sokuhyo

Trademark Appeal Case

「吉兆庵」の類似性判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2018−900205(T2018−900205/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第6040490号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第6040490号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「吉兆庵鯛焼総本店」及び「キッチョウアンタイヤキソウホンテン」の文字を、上下二段に横書きした構成からなり、平成29年6月28日に登録出願、同30年3月19日に登録査定され、第30類「たい焼き」及び第35類「たい焼きの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品及び指定役務として、同年5月11日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議申立ての理由として引用する商標は、以下の2件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。

1 登録第1484086号商標(以下「引用商標1」という。)は、「源吉兆庵」の文字を筆書き風の書体により縦書きした構成からなり、昭和52年8月19日に登録出願、第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同56年10月30日に設定登録され、その後、平成4年2月27日、同13年9月11日及び同23年10月18日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。そして、指定商品については、同13年11月7日に、第30類「菓子及びパン」とする指定商品の書換登録がされたものである。

2 登録第5087103号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおり、やや小さい「宗家」の文字、「源」及び「吉兆庵」の文字を、筆書き風の書体により、各文字の間に若干のスペースを空けて「宗家 源 吉兆庵」と横書きした構成からなり、平成19年2月28日に登録出願、第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」を指定商品として、同年10月26日に設定登録され、その後、同29年10月24日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

上記の引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、以下、「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号によりその登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証を提出した。

1 商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、その構成において自他識別標識として機能する「吉兆庵」の文字部分から「キッチョウアン」の称呼と「吉兆という名のいおり」といった観念を生ずるものである。

他方、引用商標は、その構成文字より「ミナモトキッチョウアン」又は「キッチョウアン」の称呼と、「起源となる、吉兆という名のいおり」又は「吉兆という名のいおり」といった観念を生ずるものであり、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念を共通にする場合がある類似商標であって、指定商品・役務も同一又は類似するものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

2 商標法第4条第1項第15号について

引用商標は、申立人の商標として、広く一般に知られている(甲5〜甲17)から、これと相紛らわしい本件商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合、当該商品等が申立人又は申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがある。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 取消理由の通知

当審において、令和元年5月31日付けで、商標権者に対し、引用商標2を引用して、「本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨の取消理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。

第5 商標権者の意見

上記第4の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。

第6 当審の判断

1 申立人の提出に係る証拠及び主張並びに職権調査によれば、以下のとおりである。

(1)申立人の「会社案内」(甲5)によれば、申立人は、昭和21年に個人商店として創業した後、昭和44年に「有限会社 桃乃屋本舗」、平成29年2月に現社名「株式会社 源 吉兆庵ホールディングス」となった旨の記載がある。また、申立人は、主に和菓子の製造販売を行う企業グループの中核会社であり、申立人のグループ企業には、昭和52年に岡山県岡山市に設立された和菓子製造子会社「株式会社 源 吉兆庵」、平成21年に東京都中央区銀座に設立された和菓子販売会社「株式会社 宗家 源 吉兆庵」のほか、「株式会社 菓匠 清閑院」(京都市左京区)、「株式会社 西洋菓子 鹿鳴館」(東京都中央区)、「株式会社 日本橋屋長兵衛」(東京都中央区)があり、その他に、世界8カ国地域に40店舗を展開している旨の記載がある。

(2)「山陽新聞digital」において、「宗家源吉兆庵の東京本社新築移転 銀座6丁目に19年11月完成」の見出しの下、「源吉兆庵ホールディングス(HD 岡山市北区幸町)は、和菓子販売のグループ会社・宗家源吉兆庵の本社を、現在の東京都中央区銀座7丁目から、同6丁目に新築移転する。・・・1階は和菓子店『宗家源吉兆庵 銀座本店』が入り、岡山県特産のマスカットなどの果実菓子を中心に約40種類を販売する。・・・同HDは傘下に菓匠清閑院(京都市)、西洋菓子鹿鳴館(東京)など8社があり、国内外で約490店を展開している。グループの年間売上高は約320億円、従業員約2500人。(2017年09月20日22時20分更新)」との記載がある(甲6)。

