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Trademark Appeal Case

「BINDERLESS」の記述性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−13136(T2018−13136/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は,「BINDERLESS」の文字を標準文字で表してなり,第7類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として,平成29年6月12日に登録出願されたものである。

その後,指定商品については,原審における平成30年3月28日受付の手続補正書により,第7類「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由(要点)

原査定は,「本願商標は,『BINDERLESS』の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中の『BINDER』の文字は,一般的な金属加工機械器具との関係では,『(粒子を固結させる)結合剤』の意味を有する語として使用されていることから,全体として,『(粒子を固結させる)結合剤を用いないこと。』の意味合いを有する語として理解されるものである。また,金属加工機械器具を取り扱う業界においては,例えば,CBN工具を成形する際に,CBN(立方晶窒素化ホウ素)を焼結体として用いる場合の結合相を『BINDER(バインダ)』と言い,このような結合相『BINDER(バインダ)』を用いない工具を『バインダレス(BINDERLESS)工具』と称し,取引が行われている実情がある。そして,本願の補正後の指定商品は『ナノ多結晶ダイヤモンド工具』であるところ,請求人が提出した証拠によれば,『ナノ多結晶ダイヤモンド』は,『焼結助剤や結合材を一切含まない,ダイヤモンド単相の強靭な多結晶体』とされているものである。そうすると,本願商標を,その指定商品『(粒子を固結させる)結合剤を用いない工具(すなわち,ナノ多結晶ダイヤモンド工具)』に使用しても,これに接する取引者,需要者は,商品の品質『(粒子を固結させる)結合剤を用いないこと。』を誇称して表示したと認識するにすぎず,単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示したものとして認識するというべきであるから,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知

当審において,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,別掲に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対して,平成31年2月19日付け証拠調べ通知書によって通知し,期間を指定してこれに対する意見を求めた。

第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見(要旨)

1 本願の指定商品は,請求人が開発し,独占販売している「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」であって,ナノ多結晶ダイヤモンドの製造において結合材の使用はそもそも予定されておらず,その生成過程において結合材が介入する余地はない。したがって,本願商標をもって取引される「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」に接した取引者,需要者が,「BINDERLESS」の文字から「結合材がないこと」の意味を把握し,内容記述語と認識することはあり得ない。

2 証拠調べ通知で引用した書籍(別掲1)及び特許公報等のうち3件(別掲3(1),(4),(5))における「バインダレス」又は「バインダーレス」の文字の使用事例は,いずれも,請求人の商品「BINDERELESS」に言及したものと理解される。したがって,これらの事例は,「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」との関係において,「BINDERLESS」の文字が,「結合材がない」の意味を表す語として一般的に使用されていたことを示すものではない。

3 証拠調べ通知で引用した新聞記事(別掲2),特許公報等のうち2件(別掲3(2),(3))及びインターネット情報(別掲4)における「バインダレス」又は「バインダーレス」の文字の使用事例は,いずれも,請求人の開発にかかる「直接変換法」とは異なる技術的アプローチに基づいて製造された多結晶ダイヤモンド又は多結晶ダイヤモンド工具に関するものである。したがって,これらの事例は,「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」との関係において,「BINDERLESS」の文字が,「結合材がない」の意味を表す語として一般的に使用されていたことを示すものではない。

第5 当審の判断

請求人は,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当しない旨主張し,その証拠方法として,原審において,資料1ないし資料3を提出し,さらに,当審において,第1号証ないし第12号証を提出している(以下,当該資料1ないし資料3を甲第1号証ないし甲第3号証と読み替え,第1号証ないし第12号証を甲第4号証ないし甲第15号証と読み替える。)。

