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Trademark Appeal Case

著名商号と商標の混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2018−890018(T2018−890018/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5571602号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「大成コーポレーション」の文字を書してなり、平成24年11月6日に登録出願、第37類「建具工事,家具設置工事,家具の耐震・固定工事,建築物のリフォーム工事,その他の建設工事,建築工事に関する助言,太陽光発電装置の据付・修理又は保守,家具の修理,錠前の取付け又は修理,畳類の修理」を指定役務として、同25年3月21日に登録査定、同年4月5日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

本件審判請求人(以下「請求人」という。)が、本件商標の登録の無効の理由において引用する商標は、以下の4件である(以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という)。

1 「TAISEI」の欧文字からなる商標(以下「引用商標1」という。)は、請求人及び主なグループ会社のウェブページ、パンフレット、リーフレット、統合報告書等の各種報告書、テレビ・新聞・雑誌等による広告、社員の名刺、取引書類、便箋、封筒、サイン、建設工事現場の看板・仮囲い等に使用しているとするものである。

2 「TAISEI CORPORATION」の欧文字からなる商標(以下「引用商標2」という。)は、請求人のパンフレット及びリーフレット、環境・社会報告書、社員の名刺等に使用しているとするものである。

3 「大成」の漢字からなる商標(以下「引用商標3」という。)は、請求人の商号及び商号商標の簡略表示と主張するものである。

4 登録第3224658号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲2に示すとおりの構成からなり、平成4年9月28日に登録出願、第37類「建築一式工事,土木一式工事,機械器具設置工事」を指定役務として、同8年11月29日に特例商標及び重複商標として設定登録されたものであり、同18年11月2日及び同28年10月4日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第108号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 請求の理由

(1)商標法第4条第1項第15号該当性について

ア 請求人の概要

請求人の起源は、明治6年(1873年)10月に大倉喜八郎が大倉組商会を創立し、機械などの直輸入貿易をおこすと共に諸建造物の造営などに当たったことにある。そして、明治20年(1887年)3月、大倉喜八郎は、有限責任日本土木会社を設立して、上記大倉組商会の業務のうち、土木関係に関するものを分離し、これを継承した。これが請求人の前身であり、また、我が国における会社組織によった土木建築業の始めである。明治25年(1893年)11月、有限責任日本土木会社を解散し、その事業を大倉喜八郎単独経営の大倉土木組に継承した。

大倉土木組は、明治44年(1911年)11月、株式会社大倉組に合併され、大正6年(1917年)12月、株式会社大倉組より分離して株式会社大倉土木組となり、ここに請求人が名実ともに誕生した。そして、昭和21年(1946年)1月、その商号を「大成建設株式会社」に変更し、現在に至っている(甲2の7、甲4の5)。

請求人は、創業から140年以上の歴史があり、また、現在の「大成建設株式会社」に商号を変更してからも70年を優に経過している。

ところで、請求人の商号の主要部を構成する「大成」の文字は、創業者の戒名「大成院殿礼本超邁鶴翁大居士」が語源となっている。この「大成」という文字は、「孟子万章下篇」の「衆の長所を集めて一大長所をつくる」の「集大成」の意味を持ち、完全に成し遂げること、多くのものを集め作りあげることの意味に当てられることから、建設業には最もふさわしい商号であるとして採用された(甲2の8)。

請求人は、昭和21年(1946年)1月に、その商号を「大成建設株式会社」に変更し(甲2の7、甲4の2)、昭和47年(1972年)10月に、「TAISEI CORPORATION」を自己の商号の正式な英訳として用いることを決定し、現在に至っている(甲2の4、甲4の2、甲5の1〜甲17等)。

元請負者として各種の土木・建築工事を一式で発注者から直接請負い、工事全体のとりまとめを行う建設業者のことを「General Contractor」、いわゆる「ゼネコン」といい、我が国では一般に売上高が1兆円を超えるゼネコンのことを「スーパーゼネコン」と呼んでいる。そして、請求人は、鹿島建設株式会社(甲39の1)、清水建設株式会社(甲40)、株式会社竹中工務店(甲37の1)、株式会社大林組(甲38の1)と共に「スーパーゼネコン」の1社を構成している(甲26の1、甲26の2、甲26の3等)。

イ 請求人の事業の内容

請求人の事業の主な内容は、1)建築工事、土木工事、機器装置の設置工事、2)地域開発、都市開発、海洋開発、宇宙開発、資源開発、エネルギー供給、3)道路、鉄道、港湾、空港、河川施設、上下水道、庁舎、廃棄物処理施設、駐車場その他の公共施設等の企画、設計、監理、施工、4)ホテル、スポーツ施設、レクリエーション施設、物品販売・飲食店等の商業施設、事務所、医療施設、教育文化施設等の保有、賃貸、維持管理及び運営、5)土壌浄化、河川・湖沼・港湾の水質浄化等の環境保全、廃棄物・建設副産物の収集、運搬、処理、処分、6)不動産の売買、賃貸、仲介、保守、管理、7)住宅の設計、監理、施工及び販売等、幅広い事業領域に及んでいるものである(甲2の5)。請求人について、建築・建設業界に就職を希望する学生向けの刊行物に、「特に市街地再開発事業を強みとし、この分野では20%のシェアを占めています。また、傘下に大成ハウジングを抱え、住宅事業にも手を伸ばしている点が特徴です。」との記載がある(甲28の1、甲28の2)。

ウ 請求人の事業規模

(ア)請求人の過去10年間の売上高は、次のとおりである(甲29の1、甲29の2、甲29の3等)。

平成19年(2007年)度 17,117億円

平成20年(2008年)度 16,411億円

平成21年(2009年)度 14,419億円

平成22年(2010年)度 12,181億円

平成23年(2011年)度 13,235億円

平成24年(2012年)度 14,164億円

平成25年(2013年)度 15,334億円

平成26年(2014年)度 15,732億円

平成27年(2015年)度 15,458億円

平成28年(2016年)度 14,872億円

上記のように、平成19年度から本件商標の登録出願時である平成24年度までの6年間の売上高の平均は、約14,588億円であり、その登録査定時である平成25年度の売上高も15,334億円であったことから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において高い売上高を維持していた。

(イ)請求人の従業員数は、平成21年(2009年)3月で15,260人、平成22年(2010年)3月で14,461人、平成23年(2011年)3月で14,039人、平成24年(2012年)3月で13,776人、平成25年(2013年)3月で13,569人に上っている(甲29の4)。

(ウ)請求人は、日本国内及び海外に多数の支店及び営業所を有している。

国内支店は、東京支店(東京都新宿区)、関西支店(大阪市)、名古屋支店(名古屋市)等、15店に及んでおり、これらの支店は、さらに43ヵ所の営業所等を有している(甲2の6)。請求人の事業活動は、北は北海道、南は沖縄県まで日本全国に及んでいる。

また、請求人は、海外においても、14の営業所を設けて、積極的に事業活動を行っている(甲2の6)。

エ グループ企業としての事業展開等

請求人の主なグループ企業は、次のとおりである(甲4の3、甲5の1、甲6の1等)。

(ア)建設関連事業

・大成ロテック株式会社

・大成ユーレック株式会社

・大成設備株式会社

・大成建設ハウジング株式会社

・成和リニューアルワークス株式会社

・大成タイランド

(イ)不動産・開発事業

・大成有楽不動産株式会社

・大成有楽不動産販売株式会社

・シンボルタワー開発株式会社

(ウ)その他事業

・北軽井沢開発株式会社

・株式会社大成情報システム

・株式会社ホテルプリシード郡山

上記国内の主要グループ企業の7社が、自社商号の語頭部分に「大成」の文字を冠している(甲29の3、甲29の4、甲30〜甲36)。

オ 請求人が使用している商標について

(ア)引用商標1の使用について

請求人の商号ないし商号商標の前半部を構成する「大成」の文字は、請求人自らが請求人を示す表示として恒常的に使用しているだけでなく(甲2の8、甲4の2、甲4の3等)、請求人のグループ会社も、自社の社名に冠して使用しており、かつ、「大成グループ」、「大成スピリット」として恒常的に使用している(甲29の1、甲29の2、甲29の3等)。さらに、請求人が、ウェブページ、テレビ・ラジオ、新聞・雑誌等を通じて積極的に広告宣伝活動を行っている(甲2の1〜甲2の20、甲76〜甲89、甲90の1、甲90の2)。また、新聞・雑誌等を通じて頻繁に報道されている(甲91の1〜甲91の21、甲92、甲93の1〜甲93の42等)。

請求人は、昭和24年(1949年)5月1日、円形の濃緑の地に白で「大成」と描いた文様を社章(旧社章)として採用し、あらゆる機会に使用していた(甲4の3)。このことも、請求人が「大成」として認識される要因の一つとなっている。

請求人は、平成2年(1990年)4月から新しいシンボルマーク(別掲3)とコーポレート・ロゴタイプ(別掲4)を制定し、VI(ビジュアルアイデンティティ)活動を開始した。そして、同年10月から、新しいシンボルマークとコーポレート・ロゴタイプの商標としての使用を全面的に開始し、当該シンボルマークとコーポレート・ロゴタイプを組み合わせた商標を請求人の代表的商標(別掲5:以下「代表的商標」という。)として表示することとした(甲4の2、甲4の3)。

