Trademark Appeal Case
色彩商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−2244(T2018−2244/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」を指定役務として、平成27年4月1日に色彩のみからなる商標として登録出願されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「役務の提供の用に供する物又は役務の広告の装飾等に使用される色彩は、多くの場合、それらの魅力向上等のために選択されるものであって、役務の出所を表示し、自他役務を識別するための標識として認識し得ないものである。そして、本願の指定役務を取り扱う業界においては、本願商標のようなオレンジ色と同系色の色彩が、役務の提供の用に供する物又は役務の広告の装飾等として使用されている実情がある。そうすると、本願商標をその指定役務の提供の用に供する物や広告に使用しても、これに接する取引者、需要者は、役務の提供の用に供する物又は役務の広告に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標と判断するのが相当である。また、提出された証拠によっては、本願商標が、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものと認めることはできない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、平成31年1月29日付け証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。
第4 請求人の意見
上記第3の証拠調べに対し、請求人は、何ら意見を述べていない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号該当性について
(1)本願商標について
本願商標は、別掲1のとおり、色彩のみからなる商標であって、オレンジ色(マンセル値:4.7YR7.0/15.1)のみからなるものであり、第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」を指定役務とするものである。
(2)取引の実情について
役務の提供の用に供する物又は広告に使用される色彩は、多くの場合、役務の魅力向上のために採択されるものであって、役務の出所を表示し、自他役務を識別するための標識としては認識し得ないものである。
そして、役務の提供の用に供する物や広告には、様々な色彩が用いられており、本願商標のオレンジ色と同系色の色彩についても、原審で示した事実のほかに、別掲2の1のとおり、本願の指定役務と関係の深い業界において、広告宣伝に資するウェブサイトや、役務の提供の用に供する工事用機械や作業服、ヘルメットに使用されている実情がある。
(3)上記(2)によれば、オレンジ色の色彩のみからなる本願商標は、役務の魅力向上のために使用される色彩と認識されるにとどまるものであって、役務の出所を表示するものとして又は自他役務を識別するための標識として認識されることはないというべきである。
また、本願商標と同系色の色彩が、請求人以外の者によって、広告宣伝に資するウェブサイトや、役務の提供の用に供する工事用機械、作業服及びヘルメットに使用されていること、及び別掲2の2のとおり、オレンジ色は、誘目性が高く、標識や案内板等に使用される色彩であって、日本工業規格(JIS)によって定められた安全色の一つであることからすると、高度な安全性が求められる本願の指定役務の分野においては、本願商標のようなオレンジ色のみからなる色彩は、何人もがその使用を欲するといい得るものであって、これを一私人に独占させることは妥当ではない。
2 使用による識別力の獲得について
請求人は、「本願商標は、長年の、かつ大規模な使用により既に識別力を獲得したものであり、登録を認められるべきものである。」旨主張し、証拠方法として、当審において第1号証ないし第30号証を提出しているので、以下検討する。
なお、上記第1号証ないし第30号証については、甲第1号証ないし甲第30号証と読み替える。
(1)これらの証拠及び請求人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 請求人について
請求人は、1892年に土木建築請負業者として創業した会社を前身とし、2016年度には、1兆8千億円の売上高を有し(甲2)、国内外に数多くの事業所及びグループ会社を擁する(甲4〜甲6)大規模な建設業者であり、官公庁、オフィスビル、医療・福祉施設、教育施設、商業施設等の多くの施工を行っている(甲7、甲8)。
そして、請求人は、青色の三角形と緑色の扇形を組み合わせた図形を、社章として使用している(甲10)。
イ 本願商標の使用状況について
