Trademark Appeal Case
地名と原材料の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−14299(T2018−14299/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、「北海道さくらんぼ酵母」の文字を標準文字で表してなり、第30類に属する願書記載の商品を指定商品として、平成29年4月12日に登録出願されたものである。
その後、本願の指定商品については、原審における平成30年1月24日付け手続補正書及び当審における同年12月12日付け手続補正書により、第30類「北海道産のさくらんぼから作られた製パン用乾燥酵母,北海道産のさくらんぼから作られた製パン用乾燥酵母を使用した即席菓子のもと,北海道産のさくらんぼから作られた製パン用乾燥酵母を使用した菓子及びパン,北海道産のさくらんぼから作られた製パン用乾燥酵母を使用したサンドイッチ,北海道産のさくらんぼから作られた製パン用乾燥酵母を使用したハンバーガー,北海道産のさくらんぼから作られた製パン用乾燥酵母を使用したピザ,北海道産のさくらんぼから作られた製パン用乾燥酵母を使用した製菓・製パン用の食品香料(精油のものを除く。)」と補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は、「本願商標は、『北海道さくらんぼ酵母』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、『北海道』の文字は、日本の都道府県の一つである北海道を、『さくらんぼ』の文字は、サクラの果実の総称を、『酵母』の文字は、出芽によって繁殖する円形若しくは楕円形の単細胞の菌類の総称である酵母を、それぞれ理解させる語であるから、本願商標は全体として、『北海道のさくらんぼの酵母』ほどの意味合いを認識させる。また、酵母を取り扱う業界において、様々な果実を使用した酵母が作られている実情があるから、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、『北海道産のさくらんぼから作られた酵母,北海道産のさくらんぼから作られた酵母を使用した商品』であることを認識させるにとどまり、単に商品の品質、原材料を普通に用いられる方法で表示するにすぎず、自他商品の識別標識とは認識しないというべきである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて職権で証拠調べをし、その結果を請求人に対して同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、令和元年6月10日付け証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。
第4 請求人の意見
請求人は、前記第3の証拠調べ通知書に対し、令和元年7月29日付の意見書を提出し、要旨以下のように主張した。
1 本願商標中の「さくらんぼ」は、たしかに果実ではあるが、「さくらんぼ」の文字に接する需要者、取引者は、これより、「さくらんぼ」に付着する菌を培養して作った酵母である、と認識するよりも、むしろ、「さくらんぼ」は、桜の果実として親しまれ、商標として採択されることの多い果実であるから、「北海道のサクランボ印の酵母」と認識されるとみるのが自然である。
2 証拠調べ通知書に記載された各証拠は、家庭用又はベーカリーなどで小規模に製造されるものであるのに対し、本願指定商品に係る「製パン用酵母」は、工場の大規模な製造工程で製造されるものであるから、その流通経路、需要者、取引者等を全く異にするものである。
3 証拠調べ通知書に記載された「ABC Cooking MARKET」のウェブサイトにおける使用例は、請求人と当該ウェブサイトの運営会社が共同して商品を販売しているものであり、他に請求人以外の者が本願商標と同一の文字を使用している例はない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、前記第1のとおり、「北海道さくらんぼ酵母」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、その構成中、「北海道」の文字は、「日本の最北端、宗谷海峡を隔ててサハリン(樺太)に対する一大島、北海道本島とその属島の総称。」を、「さくらんぼ」の文字は、「サクラの果実の総称。」を、「酵母」の文字は、「出芽によって繁殖する円形もしくは楕円形の微細な単細胞の菌類の総称。・・・酒の醸造やパン製造に欠かせない。イースト。」を、それぞれ意味する語(各語の意味については、「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店)参照。)である。
ところで、「酵母」は、製パンに用いられる菌であって、一般に果実などに付着した菌を培養して作られるものである。また、酵母を取り扱う業界において、酵母を作る際に使用した果実などの名称と「酵母」の文字とを組み合わせた「○○酵母」の文字が、「○○から作られた酵母」ほどの意味合いで、一般に使用されている(別掲1及び別掲2)。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、本願商標全体から、「北海道産のさくらんぼから作られた酵母又はそれを使用した商品」との意味合いを認識するにとどまるとみるのが相当であるから、本願商標は、商品の品質、原材料を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といえる。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 請求人の主張について
(1)請求人は、本願商標の構成中の「さくらんぼ」の文字は、桜の果実として親しまれ、商標として採択されることの多い果実であるから、本願商標を「さくらんぼ」に付着する菌を培養して作った酵母である、と認識するよりも、むしろ、「北海道のサクランボ印の酵母」と認識されるとみるのが自然である旨主張し、また、請求人以外の者による使用例はない旨主張している。
しかしながら、上記1のとおり、酵母は果実などから作られるものであり、本願の指定商品を取り扱う業界において、使用した果実などの名称と「酵母」の文字との組合せは、「○○から作られた酵母」ほどの意味合いを表示するものとして使用されている実情があり、そして、本願商標の構成中の「さくらんぼ酵母」の文字は、果実の名称と「酵母」の文字との組合せである。そうすると、本願商標に接する取引者、需要者は、別掲2(2)イないしキに掲げた他の果実などの名称と「酵母」の文字との組合せの使用例のように、その構成中の「さくらんぼ酵母」の文字を、酵母を作る際に使用した果実の名称である「さくらんぼ」と「酵母」の文字との組合せとして認識するというべきであるから、請求人の上記主張は採用することができない。
(2)請求人は、証拠調べ通知書に記載された各証拠は、家庭用又はベーカリーなどで小規模に製造されるものであるのに対し、本願の指定商品に係る「製パン用酵母」は、工場の大規模な製造工程で製造されるものであるから、その流通経路、需要者、取引者等を全く異にするものである旨主張する。
しかしながら、仮に、上記証拠で「○○酵母」の文字の使用例として示したものが、家庭用又はベーカリーなどで小規模に製造されるものであるのに対し、本願の指定商品に係る「製パン用酵母」が工場の大規模な製造工程で製造されるものであるとしても、これら商品の需要者は、いずれも一般の消費者であり、「○○酵母」の文字や本願商標に接する際の認識において、上記状況による差異はないから、請求人の上記主張は採用することができない。
(3)請求人は、単に産地、商品の品質、原材料等からなる商標の登録例や、商品の品質、原材料等を暗示させるにとどまる商標は識別力を有する商標であるとした審決例が多数存在する旨主張する。
しかしながら、請求人が引用する過去の登録例及び審決例の商標は、それぞれ、本件とはその構成態様を異にするものであって、事案が異なるものであり、また、商標が自他商品識別標識としての機能を有するか否かは、査定時又は審決時における取引の実情を勘案して、その指定商品の取引者、需要者の認識を基準に判断すべきものであるから、他の登録例及び審決例に本件の判断が拘束されるものではない。そして、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、取引者、需要者をして、商品の品質、原材料を表示するものと認識させるにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものとはいえないことは、上記1で述べたとおりであるから、請求人の上記主張は採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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