Trademark Appeal Case
欧文字商標の類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2019−900111(T2019−900111/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第6113612号商標(以下「本件商標」という。)は,「SOPHON」の欧文字を標準文字により表してなり,平成30年3月15日に登録出願され,第9類「電子計算機,データ処理装置,監視用コンピュータプログラム,ICカード(スマートカード),コンピュータ周辺機器,データ処理装置用カプラー,防犯用監視ロボット,ビデオスクリーン,遠隔制御装置,盗難防止用電気式設備,音響及び信号の再生用の無線モニター,モニター付監視装置(医療用のものを除く。),ビデオモニター,人工知能搭載のヒューマノイドロボット,ICチップ,高精細度グラフィックチップセット,コンピュータチップ,バイオチップセンサー,集積回路製造用の電子チップ,人工知能技術を活用したコンピュータソフトウェア,物理的ロボット操作用コンピュータソフトウェア,コンピュータネットワークサーバー,データベースサーバー,コンピュータ,プリント回路基板,映像解析用ソフトウェアを搭載したサーバー」,第35類「広告業,コンピュータネットワーク上でのオンラインによる広告,コンピュータデータベースによる市場調査,市場データの統計的評価,コンピュータデータベースへの情報編集,コンピュータデータベースへの情報構築,事業に関する情報の提供,市場調査,マーケティング,人事管理に関する指導及び助言,事業の管理に関する助言,販売促進のための企画及び実行の代理」,第42類「クラウドコンピューティング,コンピュータセキュリティに関する指導及び助言,インターネットセキュリティに関する指導及び助言,データセキュリティに関する助言,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータソフトウェアの貸与,コンピュータソフトウェアのバージョンアップ,コンピュータソフトウェアの保守,コンピュータソフトウェアの設計,技術的事項に関する研究,受託による新製品の研究開発,ロボットの設計及び開発,ロボットの設計及び開発に関するエンジニアリング,オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS)」及び第45類「防犯用及び保安用警報機による監視,手荷物のセキュリティ検査,工場の安全確認,盗難品の追跡調査,セキュリティーシステムによる監視,監視,飛行機の乗客のセキュリティ検査,セキュリティ監視用機器の貸与,安全確認,監視及び保安に関する助言」を指定商品及び指定役務として,同年11月30日に登録査定,同31年1月11日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する国際登録第1342269号商標(以下「引用商標」という。)は,「SOPHOS」の欧文字を横書きしてなり,2016年(平成28年)4月14日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して,同年10月13日に国際商標登録出願され,第9類,第21類,第25類,第28類,第35類,第37類,第41類,第42類及び第45類に属する別掲のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,2018年(平成30年)5月11日に設定登録されたものであり,現に有効に存続しているものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号の規定によりその登録は取り消されるべきであるとして,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第70号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 申立ての理由の要点
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は「SOPHON」の文字からなり,「ソフォン」の称呼を生ずる。これに対し,引用商標は「SOPHOS」の文字からなり,「ソフォス」の称呼を生ずるものである。
このため,両商標は外観及び称呼において類似する。
さらに,「SOPHON」はラテン語で「賢者,賢人」を意味する「SOPHOS」の形容詞にすぎない。
よって,両商標は観念においても共通する。
そして,本件商標と引用商標は,その指定商品・指定役務の多くが互いに抵触するものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は,申立人のハウスマークである「SOPHOS」と外観・称呼・観念のすべてにおいて類似する。
そして,申立人は,コンピュータセキュリティのためのソフトウェア及びハードウェアを開発・提供するベンダーとして30年以上の歴史を持ち,世界中に活動拠点を構え,世界150か国10万社以上の企業と1億人以上のユーザーを持つ(甲4,甲7)。本件商標の登録出願日以前に,様々な第三者機関から幾度となく高い評価を得ている他,インターネット上のニュースや個人ブログ等でも度々紹介され,国内のセミナーやカンファレンスにも積極的に参加しており,コンピュータセキュリティの分野の老舗企業として国内外で高い知名度を獲得していた(甲4〜甲70)。
その上,本件商標の第9類に係る指定商品の大部分と,第42類及び第45類の指定役務の大部分は,コンピュータのソフトウェア又はハードウェア,あるいはセキュリティ関連であり,申立人が現に提供中のコンピュータセキュリティのためのソフトウェア及びハードウェアと同一又は類似するものである(甲4)。第35類の指定役務も,申立人が支社や提携パートナーに対して提供している業務と同一又は類似のものである(甲49)。
