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Trademark Appeal Case

立体商標の機能的形状の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2017−1840(T2017−1840/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第5類「衛生マスク」を指定商品として、平成27年8月25日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要旨

原査定は、「本願商標は、その指定商品である『衛生マスク』の装着時における形状を立体的に表示したものと容易に認識させる図形よりなるものであって、格別特異な態様のものとは認められないものであるから、これをその指定商品に使用しても、その商品の品質、形状を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における審尋

審判長は、請求人に対し、平成30年7月31日付けで、別掲2及び別掲3に係る証拠を示した上で、本願商標は、その指定商品との関係において、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、請求人の提出した証拠によっては、本願商標は、同条第2項に該当するとは認められない旨の見解を示す審尋を通知し、相当の期間を指定して回答を求めた。

4 審尋に対する請求人の回答書及び上申書

前記3の審尋に対し、請求人は、回答書及び上申書において要旨、以下の主張をしている。

(1)商品の販売高について

本願商標を使用した商品は、日本全国のドラッグストア、コンビニエンスストア及びスーパーマーケット等において販売されており、2012年以降現在に至るまで、非常に多くの販売実績を誇っている。

(2)本願商標の需要者における認知度について

商品「衛生マスク」は、その商品の性質上、採択されるデザインが限定的とならざるを得ず、商品の出所識別にあたり、デザインの差異が看者に与える影響も大きい。本願商標は「鳥のくちばし」又は「烏天狗」のようであると称されるマスク本体部の形状と不織布にブーメランのような円弧状の形状の切り込みが入れられた特殊な外観態様を有する耳掛け部に特徴があり、このような特徴を持った「立体型マスク」は他に存在しないことを考慮すれば、本願商標は、自他商品識別標識として十分に機能し得るものである。

また、本願商標を使用した商品は、2003年の販売開始以降、15年近くに及ぶ長期的かつ継続的な使用の結果、その外観的特徴は、同種商品の形状から区別し得る程度に周知となり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っている。

(3)アンケートについて

2018年11月に行ったアンケート結果によれば、多くの需要者が、立体的形状のマスク中、本願商標を表す立体的形状が請求人によるものであるとして非常に高い認知度を獲得している。

5 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号該当性について

本願商標は、着用者の鼻及び口を覆う部分と耳にかける部分を中央部で接着させ、当該接着部の上部に、1センチメートルほどの帯状のものを配し、更に、当該帯状ものに横長長方形のものを重ね、鼻及び口を覆う部分と耳にかける部分の間に縦線を有する、別掲1のとおりの構成の立体的形状からなるものである。

ところで、本願の指定商品「衛生マスク」は、着用者の鼻及び口を覆う部分と耳にかける部分から構成されるものであるところ、その形状によって、「平型マスク」、「プリーツ型マスク」及び「立体型マスク」に大別され、そのうち、「立体型マスク」は、一般に、顔の形に合わせた形状であって、着用者の鼻及び口を覆う前部がややとがった、マスクと口元の間に空間を有するような立体的形状からなるものである(別掲2、別掲3)。

そこで、本願商標と一般的な「立体型マスク」とを比較すると、いずれも、着用者の鼻及び口を覆う部分と耳にかける部分から構成されているところ、人間の顔の形に合わせた形状であることや鼻及び口を覆う前部がややとがっていて、マスクと口元の間に空間を有するという点において共通するものであり、その共通する形状は、花粉、埃などを吸入しないようにすることや咳やくしゃみの飛沫が飛散することを防ぐために、顔との密着性を高めたり、装着時の息苦しさを緩和させることなどを目的とした「立体型マスク」の基本的な形状であって、当該商品の機能を効果的に発揮させるために通常採用されている形状といえるものである。

そして、本願商標の鼻及び口を覆う前部がくちばしのようにややとがっているとしても、甲各号証(甲1、甲2の4、5等)によれば、その形状は、商品の機能を効果的に発揮させることを目的としたものといえ、また、耳にかける部分の空間が、端に向かって細く、鼻及び口を覆う前部に向かって、その先が下向きにややとがっている形状は、耳への負担の軽減、付け心地の向上などを目的としたものといえるから、本願商標は、「立体型マスク」に通常採用されている形状の範囲を超えるものとまではいえず、これに接する需要者が、商品の機能を効果的に発揮させることを目的として選択されたものと予測し得る範囲内のものである。

そうすると、本願商標は、「衛生マスク」の形状として、商品の機能に資することを目的として採用されたものと認められ、また、これに接する需要者において、商品の機能に資することを目的とする形状と予測し得る範囲のものであるから、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

