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Trademark Appeal Case

ありふれた氏の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2017−12417(T2017−12417/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、「久保田」の文字を標準文字で表してなり、第43類「日本酒を主とする飲食物の提供」を指定役務として、平成27年5月25日に登録出願され、その後、指定役務を第43類「清酒『久保田』(『久保田』は登録商標)の提供」と補正する旨の手続補正書が同30年6月5日に提出されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

本願商標は、「『久保田』の文字を標準文字で表してなるところ、『久保田』の文字は、我が国において122番目に多い姓であって、ありふれた氏の一つである。よって、本願商標は、ありふれた氏を普通に用いられる方法で書してなる標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第4号に該当する。また、出願人は、商標『久保田』は、同人が製造する清酒の商標であると認識される程の著名性を獲得している旨を主張し、資料を提出しているが、それらは、本願商標とは使用態様が異なり、指定商品と指定役務の違いもあり、飲食店『久保田』に係る取引の実情をみても、本願商標がその指定役務において、周知、著名であるとはいい難く、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識するに至ったとは認められず、商標法第3条第2項を適用することはできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審においてした証拠調べ通知

当審において、本願商標が商標法第3条第1項第4号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、本願商標に係る「久保田」の文字が、我が国において、ありふれた氏の一つであることについての事例(別掲1)及び「久保田」の文字が、「飲食物の提供」の分野において、店名の一部に広く用いられている事例(別掲2)を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、平成30年4月24日付け証拠調べ通知書によってこれを開示し、相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えた。

第4 証拠調べの結果に対する請求人の意見(要点)

1 商標法第3条第1項第4号について

別掲1の事実を根拠に、「久保田」を商標法第3条第1項第4号の「ありふれた氏」であると評価することは妥当ではない。

2 商標法第3条第2項について

本願商標は、「飲食物の提供」の分野において、周知であって、販売方法が特殊であり、希少価値のある清酒「久保田」を扱う(飲める)専門店として必然的に周知性を有しており、本願商標は、商標法第3条第2項の周知性を十分に獲得している。

第5 当審の判断

1 商標法第3条第1項第4号該当性について

(1)本願商標の商標法第3条第1項第4号該当性について

本願商標は、「久保田」の文字からなるところ、「久保田」の文字は、別掲1のとおり、我が国の国語辞典において、「姓氏の一つ。」として紹介され、我が国の名字(苗字)や姓名に関する複数の書籍やインターネット情報において、121番目ないし140番目に多い名字として紹介されていることからすると、「久保田」の文字は、我が国において同種の氏が多数存在するありふれた氏の一つであるというのが相当である。

そして、本願商標は、標準文字で表してなるから、普通に用いられる方法で表示する標章である。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。

(2)商標法第3条第1項第4号該当性に関する請求人の主張について

請求人は、ありふれた氏を表したと主張する他の登録例を挙げ、過去の審査例(登録例)は、後の審査を拘束するものではないものの、法的安定性、予測可能性の点から、何らかの指針となるべきである旨主張している(甲2〜甲9)。

しかしながら、請求人が挙げた登録例は、いずれも欧文字又は片仮名で表され、かつ、デザイン化されているものがある等、氏を表す際に最も使用頻度が高い漢字を標準文字で表した本願商標とは事案を異にするものであって、該登録例の存在によって、上記判断が左右されるとはいえない。

したがって、請求人の主張は、採用できない。

2 商標法第3条第2項該当性について

請求人は、本願商標が商標法第3条第1項第4号に該当するとしても、使用による識別力を獲得しているとして、同条第2項の要件を具備している旨主張し、当審において、甲第10号証ないし甲第66号証(枝番号を含む。)を提出している。

(1)請求人の提出する証拠及び主張について

請求人の提出する証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。

ア 請求人について

請求人は、第42類「日本料理を主とする飲食物の提供,日本酒を主とする飲食物の提供」を指定役務とする、毛筆体で表した「久保田」の文字からなる商標(登録第3249361号、甲10)、第33類「清酒」を指定商品とする同様の構成からなる商標(登録第3037078号、甲11)及び第33類「清酒」を指定商品とする標準文字で表した「久保田」の文字からなる商標(登録第5621851号、甲12)を始めとする「久保田」の文字を構成中に有する多数の登録商標を有しており、これらの登録商標に係る「清酒」(以下「清酒『久保田』」という。)の製造販売を行っている。

イ 「久保田」の文字の使用状況について

(ア)請求人のホームページには、2015年5月19日に、東京都中央区銀座8丁目に、同人の東京飲食部門の新たな店舗「久保田」(以下「請求人店舗」という。)がオープンした旨の記載がある(甲19)。

(イ)請求人作成の「『久保田』店舗実績売上高表 2015年7月〜2017年5月」及び「同 2017年6月〜2018年4月」、並びに請求人の主張によれば、2015年7月から2017年5月の総売上げは、約2億6,000万円であり、2017年6月から2018年4月の総売上げは、約1億4,000万円である(甲24、甲62)。

(ウ)請求人は、2015年9月に、「久保田」の文字が記載された「『久保田』ブランドリーフレット」を作成、2016年1月には、リニューアルしたリーフレットを作成し、同年9月及び2017年5月には、それぞれ6,000部の増刷を行っている(甲25〜甲28)。

(エ)請求人は、請求人店舗の広告を、2015年5月29日付け新潟日報朝刊全県版に掲載した(甲29、甲30)。

(オ)請求人は、請求人店舗の開店一周年を記念した特別イベントを、2016年6月11日に、当該店舗において、昼の部及び夜の部として開催した。そのイベントの募集人数は、昼の部と夜の部各回20組40名であった(甲31〜甲33)。