さらに,本件商標の指定商品・指定役務の需要者は,ITセキュリティに関心若しくは関係を持つ法人又は個人であると考えられ,申立人の製品・サービスの需要者像とほぼ一致する。そのため,申立人及びその製品・サービスを既に知っている需要者も多く,思い込みによって本件商標を「SOPHOS」と勘違いするおそれがある。
仮に,本件商標を正しく認識したとしても,ITやITセキュリティに関係した製品・サービスであれば,申立人の新ブランドと思い込む可能性も否定できない。他の分野の製品・サービスであっても,申立人の国内外における知名度や,M&Aにより業務を拡大してきた歴史(甲34,甲42)にかんがみれば,他分野の企業を買収して新たに提供を開始した申立人の商品やサービスであるものと需要者が勘違いするおそれは否定できない。
以上のように,申立人及びそのハウスマーク又は引用商標は,本件商標の登録出願日以前に国内外において広く一般に知られている(甲4〜甲48)ため,そのハウスマーク又は引用商標と類似する本件商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合,商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがある。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)申立人の主張によれば,以下のとおりである。
ア 申立人は,コンピュータセキュリティのためのソフトウェア及びハードウェアを開発・提供するベンダーであり,英国における1985年の創業以来30年以上,通信エンドポイント,暗号化,ネットワークセキュリティ,電子メールセキュリティ,モバイルセキュリティ,ファイアウォール,統合脅威管理製品,サポートサービス等について,「SOPHOS」の文字からなる商標を使用している。
イ 申立人は,主に法人向けのセキュリティ提供に注力し,個人向けのサービスも提供している。
ウ 申立人は,本社のある英国,米国の他,ドイツ,カナダ,オーストラリア,イタリア,フランス,スペイン,ハンガリー,インド,シンガポール,香港,日本などに拠点を構え,世界150か国10万社以上の企業と1億人以上のユーザーを有するとしているが(甲4,甲7),上記記載の数値を裏付ける客観的な証拠の提出はない。
エ 申立人は,国際分類第9類,第42類の商品・役務を中心に,「SOPHOS」の文字からなる商標及び「SOPHOS」の文字を含む構成からなる商標について,世界各国で商標登録を受けている(甲8〜甲24)。
オ 申立人は,英国法人であるソフォス グループ パブリック リミテッド カンパニー(以下「ソフォス グループ」という。)の一員であり(甲7),ソフォス グループはロンドン証券取引所(LSE)に上場し,同グループの名称として「SOPH」の文字を用いて取引している(甲6,甲25,甲26)。
カ ソフォス グループの2017年度の連結決算は前年比18%以上の伸びとされる(甲6,甲25)。しかし,該数値は,引用商標を使用した商品又は役務に係る数値を示しているものであるか否かは不明である。
キ 日本においては,1997年に申立人の製品の日本国内販売が開始され,2000年には日本法人であるソフォス株式会社(以下「日本法人」という。)が設立され(甲4),日本市場における申立人のセキュリティソリューションの販売・サポート事業を,日本法人が中心となり,北海道から宮崎県に存在する認定販売パートナーとともに,日本全国で展開したとされる(甲27)。
ク 日本国内では,東芝,岩波書店,講談社,朝日新聞社,東京大学,早稲田大学,官公庁など,約3,500社以上にソフォスのセキュリティソリューションが導入されている(甲4,甲29,甲50,甲51)。
ケ 本件商標の登録出願日(平成30年3月15日)以前に,「ITmedia」,「日経×TECH」,「CNET japan」,「@IT」,「ZDNet japan」,「ASCII.jp」,「マイナビニュース」等の国内メディアにおいて記事として取り上げられた(甲31〜甲42,甲52〜甲60)。これらのメディアの中でも,特に「ITmedia」,「ITpro(現「日経×TECH」)」,「CNET japan」,「@IT」は,IT関係者にお勧めの情報サイトとして紹介された(甲43,甲44)。
コ 日本法人又はその認定販売パートナーは,本件商標の登録出願日以前に,日本国内で開催されるITセキュリティ関連のセミナーやカンファレンス等のイベントに参加し,パンフレットの配布や製品・サービスの説明,講演等を行ったとされる(甲40,甲61〜甲70)が,セミナー等への出席を裏付ける証拠,パンフレットの作成事実や配布部数,配布の範囲等を示す客観的な証拠の提出はない。
サ 申立人及び日本法人が個人向けに提供するウィルス対策ソフトは,本件商標の登録出願日である平成30年3月15日以前に,特にApple社のコンピュータ(Mac)のユーザーの間で,Mac対応のセキュリティソフト又はお勧めのセキュリティソフトとして個人ブログで紹介されていた(甲45〜甲47)。
シ 国内証券会社による投資家向けのマーケットレポートにおいて,本件商標の登録出願日である平成30年3月15日以前に,サイバーセキュリティの分野における主要企業の筆頭として,申立人を含むソフォス グループを紹介している(甲48)。
(2)上記(1)を総合勘案すれば,申立人は,企業,官公庁,教育機関等向けのコンピュータを保護するためのセキュリティ対策商品(コンピュータウィルス対策ソフトウェア等)等に引用商標を使用していたことがうかがわれる。
しかしながら,上記商品も含めた申立人の業務に係る商品及び役務について,本件商標の登録出願時及び登録査定時における,我が国での販売額,販売数量等の販売実績や,役務提供量,提供額,市場シェアなどを示す客観的な証拠及び広告費等を示す十分な証拠は提出されていないから,申立人提出の証拠によっては,引用商標が申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして,取引者,需要者の間に広く認識された周知・著名な商標であるとまでは認めることができないものである。