また、平成4年(1992年)4月1日から、役務商標についても商標登録を取得することが可能となったことから、請求人は、商標「TAISEI」について、第37類「建築一式工事,土木一式工事,機械器具設置工事」を指定役務として同年9月28日付けで登録出願を申請し、平成8年(1996年)2月28日出願公告、同年9月28日に商標登録(登録第3224658号:引用商標4)を受けた(甲43の1、甲43の2)。

それ以来、今日まで、引用商標1及び代表的商標は、請求人及び主なグループ会社のウェブページ(甲2の1〜甲2の20、甲30〜甲36)、パンフレット(甲44〜甲55、甲61、甲62等)、リーフレット(甲56〜甲58、甲63、甲68〜甲73)、統合報告書等の各種報告書(甲5〜甲25)、テレビ・新聞・雑誌等による広告(甲2の14、甲77〜甲89、甲90の1等)、社員の名刺(甲42)、取引書類、便箋、封筒、サイン、建設工事現場の看板・仮囲い(甲75の1〜甲75の21)等を通じて幅広く使用され続けている。

なお、当該シンボルマークについては、平成15年(2003年)4月1日に「社章」として採用されている(甲4の3)。

代表的商標は、3本の平行な濃紺色の縦長長方形と、その中央部を横断する緑色の手書き風の下向きの長い円弧及びその下部に配された短い横線と、前記長い円弧のすぐ左上に配されたオレンジ色の小さい楕円とからなる図形と、この図形の下部に併記された「TAISEI」の文字とを組み合わせた構成のものであって、「TAISEI」の文字部分が図形と不可分一体をなしているものではなく、また、図形からは特定の称呼や観念を生じないことから、この「TAISEI」の文字部分が取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとなることは明らかである。

(イ)引用商標2の使用について

請求人は、昭和21年(1946年)1月に、その商号を大成建設株式会社に変更し、昭和47年(1972年)10月に、「TAISEI CORPORATION」を自己の商号の正式な英訳として用いることを決定し、現在に至っている(甲2の4、甲4の2、甲5の1〜甲17等)。

請求人は、引用商標2を、パンフレット及びリーフレット(甲44〜甲53、甲55〜甲58、甲62〜甲65等)、環境・社会報告書(甲18、甲19)、社員の名刺(甲42)等にひときわ目立つ態様で頻繁に使用している。

引用商標2は、請求人のウェブページにおいて、そのコンテンツについての著作権の帰属主体(著作権者)を示す表示としても頻繁に用いられている(甲2の1〜甲2の20、甲59〜甲62)。

(ウ)引用商標3の使用について

請求人の商号は「大成建設株式会社」であり、その商号商標は「大成建設」であるが、請求人は、営業上自己の同一性を示す表示として「大成」と表示している(甲2の9、甲4の2、甲4の3等)。

また、引用商標3は、前述のとおり、請求人自らが請求人を示す表示として、恒常的に使用しているだけでなく、請求人の主なグループ会社も、自社の社名の語頭部分に引用商標3を冠して使用しており、かつ、「大成グループ」、「大成スピリット」として、恒常的に使用しているものである(甲29の1、甲29の2、甲29の3等)。

これにより、引用商標3は、請求人の商号ないし商号商標の簡略表記として、建設業界や取引関係のある需要者の間に広く全国的に知られている。

そして、請求人がウェブページ、テレビ・ラジオ、新聞・雑誌等を通じて積極的に広告宣伝活動を行うことにより(甲2の1〜甲2の20、甲76〜甲89、甲90の1等)、また、新聞・雑誌等を通じて頻繁に報道されることにより(甲91の1〜甲91の21、甲92、甲93の1〜甲93の42等)、一般人の間にも広く全国的に知られるに至っている。特に、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞は極めて広く一般人に読まれている新聞であって、記事の中で請求人を「大成」と簡略表示することは、一般人が請求人のことを「大成」として認識していることを当然の前提としなければ成り立たないことである。このことは、鹿島建設株式会社が「鹿島」、清水建設株式会社が「清水」、株式会社竹中工務店が「竹中」、株式会社大林組が「大林」と、それぞれ簡略に表示されている事実(甲91〜甲96)があることからも容易に理解できるところである。

カ 本件商標と引用商標1ないし引用商標3との類似性の程度について

(ア)本件商標と引用商標1との類似性の程度について

本件商標は、漢字「大成」と片仮名「コーポレーション」の文字から構成されており、その前半部を構成する「大成」の文字は、「完全に成し遂げること」、「立派な人物になること」等を意味する語であり(甲100の2)、「タイセイ」の称呼が生ずる。

一方、その後半部を構成する「コーポレーション」の文字は、英単語「CORPORATION」の片仮名表記であって、「法人」、「株式会社」等を意味する外来語として我が国において広く用いられており(甲100の1、甲101)、自他役務の識別機能を発揮することができない。

したがって、本件商標の前半部を構成する「大成」の文字部分が強く支配的な印象を与える部分であるから、本件商標からは、「タイセイコーポレーション」だけでなく、「大成」の文字部分より、「タイセイ」の称呼が生ずる。

これに対し、引用商標1は、欧文字「TAISEI」からなるものであり、当該文字に相応して、「タイセイ」の称呼が生ずる。

以上のとおり、本件商標と引用商標1は、いずれも「タイセイ」の称呼が生ずるから、両商標の類似性の程度は高いというべきである。

(イ)本件商標と引用商標2との類似性の程度について

本件商標は、漢字「大成」と片仮名「コーポレーション」の文字から構成されており、当該文字に相応して、「タイセイコーポレーション」の称呼を生ずることは明らかである。

また、本件商標の前半部を構成する「大成」の語は、請求人の商号ないし商号商標の簡略表記として、建設業界を始め広く一般にも知られており、しかも、前述のとおり、「TAISEI CORPORATION」の語も請求人の商号の正式な英訳ないし商号商標の一つとして、建設業界を始め広く一般にも知られていることから、本件商標からは「大成建設株式会社」の観念も生ずるというべきである。

これに対し、引用商標2は、欧文字「TAISEI CORPORATION」からなり、その構成文字に相応して、「タイセイコーポレーション」の称呼が生ずる。しかも、引用商標2は、請求人商号である「大成建設株式会社」の正式な英訳として、また、いわゆる商号商標としても、長年にわたって使用されている事実があるから、引用商標2に接した取引者・需要者が、請求人の商号であり、かつ、商号商標でもある「大成建設株式会社」を直ちに観念することは明らかである。請求人が「TAISEI CORPORATION」を正式な商号の英訳と定めたのは、昭和47年(1972年)10月であるから(甲4の2)、本件商標の登録査定時には既に40年を経過していた。

以上のとおり、本件商標と引用商標2は、称呼「タイセイコーポレーション」と、観念「大成建設株式会社」において共通しているから、両商標の類似性の程度は高いというべきである。

(ウ)本件商標と引用商標3との類似性の程度について

本件商標は、漢字「大成」と片仮名「コーポレーション」の文字から構成されており、本件商標の後半部を構成する「コーポレーション」の文字は、「法人」、「株式会社」等の意味であり(甲100の1、甲101)、自他役務の識別機能を発揮することができない語であるから、本件商標にあってはその前半部を構成する「大成」の文字部分が強く支配的な印象を与える部分になることは明らかである。すなわち、本件商標からは、「タイセイコーポレーション」の称呼だけでなく、前述のとおり、「大成建設株式会社」の観念を生じ、また、「大成」の文字部分に相応して、「タイセイ」の称呼も生ずることとなる。

これに対し、引用商標3は、漢字「大成」からなるものであり、当該文字に相応して、「タイセイ」の称呼が生ずることは明らかである。また、前述のとおり、引用商標3からは「完全に成し遂げること」などの観念と共に「大成建設株式会社」の観念も生ずる。

以上のとおり、本件商標と引用商標3は、外観、称呼、観念のすべてにおいて共通しているから、両商標の類似性の程度は高いというべきである。

キ 引用商標1ないし引用商標3の周知著名性の程度について

(ア)引用商標1の周知著名性の程度について

引用商標1は、次のとおり、請求人商号の簡略表示あるいは商号商標の簡略表示として使用されており、また、請求人の代表的商標の要部(独立して自他役務の識別機能を発揮する部分)としても、幅広く、頻繁に使用され続けている。

a 請求人のウェブページにおける使用

請求人は、自社のウェブページにおいて、「サービス・ソリューション」(甲2の17)、「実績紹介」(甲2の15、甲2の16)、「会社情報」(甲2の2〜甲2の10)、「投資家の皆様へ」(甲2の11〜甲2の14)と題する掲載を行っており、その中で引用商標1を使用している(甲2の1)。

b 広告宣伝による使用

請求人グループ全体の広告宣伝費(有価証券報告書:連結ベース)は、平成20年(2008年)度から平成24年(2012年)度までの5年間で、総額約237億5,500万円に達しており、請求人単体だけでも、平成20年(2008年)度から平成24年(2012年)度までの5年間で、総額約36億7,700万円を支出している(甲76)。

(a)テレビ・ラジオによる広告宣伝

請求人による平成20年(2008年)度から平成24年(2012年)度までの5年間のテレビ・ラジオによる広告費は、総額3億8,700万円であり、年平均で7,740万円に達している(甲76)。

例えば、1999年から2000年にかけて、日本TV系関東エリアにて「地図に残る仕事TV−CF『明石大橋篇』」を放送した(甲86)。「地図に残る仕事。」の「瀬戸大橋篇」は、全日本CM協議会主催の「ACC賞」の優秀賞と日本広告主協会主催の「消費者のためになった広告コンクールテレビCM部門」の優秀賞に選ばれている(甲4の2)。

