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Trademark Appeal Case

欧文字商標の称呼・外観類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2019−900084(T2019−900084/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第6107834号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第6107834号商標(以下「本件商標」という。)は,「EM−LFC」の文字を標準文字で表してなり,平成30年4月5日に登録出願,第9類「配電用又は制御用の機械器具,電線及びケーブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,測定機械器具」を指定商品として,同年11月22日に登録査定,同年12月14日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議の申立ての理由において,引用する商標は,以下の(1)及び(2)であり,いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。

(1)登録第4469715号商標(以下「引用商標1」という。)は,「EM−MLFC」の欧文字を横書きしてなり,平成12年4月27日に登録出願,第9類「配電用又は制御用の機械器具,電線及びケーブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,抵抗線,電極」を指定商品として,同13年4月20日に設定登録されたものである。

(2)登録第1463873号商標(以下「引用商標2」という。)は,「MLFC」の文字を横書きしてなり,昭和53年3月20日に登録出願,第11類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として,同56年5月30日に設定登録され,その後,平成13年2月14日に,第7類「起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機,家庭用食器洗浄機,家庭用電気式ワックス磨き機,家庭用電気洗濯機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー,電機ブラシ」,第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極」,第11類「電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類」,第12類「陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。)」及び第17類「電気絶縁材料」とする指定商品の書換登録がされたものである。

以下,引用商標1及び引用商標2をまとめて「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由

申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)商標法第4条第1項第11号について

ア 本件商標は,「EM−LFC」の文字を横書きしてなり,「イイエムエルエフシイ」の称呼,及び「エコマテリアル」の略称である「EM」(甲6)と「LFC」の組み合わせという観念を生じる。

他方,引用商標1は,「EM−MLFC」の文字を横書きしてなり,「イイエムエムエルエフシイ」の称呼,及び「エコマテリアル」の略称である「EM」(甲6)と「MLFC」の組み合わせという観念を生じる。

また,引用商標2は,「MLFC」の文字を横書きしてなり,「エムエルエフシイ」の称呼を生じる。

イ 本件商標と引用商標1を対比すると,「E」→「M」(M)→「L」→「F」→「C」の順序で5種類の欧文字が配置されている点が共通しており,それぞれ一連の語句としての称呼は相紛らわしい。

したがって,本件商標と引用商標1とは,共に「イイエム」(エム)及び「エルエフシイ」の称呼並びに外観及び観念を共通にする類似のものである。

ウ 本件商標と引用商標2を対比すると,「M」→「L」→「F」→「C」の順序で4種類の欧文字が配置されている点は共通しており,それぞれ一連の語句としての称呼は相紛らわしい。

したがって,本件商標と引用商標2とは,共に「エムエルエフシイ」の称呼及び外観を共通にする類似のものである。

エ そして,本件商標と引用商標の指定商品も同一又は類似(甲7〜甲9)のものである。

オ したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第15号について

引用商標は,申立人及び申立人と合併した日立電線株式会社(以下「申立人等」という。)の製造・販売する耐熱(難燃性)電線・ケーブルの主力商標の1つであり,引用商標1は,製品がエコマテリアル(EM)からなることを明確にした引用商標2の後発商標である。

そして,引用商標からなる,「MLFC」シリーズは,申立人による長年の使用により,耐熱(難燃性)電線・ケーブルの代表的ブランドとして取引者及び需要者において広く認知されるに至っており(甲11〜甲23),引用商標に類似する本件商標は,あたかも申立人等の「MLFC」シリーズの商標であるかのような印象を需要者及び取引者に与えるものと考えられる。

本件商標に係る指定商品の需要者は,専門家だけではなく一般的な需要者も含むものであり,高度な注意力を有するものではなく簡易な印象により出所を認識していることから,これらの取引の実情を踏まえ,なんらかの経済的な関連性やシリーズブランドとしての認識により,出所の混同が生じるおそれがある。

したがって,本件商標は,本件指定商品に使用された場合,その商品の需要者が申立人の業務に係る商品と出所の混同を生じるおそれのある商標であることは明白であり,商標法第4条第1項第15号に該当する。

3 当審の判断

(1) 商標法第4条第1項第11号該当性について

ア 本件商標

本件商標は,上記1のとおり,「EM−LFC」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成は「EM」と「LFC」の文字とを「−」(ハイフン)を介した結合商標と認められる。

そして,「EM」の文字は,「一般社団法人日本電線工業会」の会員専用のウェブサイト(甲5)及び同法人に係る技術資料「EM(エコマテリアル)電線・ケーブル Q&A」(甲6)において,「エコマテリアル(Ecomaterial)」及び「耐燃性」の意味を有する語であり,電線及びケーブルの品質を表示する文字として使用されている。

そうすると,本件商標の構成中「EM」の文字部分は,その指定商品中「電線及びケーブル」との関係においては,商品の品質等を表す語として認識されるにすぎないものであるから,商品の出所識別標識としての機能を果たさないか,極めて弱い文字であるといえる。

他方,本件商標の構成中「LFC」の文字部分は,一般的な辞書等には掲載されていない造語と認められるから,本件商標の指定商品との関係においては,商品の出所識別標識としての機能を果たし得るというべきである。