(ア)工事用機械
請求人は、本願商標に近似したオレンジ色を、タワークレーンのマスト(支柱)部分や吊り荷用の回転制御装置に使用しており、これらの工事用機械の台座やジブ(腕)、運転席部分には、赤や白の色彩も使用している(甲12、甲20)。
また、これらの工事用機械には、請求人の社章が付されている(甲12)。
(イ)作業服及びヘルメット
請求人は、本願商標に近似したオレンジ色や、本願商標よりも淡いオレンジ色及び本願商標よりも濃いオレンジ色を作業服に使用し、本願商標に近似したオレンジ色をヘルメットに使用している(甲16、甲18、甲19、甲20、甲22、甲23、甲24、甲30)。
また、これらのヘルメットには、請求人の社章が付されている(甲19、甲30)。
(ウ)テレビCM
請求人は、「ひとつひとつの現場から」と題された30秒間のテレビCMを、平成26年(2014年)8月から平成27年(2015年)11月にかけて18回、平成27年(2015年)10月から平成28年(2016年)1月にかけて79回放映し、その映像の一部には、本願商標に近似したオレンジ色の作業服及びヘルメットや、本願商標よりも淡いオレンジ色の作業服を身につけた人々が映されている(甲16)。
なお、提出された証拠においては、当該テレビCMの全容や、放映されたテレビ番組の視聴者数は、確認できない。
(エ)その他の使用について
子どもの職業社会体験施設である「キッザニア東京」及び「キッザニア甲子園」では、請求人が出展する建設現場のパビリオンにおいて、子ども達が着用するヘルメット及び作業服、並びに展示されているタワーに、本願商標に近似したオレンジ色が使用されている(甲20、甲21)。
ウ 取引関係企業及び事業者からの「証明書」について
「出願人(請求人)と取引関係を有する企業・事業者からの『証明書』の写」には、本願商標の色彩について、「平成2年(1990年)以来、株式会社大林組が広く全国の建設工事、地域開発・都市開発・その他建設に関する事業等において継続的に使用されてきたものである。上記色彩は、同社の長年にわたる使用の結果、極めて高い周知性を得ており、特に当建設業界における取引者・需要者間では、常に株式会社大林組の業務を示す商標として容易に認識することができるものである。/以上/上記事項に相違ないことを証明します。」の文章が、全ての用紙に印刷されており、その下に、日付、証明者の住所、名称及び代表者名の記載並びに押印がある(甲15)。
エ 一般市民による認知度について
請求人は、インターネット情報によれば、本願商標は、一般市民においても出願人の役務を示すものとして広く認知され、オレンジ色が請求人を表す識別標識として機能している旨を主張しており、例えば、「YAHOO!JAPAN知恵袋」のウェブサイトにおける「大阪府のゼネコンでオレンジ色のブルゾンを着ている?会社ってありますか?」、「オレンジ色と言えばスカイツリーで有名な大林組でしょう。」の記載(甲17)や、「Lemiriaのレゴ&マイクラ日記」のウェブサイトにおける「タワークレーンは大林組という会社のものです。オレンジのマスト(支柱)が目印。」の記載(甲27)、「陽は西から昇る!関西のプロジェクト探訪」のウェブサイトにおける「大林組カラーの『オレンジ』のマストのタワークレーンが1基登場しました。」の記載(甲28)、「建設現場の色は移りにけりないたづらに」のウェブサイトにおける「町なかを歩いていて、現場監督っぽい人がオレンジ色の作業着をまとっていたら、まず間違いなく大林組です。」等の記載(甲29)がある。
(2)判断
ア 本願商標の使用状況について
上記(1)イによれば、請求人は、本願商標に近似したオレンジ色を、同人の提供する役務の提供の用に供する工事用機械、作業服及びヘルメットに使用しているものの、前記1(2)のとおり、本願の指定役務の分野において、請求人以外の者も、本願商標のオレンジ色と同系色の色彩を役務の提供の用に供する物に使用していることからすれば、請求人の上記オレンジ色の使用が特徴的なものということはできず、取引者、需要者の注意をひくものということもできない。
さらに、請求人は、本願商標のオレンジ色とは異なる色合いのオレンジ色や別の色彩も使用していることからすれば、請求人が提供する役務に接する取引者、需要者は、常に本願商標のオレンジ色を目にし、これを強く印象に残しているとはいえないものである。
また、請求人は、本願商標のオレンジ色を、請求人を表す社章と合わせて使用している場合もあることからすると、これに接する取引者、需要者は、常に本願商標のオレンジ色の色彩のみに着目し、これを役務の識別標識として認識しているとはいい難いものである。
そして、請求人が放映したテレビCMにおいても、本願商標に近似したオレンジ色のみならず、異なる色合いのオレンジ色も使用されており、また、30秒間のテレビCMの全容が不明であることから、本願商標のオレンジ色が、当該テレビCMに接する取引者、需要者に、どの程度の印象を残すものであるのかを推し量ることはできない。