(2)請求人の主張について

ア 商標第3条第1項第3号該当性に関する請求人の主張について

請求人は、本願商標における「鳥のくちばし」あるいは「烏天狗」のようとも形容される特徴的な外観態様が、需要者において自他商品識別標識として機能しており、加えて、マスク本体部より延出する耳かけ部は、不織布にブーメランのような円弧上の形状の切り込みが入れられた特殊な外観態様であり、このような形状の耳かけ部を有するマスクは他に存在せず、それぞれ特徴的なマスク本体部と耳かけ部の組合せは、他に類をみない特徴的なものである。さらに、本願商標については、マスク本体の上縁部に大小の長方形が折り重なったような外観的特徴が存在し、ここをもって、他の商品と識別することもな可能である。

したがって、本願商標の指定商品の分野において、本願商標の形態は特殊であり、顕著な特徴を有するものであるから、自他商品識別機能を発揮し得る商標と判断されるべきである旨主張している。

しかしながら、請求人が挙げる上記本願商標の特徴は、「立体型マスク」に通常採用されている形状の範囲を超えるものとまではいえず、これに接する需要者が、商品の機能を効果的に発揮させることを目的として選択されたものと予測し得る範囲内のものであることは、上記(1)のとおりであるから、請求人の主張は採用することができない。

イ 商標法第3条第2項該当性に関する請求人の主張について

請求人は、「仮に本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当すると判断されるものであったとしても、本願商標は、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものと認識されるに至っていることから、同条第2項の要件を充足しており、商標登録は認められるべきである。」旨を主張し、証拠として、甲第1号証ないし甲第12号証(枝番号を含む。)を提出している。

そこで、本願商標が、使用により自他商品識別力を有するに至っているか否か以下検討する。

(ア)商標の同一性について

商標法第3条第2項に該当するものとして同一性が認められる立体的形状とは、本願商標と使用商標とが同一である場合のほか、僅かな違いがあったとしても、特徴的な部分が同一である場合にも認め得るところ、別掲1に示すとおり、本願商標のマスク上縁部に大小の長方形が折り重なったような図が存在し、請求人も当該部分を本件商標の外観的特徴であると審判請求書において主張している。

そこで、請求人の主張及び提出に係る証拠をみるに、請求人は、2003年1月に本願商標を使用したと主張する「ユニ・チャーム超立体マスク」の販売を開始し、以来「超立体」と称する立体的な形状からなるマスク(以下「請求人商品」という。)をシリーズ化し、数種類販売していると主張するが、提出された証拠からは、請求人の主張する「鳥のくちばし」あるいは「烏天狗」のようであると称されるマスク本体部の形状と、不織布にブーメランのような円弧上の形状の切り込みが入れられた外観態様の耳かけ部を有することは確認できるものの、請求人が本願商標の外観的特徴としてあげているマスク本体の上縁部に大小の長方形が折り重なったような図形があることを明確に確認できないばかりか、シリーズ化された商品には、上記特徴を有しないことが明らかなものも含まれている(甲7)。

(イ)本願商標の使用期間、販売地域、販売数量について

請求人は、2003年1月に、請求人商品の販売を開始し(甲1)、現在に至るまで継続して販売していることがうかがわれる(甲2、甲7)。

そして、請求人は、請求人商品を日本全国におけるドラッグストア、コンビニエンスストア及びスーパーマーケット等において販売しており、その販売実績は、「2012年/26億4,364万円」「2013年/22億6,121万円」「2014年/21億9,382万円」「2015年/19億3,511万円」「2016年/18億4,665万円」「2017年度/約18億7,239万円」であると主張しているが、請求人商品がインターネットを通じて販売されていることは認められるものの(甲2の3、甲7)、その他販売地域、販売場所などの詳細は明らかでなく、また、上記販売実績を客観的に裏付ける証拠の提出はない。

(ウ)メディアにおける掲載

請求人に係る花粉症用の請求人商品について、読売新聞(2003年1月8日付け東京朝刊、同年2月4日付け大阪夕刊)、産経新聞(2003年1月15日付け東京・大阪朝刊、同年1月25日付け大阪朝刊)及び朝日新聞(2003年2月8日付け東京朝刊)、沖縄タイムス(2003年2月5日付け夕刊)、熊本日日新聞(2003年2月11日付け朝刊)、中国新聞(2003年2月12日付け朝刊)、「Pharmaweek」(2003年1月20日付け)、「化学工業日報」(2003年1月20日付け)に当該商品に関する記事が掲載されたが、その形状を確認することができる画像はない(甲4、甲5)。また、上記新聞における紹介記事は、2003年1月から2月の約1か月間しかなく、その掲載回数である12回も、多いとはいえない。

