sokuhyo

Trademark Appeal Case

位置商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2017−11964(T2017−11964/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、別掲1のとおりの商標記載欄の記載(以下「商標見本」という。)及び商標の詳細な説明の記載から特定される位置商標(以下、単に「位置商標」という。)であって、第20類「プラスチック製包装用容器のふた,PET製包装用容器のふた,透明プラスチック製包装用容器のふた」を指定商品として、平成27年4月1日に登録出願されたものである。

その後「商標の詳細な説明」については、原審における平成28年3月23日付け手続補正書(以下「補正書1」という。)、当審における同29年8月9日付けの手続補正書(以下、「補正書2」という。)及び同30年1月9日付けの手続補正書(以下、「補正書3」という。)により、最終的に「商標登録を受けようとする商標(以下「商標」という。)は、標章を付する位置が特定された位置商標であり、包装用容器の透明なふたの縁の部分の金色が付された立体的形状からなる。ふたに付された金色は、容器とふたの重なる部分にのみ着色される。なお、図面によって表した包装用容器のふたにおける破線は、商品の形状の一例を示したものであり、商標を構成する要素ではない。商標見本中の写真によるものは商標の実例である。」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

1 商標法第3条第1項第3号について

本願商標は、位置商標であり、補正書1により補正された商標の詳細な説明の記載によれば、「包装用容器のふたの縁の部分の金色が付された立体的形状からなる」ところ、指定商品を取り扱う業界においては、縁の部分が円形で突起(ベロ)を有する立体的形状が用いられている蓋が一般的に製造販売されており、かつ、食品に用いられているプラスチック製包装用容器の蓋には、商品の機能の発揮や需要者の目を引くための装飾等を目的として、金色の縁が付されたり、金色が付された立体的形状が一般的に用いられている実情がある。

本願商標は、全体として特異な形状や特徴的な形状ということはできず、その指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者において、通常採用し得る包装用容器の蓋の縁の部分の立体的形状を表したものと理解、認識するにとどまるといえるものであるから、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。

2 商標法第3条第2項について

本願商標は、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるに至ったものとは認められず、商標法第3条第2項には該当しない。

第3 当審における審尋

本願商標が商標法第5条第5項に該当するか否かについての判断を通知するとともに、本願商標が同法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、平成30年11月26日付けで審尋を通知し、相当の期間を指定して意見を求めた。

第4 審尋に対する請求人の意見(要旨)

1 商標法第5条第5項について

審尋の内容をふまえ、本願商標の「商標の詳細な説明」については、上記第1に記載のとおり変更する補正をした。

当該補正により、本願商標は、商標法第5条第5項の要件を具備するものとなった。

2 商標法第3条第1項第3号について

(1)本願商標

本願商標は、位置商標であるところ、本願商標に係る標章を構成する立体的形状は、「標章を付する位置が特定された位置商標であり、包装用容器の透明なふたの縁の部分の金色が付された立体的形状からなる。ふたに付された金色は容器とふたの重なる部分にのみ着色される」ことを特徴とする商標である。

(2)本願商標は自他商品役務の識別標識として機能するか

本願の指定商品の分野において、包装用容器の透明な蓋の縁の部分の色彩が、容器と蓋の重なる部分にのみ着色される形状は、従来にない新規な形状であり、一般的に採用し得ない特異な形状である。

そして、包装用容器等の分野における需要者、取引者は、自己の商品を、本願の指定商品を使用して包装する者である。更には、自己の商品を包装するために、包装用容器の蓋を購入する需要者、取引者は、包装用容器又は包装用容器の蓋を製造する専門の製造業者に対し、自己の商品に見合った専用の包装用容器又は包装用容器の蓋の製造を依頼するものである。

これらの需要者・取引者は、多数存在する包装用容器の蓋の中から、十分な検討を行った上で、最終的に容器の形状や商品の使用用途に応じて自己の目的に適う製品の購入を決定するものであり、包装用容器及びその蓋の形状やそれぞれの特徴、又はその差異に非常に敏感であるから、これらの需要者、取引者にとっては、従来にない新規な形状である本願商標は、多数存在する各種プラスチック製包装用容器の蓋の中から本願商標の購入を決定する上での標識とするに足りる程度に十分特徴的といえる。よって、本願商標の指定商品によって包装された商品を購入する一般需要者が微細な差異と捉えるような特徴すらも、これらの需要者、取引者にとっては、標識とするに足る特徴となり得る。