してみれば,本件商標は,その指定商品中「電線及びケーブル」との関係においては,その構成中「LFC」の欧文字部分を要部として抽出し,この部分のみを他人の商標(引用商標)と比較して商標の類否を判断することができるものである。

したがって,本件商標は,その構成文字全体に相応して「イーエムエルエフシー」の一連の称呼が生じるほか,その指定商品中「電線及びケーブル」との関係においては,要部である「LFC」の文字部分から,単に「エルエフシー」の称呼をも生じ,特定の観念を生じないものである。

イ 引用商標

(ア)引用商標1は,上記2のとおり,「EM−MLFC」の文字を横書きしてなるところ,その構成は「EM」と「MLFC」の文字とを「−」(ハイフン)を介した結合商標と認められる。

そして,引用商標1の構成中「EM」の文字部分は,その指定商品中「電線及びケーブル」との関係においては,本件商標と同様の理由により,商品の出所識別標識としての機能を果たさないか,極めて弱い文字であるといえる。

他方,後半の「MLFC」の文字部分は,一般的な辞書等には掲載されていない造語と認められるから,引用商標1の指定商品との関係においては,商品の出所識別標識としての機能を果たし得るというべきである。

してみれば,引用商標1は,その指定商品中「電線及びケーブル」との関係においては,構成中の「MLFC」の文字部分を要部として抽出することができるものである。

したがって,引用商標1は,その構成文字全体に相応して「イーエムエムエルエフシー」の一連の称呼が生じるほか,その指定商品中「電線及びケーブル」との関係においては,要部である「MLFC」の文字部分から,単に「エムエルエフシー」の称呼をも生じ,特定の観念を生じないものである。

(イ)引用商標2は,「MLFC」の文字を横書きしてなるところ,当該文字は,上記(ア)と同様に造語と認められるから,その構成文字に相応して「エムエルエフシー」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。

ウ 本件商標と引用商標との類否

(ア)外観について

a 本件商標と引用商標1を比較にすると,両商標は,文字数が異なることに加えて,共に「−」(ハイフン)を介して2つの部分に視覚的に分離されるところ,後半の語頭の文字が「L」と「M」とで相違することから,外観上,相紛れるおそれはない。

b 本件商標と引用商標2を比較すると,両商標は,文字数が大きく異なることに加えて,語頭の「E」の文字及び「−」(ハイフン)の有無という明らかな差異を有するものであるから,外観上,判然と区別し得るものである。

c 本件商標及び引用商標の指定商品中「電線及びケーブル」との関係において,本件商標の要部である「LFC」の文字と引用商標1の要部及び引用商標2の「MLFC」の文字とを比較しても,両者は,欧文字3文字ないし4文字の構成中の語頭において「M」の有無の差異を有するから,外観上,相紛れるおそれはない。

(イ)称呼について

a 本件商標と引用商標1とは,それぞれ「イーエムエルエフシー」及び「イーエムエムエルエフシー」の称呼が生じるところ,両称呼は5音目及び6音目における「エム」の有無という差異を有し,当該差異音は両商標の外観上「−」(ハイフン)の後の文字に関連するものであって,明瞭に発音されるとみるのが自然であるから,両者をそれぞれ一連に称呼しても,聞き誤るおそれはない。

b 本件商標と引用商標2から生ずる「イーエムエルエフシー」及び「エムエルエフシー」の称呼においても,語頭の「イー」の音の有無によって判然と聴別できる。

c 本件商標及び引用商標の指定商品中「電線及びケーブル」との関係において,本件商標の要部である「LFC」と引用商標1の要部及び引用商標2である「MLFC」からは,それぞれ「エルエフシー」及び「エムエルエフシー」の称呼を生ずるところ,両称呼は,語頭における「エム」の音の有無により,判然と聴別できるものである。

d したがって,本件商標と引用商標は,称呼上,相紛れるおそれはない。

(ウ)観念

本件商標と引用商標並びに本件商標の要部である「LFC」と引用商標1の要部及び引用商標2の「MLFC」はいずれも特定の観念を生じないものであるから,これらを観念上において比較することはできない。

(エ)小括

以上を総合的に考察すれば,本件商標と引用商標とは,その外観,称呼及び観念のいずれの点からみても,相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

したがって,本件願商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似であるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。

(2)商標法第4条第1項第15号該当性について

ア 証拠及び申立人の主張によれば,以下の事実が認められる。

(ア)申立人は,送電線・配線用ケーブル等を製造・販売していた日立グループの日立電線株式会社を2013年(平成25年)7月1日に吸収合併し,継続して,日立電線株式会社が製造していた送電線・配線用ケーブル等を製造・販売している(甲4,甲10,甲11)。

(イ)「社団法人日本配電盤工業会」に係る技術資料「配電盤類に使用する絶縁電線」(1995年(平成7年)5月改訂)」において,4頁に「架橋ポリエチレン絶縁電線(商)MLFC)」(「(商)」は,円輪郭内に「商」文字が付されている。)が紹介(甲25),及び申立人等に係る書籍「六訂 電線・ケーブルハンドブック」(日立電線株式会社編 平成7年8月30日六訂発行)には,「難燃性ポリフレックス出線」として,「MLFC」が紹介されている(甲20)。そして,2015年(平成27年)制作の申立人等に係るカタログ(甲11)には,「MFLC」の名称を商品「難燃性ポリフレックス電線」に使用していることが認められる。