また、2014年8月には、新海誠氏に監督を依頼して制作した、TV−CF「ベトナム・ノイバイ空港」篇を放送した(甲2の14、甲90の1、甲90の2)。

上記に示されたこれらのTV−CFは、アニメーション作品のクオリティの高さはもとよりのこと、世界的に評価の高い話題の人気アニメーション監督が制作したものであることから、幅広い分野と年齢層の視聴者から極めて高い注目と話題性を集めているものである(甲90の1、甲90の2)。

そして、これらのTV−CFには、シンボルマークとコーポレート・ロゴタイプ「TAISEI」とからなる請求人の代表的商標が顕著に表示されているので、引用商標1の認知度を高める上で極めて大きな貢献を果たしている。

(b)新聞・雑誌による広告宣伝

請求人の新聞媒体による広告宣伝費は、平成20年(2008年)度から平成24年(2012年)度までの5年間で、総額3億3,400万円であり、年平均で6,680万円に達している(甲76)。

請求人は、「この星で生まれました。」キャンペーン、「地図に残る仕事。」シリーズを始めとして、請求人の企業イメージを高めるための広告活動を、テレビ・ラジオのみならず、新聞・雑誌等を通じて、積極的、かつ、継続的に実施しており、その中で引用商標1を使用している(甲2の14、甲76)。

(c)ウェブページ・パンフレット・リーフレット等による広告宣伝

請求人及び主なグループ会社は、平成2年(1990年)10月以降、ウェブページ(甲2の1〜甲2の20、甲30〜甲36)、パンフレット(甲44〜甲55、甲61、甲62等)、リーフレット(甲56〜甲58、甲63、甲68〜甲73)に引用商標1を目立つ態様で使用している。

(d)利害関係者向けの報告書による広告宣伝

請求人は、請求人の株主などの利害関係者に向けた統合報告書(甲5の1、甲5の2、甲6の1等)、株主への報告書(甲11〜甲17)、CSR報告書(甲18〜甲25)の表紙及び裏表紙に引用商標1を目立つ態様で使用している(甲5〜甲25)。

(e)社史による広告宣伝

請求人は、創立140周年を記念して、表紙に引用商標1を大きく目立つ態様で表示した「大成建設140年史」と題する社史を制作し、取引先、株主などの利害関係者に配布した(甲4の1〜甲4の5)。

c 工事名称看板、仮囲いパネル、パネルゲートにおける使用

請求人は、1990年10月から新しいシンボルマークの使用を開始し、同シンボルマークと引用商標1を表示した仮囲いパネルを自ら施工する建築・建設工事現場に設置した(甲4の2)。その後も、請求人は、自ら施工する建築・建設工事現場に工事名称看板、仮囲いパネル、パネルゲートを設置し、それらに引用商標1を付して使用している(甲75の1〜甲75の21)。

工事名称看板は、周辺住民だけでなく、付近を往来する通行人に対して工事内容を告知するものであるから、これらの人々は工事期間中継続的に引用商標1を目にする。そして、請求人の事業領域は、土木や建築のみに限られず、その地域的範囲も日本全国に及んでおり、しかもその工事件数も極めて多数に及んでいることから(甲2の15)、工事名称看板等への使用によって、引用商標1は全国的に幅広い人々に認知されている。

d 名刺による使用

請求人の社員は、「TAISEI Visual Identity System/C 展開デザインシステム/Application Design System」と題するマニュアルで定められた名刺を使用することとなっており、その名刺には、引用商標1が表面に顕著に表示されている(甲42)。

請求人の従業員数は、平成21年(2009年)3月で15,260人、平成22年(2010年)3月で14,461人、平成23年(2011年)3月で14,039人、平成24年(2012年)3月で13,776人、平成25年(2013年)3月で13,569人に上っている(甲29の4)。

以上のことから、引用商標1は、本件商標の登録出願時において請求人の役務を表示するものとして、我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されており、本件商標の登録査定時から現在に至るまで、その認識は継続しているものである。

(イ)引用商標2の周知著名性の程度について

前述のとおり、請求人は、昭和21年(1946年)1月に、その商号を大成建設株式会社に変更し、昭和47年(1972年)10月に、引用商標2を自己の商号の正式な英訳として用いることを決定し、現在に至っている(甲4の2)。また、請求人は、引用商標2を、パンフレット及びリーフレット(甲44〜甲53、甲55〜甲58、甲62〜甲65等)、環境・社会報告書(甲18、甲19)、社員の名刺(甲42)等にひときわ目立つ態様で頻繁に使用している。

さらに、請求人は、引用商標2を、請求人のウェブページにおいて、そのコンテンツについての著作権の帰属主体(著作権者)を示す表示として頻繁に用いている(甲2の1〜甲2の20、甲59〜甲62)。

以上のことから、引用商標2は、本件商標の登録出願時において請求人の役務を表示するものとして、我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されており、本件商標の登録査定時から現在に至るまで、その認識は継続している。

(ウ)引用商標3の周知著名性の程度について

請求人の商号は「大成建設株式会社」であり、その商号商標は「大成建設」であるが、請求人は、営業上自己同一性を示す表示として「大成」と表示している(甲2の9、甲4の2、甲4の3等)。また、引用商標3は、前述のとおり、請求人自らが、請求人を示す表示として、恒常的に使用しているだけでなく、請求人の主なグループ会社も、自社の社名の語頭部分に引用商標3を冠して使用しており、かつ、「大成グループ」、「大成スピリット」として恒常的に使用しているものである(甲29の1、甲29の2、甲29の3等)。これにより、引用商標3は、請求人の商号ないし商号商標の簡略表記として、建設業界や取引関係者のある需要者の間に広く全国的に知られているものである。さらに、請求人が、ウェブページ、テレビ・ラジオ、新聞・雑誌等を通じて積極的に広告宣伝活動を行ったことにより(甲2の14、甲76〜甲89、甲90の1等)、また、新聞・雑誌等を通じて頻繁に報道されたことにより(甲91の1〜甲91の2、甲92、甲93の1〜甲93の42等)、引用商標3が請求人の商号ないし商号商標の簡略表記として、一般人の間にも広く全国的に知られるに至っているものである。特に、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞は極めて広く一般人に読まれている新聞であって、記事の中で請求人を「大成」と簡略表示するということは一般人が請求人のことを「大成」として認識していることを当然の前提としなければ成り立たないことである。

以上のことから、引用商標3は、本件商標の登録出願時において請求人の役務を表示するものとして、我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されており、本件商標の登録査定時から現在に至るまで、その認識は継続しているものである。

ク 引用商標1ないし引用商標3の独創性の程度について

(ア)引用商標1の独創性の程度について

引用商標1を構成する「TAISEI」の文字は、「大成」の語に由来しており、建設業界において記述的商標として用いられている例は全く見当たらない。また、建築・建設業界において、請求人のグループ会社及び被請求人を除き、「大成」の文字を社名として用いている例は見当たらない(甲28)。

スーパーゼネコン各社の商号の由来は、いずれも創業者の氏に由来していることから、「大成」の文字は、他のスーパーゼネコンと比べて独創的である。

(イ)引用商標2の独創性の程度について

引用商標2は、建設業界においては独創的な商標であり、建設業界の取引慣行に沿うものである。

(ウ)引用商標3の独創性の程度について

引用商標3は、建設業界においては独創的な商標である。

ケ 本件商標の指定役務と、請求人の業務に係る役務の関連性について

請求人は、本件商標の指定役務に属する「建設工事,建築工事に関する助言,太陽光発電装置の据付・修理又は保守」を行っている(甲2の5、甲2の17、甲2の20)。

また、本件商標の指定役務に属する「家具の修理,錠前の取付け又は修理,畳類の修理」は、請求人の前記事業内容に係る役務と緊密に関連している(甲2の5)。

コ 取引者、需要者の共通性その他取引の実情について

請求人の事業内容は、本件商標の指定役務と同一又はそれと緊密に関連していることから、引用商標1ないし引用商標3と本件商標の取引者・需要者は共通している。

また、請求人は多角的に事業を営んでいる。

サ 小括

引用商標1ないし引用商標3は、いずれも本件商標と高い類似性を有している上、一定程度の独創性と高い周知著名性を有し、また、本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務とが密接に関連し、本件商標の指定役務の取引者・需要者と請求人の業務に係る役務の取引者・需要者が共通し、しかも請求人は積極的に多角経営を行っていることから、本件商標の指定役務の取引者・需要者において普通に払われる注意力を基準とすれば、本件商標をその指定役務に使用したときには、請求人の役務に係るものであると誤信され、混同を生ずるおそれがある。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第19号該当性について

請求人は、スーパーゼネコンあるいは大手ゼネコンとして、我が国において著名な建設会社であり(甲26〜甲28)、また、引用商標1ないし引用商標3も請求人の業務に係る役務を表示する商標として取引者・需要者の間に極めて広く認識されていたことも明らかな事実である。

これに対し、被請求人は、規模の違いこそあれ、「建築設計及び建築工事」等を事業の目的としており、建設業界の事情に精通している企業(甲99)であることから、請求人の引用商標1ないし引用商標3が、少なくとも建設業界において高い顧客吸引力を有する周知著名な商標であることを知悉していたことは明らかであるにもかかわらず、平成24年(2012年)6月に社名を「大成鋼業株式会社」から「株式会社大成コーポレーション」に変更すると共に、本件商標について建設工事等を指定役務とする商標登録出願を行い、商標登録を受け、さらに、事業の目的に「建設工事の請負業」等を追加し、本件商標を建築設計及び建設工事等の役務の提供について使用しているものである(甲99)。