また,申立人が様々な国で商標登録を得ているとしても,そのことによって引用商標の周知,著名性を直接的に裏付けるものではない。さらに,申立人は,申立人及び日本法人の関連記事が掲載されたウェブサイトを提出しているが,これらウェブサイトはアクセスした者しか見る機会のないものであり,一般的な消費者が情報を得る媒体とは必ずしもいうことができない。
してみれば,引用商標は,主に法人等向けのコンピュータのセキュリティ対策製品(コンピュータウィルス対策ソフトウェア)等に使用されているということはできても,提出証拠からは本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品又は役務であることを表示するものとして,我が国の取引者,需要者の間で広く認識されていたと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は,「SOPHON」の欧文字を横書きした構成からなるところ,当該文字に相応してローマ字風に「ソフォン」の称呼が生じ,また,当該文字は我が国の一般的な英語の辞書にはその記載がないことから,特定の観念は生じないものである。
なお,申立人は,「SOPHON」はラテン語で「賢者,賢人」を意味する「SOPHOS」の形容詞にすぎない旨主張しているが,当該文字は我が国においては一般に親しまれた語とはいえないから,むしろ,特定の観念を生じさせることのない造語として認識されるというのが相当である。
そうすると,本件商標からは,「ソフォン」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標
引用商標は,「SOPHOS」の欧文字を横書きした構成からなるところ,これよりは「ソフォス」の称呼が生じ,また,当該文字も我が国の一般的な英語の辞書にはその記載がないことから,特定の観念を生じさせることのない造語として認識されるというべきものである。
そうすると,引用商標からは,「ソフォス」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標とを比較すると,外観においては,両者は,6文字という比較的少ない文字構成からなり,語頭から5文字の「S」「O」「P」「H」「O」の文字を共通にし,語尾において,「N」と「S」の文字の差異を有するものであるところ,この語尾における差異は,少ない文字構成において顕著な差異として看取されるものであるから,異なる印象を与えるものであり,外観において見誤るおそれはないものである。
また,称呼においては,本件商標と引用商標は,第1音「ソ」及び第2音「フォ」を共通にし,第3音の「ン」と「ス」に差異を有するところ,「ン」は,有声の気息を鼻から洩らして発する鼻音であるのに対し,「ス」は,舌端を前硬口蓋に寄せて発する無声摩擦子音「s」と母音「u」の結合した音節であるから,互いに音質の異なるものである。しかも,この「ス」の音は,末尾にあっても明瞭に発音されるものである。
そして,3音構成という短い称呼において,語尾に位置するとはいえ,前記の差異が称呼全体の語調,語感に与える影響は決して小さくないというべきであり,両者をそれぞれ一連に称呼するときには,全体の音調が異なり,相紛れることなく聴別し得るものである。
そして,観念においては,本件商標と引用商標は,いずれも特定の観念を生じさせないものであるから,観念において比較することができない。
してみると,本件商標と引用商標とは,観念において比較することができないとしても,外観及び称呼において明らかに異なるものであるから,相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)小括
以上のとおり,本件商標と引用商標とは,非類似の商標であるから,商品及び役務の類否について判断するまでもなく,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は,上記1(2)のとおり,申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国一般の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないことに加え,上記2(3)のとおり,本件商標と引用商標は,相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであって,類似性の程度は高くないものである。
また,「SOPHOS」の文字は,ラテン語で「賢者,賢人」を意味する既存の語であることからすれば(甲3),引用商標の独創性の程度が高いものとはいえない。
そうすると,引用商標が申立人のハウスマークであり,また,本件商標に係る指定商品及び指定役務と引用商標に係る指定商品及び指定役務に一定の関連性があり,その需要者を共通にすることがあったとしても,本件商標は,これに接する取引者,需要者が引用商標又は申立人等を連想又は想起するようなことはないというべきである。
してみると,本件商標は,これをその指定商品及び指定役務について使用しても,その取引者,需要者をして,該商品及び役務が申立人又は同人と業務上何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように,その出所について混同を生じるおそれはないものと判断するのが相当である。
その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同第15号いずれにも該当するものでなく,その登録は,同条第1項の規定に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。