役務中の「医業」等に使用したときは、役務の提供の場所を表示したものとして認識されるにとどまり、本願商標は、識別力を有するものということはできない。
イ 請求人は、他の商標登録例、審決例及び異議決定の例を挙げ、役務の提供の場所と捉えうる語同士を結合した商標について、その構成全体から役務の質等の意味合いを直ちに理解できず、自他役務識別力があると判断された例があると主張し、証拠方法として甲第2号証ないし甲第7号証を提出している。
しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項の規定に該当するか否かは、当該商標の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様と指定役務との関係や役務の取引の実情をも踏まえて個別具体的に判断されるべきものである。
そして、本願商標については、別掲1ないし別掲3のとおりの実情が認められることからすれば、前記(2)のとおり判断するのが相当であり、過去の商標登録例や審決例等が存在することをもって、上記判断が左右されるものではない。
ウ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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