被請求人による本件商標の使用には、引用商標1ないし引用商標3に化体された顧客吸引力、出所表示機能にフリーライドし、また、これを希釈化(ダイリューション)させる目的、すなわち不正の目的がある。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第8号該当性について

商標法上、「略称」を定義する規定はないから、一般的な意義に従うべきであるところ、「略称」とは、「名前を省略して呼ぶこと。また省略して呼ぶ名前。」(甲100)を指すとされている。

これを本件についてみると、請求人商号の「略称」は、「株式会社」の文字を除いた「大成建設」に定まるものではなく、仮に、俗称、通称、愛称に該当するものであっても、「大成建設株式会社」を指し示すものとして一般に受け入れられている呼称については、略称にあてはまるものである。

そこで、本件商標の一部を構成する「大成」、あるいは、本件商標を構成する「大成コーポレーション」が、請求人商号である「大成建設株式会社」の「著名な略称」に当たるか否かを検討する。

請求人は、請求人商号の略称として、引用商標1ないし引用商標3を使用している。

引用商標1は、専ら請求人の商号ないし商号商標を示す意図で、請求人の代表的商標中にシンボルマークと一緒に表示され(甲41、甲42)、請求人及び主なグループ会社のウェブページ(甲2の1〜甲2の20、甲30〜甲36)、パンフレット(甲44〜甲55、甲61、甲62等)、リーフレット(甲56〜甲58、甲63、甲68〜甲73)、統合報告書等の各種報告書(甲5〜甲25)、テレビ・新聞・雑誌等による広告(甲2の14、甲77〜甲89、甲90の1甲90の2)、社員の名刺(甲42)、取引書類、便箋、封筒、サイン、建設工事現場の看板・仮囲い(甲75の1〜甲75の21)等に幅広く使用され続けている。

引用商標2は、請求人商号の正式な英訳として定められたものであり(甲4の2)、パンフレット(甲44〜甲55、甲61、甲62等)、リーフレット(甲56〜甲58、甲63、甲68〜甲73)、統合報告書等の各種報告書(甲5〜甲25)、社員の名刺(甲42)等にひときわ目立つ態様で頻繁に使用している。また、請求人のウェブページにおいて、そのコンテンツについての著作権の帰属主体(著作権者)を示す表示としても頻繁に用いられている(甲2の1〜甲2の20、甲59〜甲62)。

引用商標2の称呼は、本件商標と同じく「タイセイコーポレーション」であり、しかも、本件商標の語頭部は、請求人商号の語頭部と同じく「大成」の語であるから、より一層、本件商標から請求人商号を直感しやすいということができる。

引用商標3は、請求人自らが請求人を示す表示として恒常的に使用しているだけでなく(甲2の8、甲4の2、甲4の3等)、請求人の主なグループ会社も、社名の語頭部分に引用商標3を冠して使用しており、かつ、「大成グループ」、「大成スピリット」として恒常的に使用しているものである(甲29の1、甲29の2、甲29の3等)。そのため、「大成」の文字は、請求人の商号ないし商号商標の簡略表記として、建設業界や取引関係のある需要者の間に広く全国的に知られているだけでなく、テレビや新聞・雑誌等による広告宣伝や報道記事等を通じて、一般人の間にも広く全国的に知られるに至っているものである(甲91の1〜甲91の21、甲92、甲93の1〜甲93の42等)。特に、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞は極めて広く一般人に読まれている新聞であって、記事の中で請求人を「大成」と簡略表示することは一般人が請求人のことを「大成」として認識していることを当然の前提としなければ成り立たないことである。

以上のとおり、本件商標を構成する「大成コーポレーション」の語も、本件商標の語頭部に位置する「大成」の語も、いずれも「大成建設株式会社」を指し示すものとして一般に受け入れられているものであり、本件商標は、請求人商号の著名な略称である「大成」及び「大成コーポレーション」の語を含むものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。

(4)商標法第4条第1項第11号該当性について

本件商標は、漢字「大成」と片仮名「コーポレーション」とを組み合わせた商標であって、その前半部を構成する「大成」の文字は、「完全に成し遂げること」、「立派な人物になること」等を意味する語であり(甲100)、「タイセイ」の称呼が生ずる。

また、その後半部を構成する「コーポレーション」の文字は、英単語「CORPORATION」の片仮名表記であって、「法人」、「株式会社」等を意味する外来語として我が国において広く用いられており(甲100の1、甲101)、自他役務の識別機能を発揮することができないものである。

したがって、本件商標の前半部を構成する「大成」の文字部分が強く支配的な印象を与える部分であるから、本件商標からは、「タイセイコーポレーション」だけでなく、「タイセイ」の称呼が生ずることとなる。

これに対し、引用商標4は、欧文字「TAISEI」からなるものであり、当該文字に相応して、「タイセイ」の称呼が生ずるものである。

また、本件商標の前半部を構成する「大成」の文字は、請求人自らが、請求人を示す表示として、恒常的に使用しているだけでなく(甲2の8、甲4の2、甲4の3等)、請求人の主なグループ会社も、自社の社名の語頭部分に冠して使用しており、かつ、「大成グループ」、「大成スピリット」として恒常的に使用しているものである(甲29の1、甲29の2、甲29の3等)。

そのため、「大成」の文字は、請求人の商号ないし商号商標の簡略表記として、建設業界や取引関係のある需要者の間に広く全国的に知られているだけでなく、テレビや新聞・雑誌等による広告宣伝や報道記事等によって、一般人の間にも広く全国的に知られるに至っているものである(甲91の1〜甲91の21、甲92、甲93の1〜甲93の42等)。

引用商標4を構成する欧文字「TAISEI」も、請求人である大成建設株式会社を意味するものとして、建設業界や取引関係にある需要者の間に広く全国的に知られるに至っているだけでなく、テレビや新聞・雑誌等による広告宣伝や報道記事によって、一般人の間にも広く全国的に知られるに至っているものである(甲77〜甲86、甲87〜甲89、甲90の1等)。

したがって、本件商標及び引用商標4からは、請求人である「大成建設株式会社」の観念も生ずるというべきである。

以上のとおり、本件商標と引用商標4は、称呼及び観念において共通しているから、両商標は類似している。また、本件商標の指定役務「建具工事,家具設置工事,家具の耐震・固定工事,建築物のリフォーム工事,その他の建設工事,太陽光発電装置の据付・修理又は保守」は、引用商標4の指定役務「建築一式工事,土木一式工事,機械器具設置工事」と同一又は類似のものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(5)結論

以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第15号、同第19号、同第11号に該当することから、その登録は、その指定役務の全てについて無効とされるべきである。

2 答弁に対する弁駁

(1)被請求人の主張は、被請求人の主観的・情緒的なものであって、何ら具体的かつ客観的な証拠に基づくものではないから、いずれも失当である。

(2)被請求人は、「『(7−1)本件商標の構成について』において、『大成』は本件商標の要部を構成しない。」旨主張している。

しかしながら、「コーポレーション」は、「株式会社」を意味する外来語であって、単独では、自他役務の識別機能を発揮できない語であるから、過去の最高裁判決の趣旨に従えば、本件商標においては、「大成」の文字部分も商標の要部を構成するというべきである。

また、被請求人は、本件商標で一つの識別力を発揮する商標であり、だからこそ、厳正な審査を経て商標登録されたものである旨主張している。

しかしながら、商標登録無効審判は、審査官あるいは審判官にも過誤なきことを保証し得ないことから、その審査あるいは審判における判断の過誤を是正することを目的として設けられた制度であって、そもそも審査あるいは審判を経て商標登録された事実は、その登録の有効性を国(特許庁)が保証することを何ら意味するものではない。むしろ、その瑕疵の是正を行うことで商標権に対する信頼を維持することが当該無効審判制度の趣旨に他ならない。

さらに、被請求人は、「大成」と「大成コーポレーション」では識別機能を全く異にし、互いに紛れることはないと主張しているが、前述のとおり、「コーポレーション」の文字部分に識別力がないことは明らかである。

ところで、被請求人は、2012年(平成24年)6月に、事業の拡大・多様化に伴い、社名を「大成鋼業株式会社」から現在の「株式会社大成コーポレーション」に変更し、「大成コーポレーション」を商標として出願し登録した旨述べているが、商標を採択するに当たっては、その商標の使用が他人の商標権ないし著名商標に係る権利を侵害することがないよう事前に十分な注意を払うべきは事業者として当然のことである。請求人は、スーパーゼネコンとして我が国において極めて著名であり、建築・建設事業を営む被請求人が、そのような事実を知らないはずはないから、旧社名商標から特定の業種を表す「鋼業」の文字を削除した場合に、請求人の著名な商標と出所混同を生ずるおそれがあることは被請求人において当然予測できたというべきである。

(3)被請求人は、大手ゼネコンと取引が継続していることを例に挙げて、出所混同のおそれがないと主張しているが、被請求人は、大手ゼネコンとの間に継続しているという取引について具体的事実を何ら立証していないものである。また、仮に、そのような取引が存在していたとしても、大手ゼネコンの取引先は、極めて多岐、かつ、多数の企業に及んでいることから、大手ゼネコンの末端の社員が被請求人の存在に意識をとどめていないことも十分に考えられるところである。したがって、仮に、被請求人と大手ゼネコンとの間に取引が継続していたとしても、直ちに出所混同のおそれがないと結論付けることは失当である。