(3)2004年9月14日付け日経MJ(流通新聞)3頁に、「源吉兆庵『海外』に学ぶ――高級和菓子店、ブランド戦略巧み、『古都発祥』で売る。」の見出しの下、「『鎌倉 源吉兆庵(みなもときっちょうあん)』『奈良 香寿軒(こうじゅけん)』『京都 菓匠 清閑院(せいかんいん)』。最近、空港や駅ビルなどでも目にする高級和菓子店だが、これらはみな同じ企業が経営している。和菓子製造・販売の源吉兆庵(岡山市、・・・社長)グループだ。巧みなブランド戦略は海外の有名ファッションブランドから学んだものだ。寺院のような名前に地名を冠したブランド名の素案は、社長の弟、・・・専務が海外から持ち帰った。・・・すでに展開していた『宗家 源吉兆庵』に続き、一九九四年に『鎌倉 源吉兆庵』展開の新会社を設立。・・・来年には旗艦店として銀座に地下一階、地上八階建ての自社ビルを建設する予定だが、店舗網を拡大しすぎないという鉄則がある。一ブランドにつき出店は百店舗以内と決めている。国内の店舗数は現在『宗家』八十九、『鎌倉』三十六、『京都』七十八、『奈良』二十二。四ブランド合わせた年間売上高(二〇〇四年三月期)は、四年前と比べて五割増の二百五十三億円となった。」との記載がある(甲9)。

(4)申立人の業務に係る和菓子については、引用商標2と同一の態様及びこれを縦書きで表した「宗家 源 吉兆庵」の文字からなる商標が使用されており、東京銀座に本店を有する百貨店「松屋」におけるお中元・お歳暮商品として継続的に採用され、2018年のお中元時期には、日本経済新聞ギフト広告特集として松屋銀座の地下ショーウインドウに飾られた(甲11〜甲13)。

(5)申立人の業務に係る「源 吉兆庵」ブランドの和菓子は、第27回全国菓子大博覧会において名誉総裁賞を受けた(甲14〜甲16)。また、同和菓子は、2016年5月26日と27日の両日三重県で開催された第42回先進国首脳会議(伊勢志摩サミット)に際し日本政府が発行した公式パンフレットにおいて、日本の伝統文化等を紹介する和菓子として掲載された(甲17)。

(6)2009年2月18日付け日本経済新聞35頁に、「和菓子の源吉兆庵、グループ、6社に再編、製販明確にし効率化。」の見出しの下、「和菓子製造・販売の源吉兆庵(岡山市、・・・社長)はグループを従来の十社から事実上六社に再編する。本体の源吉兆庵は和菓子製造に特化、販売機能は新設の宗家源吉兆庵(東京・中央)に移す。・・・源吉兆庵の販売部門は一年後をメドに、今年一月に新設した宗家源吉兆庵に移す。宗家源吉兆庵は同時期に和菓子販売の鎌倉源吉兆庵(神奈川県鎌倉市)の事業も受け継ぎ、鎌倉源吉兆庵は休眠会社とする予定。昨年十一月に和菓子販売の奈良香寿軒(奈良市)を同じく和菓子販売の京都菓匠清閑院(京都市)に統合、物流の古都茶屋(岡山市)は昨年十月に和菓子販売の日本橋屋長兵衛(東京・中央)に統合した。」との記載がある。

(7)2010年12月19日付け朝日新聞朝刊33頁に、「関空の出国エリア、初の和菓子店開店」の見出しの下、「関西空港旅客ターミナルビルの国際線出国エリアに18日、初の和菓子店がオープンした。岡山で創業し、果物をふんだんに使った和菓子の製造販売で知られる『宗家 源 吉兆庵(あん)』(東京)の関空店。のれんがかかる店舗には和の雰囲気が漂い、店の担当者は『和菓子を通じて外国のお客様に日本の文化を感じていただきたい』と話している。」との記載がある。