(エ)宣伝、広告

請求人は、請求人商品について、2011年12月頃に車内吊り広告を行い、2012年10月末頃にテレビコマーシャルを行った(甲8、甲9)ことがうかがえるが、その具体的な期間、回数、範囲等の詳細を明らかにする証拠の提出はなく、その他宣伝広告に係る証拠の提出はない。

(オ)需要者の商標の認識度を調査したアンケートの結果

請求人は、2018年11月に、インターネットにより、20代から60代の男女13,667名中、直近1年以内に「立体型又はプリーツ型マスク」を使用したことがあるユーザー464名にアンケート調査を行った結果を提出しているところ、その内容は以下のとおりである。

a 質問1は、本願商標と同様にパッケージに表示される立体的形状を線図で表した7種類のマスク(うち、3種類は、本願商標を含む立体型マスク、4種類は、プリーツ形状を採用したプリーツ型マスクと呼ばれるものである。)のイラスト(甲11)から、請求人に係る「超立体マスク」を選択させるものであるが、その正解率は全体の31.3%、であり「わからない」とした回答は36.4%、同時に提示された6種類を選択した者は、1.1%ないし9.7%である。

b 質問2は、aに示した3つの立体型のマスクの線図のうち、請求人に係る「超立体マスク」を選択させるものであるが、正解率は55.2%であり、わからないとした回答は37.7%、それ以外が、それぞれ、5.4%、1.7%である。

上記アンケート調査は、一般消費者といえる13,667名を、直近1年以内に「立体型又はプリーツ型マスク」を使用したことがあるユーザー464名を対象に行った結果であり、本願の指定商品「衛生マスク」の需要者が一般消費者であることからすれば、そもそも指定商品の需要者を対象としたアンケートとはいい難いものであって、上記アンケート「a(質問1)」のプリーツ形状の型マスク4種類を含めた7種類のマスクについてのアンケートにおいて、「わからない」を選択した者が最も多く、本願商標を用いたマスクを選択した正解率は全体の約30%にすぎず、また、「b(質問2)」の3種類の立体型マスクに絞ってのアンケートにおいても、本願商標を用いたマスクを選択した正解率は約55%で過半数ではあるものの、「わからない」を選択した者が約38%いることからすれば、アンケート調査結果によっては、本願商標は、請求人に係る商品であると需要者において、広く認識されているものとは認められない。

(カ)上記(ア)ないし(オ)によれば、請求人は「超立体」と称する立体的形状のマスクを2003年1月から販売を開始し、インターネットを通じて販売していること、当該商品の販売開始前後において新聞において紹介記事が掲載されたこと、電車の吊り広告、テレビCMが行われたことなどが認められる。

しかしながら、提出された証拠によっては、上記(ア)のとおり、別掲1に示した形状からなる本願商標と同一視し得る商標の使用に係る証拠を特定することができない。

そして、仮に提出された証拠が全て本願商標と同一視し得る商標の使用に係るものであるとしても、請求人商品の市場における占有率(シェア)は明らかでなく、請求人の主張する販売実績を客観的に裏付ける証拠の提出はない。また、新聞の掲載記事は、約1か月間の僅か12回にすぎず、車内吊り広告及びテレビコマーシャルについては、その具体的な期間、回数、範囲等の詳細を明らかにする証拠の提出はなく、ほかに、広告宣伝に関する追加の証拠の提出はない。さらに、アンケート調査結果をみても、本願商標は、その指定商品の需要者において、認識度が高いものとは認められない。

以上を総合して考察すると、請求人の提出に係る証拠からは、本願商標に係る立体的形状のみをもって、請求人の業務に係る商品であることが、日本国内で広く知られているとまでは認めることはできないものである。

なお、請求人は、自身が所有するマスクの図形商標の登録例をあげ、当該登録例は本願商標と類似するものであって、請求人以外の第三者が上記登録商標と類似する商標を使用できない状況にあったといえることから、本願商標が長期間にわたって請求人によって、独占的に使用されてきた旨主張している。

しかしながら、本願商標が、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であることは、上記(1)のとおりであり、また、請求人の挙げる登録商標は、マスクを主とした図形商標であるとしても、それぞれが、その構成態様をもって図形商標として登録されたものであるから、これら登録商標があることをもって、本願商標が識別力を有するものであるとする理由にはならない。

したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。

(キ)小括

上記(ア)ないし(カ)によれば、本願商標が使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものであること認めることができない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第2項に該当しない。

(3)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同法第3条第2項に該当するものではないから、登録することができない。 よって、結論のとおり審決する。

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