Trademark Appeal Case
色彩商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−1625(T2018−1625/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第39類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成27年5月7日に色彩のみからなる商標として登録出願され、その後、指定役務については、当審における同30年12月28日付けの手続補正書により、第39類「鉄道による輸送」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「役務の提供の用に供する物や広告に使用される色彩は、多くの場合、それらの魅力向上等のために選択されるものであって、役務の出所を表示し、自他役務を識別するための標識としては認識し得ないものである。そして、本願の指定役務を取り扱う業界においては、本願商標のような青色と同系色の色彩が、役務の提供の用に供する物や広告に使用されている実情がある。そうすると、本願商標をその指定役務の提供の用に供する物や広告に使用しても、これに接する取引者、需要者は、役務の提供の用に供する物や広告に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標と判断するのが相当である。また、提出された証拠からは、本願商標が、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものと認めることはできない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、平成30年11月16日付け証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。
4 証拠調べ通知書に対する請求人の意見の要点
請求人は、上記3の証拠調べ通知に対して、以下のとおり意見を述べた。
(1)証拠調べ通知書に示された事実は、本願商標が自他役務を識別する出所表示として機能していないことには結びつかない。
(2)四国旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社は、請求人と同じJRグループ会社に属しており、JRグループ会社7社は、昭和62年の法人発足当時より、7社がそれぞれ異なるコーポレートカラーを使用していることは周知の事実である。
(3)四鉄運輸株式会社は、四国旅客鉄道株式会社のグループ会社であり、親会社のコーポレートカラーを使用しているので、請求人の本願商標とは明らかに区別できる。一方、東京地下鉄株式会社及び株式会社ゆりかもめの使用は、一見するだけで請求人の商標とは、明度や彩度が異なっており、需要者がその違いを十分区別することが可能である。
(4)したがって、本願商標は、独立して自他役務を識別する出所表示としての機能を有し、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができる商標であるため、商標法第3条1項6号に該当するものではない。
5 当審の判断
(1)本願商標について
本願商標は、別掲1のとおり、色彩のみからなる商標であって、青色(DIC182)のみからなるものであり、第39類「鉄道による輸送」を指定役務とするものである。
(2)取引の実情について
役務の提供の用に供する物や広告に使用される色彩は、多くの場合、役務の魅力向上のために採択されるものであって、役務の出所を表示し、自他役務を識別するための標識としては認識し得ないものである。
そして、役務の提供の用に供する物や広告には、様々な色彩が用いられており、本願商標の色彩に近似する色彩についても、原審で示した事実のほかに、別掲2のとおり、本願の指定役務と関係の深い業界において、列車の車体やウェブサイトに使用されている実情がある。
(3)請求人による本願商標の使用について
請求人は、「請求人の長期にわたる継続的な使用により、本願商標は独立して自他役務を識別する出所表示としての機能を有し、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができる商標であるため、商標法第3条第1項第6号に該当するものではない。」旨主張し、証拠として原審において、資料1ないし資料23及び当審において、第1号証ないし第10号証(枝番号含む。以下、第1号証ないし第10号証については、「甲1」、「甲2」のように省略して記載する。)を提出しており、これらの証拠及び請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人について
請求人は、1987年に設立された西日本エリアを営業範囲とする鉄道会社であり、その規模は、西日本エリアにおいて、駅の数1,200駅、新幹線812.6キロメートルと在来線鉄道4,194.5キロメートルの合計約5,008.7キロメートルの営業距離、列車本数約840本、新幹線一日平均約22万人と在来線一日平均約500万人の利用者がある(甲1)。
イ 本願商標の使用状況及び使用開始時期について
(ア)請求人は、1987年から2016年までに、本願商標と同じ色彩と認識される青色(以下「本願青色」という。)を使用した請求人を表すJRのロゴマーク(以下「JRロゴ」という。)や「JR西日本」の文字が表示されたテレビCMを西日本を中心に放映し、1994年からは首都圏においても放映された(資料20、甲4)。