1 商標法第3条第1項第3号該当性について

(1)本願商標について

本願商標は,上記第1のとおり,「BINDERLESS」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中「BINDER」の文字は,一般的には「縛る人やもの,固めるもの,つなぎ」の意味を有する語として,化学分野においては「結合剤:混合物の成分を凝集させる原因になる物質」の意味を有する英語として辞書類に載録されており,また,「LESS」の文字は,名詞の後について「・・・のない」の意味の形容詞を作る英語の接尾語として,辞書類に載録されていることから(いずれも「ランダムハウス英和大辞典 第2版」株式会社小学館発行),両文字とも,我が国において親しまれた英語として理解されるものである。

そうすると,本願商標は,上記の意味を有する「BINDER」の語と「LESS」の接尾語とを組み合わせた語として認識されるとみるのが自然であるから,全体として,「結合剤がない」との意味合いを容易に理解させるものである。

(2)本願の指定商品は「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」であるところ,これは,「単結晶ダイヤモンドより高い硬度を有する,ナノ多結晶ダイヤモンドを刃先素材に用いた切削工具。」(甲7)である。ここで,「ナノ多結晶ダイヤモンド」とは,「グラファイト(Gr)を出発物質とした超高圧高温下における直接変換焼結によって(得た),焼結助剤や結合材を一切含まない,ダイヤモンド単相の強靱な多結晶体」である(甲2)。また,本願の指定商品「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」は,切削工具に関する書籍において,結晶構造が「多結晶」で,合成物質が「バインダレス(BL)」である「ダイヤモンド切削工具」に含まれる工具の名称の一つとして,「CVD多結晶ダイヤモンド工具」とともに,掲載されている(別掲1(1))。

(3)本願商標を構成する「BINDERLESS」の片仮名表記と認められる「バインダレス」又は「バインダーレス」の文字は,「ダイヤモンド切削工具」又はそれに用いられるダイヤモンドとの関係において,例えば,切削工具に関する書籍には,「近年,日本企業が数10nmの微細なダイヤモンド粉末を緻密で強固に結合させた『人工で結合剤をつかわない(バインダレス)多結晶ダイヤモンド』を製造することに成功しました。」の記載(別掲1(2)),ダイヤモンド焼結体の超精密加工に関する博士論文には,「ダイヤモンド焼結体の製造法は,・・・ダイヤモンド表面をバインダ物質によって溶解析出させる液相焼結法や,ダイヤモンド相互の結合形成を目指してバインダレスでダイヤモンド結晶同士を接合させる固相焼結方法が広く知られている」(別掲4(2))の記載,ダイヤモンド切削工具に関する商品カタログには,「バインダレスの純粋な多結晶ダイヤモンド」及び「バインダとしての不純物を含んだ多結晶ダイヤモンド」(別掲4(3))の記載等があるように,「バインダ(結合剤)がない」の意味合いを表す語として,普通に使用されている実情がある(別掲1〜別掲4)。

(4)上記(1)のとおり,本願商標を構成する「BINDERLESS」の文字が,全体として,「結合剤がない」との意味合いを容易に理解させるものであって,我が国において,日常の様々な場面で文字種を変更して使用することはごく一般的であり,同一語の英語表記及び片仮名表記は,併用されることが普通にみられることを考慮すると,本願商標は「バインダレス」又は「バインダーレス」の文字を,単に英語表記したものと容易に理解されるといえること,上記(2)のとおり,本願の指定商品「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」はダイヤモンド単相の強靱な多結晶体を刃先素材に用いた切削工具であって,「ダイヤモンド切削工具」に含まれる工具の名称の一つであること,上記(3)のとおり,「バインダレス」又は「バインダーレス」の文字が,「ダイヤモンド切削工具」又はそれに用いられるダイヤモンドとの関係において,「バインダ(結合剤)がない」の意味合いを表す語として,普通に使用されている実情があることを踏まえると,本願商標は,これをその指定商品に使用した場合,これに接する取引者,需要者をして,「バインダ(結合剤)のないナノ多結晶ダイヤモンド工具」であること,すなわち,商品の品質を表示したものとして認識させるにとどまり,自他商品の識別標識としては認識し得ないものというのが相当である。