(8)2011年7月24日付け朝日新聞朝刊29頁に、「(らんきんぐ)暑さ忘れる甘味 見た目も涼やか」の見出しの下、「京阪神の百貨店バイヤーに『この夏お薦めの和菓子』を挙げてもらい、読者にアンケートした。・・・朝日新聞アスパラクラブの関西の会員にアンケート。回答数は3007人。 ■味わってみたい!夏の和菓子/ 1 老松「夏柑糖」 772/ 2 鶴屋吉信「本蕨(わらび)」 548/ 3 とらや「水羊羹(ようかん)」515/ 4 叶 匠壽庵「郷の氷室」 483/ 5 宗家 源 吉兆庵「桃泉果」 476/ 6 たねや「トマトゼリー」 382/ 7 鶴屋八幡「甘夏羹」 381/ 8 仙太郎「竹の水」 378/ 9 笹屋伊織「涼の流れ」 312/ 10 庵月「氷まんじゅう」 302/ ※数字は回答人数(複数回答)」との記載がある。

(9)2013年6月11日付け東京読売新聞朝刊10頁に、「[お取り寄せの味]清水白桃ぜりぃ なめらか果肉たっぷり」の見出しの下、「桃の品種『清水(しみず)白桃』をぜいたくに使ったゼリーだ。岡山市で創業し、果物を使うことにこだわる和菓子専門店『宗家 源吉兆庵(みなもときっちょうあん)』が4月に発売した。・・・包装にもこだわり、贈答用の桃のように一つひとつ、籠に入っている。1個840円。1箱2個入り、3個入り、4個入り、6個入りがある。電話、ネット通販で買えるほか、京王百貨店新宿店(東京)内の同社直営店などでも扱っている。/◇ 宗家 源吉兆庵では岡山県産のマスカットを使った『陸乃宝珠(りくのほうじゅ)』(1個=263円)を販売している。マスカット一粒をまるごと求肥(ぎゅうひ)で包み、砂糖をまぶしている。果実の味と形を保つため、手仕事で丁寧に仕上げているという。/◎宗家 源吉兆庵◎ 注文は電話(0120××××××)か同社サイト(http://www.kitchoan.co.jp/online_shop/)で。送料は別途必要。」との記載がある。

(10)「高島屋オンラインストア」のウェブサイト中に「宗家 源 吉兆庵」として、引用商標2と同一の態様の商標及び和菓子の写真が掲載され、「果実こそが菓子の原点、旬の素材にこだわる 宗家 源吉兆庵の和菓子づくり」、「創始者・・・・の個人の菓子店から株式会社 宗家 源吉兆庵となった現在に至るまで、当社では一貫してオリジナリティのある和菓子づくりを目指して参りました。」等の記載とともに、「宗家 源 吉兆庵 季節の涼菓詰合せ・・・税込3,261円」、「宗家 源 吉兆庵 清水白桃ぜりぃ詰合せ大・・・税込4,568円」等の和菓子の写真が掲載されている。

(https://www.takashimaya.co.jp/shopping/food/0400003900/)

(11)「渋谷ヒカリエShinQs(シンクス)」のウェブサイト中に「ショップ・フロアガイド」、「宗家 源 吉兆庵」として、引用商標2と同一の態様の商標及び和菓子の写真が掲載され、「宗家 源 吉兆庵/B2 スイーツ(和菓子)/TEL. 03−××−×××× 10:00〜21:00」、「〈宗家 源 吉兆庵〉では、自然の恵み『果実』をまるごといかした季節ならではの味わいをお届けしています。」との記載がある。

(https://www.tokyu-dept.co.jp/shinqs/floor/detail.html?shopcode=kichouan)

(12)「S−PAL仙台」のウェブサイト中、「仙台> フロアマップ>宗家 源 吉兆庵」の項目の下、引用商標2と同一の態様の商標及び和菓子の写真が掲載され、「[おみやげ]/宗家 源 吉兆庵/フロア 本館B1F/営業時間9:00〜21:00/電話番号 022−−××−×××× /ウェブサイトhttp://www.kitchoan.co.jp」、「源 吉兆庵では、その菓子の原点ともいえる自然の恵み『果実』をまるごとひとつ使用し、季節ならではの姿・形・味わいをそのまま生かした創作果実菓子をおつくりしています。」との記載がある。 (https://www.s-pal.jp/sendai/floormap/%E5%AE%97%E5%AE%B6-%E6%BA%90-%E5%90%89%E5%85%86%E5%BA%B5/)

