sokuhyo

Trademark Appeal Case

商標・指定商品の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2015−900228(T2015−900228/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5755455号商標の指定商品中、第17類「ポリエステル製の生地とポリエステル製の中綿とゴムとを重ね合わせてキルティング縫製して伸縮自在にした包装用又は梱包用の筒状又は袋状又はシート状の保護緩衝材」についての商標登録を取り消す。
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5755455号商標(以下「本件商標」という。)は、「ハイパット」の文字を標準文字で表してなり、平成26年10月28日に登録出願、第17類「ポリエステル製の生地とポリエステル製の中綿とゴムとを重ね合わせてキルティング縫製して伸縮自在にした包装用又は梱包用の筒状又は袋状又はシート状の保護緩衝材,合成樹脂製梱包用保護緩衝材,ゴム製包装用容器」を指定商品として、同27年3月5日に登録査定、同年4月3日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由として引用する商標は、以下の2件であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらの商標をまとめていうときは「引用商標」という。)。

1 登録第5478795号商標(以下「引用商標1」という。)

商標の態様:「ハイパット」の片仮名と「HIPAT」の欧文字とを上下二段に横書きしたもの

登録出願日:平成23年9月22日

指定商品:第22類「荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送用の包装又は梱包用の伸縮自在なシート状又は筒状の布製緩衝材,布製包装用容器,わら製包装用容器,結束用ゴムバンド,日よけ,雨覆い,天幕,日覆い,よしず,衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿,編みひも,真田ひも,のり付けひも,よりひも,綱類」

設定登録日:平成24年3月16日

2 登録第5558032号商標(以下「引用商標2」という。)

商標の態様:「ハイパット」の片仮名と「HIPAT」の欧文字とを上下二段に横書きしたもの

登録出願日:平成24年8月10日

指定商品:第24類「家具等の被搬送物の運搬・移動その他の荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送物用の包装又は梱包用の伸縮自在にしたベルト状・シート状・筒状・袋状で綿・スポンジ・フェルト・不織布等の緩衝材を布生地・不織布生地・フェルト生地で挟みキルティング縫製した緩衝保護材,家具等の被搬送物の運搬・移動その他の荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送物用の包装又は梱包用の伸縮自在にしたベルト状・シート状・筒状・袋状で複数枚の布生地・不織布生地・フェルト生地を重ね合わせてキルティング縫製した緩衝保護材,荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送物用のキルティング材製緩衝保護材,荷役作業時に用いる建築物内における壁面又は床面等に配する建築物・内装材等の損傷防止のための衝撃緩衝用のキルティング材製の保護材,荷役作業時に用いる建築物内における壁面又は床面等に配する建築物・内装材等の損傷防止のための衝撃緩衝用の織物製の保護材,織物,フェルト及び不織布,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製椅子カバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳」

設定登録日:平成25年2月15日

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきである旨申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。

1 本件商標と引用商標の商標態様が類似であること

本件商標は標準文字で片仮名「ハイパット」を左横書きしてなるのに対し、引用商標は片仮名文字、英大文字をそれぞれ左横書きして上下2段で併記した「ハイパット\HIPAT」からなり、この引用商標の上下段で分離可能に表示されている片仮名部分は本件商標と全く同一である。

したがって、外観において共通する部分を有し、称呼において共に「ハイパット」であるから、外観、称呼のいずれにおいても類似、ほとんど同一である。また、外観・称呼の同一性から異なる観念を生じ得る余地はないから、特定される意味内容、逆に意味内容として特定されないものがあったとしても、観念において同一であることも明らかである。