したがって,本願商標は,商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。

2 請求人の主張について

(1)本願の指定商品は,請求人が開発し,独占販売している「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」であって,ナノ多結晶ダイヤモンドの製造において結合材の使用はそもそも予定されておらず,その生成過程において結合材が介入する余地はない。したがって,本願商標をもって取引される「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」に接した取引者,需要者が,「BINDERLESS」の文字から「結合材がないこと」の意味を把握し,内容記述語と認識することはあり得ない旨主張する。

しかしながら,たとえ,本願の指定商品「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」は請求人が開発し,独占販売し,ナノ多結晶ダイヤモンドの製造において結合材等の使用は予定されていないものであるとしても,上記2(4)のとおり,本願の指定商品「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」は「ダイヤモンド切削工具」に含まれる工具の名称の一つであって,「バインダレス」又は「バインダーレス」の文字が,当該「ダイヤモンド切削工具」又はそれに用いられるダイヤモンドとの関係において「バインダ(結合剤)がない」の意味合いを表す語として,普通に使用されている実情があることを踏まえると,本願商標を構成する「BINDERLESS」の文字は,本願の指定商品との関係において,「バインダ(結合剤)のないナノ多結晶ダイヤモンド工具」であることを認識させるにとどまるものであるから,商品の品質を表示するものとして理解されるというべきである。

(2)請求人は,証拠調べ通知で引用した書籍(別掲1)及び特許公報等のうち3件(別掲3(1),(4),(5))における「バインダレス」又は「バインダーレス」の文字の使用事例は,いずれも,請求人の商品「BINDERELESS」に言及したものと理解されるから,これらの事例は,「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」との関係において,「BINDERLESS」の文字が,「結合材がない」の意味を表す語として一般的に使用されていたことを示すものではない旨主張する。

しかしながら,上記事例において,「バインダレス」又は「バインダーレス」の文字は,それが請求人に係る商標ないし請求人に係る特定の商品の名称であると認識し得る記載は見あたらず,別掲1ないし別掲4における「バインダレス」又は「バインダーレス」の文字の使用事例においても,いずれも「ダイヤモンド切削工具」又はそれに用いられるダイヤモンドとの関係において,「バインダ(結合剤)がない」という商品の品質,特性を表示記述するものとして使用されているから,本願商標は,本願の指定商品の関係では,商品の品質を表示するものとして理解されるというべきである。

(3)請求人は,証拠調べ通知で引用した新聞記事(別掲2),特許公報等のうち2件(別掲3(2),(3))及びインターネット情報(別掲4)における「バインダレス」又は「バインダーレス」の文字の使用事例は,いずれも,請求人の開発にかかる「直接変換法」とは異なる技術的アプローチに基づいて製造された多結晶ダイヤモンド又は多結晶ダイヤモンド工具に関するものであるから,これらの事例は,「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」との関係において,「BINDERLESS」の文字が,「結合材がない」の意味を表す語として一般的に使用されていたことを示すものではない旨主張する。

しかしながら,商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるか否かを判断するにあたっては,当該商標がその指定商品に使用された場合における,指定商品の取引者,需要者の認識を基準として判断すべきであるところ,たとえ,本願の指定商品「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」の製法が,他の「ダイヤモンド切削工具」とは技術的に異なるものであるとしても,上記1(2)のとおり,「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」は,「ダイヤモンド切削工具」に含まれる工具の名称の一つであるから,「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」と他の「ダイヤモンド切削工具」とは,その用途(切削)に共通性を有しており,それらの取引者,需要者は共通する場合があるといえる。

そうすると,「ナノ多結晶ダイヤモンド工具」の取引者,需要者が,本願商標に接した場合に,本願商標がその商品の品質を表示したものと理解することは十分にあり得るというのが相当である。

(4)したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用することができない。

3 まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

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