(4)被請求人は、「『大成』、『タイセイ』の文字を含む会社名は、業種がゼネコンではないとしても、もの作りや建築関係その他の役務の提供企業として、幾つも存在する。」旨主張しているが、被請求人が例示した法人の営業規模は、審判請求人ないしそのグループの営業規模に比べれば、圧倒的に小規模であると考えられるから、審判請求人の業務に係る役務との混同を生ずるおそれに関する判断に何ら影響を及ぼすものではない。

(5)被請求人は、「仮に、『TAISEI CORPORATION』単独で自他役務の識別標識たる商標として日本国内で使用していて、本件商標と類似するというのであれば、本件商標を侵害する可能性のある行為をしながら引用商標2は著名になったとでもいうのであろうか。」と主張している。

しかしながら、被請求人が「大成コーポレーション」にその社名を変更したのは、わずか6年前の2012年であるのに対し、請求人が「TAISEI CORPORATION」を自己の商号の正式な英訳と用いることを決定したのは、今から45年前の1972年10月であり、現在まで、継続して使用している。また、引用商標1ないし引用商標3は、いずれも本件商標の出願日よりも相当前から使用が開始されており、本件商標の登録出願時には、既に著名性を獲得していたものであり、請求人には、法律上当然に先使用権(商標法第32条)が認められているから、本件商標に係る商標権の侵害を構成するものでないことは明らかである。

(6)被請求人は、「請求人は、新聞記事等において、請求人の関係記事で、『大成』と簡略表示される場合があることを捉えて、『大成』が新聞で頻繁に使われ著名であると主張している。しかしながら、それは、短い文章でできるだけ多くの情報を伝えようとする新聞等の性格上、団体名などはしばしば漢字数文字で表されることもあるという理由であり、その記事が、例えば、大手ゼネコンに関することとか、大規模建設工事に関することとか、請求人自身に関することとか、話題が絞られた状況の中で用いているのであり、そのような背景のない中で、『大成』と記載しても、請求人を表示する略語として一般的に認識されるものではない。」旨主張している。

しかしながら、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞などの一般紙が、報道記事の中において企業名について簡略表示を用いるのは、新聞社が、記事の対象となっている企業を一般人において容易に特定できると確信しているからである。新聞倫理綱領によれば、新聞による報道は正確でなければならないとされており(甲108)、特に、企業に係る報道は、その企業の社会的評価・声望に重大な影響を及ぼす事柄であることから、読者である一般人が企業を取り違えるおそれのある表現は絶対に許されないところである。したがって、新聞社が、不用意に「大成」と簡略表示したとは全く考えられないところである。それゆえ、一般紙のいずれもが、しばしば「大成」と簡略表示している事実があることは、重く評価すべきである。

第4 被請求人の主張

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。

1 本件商標の構成について

(1)本件商標は、被請求人の社名「株式会社大成コーポレーション」から法人の種類を示す「株式会社」の文字を削除し、その略称である「大成コーポレーション」を商標として採択し登録したものである。略称は、あくまでも「大成コーポレーション」であって「大成」ではない。

本件商標は、一つの組織体を表すための一連一体の商標であって、単に「大成」と把握されるものではない。「大成コーポレーション」として一つの商号商標を構成するものである。

(2)この点に関し、請求人は、「コーポレーション」の文字は、株式会社を意味する外来語であるから識別機能を発揮することができない旨主張し、前半部の「大成」の文字部分を要部と見て、単に「タイセイ」の称呼をも生じ得ると主張する。しかし、本件商標は、あくまでも一体不可分の商号商標「大成コーポレーション」であり、そのように把握して識別標識としての機能を発揮する。単なる「大成」でも、「大成株式会社」でもない。「大成」では「大成コーポレーション」と認識できず、全く違った印象を与える。

(3)本件商標は、漢字と片仮名からなる商標ではあっても、全体がバランス良く書され、全体を一連に称呼しやすい商標である。一連に称呼して、「大成コーポレーション」という一つの組織体としての観念を生じ(「コーポレーション」には「団体」とか「法人組織」の意味もある。)、また、「タイセイコーポレーション」という一連の称呼のみを生ずる。本件商標から、単に「大成」(タイセイ)と称呼・観念されることはない。

請求人は、「コーポレーション」の文字は、「株式会社」を意味する外来語であるから識別機能を発揮しないと主張するが、「コーポレーション」も「大成」と結びつくことによって、十分に識別機能を発揮する文字である。本件商標「大成コーポレーション」で一つの識別力を発揮する商標であり、だからこそ厳正な審査を経て商標登録されたのである。「大成」と「大成コーポレーション」では識別機能を全く異にし、互いに紛れることはない。

2 商標法第4条第1項第15号に該当するとの主張について

(1)請求人は、本件商標は、登録出願時及び登録査定時において、請求人が使用する著名な引用商標1ないし引用商標3について、その指定役務の全てについて出所混同を生ずるおそれがある旨主張する。

しかしながら、請求人の社名やその略称である「大成建設」が大手ゼネコンとして有名であるとしても、「大成(タイセイ)」が「大成建設」を指称するものとして有名とはいえない。「大成建設」のように「建設」の文字を付けて一連一体に表示し把握し称呼してこそ請求人だと認識できる。引用商標1ないし引用商標3では「大成建設」だと認識できない。これらの引用商標1ないし引用商標3が、請求人の業務に係る役務を表示するものとして著名な商標であるとは認識できない。

(2)請求人は、引用商標1ないし引用商標3は、請求人の商号ないし商号商標の簡略表示として著名だと主張するが、著名性を示す証拠は実質的にそれ程示されていない。ウェブページの会社情報や、140周年記念サイト、大成建設140年史、株主への年度報告書、業界誌、パンフレット、リーフレット、会社の規模や大成建設グループ、業務内容、実績等を示す証拠資料は数多く提示されていて、ここには、引用商標1も見受けられる。これらの資料によれば、請求人は、現社名になってから70年以上の歴史を持ち、規模も大きく、地図に残る仕事も行って実績もあり、グループも多く、大手ゼネコンとして有名であることは認められる。

しかし、引用商標1は、主に大成建設のシンボルマークの下にそれと一体に記載されて使用されているのであって、単独で大きく目立つ態様で使用されている訳ではない。シンボルマークと一体なので、請求人だと認識できる。「TAISEI」の文字だけでは請求人だと認識できないであろう。引用商標2も海外のパンフレットやウェブページの会社情報、リーフレット、利害関係者向けのCRS報告書等に「大成建設株式会社」の英文名として主に紹介され使用されているだけで、著名性を示すほどのものではない。

なお、「TAISEI CORPORATION」は、請求人の会社名の英訳(英文名)だとすれば、商標というよりも、むしろ会社の商号、あるいはその略称とでもいうべきもので、「大成建設株式会社」の記載と並行して、あるいは、それに代えて使用していることになり、商標としての使用というよりも、自己の商号の略称として自己のパンフレット等に表示しているものである。仮に、「TAISEI CORPORATION」単独で自他役務の識別標識たる商標として日本国内で使用していて、本件商標と類似するというのであれば、本件商標を侵害する可能性のある行為をしながら引用商標2は著名になったとでもいうのであろうか。

引用商標1ないし引用商標3がパンフレットや会社情報中に見受けられるとしても、その表記が請求人の商標として著名だという証拠にはならない。パンフレットや会社情報等に表示されているが、それは、あくまでも「大成建設」、「大成建設株式会社」と明記してあるパンフレットや会社情報、報告書等の中で「TAISEI」等の文字が記載されているから、「大成」の読みを表しているのだろうと理解されるのである。単独表記ではなく、圧倒的にシンボルマークを絡めた上での「TAISEI」の表記であり、請求人の社名の一部としての「大成」の表記であり、単独で著名性を立証する程のものではない。雑誌や新聞等の媒体での告知や広告、メディア露出の種類、時期(期間)、回数、反応などの著名性を立証する証拠は、ほとんどない。

「大成建設」の表示が大手ゼネコンとして著名だというならまだ分かる。しかし、引用商標1ないし引用商標3が、請求人を表示する商標として著名だとはいえない。ましてや、本件商標を「大成建設株式会社」と勘違いし、しかも引用商標1ないし引用商標3と誤認混同を起こすような取引者・需要者はいないのではないか。

被請求人は、請求人のライバル会社である大手ゼネコン「鹿島建設株式会社」や「清水建設株式会社」とも取引関係にあるが、被請求人を、請求人のグループ会社であるとか、関連会社であるとか、誤認するようなことはない。だからこそ、取引が継続しているのであって、このことは、被請求人が、請求人と誤認・混同されていないことの一つの証左である。

(3)「大成」の言葉は、請求人による造語ではない。「1.立派に成し遂げること。2.多くのものを集めて、一つの組織にまとめ上げること。集大成。」等を意味する辞書にも出ている既成語であって、請求人創業前より存在する一般的な言葉である。請求人が創造した造語でないことはもちろん、尊重すべき独創性の高い用語ということでもない。誰でも自由に選択できる範囲の文字である。