2 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否

(1)本件商標の指定商品中の「ポリエステル製の生地とポリエステル製の中綿とゴムとを重ね合わせてキルティング縫製して伸縮自在にした包装用又は梱包用の筒状又は袋状又はシート状の保護緩衝材」(以下、申立人の主張に限り「本件指定商品1」という)、「合成樹脂製梱包用保護緩衝材」(以下、同様に「本件指定商品2」という)は、引用商標1の指定商品である「荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送用の包装又は梱包用の伸縮自在なシート状又は筒状の布製緩衝材」(以下、同様に「第1引用指定商品」という)、引用商標2の指定商品である「家具等の被搬送物の運搬・移動その他の荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送物用の包装又は梱包用の伸縮自在にしたベルト状・シート状・筒状・袋状で綿・スポンジ・フェルト・不織布等の緩衝材を布生地・不織布生地・フェルト生地で挟みキルティング縫製した緩衝保護材」(以下、同様に「第2引用指定商品1」という)、「家具等の被搬送物の運搬・移動その他の荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送物用の包装又は梱包用の伸縮自在にしたベルト状・シート状・筒状・袋状で複数枚の布生地・不織布生地・フェルト生地を重ね合わせてキルティング縫製した緩衝保護材」(以下、同様に「第2引用指定商品2」という)、「荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送物用のキルティング材製緩衝保護材」(以下、同様に「第2引用指定商品3」という)等と同一または類似商品である。以下、具体的に説明する。

(2)本件指定商品1及び2の内容

本件商標の出願時に提出された指定商品又は指定役務の説明書(決定注:上記本件指定商品1について意図する製品のウェブサイトを出力したもの)によって、「あてぶとんの縫製時に特殊な方法で丈夫なゴムを縫い込み、伸縮自在にした筒状のあてぶとんです。これにより、パソコンのディスプレイや丸形のテーブルなどどんな形の物も、ハイパットをスポットかぶせるだけで、誰にでも簡単に梱包ができます。」と、商品内容が説明されている。また、この商品は、引越用品総合カタログ中の商品としても説明されているから、荷役作業時の被搬送物を覆う包装又は梱包用の伸縮自在な筒状の保護緩衝材であることは明らかである。ただ、その素材が本件指定商品1ではポリエステル製の生地、ポリエステル製の中綿、ゴムから成り、キルティング縫製してあるものであり、本件指定商品2では合成樹脂製であるもので、いずれも包装用・梱包用の保護緩衝材そのものであるにすぎない。

したがって、本件指定商品1に係る素材としてポリエステル製の生地、ポリエステル製の中綿であったとしても、これはポリエステル製繊維を織成した布地、ポリエステル製繊維を絡ませた綿であり、一般需要者・消費者は、実質的には布、綿であると認識し、理解していることなどから、ポリエステル製の生地、ポリエステル製の中綿は布地、綿あるいはその類似物であることは明らかである。

(3)第1引用指定商品、第2引用指定商品1ないし3の内容

引用商標に係る指定商品は、被搬送物の保護、梱包用に布製生地相互間に緩衝用の綿等を詰めたり、複数枚で重ね合わせたりしてキルティング縫製した緩衝保護材であることは明らかである。

また、第2引用指定商品1及び2である緩衝保護材は、不織布等の緩衝材を不織布生地で挟みキルティング縫製したものが含まれているのは明らかである。

そして、この不織布の素材の一つとして、衣料用や工業資材など耐久性を要求される用途のものとされる場合、ポリエステル繊維が使用されるとされ、また、その応用製品の一つとして包装資材用であることが一般的に、また当業界においても広く知られているのは明らかである(甲4)。

してみれば、緩衝保護材が包装用又は梱包用に繰り返し使用されることを考慮すれば、この種の保護緩衝材の素材としてポリエステル製の生地、ポリエステル製の中綿が選択されているにすぎず、こうして選択された素材商品は本件指定商品1に相当するといわざるを得ない。

同様に、第1引用指定商品中の一商品(包装又は梱包用の伸縮自在なシート状又は筒状の布製緩衝材)として、また、第2引用指定商品3中の一商品(被搬送物を覆うキルティング材製緩衝保護材)として、布地の一つであるポリエステル繊維製生地、中綿を素材とするものが含まれているのは明らかである。

(4)指定商品相互の対比・検討

してみれば、本件指定商品1である包装用又は梱包用の保護緩衝材と、第1引用指定商品、第2引用指定商品1ないし3である包装又は梱包用の緩衝保護材とは全く同一で、本件指定商品2についても同様であるから、両指定商品が同一又は類似の商品であることは疑いない。

