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Trademark Appeal Case

結合商標の要部と著名性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2018−900314(T2018−900314/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第6071816号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第6071816号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「chloe grace」の欧文字を筆記体風に書し、その下に無限大を表す記号を配した構成からなり、平成30年5月29日に登録出願、第18類「かばん類,袋物」を指定商品として、同年7月20日に登録査定、同年8月17日に設定登録されたものである。

第2 引用商標及び申立人商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標及び登録防護標章は以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。

1 登録第1242101商標(以下「引用商標1」という。)は、「クロエ」の片仮名及び「CHLOE」の欧文字を上下二段に横書きした構成からなり、昭和44年6月12日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同51年12月16日に設定登録され、平成18年9月27日に指定商品を第14類「貴金属製のがま口及び財布」及び第18類「かばん類,袋物」を含む第14類、第18類、第21類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされ、さらに、同28年8月9日にされた商標権の存続期間の更新登録において、商品及び役務の区分が第14類、第18類及び第25類に減縮されたものである。

2 登録第1895840商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおり「Chloe」(5文字目の「e」には左下がりのアクセント記号が付されている。以下同じ。)の欧文字を表してなり、昭和59年3月2日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同61年9月29日に設定登録され、平成19年2月28日に指定商品を第14類「貴金属製のがま口及び財布」及び第18類「かばん類,袋物」を含む第14類、第18類、第21類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされ、さらに、同28年8月16日にされた商標権の存続期間の更新登録において、商品及び役務の区分が第14類、第18類及び第25類に減縮がされたものである。

3 登録第5214700商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲2のとおり「Chloe」の欧文字を表してなり、平成19年5月11日に登録出願、「財布・キーケース・その他のかばん類・袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同21年3月19日に設定登録されたものである。

4 登録第1895840号の防護標章登録第1号標章(以下「引用商標4」という。)は、別掲2のとおり「Chloe」の欧文字を表してなり、平成24年2月6日に登録出願、第16類、第37類、第40類及び第43類ないし第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同25年4月12日に設定登録されたものである。

以下、引用商標1ないし3をまとめて「引用商標」という。

また、引用商標1ないし4のほか、「CHLOE」(5文字目の「E」には左下がりのアクセント記号が付されている。以下同じ。ただし、引用商標1の構成中の文字を示すときは、この限りでない。)の欧文字からなる商標及び「クロエ」の片仮名からなる商標を含めて「申立人商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第484号証を提出した。以下、証拠については、「甲1」のように記載する。ただし、甲9の中において、甲1ないし甲403と付されているものを、それぞれ、甲9の1ないし甲9の403と読み替える。

1 商標法第4条第1項第11号について

(1)本件商標は、その構成中「chloe」が、申立人の高級ファッションブランド「クロエ(Chloe)」と同一のスペル表記であり、申立人ブランドの著名性に鑑みれば、この部分が商品の識別標識として最も強く認識される。また、本件商標が万が一不可分的に結合すると認定された場合であっても、著名商標の部分が商品の識別標識として強く支配的な印象を与える部分であるから、「chloe」の部分から「クロエ」の称呼が生ずる。

(2)申立人は、1952年創業以来、商品「被服、履物、財布・かばん類、宝飾品・身飾品、香水類・化粧品」等について申立人商標を広く使用しており、我が国において、申立人商標は、申立人の業務に係る高級ファッションブランド「クロエ」を表示するものとして取引者・需要者間に広く知られている著名標章である。

(3)高級ファッションブランド「クロエ(Chloe)」の歴史

高級ファッションブランド「クロエ(Chloe)」は、1952年にギャビー・アギョンがフランス・パリで創設した。高級生地を使用した既製服「ラグジュアリー・プレタポルテ」を最初に提案したと言われている。

1970年代には、プレタポルテ(高級既製服)市場の草分け的存在として、時代を象徴するファッションブランドの一つとなった。

(4)我が国における著名性

我が国においては、遅くとも1976年にはクロエ商品が販売されていた(甲9の379)。

2018年10月現在、東京都中央区銀座に路面店(旗艦店)を営業しているのに加え、全国の有名百貨店及びアウトレットモールにおいて計32店舗を展開している(甲10及び甲11)。

ファッションブランドとしてのクロエ(Chloe)及びその商品は、日本で刊行されている雑誌・書籍等でも数多く紹介されている。

さらに、クロエ商品の日本での販売額については、2013年は130億円超、2014年は110億円超、2015年は98億円超、2016年は101億円超、2017年は95億円超となっている。また、日本での広告費については、2013年から2017年まで毎年2億5千万円以上の額を使用している。

