Trademark Appeal Case
頭部図形の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2019−1751(T2019−1751/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第3類「化粧品,せっけん類」及び第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」を指定商品として、平成29年7月25日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、人間の頭部を真上から描いたものと認識される図形を横に4つ並べた構成からなるものであるところ、育毛剤等の頭髪に関する商品を取り扱う分野においては、商品使用前の頭髪の状態を表すものとして、人間の頭部を真上から描いた図形や写真が一般的に使用されており、薄毛、脱毛の治療用の商品あるいは白髪染め用の商品の説明書やパッケージ等に、そのような図形や写真が使用されている実情があることから、本願商標は全体として、頭髪の状態を表す図形の一種を表したものと認識されるとみるのが相当である。そうすると、本願商標を、その指定商品について使用したときは、これに接する需要者は、単に『薄毛・脱毛の治療用の商品』、『頭髪の状態を表す図形の一種』であると認識するにとどまり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識し得ないものといえる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審における審尋
当審において、審判長は、請求人に対し、平成31年4月11日付けで、別掲3に係る証拠を示した上で、本願商標は商標法第3条第1項第6号に該当する旨の審尋をし、期間を指定して、これに対する回答を求めた。
4 審尋に対する請求人の回答(要旨)
前記3の審尋に対し、請求人は、令和元年5月27日付け回答書を提出し、要旨以下のように主張した。
(1)審尋において引用された他者使用に係る頭部図形は、いずれも、ごく最近その使用が開始されたものであり、請求人が本願指定商品に継続的に使用し信用を蓄積してきた本願商標に明らかに依拠し、需要者の誤認、混同を期して、あえて本願商標と略同一又は類似の図形を採択したともうかがえるものである。このような他者の頭部図形の使用例をもって、本願商標の本来的な識別力を否定することは許されるべきではない。
(2)審尋においては、なぜ他者が育毛を促すヘアトニックや、頭皮や毛髪をケアするシャンプー等の商品を販売していることが、本願商標が本願指定商品との関係で識別力を逸する理由となるのかについて具体的な説明はなされておらず、これらの引用例は、本願商標が「ヘアトニック,シャンプー」といった商品との関係で識別力を有しないことの裏付けとはなり得ない。
(3)仮に、本願商標が、「薄毛又は脱毛の状態である人間の頭部図形の類型」として理解される場合があったとしても、本願の指定商品との関係において、商品の品質等を具体的、直接的に記述、説明するものではなく、自他商品の識別力を具備するものである。さらに、人間の頭部や薄毛又は脱毛の状態を表現する手法は数多とあるのであり、本願商標それ自体が、商品の流通や取引の過程において代替不可能かつ必要な表示とはいえないため、本願商標は独占適応性を欠く商標でもない。
(4)本願商標が継続的に、商品の包装箱やウェブサイト、セルフチェックシート等の媒体において、商品の用法等の説明文と近接して表示されてきたからといって、外観上高い独創性を有する本願商標それ自体も商品の用法等の説明としてのみ理解されるとするのは合理性を欠く。商品の包装箱やウェブサイト、セルフチェックシート等の媒体及びこれらの媒体における商品の用法等の説明は、取引にあたり需要者や取引者が必ず目にする場所であるところ、本願商標が使用されてきた請求人の「RiUP(リアップ)」シリーズの発毛剤の人気の高さに鑑みれば、本願商標を、非常に多くの需要者が目にし、記憶したことは疑いのない事実である。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第3類「化粧品,せっけん類」及び第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」を指定商品とするものである。
ところで、薬剤や化粧品、せっけん類等の分野においては、商品の用途や使用方法等を説明する図が、商品の包装箱、容器、添付文書や商品のウェブサイト等に広く一般的に用いられているところ、別掲3(1)のとおり、発毛剤について、商品を使用した際に効能、効果を得られる対象者を説明するために、頭頂が薄毛又は脱毛の状態である人間の頭部を上から描いた4類型の図形を横一列に配した構成からなる本願商標と略同一又は類似の図形が、商品の包装箱、添付文書、商品のウェブサイト等に使用されている事実が存在する。
また、化粧品やせっけん類の分野において、別掲3(2)及び(3)のとおり、ヘアトニックやシャンプー等においても、脱毛を予防し、発毛や育毛を促進すること及び頭皮や毛髪をケアすることを目的とした商品が販売されている事実が存在するところ、これらの商品及び発毛剤は、化粧品か、せっけん類か、薬剤かという違いはあっても、いずれも薄毛又は脱毛を防ぎ髪を育てる関連の商品であるともいえ、需要者は一般の消費者であって、その製造販売者も共通する場合があるといえることから、商品の取引者及び需要者を共通にすることも少なくないといえるものである。
そうすると、薬剤及び薬剤と需要者の共通性が高い化粧品やせっけん類の分野において、その商品の用途等を説明するために、商品の包装箱等に用途や使用方法等を説明する図を用いることは、一般的に行われているところ、発毛剤に使用される図形について、本願商標と略同一又は類似の図形からなるものが存在するなど、一般的に使用される図形であることに照らすと、本願商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者は、当該商品の対象者を説明するための記述的な表示、すなわち、当該商品の対象者である薄毛又は脱毛の状態である人間の頭部図形の類型として認識するにとどまり、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはないとみるのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、審尋において引用された他者使用に係る頭部図形は、いずれも、ごく最近その使用が開始されたものであり、本願商標に明らかに依拠し、需要者の誤認、混同を期して、あえて本願商標と略同一又は類似の図形を採択したともうかがえるものであるから、このような他者の頭部図形の使用例をもって、本願商標の本来的な識別力を否定することは許されるべきではない旨主張する。