(5)指定商品に付された商品類似群コードによる検討

商品の類否判断は、商品そのものの内容その他を考慮して検討すべきものであり、商品及び役務の区分、さらには商品の類否を審査上で定め、使用されている商品類似群コードによって一律的に定められるものでない。これは、商標法第6条第3項に規定されるように「前項の商品及び役務の区分は、商品又は役務の類似範囲を定めるものではない」ことからも明らかである。

本件指定商品1及び2のいずれも、商品及び役務の区分として第17類に属するとされ、類似群コードとして18C09が付されたとしても、これに拘泥することなく、商品の類否を判断し検討すべきである。

(6)商標審査基準による商品の類否の検討

特許庁における商標審査基準によれば、商品の類否判断は、(ア)生産部門が一致するかどうか、(イ)販売部門が一致するかどうか、(ウ)原材料及び品質が一致するかどうか、(エ)用途が一致するかどうか、(オ)需要者の範囲が一致するかどうか、(カ)完成品と部品との関係にあるかどうか、等を総合的に考慮してなされるとする。

ア 生産部門について

本件指定商品1である保護緩衝材自体の生産者は、縫製業者であることは明らかである。

これに対し、第1引用指定商品1である布製緩衝材、第2引用指定商品1ないし3であるキルティング縫製した緩衝保護材等も、これを直接に縫製し、商品として整えるのは同じく縫製業者である。

したがって、本件指定商品1と第1引用指定商品、第2引用指定商品1ないし3との生産部門は一致している。

イ 販売部門について

本件指定商品1である保護緩衝材は、物流を業とする物流業者等を対象にして販売されている。これは、商標権者が運営しているWebサイトにおいて、引越用品の一つとして掲載していることからも明らかである(甲7)。

これに対し、第1引用指定商品である布製緩衝材は、荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送用の包装又は梱包用のものであることは明らかであり、第2引用指定商品1ないし3である緩衝保護材等も、家具等の被搬送物の運搬・移動その他の荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送物用の包装又は梱包用のものであることは明らかである。これは、引用商標1、引用商標2それぞれの商標権者の関連業者が運営しているWebサイトにおいて、引越資材の一つとして掲載していることからも明らかである(甲8)。

また、この種の包装・梱包用のキルティング縫製による保護緩衝材は、引越用品の一つとして各社のWebサイトにて紹介掲載され、販売されている(甲9〜17)。

してみれば、これらも引越用品、引越資材等としてのいわゆる物流用品であり、引越・物流を業とする物流業者等を対象にして販売されていることも明らかである。

したがって、本件指定商品1と第1引用指定商品、第2引用指定商品1ないし3等の販売部門は一致している。

ウ 原材料及び品質について

本件指定商品1の原材料はポリエステル製の生地、ポリエステル製の中綿、ゴムであるが、ポリエステル製の生地はポリエステル製繊維を織成した布地であり、ポリエステル製の中綿はポリエステル製繊維を絡ませた綿であることは明らかであり、一般需要者・消費者が理解する原材料としての素材内容は実質的には布生地、綿材であることに変わりはない。

これに対し、第1引用指定商品の原材料は布生地であり、第2引用指定商品1ないし3の原材料は不織布製生地、不織布製綿等を含めた布生地、綿材であることは明らかである。

したがって、本件指定商品1と第1引用指定商品、第2引用指定商品1ないし3の原材料、品質は一致している。

エ 用途について

本件指定商品1は、引越業者等が被搬送物を保護・梱包するためのいわゆる引越・物流用品として使用されるものである。

これに対し、第1引用指定商品は、指定商品を表示している記述のとおりに荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送用の包装又は梱包用のものであり、第2引用指定商品1ないし3も、同じく指定商品を表示している記述のとおりに家具等の被搬送物の運搬・移動その他の荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送物用の包装又は梱包用のものであることは明らかである。

してみれば、これらも引越用品としてのいわゆる物流用品の一つであり、引越業者、物流を業とする物流業者が被搬送物の保護、梱包用に使用するものであることも明らかである。