(5)したがって、本件商標は商標全体が不可分的に結合しているとはいえないため、本件商標からは「クロエ」の称呼が生じ、あるいは、たとえ不可分的に結合しているとされた場合でも、著名商標である申立人ブランド「Chloe」の部分から「クロエ」の称呼が生じる。

よって、本件商標と引用商標とは、「クロエ」の称呼を共通にする類似の商標であり、また、その指定商品・役務も類似関係にある。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものである。

2 商標法第4条第1項第15号について

本件商標は「chloe grace」(及び無限大を表す記号)であるが、「chloe」は申立人ブランドを示す著名商標であるから、他人の著名商標をその一部に含むものである。

本件商標の指定商品が「かばん類、袋物」であるところ、申立人ブランドは主に女性向けのバッグ・被服・靴等の服飾関連商品に使用されて我が国の取引者及び需要者の間で著名となっており、かつ、商標登録も有しており(引用商標1ないし3、甲2ないし甲4)、実際に同じ商品(かばん類)を取り扱っていることは提出した証拠の雑誌・新聞・ウェブサイトの記事から明白であるため(甲12ないし甲480)、指定商品の関係からも明らかに混同のおそれがある。

したがって、本件商標は、商品等の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱われるべき商標である。

このように、本件商標は、申立人の著名な商標を一部に有する商標であって、申立人の業務に係る商品等と混同を生ずるおそれがあるものと推認されるものである。

よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものである。

第4 取消理由の通知

当審において、商標権者に対し、「本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり、仮に同号に違反して登録されたものでないとしても、同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。」旨の取消理由を令和1年6月13日付けで通知した。

第5 商標権者の意見

前記第4の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べていない。

第6 当審の判断

1 申立人商標の周知著名性について

(1)申立人の提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。

ア 申立人商標は、1952年(昭和27年)にギャビー・アギョンによって創設されたフランスのファッションブランドである(甲6ないし甲9の1)。

イ 申立人は、「かばん、婦人服、靴」等の商品(以下「使用商品」という。)について申立人商標の使用をしている(甲9の4、甲9の5、甲9の6、甲9の7及び甲9の8等。以下、申立人商標の使用をした商品を「申立人商品」という。)。

ウ 我が国では、遅くとも1976年(昭和51年)には、雑誌において、申立人商標を使用した婦人服が紹介されている(甲9の379及び甲9の399)。

エ 申立人商品は、書籍、雑誌、新聞において数多く紹介又は宣伝広告された。

例えば、我が国で販売されている一流ブランド品を紹介した「世界の一流品大図鑑」(1976年(昭和51年)6月5日ないし2004年(平成16年)4月22日発行。甲9の379ないし甲9の399。)において、申立人商標とともに申立人商品が紹介されている。

また、2006年(平成18年)以降、本件商標の登録出願時前までに発行されたファッション雑誌を始めとする各種の雑誌及び新聞において、申立人商標とともに申立人商品が数多く紹介又は広告宣伝されている(甲9の4ないし甲9の378、甲9の399、甲12ないし甲185、甲479)。

(2)前記(1)で認定した事実によれば、申立人商標が使用された申立人商品は、昭和51年以降、「世界の一流品大図鑑」を始めとした各種の書籍、雑誌、新聞において、数多く紹介又は広告宣伝されていることが認められる。

そうすると、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国のファッション関連の分野の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと判断するのが相当である。

2 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標

本件商標は、別掲1のとおり、「chloe grace」の欧文字と無限大を表す記号とからなるものである。

本件商標は、その構成中、欧文字部分と無限大を表す記号部分とが、上下二段に表されているため、視覚上分離して観察されるものであり、また、これらを常に不可分一体のものとして把握しなければならない特段の事情も見いだせないものであるから、それぞれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとは認められないものである。

また、本件商標の構成中「chloe grace」の欧文字部分は、「chloe」の文字と「grace」の文字の間に1文字分のスペースがあることから、「chloe」の文字と「grace」の文字の2語からなるものと容易に認識されるものである。

そして、当該欧文字部分中「chloe」の文字部分は、前記1のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国のファッション関連分野の取引者、需要者の間に広く認識されている申立人商標の「Chloe」からアクセント記号を除いたものと同一のつづりからなるものである。

そうすると、本件商標に接する取引者、需要者は、その構成中「chloe」の文字部分から我が国のファッション関連の分野の取引者、需要者の間に広く認識されている申立人商標を想起するものといえる。そのため、本件商標は、その構成中「chloe」の文字部分が取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。

してみると、本件商標は、その構成中「chloe」の文字部分を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。

したがって、本件商標は、その構成中「chloe」の文字部分から、「クロエ」の称呼を生じるものであり、また、該文字は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国のファッション関連の分野の取引者、需要者の間に広く認識されている商標とつづりを共通にするものであるから、「申立人の業務に係る『Chloe』のブランド」の観念を生じるものである。