しかしながら、平成29年12月25日付け刊行物等提出書、平成29年12月27日付け刊行物等提出書、平成30年1月22日付け刊行物等提出書及び平成30年10月19日付け刊行物等提出書により提出された情報によれば、医学雑誌「綜合臨牀 第2巻 第1号」(昭和28年1月1日発行、永井書店)に掲載された「禿頭の成り立ちについて」を表題とする医学博士の論文において、薄毛又は脱毛の状態である人間の頭部図形が掲載されている(別掲2参照)ところ、審尋において示した他者の使用例には、別掲3(1)アのように、上記論文に掲載された図形に依拠することを明記しているものも見受けられる。
また、他者が、審尋において示した使用例をそれぞれ採択するに当たり、本願商標に依拠したと認めるに足る客観的な証拠も見いだせない。
そうすると、請求人以外の他者が、商品を使用した際に効能、効果を得られる対象者を説明するために、商品の包装箱、添付文書、商品のウェブサイト等に使用している図形は、上記論文に掲載された図形に依拠するものであるとも考えられることに加え、これらの本願商標と略同一又は類似の図形が他者により使用されている状況に鑑みると、本願商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の対象者である薄毛又は脱毛の状態である人間の頭部図形の類型として認識するにとどまること、上記(1)のとおりであるとともに、本願商標は、その指定商品について特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるといわざるを得ない。
そして、登録出願された商標が商標法第3条第1項第6号に該当するものであるか否かの判断は、当該商標の構成態様と指定商品との関係における取引の実情を考慮して判断されるべきものであって、かつ、その判断時期は、査定時又は審決時と解されるものであるから、上記請求人による主張は、採用し得ない。
イ 請求人は、本願商標が継続的に、商品の包装箱やウェブサイト、セルフチェックシート等の媒体において、商品の用法等の説明文と近接して表示されてきたからといって、外観上高い独創性を有する本願商標それ自体も商品の用法等の説明としてのみ理解されるとするのは合理性を欠くものであり、取引にあたり需要者や取引者が必ず目にする上記媒体及びこれらの媒体における商品の用法等の説明において、本願商標が請求人により発毛剤等の出所表示の一として長期間に亘り継続的に使用されたことにより、本願商標は、請求人の出所を表示する商標として認知されるに至っている旨主張し、甲第1号証ないし甲第16号証及び平成30年9月11日付け早期審査に関する事情説明書の参考資料1ないし6(以下、甲第1号証ないし甲第16号証及び参考資料1ないし6をまとめて「証拠等」という。)を提出している。
そこで、提出された証拠等をみると、請求人が販売する発毛剤の包装箱の側面に、「効能・効果 壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防。」「この医薬品の対象となる壮年性脱毛症 リアップX5プラスローションは、以下のようなパターンの脱毛あるいは薄毛に効果があります。」「※脱毛範囲がこれら以上の場合には効果が得られない可能性があります。」の文字とともに、本願商標中、左2つの図形が上段に、右2つの図形が下段に表示されている(下段の図形の右下には「※」が付されている。)。(参考資料4)
また、請求人のウェブサイトにおいて「リアップX5プラス」の見出しの下、「効能・効果 壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防。」「この医薬品の対象となる壮年性脱毛症 リアップX5プラスは、以下のようなパターンの脱毛あるいは薄毛に効果があります。」「※脱毛範囲がこれら以上の場合には効果が得られない可能性があります。」の文字とともに、本願商標が表示されている(右2つの図形の右下には「※」が付されている。)。(参考資料5、甲14)なお、請求人が販売する「リアッププラス」と称する商品(甲11)及び「リアップジェット」と称する商品(甲12)についても同様の記載及び表示がある。
さらに、請求人が販売する「リアップ」「リアッププラス」「リアップX5プラス」「リアップジェット」と称する商品のセルフチェックシートにおいて、本願商標が表示され、「以下のようなパターンの脱毛あるいは薄毛ではない。」の記載があり、当該質問に「あてはまる」と答えると「使用しないか、使用する前に、医師又は薬剤師にご相談ください。(壮年性脱毛症以外の要因による脱毛症の可能性があります。)」と記載された欄に誘導されるようになっている。(参考資料6、甲10)
これらの証拠等によれば、本願商標は、請求人が販売する商品を使用した際に効能、効果を得られる対象者を説明しているにすぎず、本願の指定商品の取引者、需要者において、指定商品について他人の同種商品と識別するための標識であるとは認識し得ないものというべきであって、本願の指定商品に使用されるときには、自他商品の識別機能を有しないものと認められる。
加えて、本願商標が、請求人の出所を表示する商標として認識されるに至っていることを裏付ける客観的な証拠も他に見いだせない。
(3)まとめ
以上を総合すれば、頭頂が薄毛又は脱毛の状態である人間の頭部を上から描いた4類型の図形を横一列に配した構成からなる本願商標は、審決時においては、その指定商品との関係において、本願商標に接する取引者、需要者をして、その構成全体から、当該商品の対象者である薄毛又は脱毛の状態である人間の頭部図形の類型として認識されるものというべきであり、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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