したがって、本件指定商品1と第1引用指定商品、第2引用指定商品1ないし3の用途は一致している。

オ 需要者の範囲について

以上のアないしエに説明したように、本件指定商品1も、第1引用指定商品、第2引用指定商品1ないし3のいずれも、各種の荷物、被搬送物その他の搬送作業時の保護、梱包用に使用される引越用品、いわゆる物流用品であることは明らかである。また、これらの物流用品は、引越業者、物流業者等がその業務に際して繰り返し使用するから、これらの商品の需要者は、引越業者、物流業者等であるのは明らかである。もとより、一般的な消費者が使用することがあってもそれは一時的であり、特別な場合であるから、需要者として考慮する必要はないと思料される。

したがって、本件指定商品1と第1引用指定商品、第2引用指定商品1ないし3との需要者も一致しているといわざるを得ない。

カ 完成品と部品との関係について

本件指定商品1、第1引用指定商品及び第2引用指定商品1ないし3のいずれも、商品として完成されたものであるから、部品との関係を検討する必要はない。

キ 小括

以上アないしカで検討したように、本件指定商品1と、第1引用指定商品及び第2引用指定商品1ないし3とは、同一又は類似する商品、むしろ同一商品であることは明らかである。

また、本件指定商品2の合成樹脂製梱包用保護緩衝材も、その商品類似群コードとして18C09が付されていても、上述したように、第1引用指定商品である布製緩衝材及び第2引用指定商品1ないし3である緩衝保護材等と、販売部門、用途、需要者の範囲等が一致するから、総合的に考慮しても類似商品であることも明らかである。

(7)類似群コードについて

本件指定商品1及び2のいずれも、18C09の類似群コードが付されている。

これに対し、第1引用指定商品及び第2引用指定商品1ないし3は、18C05の類似群コードが付されている。

しかし、この類似群コードは、「類似商品・役務審査基準」の解説にあるように、同じ類似群コードが付された商品及び役務については、審査において類似と推定されるものとして使用されている。逆に、類似群コードが異なれば、類似しない商品又は役務であると推定されるにすぎないところ、本件指定商品である保護緩衝材と、第1引用指定商品である布製緩衝材、第2引用指定商品1ないし3である緩衝保護材等の類似群コードが異なるからとして、類似しない商品であるとされないことは明らかである。

(8)素材の相違があっても類似商品とされている審査例

商標審査基準によれば、素材が異なる故に異なる商品又は役務の区分に属するとされても、互いに類似商品であるとされている例が多数示されている。

素材にかかわらず、商品としての用途・性格等が商品の類否判断に際し考慮されることは明らかであり、それ故、本件指定商品1及び2である保護緩衝材が、ポリエステル製の生地、ポリスエステル製の中綿、ゴム等を素材としていても、第1引用指定商品である布製の布製緩衝材、第2引用指定商品1ないし3である不織布製の緩衝保護材等とは、共にキルティング縫製されてなることで商品外観上も全く同一であることを見ても、同一商品又は類似商品の概念のものであるのは明らかである。

3 結論

本件商標は、引用商標と、商標態様において類似し、また指定商品においても同一又は類似するから、商標法第4条第1項第11号の規定により登録を受けることができず、登録は取り消されるべきである。

第4 本件商標に対する取消理由

当審において、本件商標権者に対し、「本件商標は、引用商標と類似の商標であって、かつ、引用商標1の指定商品中『荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送用の包装又は梱包用の伸縮自在なシート状又は筒状の布製緩衝材』及び引用商標2の指定商品中『家具等の被搬送物の運搬・移動その他の荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送物用の包装又は梱包用の伸縮自在にしたベルト状・シート状・筒状・袋状で綿・スポンジ・フェルト・不織布等の緩衝材を布生地・不織布生地・フェルト生地で挟みキルティング縫製した緩衝保護材,家具等の被搬送物の運搬・移動その他の荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送物用の包装又は梱包用の伸縮自在にしたベルト状・シート状・筒状・袋状で複数枚の布生地・不織布生地・フェルト生地を重ね合わせてキルティング縫製した緩衝保護材,荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送物用のキルティング材製緩衝保護材』と類似の商品である『ポリエステル製の生地とポリエステル製の中綿とゴムとを重ね合わせてキルティング縫製して伸縮自在にした包装用又は梱包用の筒状又は袋状又はシート状の保護緩衝材』について使用するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。よって、本件に係る商標登録は、その指定商品中『ポリエステル製の生地とポリエステル製の中綿とゴムとを重ね合わせてキルティング縫製して伸縮自在にした包装用又は梱包用の筒状又は袋状又はシート状の保護緩衝材』について、商標法第43条の3第2項の規定に基づいて、取り消すべきものである。」旨の取消理由を平成28年5月2日付けで通知した。