(イ)駅舎(大阪駅、天王寺駅、天満駅、難波駅、神戸駅、山科駅、大津京駅、奈良駅、海南駅、新宮駅、福井駅、小松駅、富山駅、糸魚川駅、岡山駅、広島駅、長府駅、博多南駅、玉造温泉駅、鳥取大学駅)の外壁等に掲げる駅舎名表示板について、JRロゴやその背景に本願青色を使用していることが確認できる写真もあるが、一部の写真は不鮮明であり使用が確認できない(資料4、甲7)。
(ウ)大阪駅、天満駅、難波駅の駅構内の券売機(資料6)及び案内板(資料7)、大阪駅、福知山駅、三ノ宮駅の駅ホームの駅名表示板の下部及びJRロゴ(資料8)に本願青色を使用している。
(エ)請求人の役務に係るパンフレット(資料14〜18)や情報誌(資料19) に、本願青色を使用したJRロゴや「JR西日本」の文字が使用されている。
(オ)オンライン切符予約システムの広告(資料9)、請求人の発行するクレジットカード(資料10〜12)、プレス発表のインタビューボード(資料13)に本願青色を使用している。
(4)商標法第3条第1項第6号該当性について
上記(2)によれば、青色の色彩のみからなる本願商標は、役務の魅力向上のために使用される色彩と認識されるものであって、また、本願商標と近似する色彩が、請求人以外の者によって、列車の車体やウェブサイトに使用されていることからすれば、何人もその使用を欲するといい得るものであり、これを一私人に独占させることは妥当ではない。
そして、上記(3)によれば、請求人は、1987年から、テレビCM、駅舎名表示板、パンフレット、情報誌等に本願青色を使用したJRロゴや「JR西日本」の文字を表示していることが認められるとしても、その使用態様は、JRロゴや「JR西日本」の文字として、又はJRロゴの背景として使用され、テレビCM、パンフレット、情報誌等には、本願青色以外の色彩や色彩以外の要素も多数使用されており、本願青色のみが独立して出所識別機能を有するものとして強く印象付けられるものとはいい難いものである。
また、駅構内の券売機(資料6)、案内板(資料7)、駅ホームの駅名表示板(資料8)などは、その提出された証拠はわずか数駅の一部の写真のみであって、青色以外の色彩も使用されていることから、これらをもって本願青色のみが自他役務の識別標識として認識されているとは認め難い。
さらに、オンライン切符予約システムの広告(資料9)は、具体的な宣伝広告の規模等が把握できず、請求人の発行するクレジットカードやプレス発表のインタビューボード(資料10〜13)での本願青色の使用は、本願の指定役務である「鉄道による輸送」との関連性が明確ではない。
加えて、請求人は、昭和62年4月以降、役務を提供する際に請求人が着用する制服に本願青色を使用している(甲6)旨主張しているが、その使用箇所は、帽子やネクタイなどの制服の一部のみである上、目立つ態様で使用されているとはいえない。
その他、本願青色が請求人のコーポレートカラーとして、広く一般に認識されていることが確認できる証拠の提出はない。
そうすると、本願商標は、これに接する取引者、需要者をして、これが何人かの業務に係る役務であることを認識させるということはできず、本願商標の色彩についての需要者の認識を客観的に把握することもできないことから、本願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至ったものとは認められない。
以上のことからすると、本願商標は、青色の色彩のみからなる商標であるところ、その指定役務との関係において、一私人による独占使用が妥当でないことに加え、請求人の使用により識別力を獲得したとも認められないものであるから、これを本願の指定役務に使用しても、これに接する需要者は、その役務の提供の用に供する物や広告等に通常使用される色彩又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、これを役務の出所を表示するものとして、又は自他役務を識別するための標識として認識することはないというべきである。
したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(5)請求人の主張について
請求人は、証拠調べ通知に対する意見書において、証拠調べ通知で示された各ウェブサイトについて、「四国旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社は・・・異なるコーポレートカラーを使用してきている。・・・四鉄運輸株式会社は、四国旅客鉄道株式会社のグループ会社であり、親会社のコーポレートカラーを使用しているので、請求人の本願商標とは明らかに区別できる。・・・東京地下鉄株式会社及び株式会社ゆりかもめの使用は、一見するだけで請求人の商標とは、明度や彩度が異なっており、需要者がその違いを十分区別することが可能である。」旨主張している。
しかしながら、証拠調べ通知において示した例は、色彩のみからなる商標を一私人が独占使用することの妥当性について判断する上で、他人による使用の実情を調査した結果として、役務の提供の用に供する物や広告において本願商標と近似した色彩を含む様々な色彩が普通に使用されている例を示したものであって、本願商標と区別できるか否かを判断するためのものではない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(6)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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