「大成」、「タイセイ」の文字を含む会社名は、業種がゼネコンではないとしても、もの作りや建築関係その他の役務の提供企業として、幾つも存在する。例えば、大成株式会社(1959年設立。東京、大阪、名古屋、浜松、福岡等に本支店あり。ビルメンテナンス業、警備業、駐車場の管理、建築・土木工事全般に関する請負等)、株式会社大成(1955年設立。電設資材綜合商社。静岡、山梨を中心に多数の営業拠点有り。他に電材事業、金属加工、外壁工事、スマートハウス、住宅関連設備の販売・施工・保守、OA器機の販売設置等)、タイセイ株式会社(1948年(昭和23年)設立。大阪中心、空調・冷熱機器及び関連部材取り扱い)、タイセイ株式会社(1982年設立。水処理事業)、株式会社タイセイ(1973年設立。西新宿:建築資材の製造販売)、TAISEI株式会社(1919年創業、1945年(昭和20年)設立。大阪、東京、名古屋、奈良:パッケージ、紙製品の製造)、株式会社大成リビング(1993年(平成5年)株式会礼神谷燃料のリフォーム部として設立。埼玉県越谷市:建築工事、内装仕上げ工事)、大成産業株式会社(1975年(昭和50年)設立。東京都足立区。フローリング工事、内装仕上げ加工工事等)。大成産業株式会社(1964年(昭和39年)設立。長野県長野市。マンション分譲事業、市街地再開発事業、宅地開発分譲事業等)。株式会社大成産業(平成16年創業。平成20年設立。長崎県佐世保市。一般土木工事、一般建築工事、塗装工事、太陽光発電工事、貨物運送等)、大成産業株式会社(東京都杉並区。建築、グラウンド・公園等の公共の場の柵の施工)など、請求人以外にも数多く存在する。この中には昭和20年代、30年代等古くから存在する会社もあるが、これらは、請求人の関係会社ではない。つまり、「大成」の文字を使った会社全てが、請求人あるいはその関連会社ということではない。「大成」の文字が昔から社名によく使われるのは、「大成」の持つ意味合いや、語感語調が人々に好印象を与えるからである。

(4)請求人は、引用商標1や引用商標3について、証拠資料を提示しているが、前述のとおり、これらが請求人を指称するものとして著名であるとはいえない以上、また、本件商標が分離できない一体不可分の商標である以上、本件商標は、これら引用商標1や引用商標3と出所の混同を生ずるとはいえない。請求人は、「大成建設」として有名なのであって、「建設」の文字を削った「TAISEI」や「大成」として有名なわけではない。

また、請求人は、引用商標2を請求人の商号の英訳として使っていると主張するが、この英訳そのものが単独で使用されて請求人を指称するものとして広く認識され、著名になっているとはいえない。請求人は、名の通った大手ゼネコンであるが、英文字で「TAISEI CORPORATION」と表示されても、請求人とは認識できないであろう。それは請求人自身が自分の名前を海外や利害関係者向けのCRS報告書等で社名と共に英文名として使っているだけのことであって、そのような英文名が著名か否かとは別である。引用商標2が「大成建設株式会社」を観念する英文表記と認識されることはまれであり、それが請求人の英文表記として著名であるということはできない。

請求人は、引用商標2を海外パンフレットや会社情報、リーフレット、CRS報告書等に使用していて請求人の商標として著名である旨主張するが、例えば、引用商標2を単独で表示する雑誌や新聞での告知や広告、メディア露出の種類、時期(期間)、回数、反応などの著名性を立証する証拠は、ほとんど提示されていない。

(5)「TAISEI CORPORATION」を商標として使いたいのであれば、日本には商標登録制度が存在するのであるから、商標登録出願により商標登録を受ければよいが、請求人は、それを懈怠しておきながら、請求人自身が全く使用した形跡のない被請求人の本件商標に対して、請求人の英訳で使用しているとする未登録である引用商標2を引用して、それを著名であるとし、本件商標は、これと出所の混同を生ずるから商標法第4条第1項第15号に該当するとして、その登録は無効にされるべきだと主張するが、そのような主張は認められない。

「大成建設」の英訳が「TAISEI CORPORATION」だというのは知られていないし、提示された証拠を見ても、引用商標2が「大成建設」を観念させる著名な商標であるという認識は、持つことはできない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第19号に該当するとの主張について

本件商標は、「大成建設」や引用商標1、引用商標2などと類似するものではなく、ましてや不正な目的で使用し、登録したものでもないから、請求人の主張は失当である。

本件商標は、「大成コーポレーション」と一連に横書きした態様からなり、常に「大成コーポレーション」(タイセイコーポレーション)と称呼、観念される一体不可分の商標である。本件商標は、被請求人の社名から、その略称である「大成コーポレーション」を商標として採択したものである。略称は、あくまでも「大成コーポレーション」であって「大成」ではない。

そして、被請求人の元々の社名は1967年3月設立の「大成鋼業株式会社」であるところ、事業の拡大・多様化に伴い、また、それに対応するため、2012年6月に旧「大成鋼業株式会社」の社名から特定の業種を表す「鋼業」の文字を削って、現在の社名「株式会社大成コーポレーション」としたものであり、その社名の要部である略称を本件商標として採用し、登録したものである。

したがって、そこに不正な目的はない。1967年(昭和42年)の創業当時から用いていた「大成」の文字を残し、特定の業種を表す「鋼業」の文字を削除したにすぎない。創業の意志を継いで、昭和42年の創業当時から用いていた「大成」の文字を社名に残したものである(約50年前の創業当時、「大成鋼業株式会社」という社名にして「大成」の文字を用いたのは、創業者2名のうち1名の出身が大磯、もう1名の出身が成田ということで、その頭文字をとって「大成」にしたものであり、大きいことを成すという意味にも通じ採用したものである。)。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第8号に該当するとの主張について

本件商標の構成中の「大成」の文字は、「1.立派に成し遂げること。2.集大成。」等を意味する既成語であり、従来より存在する一般的な語である。尊重すべき独創性の高い用語でもない。「大成」が、請求人の造語であって、「大成建設株式会社」を表す著名なものであるという事実はないのであるから、この「大成」の文字に請求人の人格権は存在しない。

したがって、本件商標が「大成」の文字を含んでいたとしても、請求人の人格権を害することにはならず、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。

なお、請求人は、新聞記事等において、請求人の関係記事で、「大成」と簡略表示される場合があることを捉えて、「大成」が新聞で頻繁に使われ著名であると主張している。しかしながら、それは、短い文章でできるだけ多くの情報を伝えようとする新聞等の性格上、団体名などはしばしば漢字数文字で表されることもあるという理由であり、その記事が、例えば、大手ゼネコンに関することとか、大規模建設工事に関することとか、請求人自身に関することとか、話題が絞られた状況の中で用いているのであり、そのような背景のない中で、「大成」と記載しても、請求人を表示する略語として一般的に認識されるものではない。

5 商標法第4条第1項第11号に該当するとの主張について

前述のように、本件商標は、「大成」でもなく、「コーポレーション」でもなく、これらが一体に結合したものであり、常に一体に把握され、「タイセイコーポレーション」と一連に称呼されるので、引用商標4とは、外観、称呼及び観念において紛れることはない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

6 結論

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同第19号、同第8号、若しくは同第11号のいずれにも該当しない。

第5 当審の判断

1 本件審判の請求の利益について

請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係について争いがないから、本案について判断する。

2 引用商標の周知著名性について

(1)請求人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。

ア 請求人について

(ア)請求人の概要

請求人は、明治6年(1873年)10月に創業者が大倉組商会を創立し、諸建造物の造営などに当たったことを起源として、その後、組織・商号の変更を行い、昭和21年(1946年)1月に、商号を「大成建設株式会社」に変更し(甲2の7、甲4の5)、昭和47年(1972年)10月に、「TAISEI CORPORATION」を自己の商号の英文訳として用いている(甲2の4、甲4の2、甲5、甲20〜甲22、甲24、甲25、甲29の1)。

請求人は、創業から140年以上の歴史があり、商号を現在の「大成建設株式会社」に変更してからも、70年を経過している(甲4の1〜甲4の6)。

また、我が国で一般に売上高が1兆円を超えるゼネコンであるスーパーゼネコンの1社とされている(甲26〜甲28)。

(イ)請求人の事業内容

請求人の事業内容は、建築工事、土木工事、機器装置の設置工事、地域開発、都市開発、海洋開発、宇宙開発、資源開発、エネルギー供給等幅広い事業領域に及んでいる(甲2の5)。

(ウ)請求人の事業規模

請求人の売上高は、平成19年度から本件商標の登録出願時である平成24年度までの平均で、約14,588億円であり、その登録査定時である平成25年度の売上高は、約15,334億円である(甲3、甲29)。

(エ)請求人の従業員数及び支店数等

請求人の従業員数は、平成21年(2009年)3月で15,260人、平成22年(2010年)3月で14,461人、平成23年(2011年)3月で14,039人、平成24年(2012年)3月で13,776人、平成25年(2013年)3月で13,569人(甲29の4)であり、日本国内及び海外に多数の支店及び営業所を有する(甲2の6)。

(オ)請求人の事業活動

請求人の事業は、「集合住宅」、「宅地・土地造成、公園・街路」、「医療・福祉施設」、「廃棄物処分場・リサイクル施設」、「上下水道・雨水貯留・放水路」等広範な分野と地域に及ぶ(甲2の15)。