第5 取消理由に対する本件商標権者の意見

本件商標権者は、前記第4の取消理由に対して、平成28年6月20日付けの意見書をもって、要旨以下のとおり意見を述べ、その証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証(決定注:本件商標権者は、甲第1号証ないし甲第11号証として提出しているが、申立人提出の証拠方法と区別するために、本決定においては、乙第1号証ないし乙第11号証とする。)を提出した。

1 引用商標と本件商標との商標の類否について

引用商標と本件商標とが類似するとの認定に対して、異論はない。

2 指定商品を申立人の販売する商品等に基づいて認定することの妥当性について

申立人が提出すらせず、審査時に判断材料ともされなかった申立人のホームページや販売商品は、そもそも引用商標の指定商品の記載とは正確に対応する保証はない以上、それらを類否の判断材料とすることは妥当性を欠くと言わざるを得ない。

本件商標権者は、本件商標の出願時に「指定商品又は指定役務の説明書」を提出し、その中で、商品ハイパットが掲載された本件商標権者のホームページのコピーを提示している。

これに対し、本件商標について商標法第6条第1項による拒絶理由が通知され、指定商品の正しい記載例が提案された。

上述の経緯からすれば、本件商標の指定商品の記載は、本件商標権者の実際の販売商品と対応するものであろうことは、疑いの余地のないところである。

ところで、引用商標の出願時及びその審査の過程において、申立人が同人に係る実際の使用商品の構成や用途に関する説明を行ったことやホームページ等の資料を提示したとする記録は、一切見あたらない。

そうすると、引用商標の指定商品の記載は、単に申立人が独断で決定したものとみるのが相当であり、少なくとも、指定商品決定の過程において特許庁審査官が指定商品の記載と実際の商品との対応関係について検討した上で決定されたものでないことは明らかである。このため、引用商標の指定商品の記載が申立人の販売商品の内容を適切に表すものであるとする保証は一切存在せず、換言すれば、引用商標の指定商品の記載に相当する商品と申立人が実際にハイパットという商品名で販売している商品とは、必ずしも一致するものではない。

したがって、本件商標と引用商標の指定商品の類否を判断するにあたっては、本件商標権者が提出して審査時に参酌された資料である本件商標権者のホームページや販売商品は類否判断の材料となり得ても、申立人が提出すらせず、審査時に判断材料ともされなかった申立人のホームページや販売商品は、そもそも引用商標の指定商品の記載とは正確に対応する保証はない以上、それらのホームページや販売商品を類否の判断材料とすることは妥当性を欠くと言わざるを得ない。

加えて、審査時に判断材料として含まれなかった新たな情報に基づいて、商標登録後にその商標権の同一ないし類似の範囲が不当に広がることは商標権の安定性を損ない、また新たに商標出願を行う第三者にとっても先願商標の範囲の特定が困難になる等の不都合が生じるものと思量される。

3 引用商標と本件商標との指定商品の類否について

引用商標と本件商標とに係る指定商品は非類似である。

引用商標1の指定商品について、その指定商品の記載のみからどのような商品が相当するのか判断するために、インターネット上の検索エンジンにて「布製緩衝材」を検索すると、この検索により提示された商品は、荷役搬送時の当てものとして使われることもある毛布や平たいパッド等となる(乙7)。

すなわち、引用商標1の指定商品をその指定商品の記載のみから判断すれば該当するのはこのような毛布や平たいパッド等であり、本件商標の指定商品「ポリエステル製の生地とポリエステル製の中綿とゴムとを重ね合わせてキルティング縫製して伸縮自在にした包装用又は梱包用の筒状又は袋状又はシート状の保護緩衝材,合成樹脂製梱包用保護緩衝材」とは類似しないことが明らかである。

次に、引用商標2の指定商品についても同様に検索を行うと、これらの検索結果についても引用商標1の場合と同様に本件商標の指定商品に相当する商品は発見されない(乙8〜11)。