したがって、本願商標は、本願の指定商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなると認識されるものではなく、自他商品識別力を肯定されるべきものである。

(3)審尋により開示された事実について

本願商標は、上記(1)に記載のとおりの特徴とする商標である。そして、本願の指定商品である包装用容器の蓋は、(ア)外嵌合(かんごう)蓋、(イ)内嵌合(かんごう)蓋、及び(ウ)内外嵌合(かんごう)蓋の3種類に分類されるところ、本願商標の立体的形状は、(ウ)内外嵌合蓋の縁の形状に該当する。

他方、別掲2により開示された事実は、いずれも、(ア)外嵌合蓋又は(イ)内嵌合蓋のタイプであって、単に蓋の縁の部分に色彩が付されているという特徴において、本願商標との共通点を有するのみであり、上記(1)に記載のとおりの本願商標の特徴を満たすものでもない。

本願商標は、標章を付する位置が特定された位置商標であるところ、いずれの位置に標章が付されているかが重要とされるべき点であって、上記事実は、本願商標とは特定する位置が異なるものであるから、本願商標とは異なる標章である。

よって、上記事実をもって、本願商標が、本願の指定商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものと判断することは妥当ではない。

(4)本願商標に独占権を与えた場合は正当な競業秩序を乱し法目的である産業の発展を害するか

請求人が使用する以外において、本願商標が、本願指定商品の分野において、本願の指定商品の形状として一般的に使用されている事実は不知であり、そのような事実も示されていないから、本願指定商品の分野においては、請求人が本願商標の唯一の使用者であり、そのような表示について商標権を付与し独占権的使用を一私人に容認したとしても、正当な競業秩序を乱すおそれはない。

(5)したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない。

第5 当審の判断

1 商標法第5条第5項について

本願商標の「商標の詳細な説明」については、上記第1のとおり補正された結果、本願の願書に記載の「商標登録を受けようとする商標」を具体的に特定しているものと認められる。

したがって、本願商標は、商標法第5条第5項の要件を具備するものとなった。

2 商標法第3条第1項第3号について

請求人は、本件審判の請求の理由において、本願商標は商標法第3条第2項に該当しないとする原査定の拒絶の理由には反論しておらず、専ら同条第1項3号該当性のみを主張しているから、以下、この点について検討する。

(1)商品等の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品等の美観をより優れたものとする等の目的で選択されるものであって、直ちに商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものではない。このように、商品等の製造者、供給者の観点からすれば、商品等の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を果たすものとして採用するものとはいえない。また、商品等の形状を見る需要者の観点からしても、商品等の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美観を際立たせるために選択されたものと認識するのであって、商品等の出所を表示し、自他商品を識別するために選択されたものと認識する場合は多くない。

そうすると、客観的に見て、商品等の機能又は美観に資することを目的として採用されると認められる商品等の形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみから成る商標として、商標法3条1項3号に該当することになる。

また、商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状は、同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定人に独占使用を認めることは、公益上適当でない。

よって、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、同種の商品等について、機能又は美観に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、同号に該当するものというべきである。

(知財高裁平成29年(行ケ)第10155号、同30年1月15日判決参照)

そして、本願商標が位置商標であるとしても、本願立体形状の自他商品の識別標識としての機能の有無の判断については、上記判決に準じて判断すべきものと解される。

(2)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性

ア 本願商標

本願商標は、位置商標であるところ、本願商標に係る標章を構成する立体的形状は、包装用容器の透明な蓋の縁の部分における、容器と重なる部分(突起(ベロ)を含む)から構成されるもの(以下「本願立体形状」という。)であって、その本願立体形状にのみ金色の色彩を付した位置商標である。