(カ)請求人のグループ企業

請求人は、建設関連事業、不動産・開発事業等の分野においてグループ企業を有し、そのうち、少なくとも7社は、社名の冒頭部分に「大成」の文字を冠している(甲5の1、甲29の3等)。

イ 請求人による引用商標の使用について

(ア)引用商標1及び引用商標4

引用商標1及び引用商標4を構成する「TAISEI」の文字は、請求人及び主なグループ会社のウェブページ(甲2、甲30〜甲36)、パンフレット(甲44〜甲55、甲61、甲62、甲64〜甲67)、リーフレット(甲56〜甲58、甲63、甲68〜甲73)、統合報告書等の各種報告書(甲5〜甲25)、テレビ・新聞・雑誌等による広告(甲2の14、甲77〜甲89、甲90)、社員の名刺(甲42)、取引書類、便箋、封筒、サイン、建設工事現場の看板・仮囲い(甲75)に、記載ないし表示されている。

しかし、これらのほとんどは、引用商標1及び引用商標4が単独ではなく、平成2年(1990年)4月から採用されたシンボルマークや、「大成建設株式会社」ないし「大成建設」の文字と共に用いられている。

また、当該ウェブページの閲覧件数や、パンフレット、リーフレット、各種報告書、社員の名刺、取引書類、便箋、封筒等の作成部数、配布部数、配布先等は、客観性をもって具体的に示されていないし、広告宣伝や建設工事現場の看板・仮囲いの期間、地域及び規模等も、客観性をもって具体的に示されていない。

(イ)引用商標2

引用商標2は、パンフレット及びリーフレット、環境・社会報告書(甲18、甲19)、社員の名刺に記載ないし表示されている。また、請求人のウェブページにおいて、そのコンテンツについての著作権の帰属主体(著作権者)を示す表示として記載されている(甲2、甲59〜甲62)。

しかし、当該パンフレット、リーフレット、環境・社会報告書、社員の名刺の作成部数、配布部数、配布先等や当該ウェブページの閲覧件数は、客観性をもって具体的に示されていない。

(ウ)引用商標3

引用商標3を構成する「大成」の文字は、単独ではなく、他の文字に冠する形で、「大成建設株式会社」、「大成建設グループ」、「大成スピリット」等として、パンフレット(甲44〜甲55、甲61、甲62、甲64〜甲67)、リーフレット(甲56〜甲58、甲63、甲68〜甲73)等に記載ないし表示されている。

しかし、当該パンフレット、リーフレット、環境・社会報告書、社員の名刺の作成部数、配布部数、配布先等は、客観性をもって具体的に示されていない。

また、引用商標3を構成する「大成」の文字は、新聞・雑誌の見出し等において、請求人を示す文字として記載されている(甲96)。

さらに、「大成」の文字は、請求人のグループ企業の名称中に、「大成ロテック株式会社」、「大成ユーレック株式会社」等のように用いられている(甲4の3、甲5の1、甲6の1等)。

(2)判断

ア 引用商標の周知著名性

引用商標1及び引用商標4を構成する「TAISEI」の文字は、請求人及び請求人のグループ会社のウェブページ、パンフレット、リーフレット、統合報告書等の各種報告書、テレビ・新聞・雑誌等による広告、社員の名刺、取引書類、便箋、封筒、サイン、建設工事現場の看板・仮囲いにおいて、記載又は表示されているが、そのほとんどが、平成2年4月から採用している旨主張する代表的商標として使用されているものであり、これらは、シンボルマークの図形と常に一体的に使用されている。

そうすると、これらの使用例は、外観において、引用商標1及び引用商標4と同一の商標が使用されているものとはいえないものであることに加え、上記のパンフレット、リーフレット、各種報告書の作成部数、配布部数、配布先等、あるいは、建設工事現場の看板・仮囲いや、広告宣伝の期間、使用地域及び規模等も具体的に示されていない。

また、「CORPORATE REPORT(甲5〜甲10)」等において、引用商標1の単独の記載又は表示が見受けられるとしても、これらのパンフレット、リーフレット、各種報告書等の作成部数、配布部数、配布先等を具体的に示す資料は提出されておらず、引用商標1の周知著名性の度合いを客観的に判断することができない。

その他に、引用商標1及び引用商標4の使用状況や周知著名性を客観的に把握することができる証拠は見いだせない。

してみれば、引用商標1及び引用商標4は、請求人又は請求人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。

イ 引用商標2の周知著名性

引用商標2は、パンフレット及びリーフレット、環境・社会報告書、社員の名刺や請求人のウェブページにおいて、記載又は表示されているが、当該パンフレット、リーフレット、環境・社会報告書、社員の名刺の作成部数、配布部数、配布先等や当該ウェブページの閲覧件数を示す具体的な資料は提出されておらず、引用商標2の周知著名性の度合いを客観的に判断することができない。

また、その他に、引用商標2の使用状況や周知著名性を客観的に把握することができる証拠も見いだせない。

してみれば、引用商標2は、請求人又は請求人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものということはできない。

ウ 引用商標3の周知著名性

引用商標3を構成する「大成」の文字は、他の文字に冠する形で、「大成建設株式会社」、「大成建設」、「大成建設グループ」、「大成スピリット」等として、パンフレット、リーフレット等に記載又は表示され、また、請求人のグループ会社の名称中にも用いられている例があるものの、引用商標3が単独で使用されたことが認められるのは、新聞記事等を除けば、数件にとどまっている(甲20、甲23、甲54)。

また、引用商標3が記載されたとするパンフレット、リーフレット、環境・社会報告書、社員の名刺の作成部数、配布部数、配布先等を示す具体的な資料は提出されておらず、引用商標3の周知著名性の度合いを客観的に判断することができない。

その他に、引用商標3の使用状況や周知著名性を客観的に把握することができる証拠も見いだせない。

してみれば、引用商標3は、請求人又は請求人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものということはできない。

請求人は、新聞記事等において、請求人を表す文字として「大成」と表示されて報道されているから、当該文字は、請求人又は請求人の業務に係る役務を表示するものとして、一般に広く知られている旨主張している。

確かに、新聞や雑誌の見出しにおいて請求人の名称を略して「大成」の文字が記載されている例があるものの、これらのほとんどは、記事本文中に、請求人を特定する「大成建設」の文字と共に記載されていることからすれば、必ずしも「大成」の文字が単独で請求人又は請求人の業務に係る役務を表示しているとはいえないものであり、これらのみによって、引用商標3が、単独で請求人又は請求人の業務に係る役務を表示するものとして本件商標の登録出願時及び登録査定時に需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。

したがって、かかる請求人の主張は採用できない。

(3)小括

請求人は、上記2(1)アのとおり、その商号を「大成建設株式会社」とし、大手ゼネコンとして、建築工事、土木工事を中心に幅広い業務を、海外を含めた各地で行っており、継続して高い売上高を維持し、グループ企業の事業展開も多岐に及んでいるものである。

そして、その商号は、しばしば「大成建設」と略称されていることもうかがわれるものである。

しかしながら、引用商標については、上記(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人又は請求人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。

3 商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)引用商標1ないし引用商標3の周知著名性について

引用商標1ないし引用商標3については、上記2のとおり、いずれも、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(請求人)の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。

(2)本件商標と引用商標1ないし引用商標3との類似性の程度について

ア 本件商標と引用商標1との対比

本件商標は、「大成コーポレーション」の文字からなるところ、その構成文字は、同書、同大、等間隔で外観上まとまりよく一体に表されているものであり、その構成文字全体から生ずる「タイセイコーポレーション」の称呼も、格別冗長ではなく、無理なく一連に称呼し得るものである。

そして、「大成コーポレーション」の文字は、一般的な辞書等には載録がなく、また、特定の意味合いを有する語として知られているとも認められないものであって、たとえ、その構成中の「コーポレーション」の文字が、「会社。法人。」を想起させる場合があるとしても、かかる構成において、これに接する取引者、需要者が、当該文字を「株式会社」の略称と認識するとはいい難く、その構成全体で一体不可分の造語として認識されるものとみるのが自然である。

そうすると、本件商標は、「タイセイコーポレーション」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。

一方、引用商標1は、「TAISEI」の文字からなるところ、当該文字は、一般的な英和辞書などに載録されていない語であるから、その構成文字に相応してローマ字風の発音をもって「タイセイ」の称呼を生ずるものである。

そして、「タイセイ」と表音する語は、「大成」、「体勢」、「体制」等、複数存在するものの、特定の意味のみを認識すべき特段の事情は見いだせないから、引用商標1は、特定の意味を想起させることのない一種の造語として理解されるとみるのが相当である。

そうすると、引用商標1は、特定の観念を生じないものである。

そこで、本件商標と引用商標1を比較すると、両商標は、観念において比較することができないものであって、称呼における「コーポレーション」の音の有無や、外観における構成文字数や文字種の相違等を総合的に考察すれば、本件商標と引用商標1とは、その類似性の程度が高いとはいえないものである。

イ 本件商標と引用商標2との対比

本件商標は、上記アのとおり、「大成コーポレーション」の文字からなり、「タイセイコーポレーション」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。

一方、引用商標2は、「TAISEI CORPORATION」の欧文字からなるところ、その構成文字に相応して「タイセイコーポレーション」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。

してみれば、本件商標と引用商標2は、「タイセイコーポレーション」の称呼を共通にすることから、一定の類似性を有するものである。

ウ 本件商標と引用商標3との対比

本件商標は、上記アのとおり、「大成コーポレーション」の文字からなり、「タイセイコーポレーション」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。