(カ)請求人作成の平成29年8月1日付け及び平成30年5月31日付け「飲食店の店舗検索及び予約サイトの広告宣伝費用一覧」によれば、請求人は、請求人店舗の広告宣伝として、「ぐるなび」、「食べログ」等の飲食店の店舗検索及び予約サイトを、2015年から2018年にかけて利用した(甲34、甲66)。

(キ)請求人店舗に関する紹介記事が、10誌の雑誌(甲35〜甲40、甲53〜甲55、甲60)、6紙の新聞(甲41〜甲43、甲63〜甲65)、13件のインターネット上の記事(甲44〜甲51、甲56〜甲59、甲61)に掲載され、本願商標が当該店舗の店名を表示するものとして掲載されており、また、清酒「久保田」の紹介や、請求人の名称の一部を表す「朝日酒造」の文字が、合わせて掲載されている。

(ク)請求人店舗を紹介するラジオ番組が放送され、店名が「久保田」であること及び清酒「久保田」を提供する飲食店であることが紹介されている(甲52)。

ウ 判断

上記イ(ア)ないし(ク)からすると、請求人は、2015年5月に東京都中央区銀座において、店名を「久保田」とする飲食店を開店し、本願商標と同様の態様からなる「久保田」の文字を使用していることが認められる。

しかしながら、本願商標の使用期間は、2015年から現在に至るまでの約4年間にとどまるものであり、また、請求人店舗は、東京都中央区銀座の1店舗のみである。

そして、当該店舗の売上高については、2015年7月から2018年4月の総売上げは、合計で約4億円と主張するものの、これを客観的に裏付ける証拠はなく、また、本願指定役務の分野における請求人店舗の売上高が占める市場シェア等は不明であって、その売上高を客観的及び相対的な評価をもとに、判断することはできない。

次に、請求人店舗に関する広告宣伝活動についてみるに、店舗のリーフレットの制作数は、確認できるもので12,000部にとどまり、それらの頒布先については、不明であるし、新聞広告についても、本願商標が目立つ態様で掲載されているものでもなく、該新聞の購読数や、販売地域については、不明である。

また、店舗検索及び予約サイトにおける広告宣伝については、それらのサイトにおいて、本願商標がどのように使用され、どの程度のアクセス数があったかを把握することはできない。

そして、開店一周年を記念した特別イベントも、当該店舗において1日のみ開催されたものであって、募集人数も昼夜各回20組40名にとどまるものである上、実際に参加した人数も明らかではない。

加えて、請求人店舗に関する紹介記事が掲載された雑誌や新聞、インターネット上の記事については、その発行部数や頒布先及びアクセス数が不明であるし、請求人店舗について紹介したラジオ番組については、その放送エリアや視聴者数は不明である。

また、これらの記事や番組には、清酒「久保田」の紹介や、請求人の名称の一部を表す「朝日酒造」の語が合わせて掲載、紹介されており、本願商標が「飲食物の提供」について、独立して使用されていたということはできない。

してみれば、本願商標が掲載されたリーフレット、新聞、雑誌の発行部数や頒布先、インターネット上の店舗検索及び予約サイトや紹介記事のアクセス数、ラジオ番組の放送エリアや視聴者数については、提出された証拠からは把握することができず、本願指定役務の分野において、これらの広告物や紹介記事等が、どの程度の範囲及び数の取引者、需要者の目に触れたのかは不明であり、また、それらの証拠において、本願商標が単独で識別標識として認識されていたとは必ずしもいえないことからすると、これらの広告宣伝活動の結果、本願商標が我が国において、本願指定役務の取引者、需要者に、請求人の業務に係る役務であることを表示するものとして、広く認識されるに至ったと判断することはできない。

そして、前記1のとおり、「久保田」の文字は、我が国においてありふれた氏の一つであり、別掲2に挙げたとおり、「飲食物の提供」の分野においては、店名の一部に「久保田」の文字を採択、使用する者が数多く存在することを合わせて考察すれば、本願商標は、請求人店舗の名称としてのみ認識されているとはいえず、本願商標は、その指定役務について使用された結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものということはできない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。

(2)商標法第3条第2項該当性に係るその他の請求人の主張について

請求人は、請求人の清酒「久保田」は、周知であり、販売方法が特殊であって、希少価値を有する商品であることを述べた上で、役務「飲食物の提供」と、そこで提供される「飲食物」とは、密接な関係が存在し、一方が周知であれば、その関係が深まることから、本願商標に接する一般人や消費者は、本願商標より、周知な清酒「久保田」を提供している店であることを認識するものであり、これまでの売上及び宣伝の実績によっても、この認識が定着しており、本願商標は、「飲食物の提供」の分野において明らかに周知性を有している旨主張する。

しかしながら、請求人店舗との関係において、店舗名でもある「久保田」の文字が、清酒「久保田」を想起させる場合があるとしても、本願商標が「飲食物の提供」との関係で周知性を有するものといえないことは、上記(1)のとおりであり、請求人店舗も東京都中央区銀座の1店舗のみであることからすれば、本願商標から、「飲食物の提供」と清酒「久保田」とを関連付けて認識する場合は、極限られた範囲にとどまるというべきであって、該認識が全国的に妥当するものとみることはできない。

また、「飲食物の提供」の役務と、商品としての「飲食物」は、それを取り扱う業者も異なり、役務の提供場所と商品の販売場所も異なるものであるから、商取引の目的としてみた場合には、両者は非類似の関係にあり、必ずしも密接な関係が存在するとはいい難い上、本願商標に接する者が、清酒「久保田」を提供している店であることを認識し、その認識が定着していると認めるに足りる証拠は見いだせない。

よって、請求人の主張を採用することはできない。

3 まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第4項に該当するものであって、かつ、同条第2項の要件を具備するものではないから、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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