すなわち、引用商標2の指定商品をその指定商品の記載のみから判断すれば、該当するのはシートやマットタイプの保護材であり、本件商標の指定商品「ポリエステル製の生地とポリエステル製の中綿とゴムとを重ね合わせてキルティング縫製して伸縮自在にした包装用又は梱包用の筒状又は袋状又はシート状の保護緩衝材,合成樹脂製梱包用保護緩衝材」とは類似しないことが明らかである。

なお、仮に申立人が本件商標権者と同様の商品に使用するために引用商標を出願、取得したとしても、不適切な指定商品のまま登録されるに至ったのは出願時に指定商品について適切な記載を行わず、また資料等を提出して審査官に判断を仰ぐこともしなかったことが理由であり、その結果、実際の商品を提示し適切な指定商品の記載について審査官の判断を仰いだ本件商標とは指定商品が非類似となったことに何ら不思議はないものと思料される。

4 関連する事情

(1)本件商標の考案者について

商標「ハイパット」は、本件商標権者の先代社長が考案したものである(乙1)。

(2)本件商標権者による長年にわたる排他的使用の事実

申立人(決定注:「被申立人」(本件商標権者)の誤記と思料する。)は長年にわたり本件商標を使用しており、業界で周知の商標として認識され(乙2)、近年に至るまで継続的に使用し続けてきた(乙3)。

なお、乙第3号証の発売元である株式会社オカバは、申立人と同じグループに属する企業であり、密接な関係にある(乙4)。

乙第3号証及び乙第4号証から、申立人は引用商標の出願以前から本件商標権者が引越や運搬に用いられるキルティング製保護緩衝材に商標「ハイパット」を付して販売していたことを知悉していたものと認められる。

(3)関連する商標権の消滅の経緯

本件商標権者は、商標「ハイパット」について平成10年に商標出願を行っており、当該商標は商標登録第4289045号として商標登録が行われた(乙5)。本件商標権者としても当該商標権を維持する心づもりであったが、商標登録更新の時期の到来に気づかないうちに商標権が消滅してしまったという事情がある。

(4)無効審判の請求について

本件商標権者は、引用商標に対して近日中に無効審判を請求することを予定している。

したがって、本件異議申立の審理については上記無効審判の審決まで保留して欲しい。

5 むすび

本件商標は引用商標と指定商品が類似しないため、本件商標登録は維持されるべきものである。

第6 当審の判断

1 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標と引用商標との類否について

本件商標は、前記第1のとおり、「ハイパット」の片仮名を標準文字で表してなるところ、これからは「ハイパット」の称呼を生じ、該文字は、親しまれた成語ではなく、特定の語義を有しない一種の造語といえるものであるから、特定の観念を生じないものである。

他方、引用商標は、前記第2のとおり、「ハイパット」の片仮名と「HIPAT」の欧文字とを上下二段に横書きしてなるところ、該構成文字に相応して「ハイパット」の称呼を生じ、いずれも特定の意味を有しない造語といえるものであるから、特定の観念を生じないものである。

そこで、本件商標と引用商標とを比較するに、外観においては、本件商標は、「ハイパット」の片仮名を標準文字で表してなるものであるのに対し、引用商標は、「ハイパット」の片仮名と「HIPAT」の欧文字とを上下二段に横書きしてなるものであるから、構成全体の外観においては相違するものの、本件商標と、引用商標の「ハイパット」の片仮名部分とは、同じ綴りであるから、近似した印象を与えるものである。

そして、称呼においては、本件商標と引用商標は、「ハイパット」の同一の称呼を生じるものである。

また、本件商標と引用商標は、いずれも観念を生じないものであるから、比較することができない。

そうとすれば、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないとしても、本件商標は、引用商標の「ハイパット」の片仮名部分と外観上近似するものであり、「ハイパット」の同一の称呼を生じるものであるから、両商標は、類似の商標というのが相当である。

(2)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否について

ア 本件商標の指定商品

本件商標は、その指定商品中に、「ポリエステル製の生地とポリエステル製の中綿とゴムとを重ね合わせてキルティング縫製して伸縮自在にした包装用又は梱包用の筒状又は袋状又はシート状の保護緩衝材」(以下「本件商品」という。)を含むものである。