一方、引用商標3は、「大成」の漢字からなるところ、「大成」の語は、「(1)完全に成し遂げること。(2)多くのものを集め組織立て作り上げること。(3)立派な人物になること。」(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)の意味を有する語である。

そうすると、引用商標3は、その構成文字に相応して「タイセイ」の称呼を生じ、「(1)完全に成し遂げること。(2)多くのものを集め組織立て作り上げること。(3)立派な人物になること。」の観念を生ずるものである。

してみれば、本件商標と引用商標3は、観念について紛れるおそれはなく、称呼における「コーポレーション」の音の有無や、外観における構成文字数や文字種の相違等を総合的に考察すれば、類似性の程度が高いとはいえないものである。

(3)引用商標1ないし引用商標3の独創性の程度について

ア 引用商標1の独創性

請求人は、引用商標1を構成する「TAISEI」の文字は、創業者の戒名の一部を構成する「大成」の文字をローマ字表記したものであり、独創性は高い旨主張しているが、当該文字のローマ字風読みは、「タイセイ」であるところ、例えば、広辞苑第六版において、「タイセイ」と表音する語として,「大成」、「体勢」、「体制」等の語が載録されており、我が国の一般的な辞書に載録された既成語に通ずるものであることから、引用商標1の独創性の程度が高いとはいえない。

イ 引用商標2の独創性

引用商標2は、「TAISEI CORPORATION」の欧文字からなるところ、「大成」、「体勢」、「体制」等の既成語に通ずる「タイセイ」をローマ字表記した「TAISEI」と、既存の英単語である「CORPORATION」をそのまま結合したものであり、その独創性の程度が高いとはいえない。

ウ 引用商標3の独創性

請求人は、引用商標3を構成する「大成」の文字は、創業者の戒名の一部を構成するものである旨主張しているが、「大成」の文字は、前述のとおり、我が国の一般的な辞書に載録された既成語であることから、その独創性の程度が高いとはいえない。

(4)役務の関連性、需要者の共通性について

本件商標の指定役務中「建具工事,家具設置工事,家具の耐震・固定工事,建築物のリフォーム工事,その他の建設工事」と、請求人の主な業務である「建設工事」、「土木工事」は同一又は類似の役務であり、その共通性は高く、取引者、需要者の範囲も一致するものである。

(5)出所の混同のおそれについて

上記(1)ないし(4)を総合的にみれば、本件商標に係る指定役務と請求人の業務に係る役務の関連性が高く、その需要者の範囲を共通にする場合があって、本件商標と引用商標2とが一定の類似性を有するとしても、引用商標1ないし引用商標3は、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができず、その独創性も、さほど高いとはいえないものであって、かつ、本件商標と引用商標1及び引用商標3とは、類似性の程度が高いとはいえないものである。

してみれば、商標権者が本件商標をその指定役務について使用しても、取引者、需要者は、引用商標1ないし引用商標3を連想又は想起することはなく、その役務が他人(請求人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。

(6)小括

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第19号該当性について

本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。

そうすると、上記2のとおり、引用商標1ないし引用商標3は、いずれも、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に、広く認識されていたとは認められないものであるから、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。

また、不正の目的についても、請求人は、引用商標1ないし引用商標3が周知著名であることを前提に、本件商標がこれらの引用商標の有する名声、信用、評判へのフリーライドを目的とするものである旨主張しているが、上記2のとおり、引用商標1ないし引用商標3の周知著名性を認めることはできず、請求人が提出した甲各号証を総合的に考慮しても、商標権者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的等を有してしていたというべき具体的な事実は、見いだすことはできない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

5 商標法第4条第1項第8号該当性について

請求人は、本件商標を構成する「大成コーポレーション」の文字も、本件商標の語頭部に位置する「大成」の文字も、いずれも「大成建設株式会社」を指し示すものとして一般に受け入れられているものであり、本件商標は、請求人商号の著名な略称である「大成」及び「大成コーポレーション」を含むものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当する旨主張している。

そこで、「大成」及び「大成コーポレーション」の文字が請求人の著名な略称といえるかについてみるに、「大成」の文字は、上記2のとおり、単独で使用されたことが認められるのは、数件にとどまっており、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人又は請求人の業務に係る役務表示として、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないものであり、請求人の略称として広く認識されていたものということはできない。

また、「大成コーポレーション」の文字は、請求人による使用実績を示す証拠はなく、請求人の社名を指し示す略称として一般に受け入れられていたとはいい難いものであり、かつ、その英文表記である「TAISEI CORPORATION」の文字も、上記2のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人又は請求人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。

してみれば、「大成」が請求人の商号の一部であり、また、「TAISEI CORPORATION」が請求人の商号の英語表記であるとしても、「大成」及び「大成コーポレーション」の文字は、請求人の著名な略称ということはできない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。

6 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標

本件商標は、「大成コーポレーション」の文字からなるところ、その構成文字は、同書、同大、等間隔で外観上まとまりよく一体に表されているものであり、その構成文字全体から生ずる「タイセイコーポレーション」の称呼も、格別冗長ではなく、無理なく一連に称呼し得るものである。

そして、「大成コーポレーション」の文字は、一般的な辞書等には載録がなく、また、特定の意味合いを有する語として知られているとも認められないものであって、たとえ、その構成中の「コーポレーション」の文字が、「会社。法人。」を想起させる場合があるとしても、かかる構成において、これに接する取引者、需要者が、当該文字を「株式会社」の略称と認識するとはいい難く、その構成全体で一体不可分の造語として認識されるものとみるのが自然である。

そうすると、本件商標は、「タイセイコーポレーション」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。

(2)引用商標4

引用商標4は、別掲2のとおり、「TAISEI」の文字からなるところ、当該文字は、一般的な英和辞書などに載録されていない語であり、その構成文字に相応してローマ字風の発音をもって「タイセイ」の称呼を生ずるものである。

そして、「タイセイ」と表音する語は、「大成」、「体勢」、「体制」等、複数存在するものの、特定の意味のみを認識すべき特段の事情は見いだせないから、「TAISEI」の文字は、特定の意味を想起させることのない一種の造語として理解されるとみるのが相当である。

してみれば、引用商標4は、特定の観念を生じないものである。

(3)本件商標と引用商標4との類否について

本件商標は、「大成コーポレーション」の文字からなるのに対し、引用商標は、「TAISEI」の欧文字からなるものであるから、両商標は、構成文字及び構成態様が異なり、外観において、判然と区別できるものである。

また、称呼においては、本件商標から生ずる「タイセイコーポレーション」の称呼と、引用商標から生ずる「タイセイ」の称呼とは、後半部における「コーポレーション」の音の有無に明確な差異を有するものであるから、明瞭に聴別し得るものである。

さらに、本件商標と引用商標4は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念においては、比較することはできない。

そうすると、本件商標と引用商標4とは、観念において比較できないとしても、外観において顕著な差異を有し、称呼において明らかに相違するものであるから、これらを総合して考察すれば、本件商標をその指定役務に使用しても、両商標は、役務の出所について誤認混同を生ずるおそれのない、互いに非類似の商標というのが相当である。

(4)商標法第4条第1項第11号該当性に関する請求人の主張について

請求人は、「大成」及び「TAISEI」の文字は、請求人の商号ないし商号商標の簡略表記として、あるいは、請求人である大成建設株式会社を意味するものとして、建設業界や取引関係のある需要者の間に広く全国的に知られているだけでなく、テレビや新聞・雑誌等による広告宣伝や報道記事等によって、一般人の間にも広く全国的に知られるに至っているものであり、本件商標及び引用商標4からは、請求人である「大成建設株式会社」の観念も生ずるというべきである旨主張している。

しかしながら、「大成」及び「TAISEI」の文字は、上記2のとおり、請求人又は請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものであることから、本件商標及び引用商標4からは、請求人である「大成建設株式会社」の観念が生ずるということはできず、かかる請求人の主張は採用することができない。

また、請求人は、本件商標の後半部分の「コーポレーション」の文字は、「法人」、「株式会社」の意味であり、自他役務の識別機能を発揮することができない語であるから、本件商標においては前半部分の「大成」の文字部分が強く支配的な印象を与えることは明らかである旨主張している。

しかしながら、「コーポレーション」に対応する英語「Corporation」は、「公社」、「地方自治体」等、「株式会社」以外の意味をも有するものであり(「コンサイス英和辞典第13版」株式会社三省堂)、これを片仮名表記した「コーポレーション」の文字についても、必ずしも「株式会社」の意味のみに特定されるとはいえず、商号の一部に通常使用される「株式会社」の文字と同列に、直ちに自他役務の識別機能を発揮することができないとはいえない。

そして、我が国において、商号を英語表記する際に、会社の種類を表す「株式会社」に相応する語として、「Corporation」の語を用いる場合があり、「Corporation」の文字を、会社の種類である「株式会社」又は「有限会社」を英語表記したものとして省略する場合があるとしても、本件商標は、漢字と片仮名を一連で表したものであるから、英語表記とはいえないものである。

そうすると、かかる構成においては、「コーポレーション」の文字部分を会社の種類を表すにすぎないとして捨象し、殊更「大成」の文字部分のみを取り出して考察しなければならない理由は見いだせないことから、かかる請求人の主張も採用することができない。

(5)小括

したがって、本件商標と引用商標4とは非類似の商標であるから、役務の類否について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

7 まとめ

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同第19号、同第8号及び同第11号に該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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