加えて、当該テレビCMが放映された期間は、長期に渡るものではなく、放映された番組の視聴者数を把握することもできないことからすれば、同テレビCMが、どの程度の期間、どの程度の数の取引者、需要者に視聴されたかは不明である。
そして、子どもの職業社会体験施設である「キッザニア東京」及び「キッザニア甲子園」における、請求人の本願商標に近似したオレンジ色の使用は、職業体験を行う子どもが着用する作業着やヘルメット、見学や体験の対象であるタワーについてのものであって、これらの使用が、本願指定役務についての使用とはいい難い。
イ 出願人と取引関係を有する企業・事業者からの証明書について
上記(1)ウによれば、甲第15号証の「証明書」は、あらかじめ、証明する内容についての記載が印字された証明用紙に、それぞれの証明者が日付、住所、名称及び代表者名を記入し、押印するという形式によるものであって、証明者が、どのような具体的事実に基づいて、本願商標の色彩が請求人の業務を示す商標として認識することができるに至っているものと判断したかは明かではなく、当該証明書の証拠力は低いものである。
また、当該証明書の証明者は、請求人と取引関係を有する事業者や企業に限られていることから、当該証明書は、指定役務の分野における取引者、需要者全体の認識度を示すものとはいえない。
ウ 一般市民による認知度について
上記(1)エによれば、インターネット情報において、オレンジ色と請求人とを関連付けた認識を示す例があるものの、これらは、一部の者の認識を示すにすぎないものであり、一般市民全体の認知度を表すものとはいえない。
また、上記アのとおり、請求人は、複数の異なった色合いのオレンジ色を使用していることからすれば、これらの例が、必ずしも本願商標のオレンジ色に対する一般市民の認知度を示すものということもできない。
エ 小括
上記アないしウによれば、請求人は、本願商標に近似したオレンジ色を役務の提供の用に供する物に使用しているものの、本願商標のオレンジ色とは異なる色合いのオレンジ色や異なる色彩も使用していること、オレンジ色の色彩と共に請求人の社章が付されていること等からすると、本願指定役務の分野における取引者、需要者は、本願商標のオレンジ色のみによって、役務の識別を行っているということはできず、また、本願商標のオレンジ色のみが独立して、請求人の業務を表すものとして、指定役務の分野における取引者、需要者に広く認識されているというべき事情も認められない。
してみれば、本願商標のオレンジ色は、色彩のみが独立して請求人の業務を表すものとして取引者、需要者間に認識されているとみることはできず、本願商標は、使用された結果、請求人の役務の出所を表示するものとして、又は自他役務の識別標識として認識されるに至っているということはできない。
3 請求人の主張について
請求人は、総合建設業の事業者において、統一的に、かつブランド戦略の一環としてオレンジ色を識別標識として使用しているのは出願人のみであり、他の事業者は、役務の提供の用に供する物について、オレンジ色やそれに近似した色彩を使用することさえなく、本願商標は、識別力を有するものである旨主張し、証拠方法として、甲第14号証において、請求人以外の総合建設業の作業服の色彩の採択例に係る証拠を提出している。
また、工事現場において撮影された工事関係者の集合写真において、オレンジ色の作業服を着用しているのは、請求人のスタッフのみであり、オレンジ色は特別な存在であって、識別力を有するものである旨主張し、証拠方法として、甲第30号証(最終ページ)を提出している。
しかしながら、別掲2の1のとおり、指定役務の分野においては、請求人以外の者も、役務の提供の用に供する物に、オレンジ色を採択、使用している実情があることからすれば、本願商標のオレンジ色は、指定役務の分野においては、工事用機械や作業服等の役務の提供の用に供する物に使用される又は使用され得る色彩の一つとして、取引者、需要者に認識されるにとどまるものであって、色彩のみが独立した役務の識別標識としては、認識されないというのが相当である。
加えて、別掲2の2のとおり、オレンジ色は、誘目性が高く、標識や案内板等に使用される色彩であって、日本工業規格(JIS)によって定められた安全色の一つであることを踏まえれば、役務の提供に当たり、高い安全性が求められる指定役務の分野においては、何人もが使用を欲する色彩の一つといえるものであって、特定人による独占使用を認めることは、公益上適当とはいえないものである。
したがって、請求人の主張は、採用できない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であり、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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