(13)「遠鉄百貨店」のウェブサイト中に、「遠鉄百貨店ホーム/スウィーツ・フード/宗家 源吉兆庵」の項目の下、引用商標2と同一の態様の商標及び和菓子の写真が掲載され、「場所 新館B1F/電話番号 053−××−××××」、「〈宗家 源吉兆庵〉は自然の恵み豊かな岡山で創業以来、その原点を大切にし、四季折々の実りをふんだんに使った和菓子づくりに励んでいます。」との記載がある。

(https://www.endepa.com/shop/detail.html?sid=47)

(14)「イオンモール旭川駅前」のウェブサイトに、「ホーム>ショップガイド>宗家 源 吉兆庵/日本橋屋長兵衛」の項目の下、引用商標2と同一の態様の商標及び和菓子の写真が掲載され、「1F[118] グルメ/菓子/9:00〜21:00/0166−××−××××/2018年6月22日(金) RENEWAL OPEN!!/自然の恵み『果実』の姿・形・味わいをいかした『果実菓子』の店『宗家 源 吉兆庵』と、江戸の文化と歳時から発想を得たこだわり和菓子店『日本橋屋長兵衛』の複合ショップです。」との記載がある。

(https://asahikawaekimae-aeonmall.com/shop/detail/18)

(15)株式会社帝国データバンクのウェブサイト(2018年2月9日)において、「特別企画:国内菓子メーカー486社の経営実態調査」の見出しの下、【地域別売上高上位3社】の一覧表に、中国地方第3位として、商号「(株)源吉兆庵」、所在地「岡山県」、2016年度売上高(百万円)「7,986」、主なブランド・製品「宗家 源 吉兆庵」の記載がある(5頁)。

(https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/q180203.html)

2 商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)引用商標2の周知性について

上記1(1)ないし(15)によれば、申立人は、主に和菓子を製造販売する企業グループの中核であり、引用商標2を構成する「宗家 源 吉兆庵」の文字は、1994年(平成6年)には申立人の業務に係る和菓子のブランド名として既に展開されていたとされ(甲9)、その後、2009年(平成21年)、グループ傘下の和菓子販売会社である「株式会社 宗家 源 吉兆庵」の設立を経て、継続して使用されていることから、引用商標2は、申立人の業務に係る和菓子について、同期間中、継続的に使用されてきたことが推認できる。そして、現在においても、引用商標2は、申立人の業務に係る和菓子を表示するものとして、東京を中心に全国各地の百貨店やそのウェブサイト等において使用されているものである。

また、和菓子製造販売を行う申立人グループ全体の年間売上高は、2004年(平成16年)には、4年前と比べて5割増の253億円、2017年(平成29年)には約320億円であり、継続して拡大していることがうかがわれ、「宗家 源 吉兆庵」ブランドに係る和菓子についても、2016年(平成28年)度売上高は、約80億円に上るものである。

さらに、申立人の業務に係る「源 吉兆庵」ブランドの和菓子は、全国菓子大博覧会で名誉総裁賞を受けており、伊勢志摩サミットの日本政府公式パンフレットにも掲載されている。

以上を総合して判断するに、引用商標2は、長年にわたって使用された結果、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る和菓子を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く知られていたものということができる。

(2)本件商標と引用商標2との類似性の程度

ア 本件商標について

本件商標は、「吉兆庵鯛焼総本店」の漢字と、「キッチョウアンタイヤキソウホンテン」の片仮名を、上下二段に横書きした構成からなるものであるところ、構成中の「鯛焼」の文字は、「鯛の姿をした鉄製の型に、水に溶いた小麦粉を入れ、庵を挟んで焼いた菓子」の意味を、「本店」の文字は、「営業の本拠である店」の意味を有し(いずれも「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)、「本店」の文字に「総」の文字を結合した「総本店」の文字が「大本の営業の本拠である店」の意味を容易に理解させることから、上段の「吉兆庵鯛焼総本店」の文字からは、「『吉兆庵』という名称の鯛焼を提供する大本の営業の本拠である店」程の観念が生ずるものというのが相当である。また、本件商標の下段の片仮名は、上段の漢字の読みを表したものというのが自然であるから、全体の構成文字に相応して「キッチョウアンタイヤキソウホンテン」の称呼を生じるものである。