そして、本件商標の商標登録願において提出された指定商品又は指定役務の説明書によれば、本件商品について、「あてぶとんの縫製時に特殊な方法で丈夫なゴムを縫い込み、伸縮自在にした筒状のあてぶとんです。これにより、パソコンのディスプレイや丸形のテーブルなどどんな形の物も、ハイパットをスポッとかぶせるだけで、誰にでも簡単に梱包ができます。」の記載がある。

また、申立人が提出した本件商標権者のウェブサイト(甲7)によれば、本件商標権者は、引越用品の総合メーカーであって、本件商標を、引越業者が、搬送物の梱包のために使用をする、ポリエステル製の生地、ポリエステル製の中綿及びゴムが使用された伸縮自在のキルティング製あてぶとんに使用していることが認められ、この事実は上記指定商品の表示及び商品説明に沿うものということができる。

そうすると、本件商品は、引越用品を取り扱う者が販売する商品であり、引越業者が、搬送物の梱包用にあてぶとんとして使用する「ポリエステル製の生地とポリエステル製の中綿とゴムとを重ね合わせた生地をキルティング縫製して伸縮自在にした包装用又は梱包用の筒状又は袋状又はシート状の保護緩衝材」であるといえる。

イ 引用商標の指定商品

引用商標1は、その指定商品中に、「荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送用の包装又は梱包用の伸縮自在なシート状又は筒状の布製緩衝材」(以下「引用1商品」という。)を含むものである。

また、引用商標2は、その指定商品中に、「家具等の被搬送物の運搬・移動その他の荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送物用の包装又は梱包用の伸縮自在にしたベルト状・シート状・筒状・袋状で綿・スポンジ・フェルト・不織布等の緩衝材を布生地・不織布生地・フェルト生地で挟みキルティング縫製した緩衝保護材,家具等の被搬送物の運搬・移動その他の荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送物用の包装又は梱包用の伸縮自在にしたベルト状・シート状・筒状・袋状で複数枚の布生地・不織布生地・フェルト生地を重ね合わせてキルティング縫製した緩衝保護材,荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送物用のキルティング材製緩衝保護材」(以下、これら3つの商品をまとめて「引用2商品」という。)を含むものである。

そこで、引用1商品及び引用2商品についてみるに、各商品の表示を子細に見れば原材料や形状等の特定方法に関し若干の相違があるものの、いずれも荷役作業時の搬送物を覆う緩衝材であって、荷物などを運送する際に当該荷物を保護するために梱包するのに用いる商品であると認められる。

そして、申立人が提出した、申立人関連業者とする株式会社オカバマネジメントのウェブサイト(甲8の1葉目)によれば、上記関連会社は、梱包・引越資材の企画・開発・販売を行う会社であって、引用商標の構成中の「ハイパット」の文字を、引越業者等が、搬送物の梱包のために使用をする、キルティング縫製して伸縮自在にした筒状又は袋状の保護緩衝材に使用していることが認められ(甲8)、この事実は上記各商品の認定に沿うものということができる。

そうすると、引用1商品及び引用2商品は、いずれも、少なくとも引越資材の取扱業者が販売する、搬送物の梱包のために引越業者によって使用される「搬送物を覆う被搬送物用のキルティング縫製したシート状・筒状・袋状の緩衝保護材」であるといえる。

ウ 以上によれば、本件商品、引用1商品及び引用2商品は、いずれも「主たる材料の布地をキルティング縫製した包装用又は梱包用のシート状・筒状・袋状の保護緩衝材」であるといえる。

エ 商品の類否について

商品の類否判断は、取引の実情、すなわち、商品の生産部門、販売部門、原材料及び品質、用途、需要者の範囲が一致するかどうか、完成品と部品との関係にあるかどうか等を総合的に考慮して判断すべきである(東京高裁平成7年(行ケ)第161号同8年3月21日判決参照)。