(2)引用商標

引用商標は、前記第2の1ないし3のとおり、「クロエ」及び「CHLOE」の文字を二段に書したもの又は「Chloe」の文字からなるものであって、その構成文字に相応して「クロエ」の称呼を生じるものであり、また、該文字は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国のファッション関連の分野の取引者、需要者の間に広く認識されていることから、「申立人の業務に係る『Chloe』のブランド」の観念を生じるものである。

(3)本件商標と引用商標との類否

本件商標の構成中「chloe」の文字部分と引用商標とを比較すると、外観においては、大文字か小文字か、片仮名の有無、アクセント記号の有無及び書体の違いがあるものの、両者はその構成において「chloe」のつづりを共通にするものであるから、近似した印象を与えるものである。

また、称呼及び観念においては、両者は、「クロエ」の称呼及び「申立人の業務に係る『Chloe』のブランド」の観念を共通にするものである。

そうすると、本件商標と引用商標とは、外観が近似し、称呼及び観念を共通にする類似する商標というべきものである。

(4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品又は指定役務との類否

本件商標の指定商品は、引用商標1及び2の指定商品中第14類「貴金属製のがま口及び財布」及び第18類「かばん類、袋物」並びに引用商標3の指定役務中「財布・キーケース・その他のかばん類・袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と、同一又は類似する商品である。

(5)小括

したがって、本件商標は、引用商標と類似する商標であって、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似する商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

3 商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)本件商標と申立人商標との類似性の程度

本件商標は、前記2(1)のとおり、その構成中「chloe」の文字部分から、「クロエ」の称呼を生じ、「申立人の業務に係る『Chloe』のブランド」の観念を生じるものである。

一方、申立人商標は、「Chloe」、「CHLOE」又は「クロエ」の文字からなるものであり、該文字から「クロエ」の称呼を生じるものである。

また、前記1のとおり、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国のファッション関連の分野の取引者、需要者の間に広く認識されていたものであるから、「申立人の業務に係る『Chloe』のブランド」の観念を生じるものである。

そこで、本件商標の構成中「chloe」の文字部分と申立人商標とを比較すると、外観においては、申立人商標のうち、「Chloe」又は「CHLOE」の文字からなる商標との関係においては、前記2(3)のとおり、近似した印象を与えるものである。また、申立人商標のうち、「クロエ」の文字からなる商標との関係においては、文字の種類を異にするため、外観上異なるものであるが、商標の使用においては、商標の構成文字を同一の称呼が生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記したり、デザイン化したりすることが一般的に行われている取引の実情があることに鑑みれば、両者における文字種の相違が、看者に対し、出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとまではいえない。

次に、称呼及び観念においては、両者は、「クロエ」の称呼及び「申立人の業務に係る『Chloe』のブランド」の観念を共通にするものである。

そうすると、本件商標と申立人商標とは、外観において異なる場合と近似した印象を与える場合があるが、称呼及び観念は共通にするものであるから、これらを総合的に考察すれば、両者の類似性の程度は高いというべきである。

(2)申立人商標の周知著名性及び独創性の程度

申立人商標は、前記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国のファッション関連の分野の取引者、需要者の間に広く認識されていたものであるから、周知著名性の程度は高いといえる。

また、申立人商標の構成文字である「Chloe」、「CHLOE」又は「クロエ」の文字(語)は、一般の辞書に載録がなく、一般に親しまれた語とも認められないから、申立人商標の独創性の程度は高いといえる。

(3)本件商標の指定商品と申立人の使用商品との関連性及び需要者の共通性その他取引の実情

本件商標の指定商品は、前記第1のとおり、「かばん類、袋物」であり、申立人の使用商品は、前記1(1)イのとおり、「かばん、婦人服、靴」等であり、いずれも「かばん」を含むものであるから、両者の関連性は高く、また、需要者は共通する。

(4)出所の混同を生ずるおそれ

前記(1)ないし(3)のとおり、本件商標と申立人商標との類似性の程度は高く、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国のファッション関連の分野の取引者、需要者の間に広く認識されていたものであって、その独創性の程度も高いものといえる。また、本件商標の指定商品と申立人の使用商品とは、関連性が高く、需要者を共通にする

そうすると、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、これをその指定商品について使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、同者の間に広く認識されている申立人商標を連想、想起し、該商品があたかも申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じるおそれがあったものというべきである。

(5)小括

したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

4 まとめ

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであり、仮に同号に該当しないとしても、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

したがって、本件商標の登録は、商標第4条第1項第11号に違反してされたものであり、仮に同号に違反してされたものでないとしても、同項第15号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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