さらに、本件商標の上段の構成中、後半部の「鯛焼総本店」及びその読みを表した「タイヤキソウホンテン」の文字は、本件指定商品及び指定役務との関係では、「鯛焼を提供する大本の営業の本拠である店」の意味を有し、需要者、取引者に対し、取扱う商品と店舗の種類等を表すものであると理解、認識させるにととどまることから、当該部分は、商品及び役務の出所識別標識としての機能を有するとはいえないものである。

そうすると、本件商標は、その構成中、前半部の「吉兆庵」の文字及びその読みを表した「キッチョウアン」の文字部分が自他商品及び役務の識別標識として機能するものといえ、本件商標から該文字部分を分離、抽出し、他の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきである。

してみると、本件商標は、全体から生じる称呼及び観念の他に、その構成中「吉兆庵」及び「キッチョウアン」の文字部分に相応して「キッチョウアン」の称呼を生じるものである。また、「吉兆庵」の文字は、辞書に載録されていない語であって、一般に採択、使用される蓋然性もない一種の造語として認識されるものとみるのが相当である。

イ 引用商標2について

引用商標2は、「宗家 源 吉兆庵」の文字からなるところ、構成中の「宗家」の文字部分は、「宗主たる家。本家。家元」の意味(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)を有し、しばしば店名等の一部に採択使用される語であり、自他商品の識別標識として機能するとはいえないことから、本件商標は、「源 吉兆庵」の文字部分が自他商品・役務の識別標識としての機能を果たす部分であるというべきであり、「源」の文字と「吉兆庵」の間には、約1文字分の空間を有することから、当該「吉兆庵」の文字は視覚上、分離して把握されるものである。

ウ 本件商標と引用商標2との比較

本件商標と引用商標2とを比較すると、全体の比較においては構成文字や構成文字数が相違するものの、出所識別標識として機能する本件商標中の「吉兆庵」の文字部分と、引用商標2中の「源 吉兆庵」の文字部分を比較すれば、両者は、一般に採択使用されることが想定し難い、特徴的な文字列である「吉兆庵」の文字を顕著に有してなるものであるから、何らかの関連性があるものと想起される場合も決して少なくなく、筆文字風の書体が似通っていることも相まって、一定の類似性を有するものといえる。

(3)本件商標の指定商品及び指定役務と、引用商標2の使用商品との関連性等

本件商標は、「たい焼き」及び「たい焼きの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に使用するものであるのに対し、引用商標2は、前記1のとおり、商品「和菓子」に使用されるものであるから、いずれも菓子店で生産、販売され、同一の事業者が生産、販売することも少なくないものであり、原材料も共通にすることから、両者の関連性の程度は高く、その需要者の範囲を共通にするものである。

(4)他人の標章がハウスマークであるか

引用商標2の構成中、独立して自他商品識別標識として機能する「源 吉兆庵」の文字は、申立人の名称の一部と同一の構成文字からなるものであり、申立人のハウスマークということができる。

(5)出所の混同のおそれについて

上記(1)ないし(4)を総合して判断するに、引用商標2は、我が国において、申立人の業務に係る商品「和菓子」を表示するものとして、需要者及び取引者の間に広く認識されていたものと認められ、かつ、申立人のハウスマークといえるものである。

そして、本件商標は、引用商標2と一定の類似性を有するものであり、申立人の業務に係る商品と、本件商標の指定商品及び指定役務との関連性は高く、需要者の範囲も共通にするものである。

そうすると、本件商標権者が、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用した場合、これに接する需要者、取引者は、引用商標2を連想又は想起し、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。

(6)小括

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

3 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。