そこで、上記アないしウで認定した本件商品と引用1商品及び引用2商品との類否について、以下検討する。

申立人提出に係る甲第9号証、甲第14号証ないし甲第17号証によれば、上記ウに類する「キルティング縫製して伸縮自在にした包装用又は梱包用保護緩衝材」は、本件商標権者及び申立人以外の引越資材、運搬用具等を取り扱う各業者によっても、搬送物の保護のために使用をする商品として販売されていることが認められる。

すなわち、販売部門については、本件商品、引用1商品及び引用2商品のいずれも引越用品又は梱包用品の取扱業者によって販売されるものである。

また、原材料及び品質については、本件商品はポリエステル製の生地とポリエステル製の中綿とゴムとを重ね合わせてキルティング縫製したものであり、引用1商品は布生地を、引用2商品は不織布製生地、不織布製綿等を含めた布生地を主な原材料として、いずれもキルティング縫製したものであり、用途については、いずれも引越業者が搬送物の保護のため、包装用又は梱包用に使用するものであり、需要者の範囲については、いずれも引越業者等である。

以上のとおり、本件商品と引用1商品及び引用2商品とは、商品の販売部門、原材料及び品質、用途、需要者の範囲を共通にするものであるから、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認されるおそれがある関係にあるものということができる。

したがって、本件商品と引用1商品及び引用2商品とは、商標法第4条第1項第11号にいう類似の商品にあたるというのが相当である。

2 本件商標権者の意見について

(1)引用商標の指定商品について

ア 本件商標権者は、申立人の販売する商品等に基づいて引用商標の指定商品を認定することは妥当性を欠く旨主張する。

しかしながら、引用1商品及び引用2商品は、その指定商品の表示から十分に前記1(2)イのとおり認定することができるものである。すなわち、引用1商品及び引用2商品は、その商品の表示において、(a)布を用いた、又は材料を限定しない、(b)キルティング縫製した、又はそれに限定しない、(c)伸縮自在にした、又はそれに限定しない、(d)シート状若しくは筒状、又は形状を限定しない、(e)荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送用の包装若しくは梱包用、又は、荷役作業時の被搬送物を覆う被搬送用の、(f)緩衝材、又は緩衝保護材であると認められるものである。そして、申立人関連業者が「ハイパット」の文字を使用して販売している商品に係る事実についても、前記の各商品の認定に沿うものということができるから、上記主張によって引用1商品及び引用2商品の認定が左右されるものではない。

イ また、本件商標権者は、引用1商品について、「布製緩衝材」の検索結果に示された商品は、荷役搬送時の当てものとして使われることもある毛布や平たいパッド等であり、引用2商品についても同様に検索した結果、本件商品に相当する商品は発見されず、引用2商品に該当するのはシートやマットタイプの保護材であるから、いずれも本件商品とは類似しない旨主張する。

しかしながら、仮にそれらの形状において相違があるとしても、荷役搬送時の当てものとして使用されるという用途において各商品は共通するものであり、上記主張によって前記1(2)イの認定が左右されるものではない。

(2)関連する事情について

本件商標権者は、商標「ハイパット」は同人の先代社長が考案したものであること、同人は長年にわたり本件商標を使用しており、申立人もそれを知悉していたことなどの事情を述べ、本件商標の登録は維持されるべきものである旨主張する。

しかしながら、商標法第4条第1項第11号は、登録出願された商標が先願に係る他人の登録商標と同一又は類似する商標であって、その指定商品と同一又は類似する商品又は役務について使用するものは商標登録を受けることができない旨規定しているところ、「他人の登録商標」に該当する要件としては、「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る」ものであること以外には何も定めていないのであるから、本件商標の登録査定時において有効に存続している引用商標に基づき同号の規定を適用することは、請求人の主張するような理由によって特段妨げられるものではない。

したがって、上記主張は採用することができない。

なお、引用商標について無効審判が請求されたが、当該審決は確定し、引用商標の商標権は有効に存続している。

3 まとめ

以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中「ポリエステル製の生地とポリエステル製の中綿とゴムとを重ね合わせてキルティング縫製して伸縮自在にした包装用又は梱包用の筒状又は袋状又はシート状の保護緩衝材」については、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。

しかし、本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品については、その登録を取り消す理由がないから、商標法第43条の3第4項の規定により、その登録は維持すべきものとする。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。