イ プラスチック製包装用容器及び蓋の形状

本願の指定商品の分野におけるプラスチック製包装用容器の蓋は、主に(ア)外嵌合蓋、(イ)内嵌合蓋、(ウ)内外嵌合蓋の3種類に分類される(別掲2(1)ア)。

(ア)の外嵌合蓋は、蓋が容器本体の外側(外周)ではまる蓋をいい、その縁の先端はやや丸みをおびた形状であって、容器本体と重なる部分より外側にまでのびている。

そして、外嵌合蓋は、蓋の天面が広いので、中身が見えやすくなっていることを特徴とし、主にお弁当、お寿司、お刺身などの用途に使用されるものである。

(イ)の内嵌合蓋は、蓋が容器本体の内側ではまる蓋のことをいい、その先端は真っ直ぐにのびた形状であって、容器の縁の先端よりも短い。容器本体の縁の先端は、曲がっており、蓋の縁の先端よりもやや外側にまでのびている。

そして、内嵌合蓋は、外嵌合蓋に比べて、液体が漏れにくい仕様であり、外嵌合と比べて蓋が外れにくい仕様となっていることを特徴とし、主にパスタ、カットフルーツなどの用途に使用されるものである。

(ウ)内外嵌合蓋は、蓋が容器本体の外側(外周)と内側(内周)両方ではまる蓋のことをいい、その縁の先端を下向きに凹状に成形し、かつ、容器本体の縁部分を凸状に成形し、両者を重ね合わせる形状であって、両者の縁の先端の長さは同じである。

そして、内外嵌合蓋は、外嵌合蓋に比べて、ドリップなどがやや漏れにくい蓋の仕様であり、蓋が外側と内側の両方からはまっているので、蓋が外れにくい仕様となっていることを特徴とし、主に総菜などの用途に使用されるものである。

ウ 本願立体形状について

本願立体形状は、上記アのとおり、本願立体形状にのみ金色の色彩を付した位置商標であって、本願立体形状の外側等に金色の着色が施されていない部分はなく、かつ、その縁の先端を下向きに凹状に成形したものといえる。

そうすると、本願立体形状は、上記イを踏まえると、上記イ(ウ)の内外嵌合蓋の縁の、容器と重なる部分にのみ金色の色彩を付したものというのが相当である(なお、請求人自らも、本願商標は上記イ(ウ)の内外嵌合蓋の縁の形状に該当する旨を自認している)。

そして、内外嵌合蓋の形状は、上記イ(ウ)のとおりであり、ドリップなどがややもれにくく、蓋が外れにくい仕様であって、本願の指定商品の分野におけるプラスチック製包装用容器の蓋の形状として、機能に資することを目的として採用されたものと認められるから、本願立体形状における、容器と重なる部分の形状についても、機能に資することを目的とする形状と予測し得る範囲内のものといえる。

エ 本願立体形状における、突起(ベロ)の形状について

本願立体形状における、突起(ベロ)の形状は、別掲2(1)イによれば、蓋を開けやすくするために設けられたつまみ部分であるというのが相当であって、機能に資することを目的として採用されたものと認められるものであるから、機能に資することを目的とする形状と予測し得る範囲内のものといえる。

オ 本願立体形状に金色を付した、その色彩および位置について

本願の指定商品の分野においては、別掲2(2)のとおり、包装容器の透明な蓋の縁の部分に金色又はその他の色が付されたものが多数存在していることからすれば、本願立体形状に金色を付した、その色彩および位置、すなわち、容器本体と重なる、内外嵌合蓋の縁の部分のみに着色するということも、容易に予測し得る範囲内のものというべきであるから、需要者及び取引者をして、単なる美観上の理由により選択された色彩及び位置として看取されるものというのが相当である。

よって、本願立体形状に金色を付した、その色彩および位置は、格別の自他商品識別力を有するものとはいえない。

カ 以上よりすると、本願商標は、その指定商品の機能を果たす目的で採用された形状、又はその機能や美観上の理由による形状、色彩及び位置の選択と予測し得る程度の形状との印象を与えるにすぎず、その他、本願商標の構成中に自他商品識別標識としての機能を発揮するような特徴は見いだせないから、本願商標は、本願商標に接する需要者及び取引者をして、商品の特徴又は形状を普通に用いられる方法で表してなるものと認識、理解させるにすぎないというべきである。