また,申立人等は,「EM−MFLC」の名称を,2000年(平成12年)8月4日に,商品「難燃性ポリフレックス電線」の環境配慮型電線ケーブルとして販売を開始し,2008年(平成20年)5月制作の申立人等に係るカタログ(甲19)には,「EM−MFLC」の名称を商品「難燃性ノンハロゲン架橋ポリエチレン電線」に使用していることが認められる。

以下,これら申立人等の「MLFC」及び「EM−MFLC」の名称に係る商品「電線」を「申立人使用商品」という。)。

(ウ)申立人のウェブサイトにおけるニュースリリース(2000年(平成12年)8月4日付)において,「環境配慮型電線『エコグリーン(R)』の品揃えを拡充」の見出しの下,「『MLFC』は可とう性が優れているのが特徴で,盤内配線分野で広く使用されているとともに,当社が国内市場の70%のシェアを持つ当社の特長製品となっています。」,及び「従来品であるMLFCの平成11年度の売上高は,年間約22億円でしたが,平成12年度には約25億円を見込んでいます。」の記載がある(甲18)。

(エ)申立人使用商品は,電線ケーブルの販売を取り扱うネットシステム株式会社,株式会社ベルデンキ,泉州電業株式会社,中部電材株式会社及び株式会社小柳出電気商会のウェブサイトにおいて,申立人の商品として紹介されている(甲13〜甲17)。

(オ)電線ケーブルの販売を取り扱う橋本興産株式会社のウェブサイトにおいて,「WL1・WL2・MLFCのメーカー別比較表について」の見出しの下,「MLFCとは」の項に,「MLFC 配電盤,モーター,発電機,溶接機,変圧器の配線に使用 MLFCは国内トップシェアの日立金属(日立電線)の形式です。」の記載があり,また,「MLFCのメーカー比較表について」の比較表において,国内有名メーカー各社のケーブルとして「日立金属(日立電線)」の項に「MLFC」及び「EM−MLFC」の表示,「古河電工産業電線」の項に「EM−LMFC」の表示,「FDC(フジクラ・ダイヤ)」の項に「EM−LMCF」の表示,並びに,「住友電工産業電線」の項に「EM−LFC」が紹介されている(甲23)。

イ 判断

(ア)引用商標の周知性

上記ア(イ)のとおり,申立人等は,商品「電線・ケーブル」について,遅くとも引用商標2を1995年(平成7年)より,引用商標1を2000年(平成12年)より,使用していることは認められ,申立人使用商品に係る国内市場のシェアが,平成11年において約70%及び売上高が約22億円であることが認められる。

しかしながら,当該シェア及び売上高は,平成11年に係る単年度のものであって,販売開始時期及び現在に至るまでの申立人使用商品のシェア及び売上高は明らかでない。

また,申立人使用商品は,電線ケーブルの販売を取り扱う複数の会社において紹介されていることが認められるものの,引用商標に係る申立人使用商品の宣伝広告費,宣伝回数等も明らかでない。

以上よりすると,引用商標は,本件商標の登録出願の時及び登録査定時において,申立人使用商品ないし本件商標の指定商品の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。

(イ)取引の実情

電線ケーブルの販売を取り扱う業界においては,上記ア(オ)のとおり,「日立金属(日立電線)」の商品名は「MLFC」及び「EM−MLFC」,「古河電工産業電線」の商品名は,「EM−LMFC」,「FDC(フジクラ・ダイヤ)」の商品名は,「EM−LMCF」,「住友電工産業電線」の商品名は,「EM−LFC」であることより,電線及びケーブルの商品名に「M」,「L」,「F」及び「C」の共通する欧文字を使用している事実が認められるところ,これらに接する需要者は,文字の順序によりメーカーや電線の種類を区別していることがうかがわれ,混同が生じている等の実情は認められない。

(ウ)出所の混同について

引用商標は,本件商標の登録出願の時及び登録査定時において,申立人使用商品ないし本件商標の指定商品の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。

また,上記(1)ウのとおり,本件商標と引用商標とは非類似の商標であり,全体として異なる視覚的印象や記憶を与え,看者に全く別異のものとして認識されるものといえるものであって,類似性の程度は高いとはいえないものである。

そして,電線ケーブルの販売を取り扱う業界の取引の実情に照らしても,同種の商品について,各社の欧文字とハイフンのみにより構成される商品名によって混同が生じている等の実情は認められない。

そうすると,本件商標は,その指定商品と申立人商品とが関連性を有するとしても,本件商標を,その指定商品に使用したときには,これに接する取引者,需要者が,引用商標を連想,想起するようなことはないというべきであり,該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく,その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。

ウ 以上よりすると,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(3)まとめ

以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものではなく,その登録は,同条第1項の規定に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。

よって,結論のとおり決定する。

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