キ したがって、本願商標は、その指定商品との関係においては、商品の特徴又は形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、商標法3条1項3号に該当するというべきである。

(3)請求人の主張

ア 請求人は、別掲2により開示した事実は、いずれも本願商標の特徴とは異なるもの、すなわち、単に蓋の縁の部分に色彩が付されているという特徴において、本願商標との共通点を有するのみであり、上記第1に記載のとおりの本願商標の特徴を満たすものではない旨、及び、本願商標は、標章を付する位置が特定された位置商標であるところ、いずれの位置に標章が付されているかが重要とされるべき点であり、その特定する位置が異なるということは、すなわち、本願商標とは異なる標章ということに他ならないから、上記事実をもって、本願商標が、本願の指定商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるとして判断することは妥当ではない旨主張する。

しかしながら、上記(2)イのとおり、本願の指定商品の分野におけるプラスチック製包装用容器の蓋は、主に(ア)外嵌合蓋、(イ)内嵌合蓋、(ウ)内外嵌合蓋の3種類に分類され、いずれも指定商品を取り扱う業界において広く使用されている包装用容器の蓋の形状の範ちゅうのものである。

そして、上記(2)オのとおり、上記(ア)外嵌合蓋、(イ)内嵌合蓋と思しき形状の蓋において、透明な蓋の縁の部分にのみ金色その他の色が付されたものが多数存在していることからすれば、本願商標と同じタイプの蓋の形状である(ウ)内外嵌合蓋の、容器本体と重なる縁の部分にのみ金色が付されるということも需要者及び取引者において予測し得る範囲内のものというべきであるから、本願商標は、需要者及び取引者をして、当該形状、色彩及び位置は、その指定商品の機能を果たす目的で採用された形状、又はその機能や単なる美観上の理由により選択されたものとして看取されるものというのが相当である。

よって、本願商標は、格別の自他商品識別力を有するものとはいえない。

イ 請求人は、包装用容器等の分野における需要者、取引者は、自己の商品を、本願の指定商品を使用して包装する者であり、更には、商品を包装するために、包装用容器の蓋を購入する需要者、取引者は、包装用容器又は包装用容器の蓋を製造する専門の製造業者に対し、自己の商品に見合った専用の包装用容器又は包装用容器の蓋の製造を依頼するものであるから、これらの需要者及び取引者にとっては、従来にない新規な特徴を有する本願商標は、多数存在する各種プラスチック製包装用容器の蓋の中から本願商標の購入を決定する上での標識とするに足りる程度に十分特徴的といえるものである旨主張する。

しかしながら、上記(2)のとおり、本願商標は、その指定商品の需要者、取引者をして、商品の特徴又は形状を普通に用いられる方法で表してなるものと認識、理解させるにすぎないというべきである。

そして、本願商標は、多数存在する各種プラスチック製包装用容器の蓋の中から購入を決定する上での標識とするに足りる程度に十分特徴的であるとする証左は、請求人より何ら提出されておらず、これを認める事情は存在しない。

ウ 請求人は、審査段階において、商品の包装(容器)の形状を表示するものと認識させるにすぎないとして立体商標の自他商品識別力を否定した案件について、自他商品識別力を肯定した過去の審決例が存在すること、及び識別力を有する文字や図形を含まない立体的形状が商標登録された例が複数存在することからすると、本願商標も同様に、本願の指定商品との関係で、自他商品の識別標識としての機能を十分に有するものである旨主張する。

しかしながら、本願商標が、上記(2)のとおり、本願商標に接する需要者及び取引者は、商品の特徴又は形状を普通に用いられる方法で表してなるものと認識、理解するにすぎないというべきであるし、請求人が挙げる既登録例や審決例は、本願商標とは態様を異にするものであるから、本件結論は、これらの既登録例や審決例の存在によって左右されるものではない。

エ したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。

(7)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。